返済期間を長く!「フラット35」の親子リレーローンとは

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住宅ローンの多くは、80歳までに返済を完了することを融資の条件としています。一般的に住宅ローンは35年で組むことが多いため、通常は40代後半以降になると単独では長期の住宅ローンを組みづらくなります。しかし、安定した収入のある子どもと2世代にわたって返済する「親子リレーローン」なら、40代後半以降の中高年でも返済期間の長い住宅ローンを組める可能性があります。今回は全期間固定型で人気の長期ローン「フラット35」の親子リレーローンについて見ていきましょう。

01「親子リレーローン」とは?

「親子リレーローン」は、主に親と子が共同で契約する住宅ローン、つまり親と子の2世代にわたって返済していく住宅ローンです。

一般的な住宅ローンは80歳までに借り入れを完済するという条件があります。例えば、申込時に65歳の人の最長返済期間は「80歳-65歳」で15年間となり、原則として、それ以上の期間でローンを組むことはできません。

返済期間が短くなると、金利の支払いが減るため、総返済額が少なくなるというメリットがありますが、その分、月々の返済金額が高くなってしまうというデメリットもあり、返済金額が高すぎて家計を圧迫してしまう場合は、ローンの利用そのものをあきらめざるを得なくなります。

そもそも、高齢になると年齢的に返済能力が低いとみなされて、ローンの審査に落ちる原因となることもありますし、希望通りの額の融資を受けられない可能性もあります。

しかし、「子どもの結婚や出産を機に、二世帯住宅を建てたい」、「定年後の終の棲家を手に入れ、将来的には子どもや孫と一緒に住みたい」など、中高年になってから住宅購入を希望する人も少なくはありません。

そんな人たちのために、多くの金融機関では住宅ローンのラインアップの1つに「親子リレーローン」を用意しています。親子リレーローンは主に親と子が共同で契約する住宅ローン、つまり親と子の2世代にわたって返済していく住宅ローンです。

詳細な要件は金融機関によって異なりますが、一般的な親子リレーローンではまず契約時に定めた期間を親が返済し、その期間が終了後は、子どもがバトンタッチして、完済まで返済を続けていく仕組みになっています。

親子リレーローンは、主に次のような場合に利用されることが多いようです。

  • 親が高齢で短い返済期間でしか住宅ローンの借り入れができない
  • 親子どちらか一方の収入ではローンの借り入れが難しい
  • 子供の住宅取得を親が資金面で応援したい

フラット35の親子リレーローン

親子リレーローンでは、ローン申し込み者本人(親)ではなくローンの後継者(子や孫)の年齢にもとづいて返済期間が算出されるため、親が単独でローンを利用する場合よりも、返済期間を長くすることができます。

独立行政法人住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供している、最長35年の全期間固定型の住宅ローン・フラット35にも、親と子や孫など一定の条件を満たす人を後継者として、2世代にわたってローンの返済ができる同様の制度があり、「親子リレー返済」と呼ばれています。

では実際にフラット35の親子リレーローンを使った場合とそうでない場合の例を見てみましょう。

<例>申込時に親:60歳3カ月、子:33歳4カ月

  • 親子リレーローンを利用せず、親が単独でローンを組む場合の最長返済期間:80歳-61歳=19年
  • 親子リレーローンを利用する場合の最長返済期間:80歳―34年=46年→35年(※)

※返済期間は15年以上35年以内(1年単位)。最長でも35年ということです。ただし、完済時の年齢(1歳未満切り上げ)が80歳となるまでの年数と比較していずれか短い年数とすることになっています。

なお、フラット35でこの制度を利用できるのは、ローン申込者と後継者がそれぞれ以下の要件をすべて満たしている場合のみです。

ローン申し込み者本人の要件

  • フラット35の申込資格を満たしていること

なお、原則としてフラット35が利用できるのは、申込時点で満70歳未満の人のみですが、親子リレーローンの場合は、70歳以上でも申し込むことができます。

ローン後継者の要件

  • ローン申込者本人の子や孫など直系卑属、もしくはその配偶者で定期収入があること
  • 申込時の年齢が満70歳未満であること
  • 連帯債務者になる人であること(1名のみ)
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02一般的な親子リレーローンと「親子リレー返済」の違い

フラット35の親子リレーローンを、一般的な金融機関の親子リレーローンと比較してみます。

子や孫だけでなく、その配偶者もローン後継者になれる

親子リレーローンの中には後継者を申込者本人の「子」のみに限定しているものが多いのですが、フラット35の親子リレーローンは、「子」だけでなく「子や孫などの直系卑属、またはその配偶者」としているため、子や孫はもちろん、その配偶者をローンの後継者とすることができます。

ローン申込者本人とローン後継者は同居する必要がない

一般的な親子リレーローンの多くは、ローンを使って購入する住宅に、ローン申し込み者(親)と後継者(子)が同居すること、または同居予定であることを融資の条件としていますが、フラット35の親子リレーローンの場合は同居または同居予定の有無を融資の要件としていません。つまり、同居しなくても融資を受けることができます。

団信への加入が任意である

一般的な親子リレーローンでは多くの場合、ローン申し込み者(親)と後継者(子)いずれか、あるいは双方に団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられていますが、フラット35の親子リレーローンでは義務付けられていません。また、フラット35独自の団信である「新機構団信」に加入する場合も、申込者か後継者どちらか1人が加入すれば良いことになっています。どちらか1人が加入すれば、万が一のときには、加入した人の持ち分や返済額にかかわらず、その時点での住宅ローンの残債が弁済されることになります。申込者、後継者のどちらが新機構団信に加入するかは、以下の点を十分に考慮して判断するようにしてください。

例えば70歳の親が新機構団信に加入した場合、保障が受けられるのは一般的な団信と同様に10年間だけであり、それ以降に親または子に万が一のことがあっても、保障されません。保障期間を長くしたい場合は、一般的には親よりも子が加入したほうが良いと言えるでしょう。

また、子が新機構団信に加入し、親は加入していない場合も一般的な団信と同様に、親が死亡しても残債の返済義務はなくならず、子が返済しなくてはなりません。

そして親か子のどちらかが病気になった、保険料が支払えなくなったなど、いかなる理由があったとしても新機構団信の加入者の変更はできないことも考慮しておく必要があります。

フラット35の親子リレーローンにはこうした特徴があるため、他の親子リレーローンの審査には通らなかった人も利用できる可能性があります。

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03親子リレー返済のメリットとデメリット

フラット35の親子リレーローン(親子リレー返済)のメリットとデメリットをまとめると、次のようになります。

親子リレー返済のメリット

既に書いたメリットのほかにも、親子リレー返済には以下のようなメリットがあります。

借入期間を長く、借入金額を大きくできる可能性が大きい

親子リレー返済では、他の親子リレーローンと同様に、親と子が別々にローンを組むよりも、借入期間を長く、借入金額を大きくできる可能性が大きくなります。

保証料や手数料も1本分しかかからない

親と子が別々にローンを組むと、それぞれのローンに保証料や手数料がかかってしまいますが、他の親子リレーローと同様に、ローンの本数は1本で済むので、保証料や手数料も1本分しかかかりません。

親と子それぞれが住宅ローン控除を受けられる

これも他の親子リレーローンと同様に、親と子それぞれの負担分に応じて住宅ローン控除を受けることができます。

親子リレー返済のデメリット

親子リレー返済には他の親子リレーローンと同様のデメリットもあります。

他のローンを組みづらくなる

住宅ローンのような高額なローン契約の残債が残っていると、ローンの審査が通りにくくなることがあります。特に子の世代は教育ローンやマイカーローンの審査に影響が及ぶ可能性があることを考慮しておく必要があります。

相続で問題になるおそれがある

親子リレー返済制度を利用して購入した住宅は、親と子それぞれの返済割合に応じて持ち分を決めるのが一般的で、親の持ち分に関しては親の死後に相続の対象となります。ローンの後継者である子に兄弟姉妹がいる場合は、親の持ち分の相続についてもめ事が起こるおそれがあります。もめ事にならないように、事前に家族全員で話し合い、親子リレー返済制度を使って住宅を購入することを兄弟姉妹にも周知し、納得してもらうようにしましょう。

「返済期間を延ばしたい」という親世代のニーズと、「借入金額を増やしたい」という子世代のニーズを同時に満たす方法としてメリットが大きいフラット35の親子リレー返済ですが、その一方で他のローンが組みづらくなる、相続で問題になるおそれがあるなどのデメリットがあることも指摘されています。親子リレー返済制度を利用する場合は、当事者である親と子はもちろん家族全員でよく話し合い、メリット・デメリットを比較検討した上で判断するようにしてください。

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04フラット35のスゴいポイント:親子リレーローン

  • 子や孫だけでなく、その配偶者もローン後継者になれる
  • ローン申込者本人とローン後継者は同居する必要がない
  • 団信への加入が任意である

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