「フラット35」、審査のメリットに注目!
金利が全期間固定型の住宅ローン「フラット35」は独自の審査基準を設けており、人によっては他の住宅ローンよりも利用しやすいと言われています。そこで今回は住宅ローン審査の基本を確認するとともに、フラット35の審査に関するメリットについて解説します。
01住宅ローンの審査とは?
住宅ローン審査とは、住宅ローンの利用者にローンの返済能力があるかどうかを見極めるために、貸主である金融機関が行う信用審査のこと。一般的な住宅ローンの場合、「事前審査」と「本審査」の2段階の審査があります。事前審査に通れば、よほど状況に大きな変化がない限り、本審査で落とされることはまれだと言われています。事前審査は数日~1週間程度、本審査は1~2週間程度で審査結果が出ることが多いようです。
金融機関が融資を行う際に重視する項目
具体的な審査項目は金融機関ごとに異なりますが、国土交通省が住宅ローンを提供している民間の金融機関を対象に行った「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、以下の項目については、90%以上の金融機関が融資を行う際に重視する項目(審査項目)にしていると回答しています。
- 完済時年齢(98.5%)
- 健康状態(96.6%)
- 借入時年齢(96.8%)
- 年収(94.0%)
- 勤続年数(93.6%)
- 返済負担率(92.0%)
- 担保評価(91.8%)
- 金融機関の営業エリア(90.4%)
※出典:国土交通省「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」
つまり、これらの項目について一定の基準を満たさない場合、住宅ローン審査に落ちてしまう可能性が高いということです。
審査基準は金融機関やローンの種類によって異なるので一概には言えませんが、ローンに落ちる原因として考えられるポイントを整理すると、以下のようになります。
年齢
ほとんどの金融機関は住宅ローンの利用者について、借入時年齢と完済時年齢に制限を設けています。具体的な年齢は金融機関によってさまざまですが、借入時年齢は「20歳以上70歳未満」、完済時年齢は「80歳未満」とされているケースが多く、一般的には高齢になればなるほど審査は通りにくくなると言われています。もちろん、年収や担保評価など他の審査項目の評価が高ければ、60代や70代でも審査には通りますが、借り入れができる期間は、最長でも各金融機関が設けている完済時年齢の上限に達する年までとなることに注意が必要です。
収入/勤続年数
当然ながら借入希望金額に対して年収が低い場合は、審査に通ることが難しくなります。また、年収の多寡だけでなく、その安定性も重視されるため、勤続年数の少ない人や非正規雇用の人の評価も低くなりがちです。なお、国土交通省の行った「令和元年度 住宅市場動向調査」によると、分譲マンションを購入した世帯の平均年収は798万円、注文住宅が744万円、分譲戸建住宅が688万円でした。
※出典:国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査」P38
担保評価
住宅ローンを借りて住宅を購入する場合、万が一返済ができなくなったときの担保として、金融機関がその住宅に抵当権を設定しますが、その住宅の市場価値が低い場合は、担保評価も低くなり、審査におけるマイナス要素となってしまいます。
健康状態
民間の金融機関の住宅ローンでは、原則として団体信用生命保険への加入が義務付けられています。したがって持病がある場合など健康状態に何らかの問題があってこの保険に加入できない場合は、審査に通ることが難しくなります。
このほか、他のローンを返済中の人、クレジットカードの支払いやキャッシングの返済を滞納した経験がある人も審査での評価が低くなる傾向にあります。
02住宅ローン審査、落ちた場合はどう対処すべき?
では、残念ながら住宅ローンの審査に落ちてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか?事前審査に落ちた場合は、当然ながら本契約には進めませんので、その金融機関から住宅ローンを借りることはできなくなります。
しかし、だからといってマイホームの購入をあきらめる必要はありません。さきほども述べた通り、住宅ローン審査の基準は金融機関やローンの種類によってさまざまであり、1つの金融機関の審査で落ちたからと言って、必ずしも他の金融機関でも審査に落ちるとは限らないからです。マイホーム購入をあきらめたくないなら、他の金融機関で住宅ローンが組めるところを探しましょう。
なお、金融機関から審査に落ちた理由を教えられることはほとんどありません。したがって、何が問題だったのかを自分なりに分析しておく必要があります。以下のような対策を検討して、少しでも問題を解消してから次の審査に臨みましょう。
頭金を増やす
年収に対して借入希望額が多すぎたと考えられる場合は、自己資金(頭金)を増やして、借入金額を抑えられないか検討してみましょう。可能であれば、親に援助や貸与を頼むのも一案です。
大手都銀以外の金融機関も検討する
例えば大手都市銀行の住宅ローン審査に落ちてしまった場合、同じような規模の都市銀行に申し込んでも、審査基準が同等である可能性があります。地方銀行や信用金庫、JAバンクなど都銀以外の金融機関が提供している住宅ローンも検討してみましょう。
ペアローンや親子リレーローンを利用する
ペアローンとは夫婦や親子など2人が別々に住宅ローンを組み、2本分のローンの借入金を住宅購入に充てる方法です。例えば夫1人で3000万円のローンの審査が通らない場合も、夫2000万円、妻1000万円のローンなら審査に通る可能性があります。ただし、ローンが2本になるため、契約などにかかる諸経費も2倍になることに注意が必要です。
また、親から子に住宅と住宅ローンを引き継ぐ親子リレーローンもあります。この制度では借入可能金額が高くなり、返済期間も長くすることが可能です。一方で、一般的には団体信用生命保険は子だけが加入するため、親に万一のことがあった場合、親が返済する予定の金額を子どもが引き継ぐことになります。
他のローンを返済する
マイカーローンやキャッシングローン、奨学金など他の借入金がある場合は、それらを返済するか、残額を減らす努力を。返済負担率(年収に占める返済総額の割合)を下げることができれば評価が上がり、審査に通る可能性が高くなります。
返済期間を見直す
借入時の年齢が高いほど、返済期間の長いローンは借りにくくなります。40歳以上の人は、無理のない範囲で返済期間を短縮して申請してみることも検討してみましょう。
複数の金融機関に仮申し込みをする
事前審査に通っても、必ず本契約をしなくてはならないわけではありません。審査に通る可能性を上げるために、あらかじめ複数の金融機関に同時に仮申し込みをして事前審査を受けるのも、1つの方法です。
03フラット35とは?
民間の金融機関の住宅ローンに比べて「審査に通りやすい」と言われているのが、フラット35です。フラット35は上質な住宅の取得をサポートすることを目的に、独立行政法人住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供している、最長35年の全期間固定型の住宅ローンで、審査に通れば100万円から最大8000万円までの融資を受けることができます。
本来、資金回収に時間がかかる長期の全期間固定型住宅ローンは金利変動によるリスクが大きいため、民間の金融機関では扱いづらい商品です。しかし、フラット35は申し込みや審査などの諸手続きは金融機関が行うものの、住宅金融支援機構がフラット35を取り扱っている金融機関から住宅ローン(フラット35)を買い取り、それを担保とする債券を発行、機関投資家に販売することによって資金を調達する仕組みにより、民間金融機関が全期間固定型住宅ローンを提供することを可能にしています。
フラット35の金利は販売窓口となっている金融機関によって異なりますが、取り扱い金融機関が提供する金利で最も多い「最頻金利」は、返済期間が15年~20年の場合は年1.240%、21年~35年の場合は年1.370%となっています(2021年4月現在)。変動型の住宅ローンには金利が年0.3%台のものもあるため、フラット35の金利は決して低くありません。しかし、主に以下のようなメリットがあることから多くの人に利用されています。
フラット35のメリット
フラット35のメリットを紹介します。
市場金利の変動による影響を受けない
全期間固定型で契約時の金利が返済期間中ずっと適用されます。したがって、経済状況の変化で市場金利が上昇した場合も、返済額が上がるリスクがありません。
返済計画が立てやすい
金利変動がないので契約の時点で返済金額が確定しており、返済計画が立てやすくなります。
団体信用生命保険への加入が任意
一般的な住宅ローンは団体信用生命保険への加入が必須とされているものがほとんどですが、フラット35の場合は加入が任意なので、健康状態に問題があって団体信用生命保険に入れない場合も利用することができます。
商品ラインアップが豊富
フラット35には、一定以上の品質が認められた住宅の取得時に低金利で利用できる「フラット35S」や、自治体による経済的支援(補助金など)とセットで年利引き下げの特典が受けられる「フラット35子育て支援型」など豊富な商品ラインアップがあり、ライフステージや取得する住宅の種類に応じて選択が可能です。
保証人や保証金が不要
一般的な住宅ローンで必要な場合がある、保証人や保証金がフラット35では不要です。
繰り上げ返済の手数料が不要
一般的な住宅ローンでは返済期間中に繰り上げ返済をすると、その手続きにかかる手数料がかかる場合がありますが、フラット35の場合は手数料が不要です。
返済方法が選べる
フラット35の返済方法には、毎月の返済額が一定になる「元利均等返済」と、毎月の返済額のうち元金部分が一定になる「元金均等返済」があり、利用者本人がどちらの方法で支払うかを選ぶことができます。
利用者の勤続年数や雇用形態を問わない
一般的な住宅ローンの審査では、収入の安定性が重視されるため、勤続年数が短い人や非正規雇用で働く人の評価は低くなりがちです。一方、フラット35の審査では勤続年数や雇用形態が問われないため、就職をしたばかりの人や、フリーランスや契約社員など非正規雇用で働く人も審査に通りやすいとされています。
年収が低くても審査に通りやすい
一般的な住宅ローンの場合、審査にあたって「年収〇〇〇万円以上」といった制限が設けられていることがありますが、フラット35の場合、年収は審査項目とされていません。代わりに「総返済負担率」(年収に占める年間合計返済額の割合)の上限が以下のように定められています。
フラット35総返済負担率の上限
年収 | 総返済負担率の上限 |
400万円未満 | 30%以下 |
400万円以上 | 35%以下 |
つまり、年収が300万円の人の場合は、年間の返済額の合計が90万円までであれば、条件をクリアできるということです。ただし、ここで言う年間合計返済額には、利用しようとしているフラット35の返済額だけでなく、マイカーローンやクレジットカードのキャッシングなどすべての負債の返済が含まれることに注意が必要です。
フラット35のデメリット
このように利用者にとってのメリットが多いフラット35ですが、以下のようなデメリットも指摘されています。利用を検討している場合は、メリットとデメリットの両方を把握した上で、慎重に判断するようにしてください。
金利が高い
フラット35の金利は、変動型の住宅ローンに比べて高く設定されています。そのため、同じ金額を借り入れた場合でも、月々の返済額や総返済額が変動型のローンに比べて高くなってしまう可能性があります。
金利低下の恩恵が受けられない
フラット35は全期間固定型の住宅ローンであり、市場金利の変動の影響を受けません。そのため、金利が高騰しても返済額が増えるリスクはありませんが、金利が低下しても返済額が下がることはありません。
「技術基準」を満たす住宅の取得にしか利用できない
フラット35では、利用者が取得する住宅について省エネ性や耐震性、バリアフリー性や耐久性・可変性について一定の「技術基準」を設けており、この基準を満たす住宅の取得にしか利用できません。また、技術基準を満たすかどうかを証明するには第三者の検査を受ける必要があり、検査手数料は利用者が負担しなくてはなりません。
04フラット35以外の選択肢は?
メリットとデメリットを比較検討した結果、フラット35を利用しないと判断した場合、他にどのような選択肢があるのでしょうか?
固定金利の住宅ローンは、地方銀行や信用金庫などにも商品を用意しているところがあるので、相談してみるのも一案です。
また、変動型の住宅ローンでも、大手都銀やネット銀行だけでなく、地方銀行や信用金庫などを調べてみるのも良いでしょう。地方銀行や信用金庫は事業規模が小さく、資本力が低いため、住宅ローンの金利はやや高めに設定されているケースが多くなっているようです。
しかし、審査基準はメガバンクほど厳しくないと言われており、メガバンクの審査に落ちた人が地方銀行や信用金庫の審査に通ったという例も珍しくありません。
また、メガバンクに比べて柔軟な対応が期待できるのも、地方銀行や信用金庫のメリットの1つです。借り入れ条件についての要望に応じてくれたり、地域ならではのお得な情報(地方公共団体独自の交付金・補助金の情報など)を提供してくれたりすることもあります。
特に、信用金庫は「地域の繁栄と相互扶助」を目的に設立された金融機関であることから、メガバンクなどの審査では評価が低くなりがちな個人事業主や自営業者なども、審査に通りやすいと言われています。
住宅ローンにはさまざまな選択肢がありますが、審査を受ける前に、各金融機関が開催する住宅ローン相談会に行って情報を集めたり、担当者に相談したりして感触を確かめるなど、具体的なアクションを起こしてみるのも良いかもしれません。
05フラット35のスゴいポイント:審査
- 団体信用生命保険への加入が任意
- 保証人や保証金が不要
- 利用者の勤続年数や雇用形態を問わない
- 年収が低くても審査に通りやすい
教えて!フラット35 フラット35の疑問や不安をサクッと解消
関連キーワード