
円高局面、住宅ローン金利はどうなる?今知っておきたいポイントを整理

2024年に一時1ドル=160円をつけた為替相場は、2025年4月22日時点で一時139円台に突入するなど、2025年に入ってから急激に円高が進んでいます。為替は物価や景気、金利政策とも深く関係しているため、値動きが激しくなることにより、住宅ローン金利にも影響が及ぶ点にも注意が必要です。 特に、これから住宅ローンの借り入れをしようと考えている人の中には、「将来的な総返済額がどうなるか」や「借り入れをするタイミングはいつがいいか」などで悩んでいる人もいるのではないでしょうか。 そこで、この記事では2025年5月時点で円高が進行している背景を整理しながら、為替が住宅ローン金利に与える影響やこれから住宅ローンの借り入れをする人が押さえておきたいポイントについて解説していきます。

01円高が加速中!いま何が起きている?
2025年1月1日時点で150円台後半だったドル円相場は、2025年5月時点では140円台で推移しています。半年に満たない期間で10円ほど円高が進行しましたが、なぜそれまで円安傾向だったドル円相場が円高傾向に変わったのでしょうか。まずは円高が加速している背景について解説します。
日米の金利差が縮小
米ドル円に限らず、為替相場は基本的に金利差の影響を強く受けます。簡単にいうと、金利が高い国の通貨は持っているだけで多くの利息がつくため、人気が出やすく通貨高になりやすいです。
2024年初頭までは日本の金利が低い一方で、アメリカの金利は高く、ドルが人気で円安が進んでいました。しかし、2024年3月、日本ではそれまで長年続けられていたマイナス金利政策を解除し、その後利上げ傾向が続いています。
一方、アメリカは一時、消費者物価指数が前年比+8.6%になるなど記録的なインフレが続いたため金利を引き上げていましたが、現在はそれも落ち着いており、2024年後半以降、アメリカでは利下げの可能性が意識され始め、2025年には利下げに向けた動きが本格化しつつあります。
このように、アメリカの金利が下がり、日本の金利が上がることで日米間の金利差が縮小したため、相対的に日本円の人気が高まったことが円高の要因の1つです。
さらに、2025年に入り、トランプ大統領がFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長に対して、利下げ圧力を強めているとの報道もあり、市場では円高を後押しする材料として注目されています。
日銀の金融政策の変化
日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、そのあとも利上げ路線を継続しています。直近では2025年1月に政策金利を0.25%から0.5%へ引き上げ、金融緩和からの脱却姿勢を明確にしました。
こうした利上げの背景には、国内の消費者物価指数(CPI)が目標値である2%を安定的に超えてきたため、過度なインフレを抑えることが目的として挙げられます。
その後、2025年4月の金融政策決定会合では、アメリカでトランプ大統領が関税強化を打ち出したことで世界経済の先行きに不透明感が広がったこと、そして国内の成長率や物価見通しがやや下方修正されたことを受けて、政策金利は0.5%のまま据え置かれました。
とはいえ、日銀は今後の経済指標や物価動向を見極めながら、将来的な利上げの可能性を否定しておらず、引き続き金融政策の正常化を探る姿勢を崩していません。このように、日本の金利上昇観測は円の下支え要因となっており、円高圧力を高める背景の一つとなっています。
「安全な通貨」として円買いが加速
近年の円高には、日本円の通貨としての信頼度が国際的に評価されていることも影響しています。
もちろん、米ドルも依然として、世界の基軸通貨として高い信頼を得ています。しかし、今回の事例では当のアメリカが関税引き上げなどの政策を打ち出したことで、市場ではアメリカの通商政策への不透明感が増加しています。その結果、リスク回避の動きが高まり、相対的に安定感のある円を買う動きが強まっているのです。
特に世界経済をけん引する米中2ヶ国による対立への警戒感は根強く、実際にCFTC(米商品先物取引委員会)の直近データでも、円を買う動きが増加傾向にあるなど、投機的な動きも円高圧力を後押ししている状況です。
02円高は住宅ローン金利にどう影響する?
為替相場は日本やアメリカの政治・経済情勢の変化を受けて、2025年になってから円高圧力が強まっています。では、仮に円高が進んだ場合、住宅ローン金利はどのような影響を受けるのでしょうか。
結論からいうと、円高が進んだからといって、住宅ローン金利がすぐに変動することは基本的にないと考えられます。なぜなら、日本の住宅ローンは日本円でお金を借りるため、ドルやユーロなどといった外貨の為替変動の影響を直接受けないからです。ただし、円高は物価の上昇を抑えやすく、景気の悪化につながりやすいという特徴があるため、結果として「低金利を維持すべき」という金融政策の判断につながる可能性があります。
その理由としては、「デフレ圧力が高まりやすい」ことが挙げられます。円高になると日本に輸入する品物が安く手に入るようになるため、物価上昇の動きが鈍くなります。その結果、日銀が経済の好循環を生み出す水準として目標にしている物価上昇率2%を上回りにくくなり、利上げに踏み切りにくい環境となるでしょう。
また、輸出企業にとっては円高になると日本円での儲けが減ってしまうため採算が悪化し、景気が減速する懸念があることも、景気に与える影響が大きいとされる利上げに踏み切りにくい要因となります。
以上のことから、「円高=住宅ローンの金利が下がる」という直接的な関係ではないものの、「円高でデフレ圧力が強まった結果、低金利が長引く可能性がある」という間接的な影響を及ぼす可能性が高いといえます。
03これから住宅ローンを借り入れする人はどう動くべき?
現在のように円高が進んで金利が低く抑えられたままの局面は、住宅ローンを借りる側にとってはチャンスです。仮にアメリカの関税政策によって日本の物価上昇圧力が弱まった場合には、日銀も政策金利の引き上げに慎重になるため、今の低金利環境がしばらく続くことが考えられます。そのため、政策金利の大きな影響を受ける変動金利の住宅ローンを選ぶ人にとっては、短期的には金利面で有利に借りられるチャンスです。
ただし、変動金利を選ぶときは、必ず将来の金利上昇リスクを頭に入れておくことが大切です。短期的に低金利環境が続いたとしても、再び為替が円安方向に動いたり、日本の消費者物価指数が上昇したりした場合には日銀が金融政策を見直して住宅ローン金利上昇に転じるかもしれません。例えば、アメリカでは大統領選挙が4年ごと、中間選挙が2年ごとに行われるため、政権交代などで短期間に金融政策が変わる可能性にも注意が必要です。
住宅ローンの借り入れは長期間に及ぶため、目先の政策や金利に一喜一憂するのではなく、長期的な視点で資金計画を立てましょう。特に変動金利を選ぶときは将来の金利上昇リスクに備えて、返済余力をキープしておくことが重要です。これから住宅ローンを借りる人は、将来的な金利の不確実性を踏まえ、借り入れ前に住宅ローンシミュレーターなどで無理のない返済額を見極めておくことをおすすめします。
04住宅ローンを検討中の方へ!まずは住宅ローンのシミュレーターで無理のない返済計画を立てよう
住宅ローンを組む際は将来の金利変動やライフイベントを見越した無理のない返済計画を立てることが大切です。毎月の収支を確認したうえで、車の購入や子育て費用など、一時的な出費を計算しておくと余裕を持った返済計画を立てやすくなるでしょう。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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