住宅ローンを組むときにハードルとなるのが、金融機関による「審査」です。購入する物件を決めて、「いざ住宅ローンを!」と手続きに進んだのに、思わぬ理由で審査に落ちてしまうこともあります。このページでは重要な審査基準をファイナンシャルプランナーの井上光章先生が解説します。また、審査落ち事例も紹介しているので、事前にチェックしておきましょう。

1意外にある!だけど理由がわからない住宅ローンの審査落ち

住宅ローン審査に落ちるのはそれほど珍しいことではありません。当サイトが独自に行ったアンケートでは、初めての住宅ローンで事前審査を受けたときに、すべてもしくは一部の金融機関で審査落ちをしてしまった人は全体の14.3%も存在しました。10人にひとり以上が、すくなくともひとつの金融機関から「融資はできない」と判断されているのです。

本審査では、すべてもしくは一部の金融機関で審査落ちした人が6.9%存在しています。たとえ事前審査を通過し、本審査に進んだとしても、何らかの理由で審査落ちをする可能性は否定できないと覚えておきましょう。

初めて住宅ローンでの事前審査・本審査の結果

しかし通常は、審査に落ちてもその理由を金融機関は教えてくれません。たとえ小さな問題だったとしても、個人の力では有効な対策を打てないケースもあります。そこで大切なのが、事前に住宅ローン審査の審査基準を知っておくこと。ここでは、審査基準の中でも特に重要と考えられている3つの要素について解説します。

【重要審査基準1】収入

十分な収入がなければ住宅ローンの返済は不可能。収入は住宅ローン審査における最重要事項です。注意が必要なのは金額だけでなく、その安定性や継続性も審査の対象であるということ。経営者や個人事業主の場合、収入の安定性という面では、一般の会社員(正社員)や公務員などと比べると不利になります。

継続性の観点では、一般的な会社員や公務員の場合、勤続年数がチェックポイントとなります。審査基準は金融機関によって基準はさまざまで、1年以上の在籍が必要というところもあれば、3ヶ月や1ヶ月でも問題ないとする金融機関もあります。

基準は金融機関によって異なるので、会社員(正社員)以外の人や勤続年数が短い人は、自分が基準を満たすかどうか各金融機関のホームページで調べたり、コールセンターに電話で問い合わせてみたりして、事前に確認しておくといいでしょう。

【重要審査基準2】収入と借入金額のバランス

収入と借入金額とのバランスもチェックされます。各金融機関で審査金利(審査上の金利で実際の金利とは異なることが多い)や、融資可能とする返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)が決められており、その数値を基に借入可能額が決められます。

例えば年収400万円、35年返済の場合にどれだけの金額が借りられるかは、次のように異なります。

年収400万円、返済期間35年の場合の借入可能額の例

X銀行 Y銀行 Z銀行
審査金利 3.50% 3.10% 1.28%
返済負担率 40% 35% 35%
借入可能額 3226万円 2988万円 3948万円

※架空の金融機関、審査金利、返済負担率です。
※借入可能額の計算では住宅ローン以外の借入も考慮されるので、自動車ローンやそのほかの借入がある場合は上記よりも借入可能額は小さくなります。

この場合、希望額が3000万円だとするとY銀行では希望額に届きませんが、X銀行、Z銀行なら借入れが可能です。各金融機関の審査金利や返済負担率の基準は、残念ながら金融機関のホームページなどでは公開されていません。自分の希望する金額が借入可能かどうか、コールセンターでも教えてくれないことも多いので、不安な場合は金融機関の店舗で相談する必要があります。

【重要審査基準3】個人信用情報

個人信用情報とは、クレジットカードのリボ払いやカードローン、自動車ローンなどの各種債務の返済に関する情報のことです。住宅ローン審査の際には、個人信用情報に延滞や債務整理などの履歴がないかをチェックされます。この個人信用情報に長期延滞や債務整理などの履歴があり、いわゆる「ブラック」状態だと審査に通ることは困難ですし、「ブラック」ではなくても、支払いの延滞が直近に複数回ある場合(例えば直近1年で4回以上の延滞など)には審査が厳しくなります。

井上光章先生

<ワンポイントアドバイス>
経験上、特に個人信用情報が原因で住宅ローン審査に落ちるケースが多いように思います。年収などの情報は自分でも把握できますが、個人信用情報に関しては「大丈夫と思っていたけれど、じつは問題ありだった」というケースが意外と多いからです。できれば、住宅ローン審査を申し込む前に、自分の個人信用情報がどうなっているのかをチェックしたほうがいいでしょう。個人信用情報はCIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターの3つの機関で確認できます(情報開示には手数料が必要です)。

2要チェック!自覚がないのに住宅ローン審査に落ちる理由

「どうして俺が!?」「なんで私が?」、そんな風に自覚がないままに住宅ローン審査に落ちる人は、個人信用情報が審査落ちの理由になっていることが多いようです。実際にあったエピソードを紹介しましょう。皆さん心当たりはありませんか?

【Aさんの場合】1ヶ月遅れのカード支払いに延滞の認識がなかった……

収入にも借入金額にも問題がないと自信を持っていたAさん。いざ、住宅ローンの審査を受けたところ、あえなく審査落ち。問題は独身時代のクレジットカードに対する支払い方でした。

Aさんは、クレジットカードの支払いを毎月の支払い日にせず、カード会社から督促が来てから支払うということを1年以上続けていたそう。Aさんいわく、「カード会社からの連絡が来てすぐに支払っていたので延滞ではないと思っていた」とのことでしたが、指定された期日に支払わなければれっきとした延滞。住宅ローン審査では問題視されたようです。

個人信用情報を確認したところ、いわゆる「ブラック」状態ではなかったので、その後の約1年間、きちんと返済し続けた実績を作ってから、住宅購入に再チャレンジすることになりました。

【Bさんの場合】きちんと支払っていたはずの携帯電話料金が問題!?落とし穴は……

携帯電話やタブレット端末の本体料金を分割して毎月の電話料金とあわせて支払う場合、本体料金の分割支払いは割賦契約となるため、個人信用情報機関にその情報が登録されます。毎月きちんと支払いをすれば問題ありませんが、延滞があると住宅ローン審査で不利になります。

住宅ローンと携帯電話料金の関係は比較的有名で、注意している人も多いようですが、Bさんの場合は思わぬ落とし穴が。一人暮らし時代に住所変更の申請をせずに引っ越したことがあり、携帯電話会社からの督促状が届かない状態になって、未払いが続いたことがあったのです。

住宅ローンの審査を受け、落ちて初めて自分が「ブラック」状態になっていることがわかったBさん。結局、本人はローンを組むことができず、共働きの妻とその親の親子リレーでローンを借りることになりました。

【Cさんの場合】バレるとまずい!妻には内緒のカードローン

800万円を超える年収があり、借入金額にも問題がなさそうなCさん。しかし、住宅ローン相談会でお会いしたところどうにも煮え切らない印象。後日、本人からのメールで秘密を打ち明けられました。実はカードローンの残債が200万円ほどあったのです。しかも、会社の付き合いで必要になったもので、妻には内緒の借金でした。

住宅ローンの借入金額を下げれば問題はなさそうだったのですが、妻やその両親の手前それはできないとのこと。結果としては、土地探しをしている間に自分の父親から贈与を受けてそのお金でカードローンを完済。なんとか、妻とその両親にはバレることなく、希望通りの金額で住宅ローン審査を通過することができました。

【Dさんの場合】土地の代金は借りられたのに住居を立てるためのローン審査でNG

注文住宅を建てる予定だったDさんは、無事に住宅ローン審査を通過して土地を購入しました。その3ヶ月後、今度は住居を建設するための住宅ローンの審査を受けたところ、なんと審査落ちしてしまいました。たった3ヶ月の間に何があったというのでしょうか。

話を聞いてみたところ、土地購入のための住宅ローン融資の実行後に、不動産投資用ローンを使って投資用ワンルームマンションを購入したとのこと。一般的な金融機関では、収入と借入金額のバランスをチェックする際に、自動車ローンやカードローン、不動産投資用ローンなど、他のローンでの借入金額もあわせて計算します。これがあだになったのです。

当時、フラット35では、投資用マンションの購入を目的とした借入れを計算に含めずに審査をしてくれました。Dさんにはこのことを含めてフラット35を紹介。無事に審査を通過することができ、土地だけがポツンとあるという最悪の状況は回避できました。なお、フラット35のこのルールも2020年4月以降は変更され、一般的な金融機関と同じように扱われるので、今後はこの方法は通用しなくなります。

3いざ購入!のときに困らないために早めの事前審査を

住宅ローン審査がどのように行われるのかを知っておけば、審査落ちを必要以上に恐れる必要はありません。信用情報に不安がある人は、信用情報機関でその確認をすることから始めてください。そのほか、収入と借入金額のバランスなどに不安がある人は、金融機関や住宅ローンの専門家に相談するのがいいでしょう。

また、早めに事前審査を申し込んでおくこともおすすめします。ちなみに住宅ローンの審査は、事前審査(仮審査)、本審査と二段階になっているのが一般的です。事前審査では通常、個人信用情報のチェック、収入と借入金額のバランスのチェックなど、簡易的な審査が行われます。通常は1~5営業日程度で結果が出ます。記入・入力する項目も少なくて済むので、まずは事前審査を早めに受けておくと安心できるでしょう。

ただし、金融機関によっては事前審査でも本審査並みに詳しく審査をするところがあり、時間がかかることもあります。また、ネット系銀行のように、事前審査はすぐに(即日または翌日に)結果が出ても、本審査に時間がかかったり、本審査通過後、融資実行まで時間がかかったりということもあります。

井上光章先生

<ワンポイントアドバイス>
「A銀行の審査には落ちたが、B銀行の審査には通った」ということもよくあります。金融機関を1社に絞るのではなく、2、3社ほどに審査を申し込むほうが安全です。また、売買代金の決済日(お金を振り込まなければならない日)が決まっている場合、「C銀行だと手続きに時間がかかって間に合わないが、審査や手続きがスピーディなD銀行なら間に合う」というケースもあります。売買代金の決済日まで時間がないときには、特に複数社への申込みが必須といえます。

住宅ローン審査がどのような基準で実施されるのかを理解し、ネックになりやすいポイントを把握しておけば、「物件を決めてあとは購入するだけ」という段階で、審査落ちに苦しむことは少なくなります。審査は複数の銀行に申し込み、特に事前審査を早めに行っておくということを忘れないようにしましょう。

<調査概要>
住宅ローンに関する調査
・調査手法:Webアンケート
・調査期間:2020年2月10日(月)~2020年2月11日(火)
・有効回答数:780(オーバーサンプル含む)

井上光章先生

井上光章

アルトゥルFP事務所代表、1級FP技能士、CFP®

プロフィール

住宅ローンコンサルティング専門のファイナンシャル・プランナー。住宅工務店で注文住宅を建てる人向けの住宅ローンコンサルティングをメインに年間50件ほどの有料コンサルティングを行う。住宅ローンの審査や間違いやすいポイントも熟知し、失敗しない住宅ローン選びをサポート。住宅ローンに関する雑誌やコラムの執筆、セミナーも多数行う。著書に『マイホームで年金を作る』(共著、評言社)がある。