住宅ローンの借入可能額はどんな基準や計算方法で決まるの?

2020.12.04 2019.10.23 15

住宅ローンは借りたいだけ借りられるわけではありません。いくら借りられて、いくらの物件を購入できるのか、疑問を持っている方もいるでしょう。物件購入の検討をする前に、住宅ローンをいくらまで利用できるかを知っておくべきです。そこで今回は、住宅ローンの借入額の上限は、いったいどのような基準で決まるのかを解説します。 ※実際に住宅ローンのシミュレーションをしてみたいという方は借入可能額シミュレーターをご利用ください。

01住宅ローンの借入可能額はどうやって決まる?

住宅ローンを利用する際、希望する額の融資を必ずしも受けられるわけではありません。「理想の物件を見つけたけど、事前審査で借入希望額から減額されてしまった」というケースもあるでしょう。そうなってしまったら、物件の予算を下げて、再度物件探しをしなければいけません。そのような手間を省くためにも、事前にどのくらいのお金を借り入れられるのかを大まかに把握しておきましょう。

返済負担率や融資率など、金融機関が定める指標

金融機関が借入可能額を定めるときに使われる指標は複数あります。それぞれの概要を説明します。

  1. 返済負担率
  2. 融資率
  3. 借入限度額
  4. 安定して支払いができるか
  5. 担保価値

(1)返済負担率

返済負担率とは「年収に占める年間返済額の割合」のことです。住宅ローンの審査を行う際に金融機関が重視する項目のひとつで、借入希望額がこの返済負担率を超えると、返済負担が大きいと判断されて減額されたり、審査から落とされたりします。なお、ここでの年収は手取りではなく、額面となります。

返済負担率の計算

返済負担率の計算
返済負担率の計算

例えばフラット35では、年収400万円未満の場合は返済負担率30%以下、年収400万円以上の場合は返済負担率35%以下と定められています。

仮に年収300万円の人がフラット35を利用すると、返済負担率は30%以下ということになります。計算すると「300万円×30%=90万円」となり、これを12カ月で割ると「90万円÷12カ月=7万5000円」で、7万5000円が年収300万円の人の毎月の返済額の上限です。

年収が600万円の人は返済負担率が35%以下になります。同じように計算すると、「600万円×35%=210万円」となり、これを12カ月で割ると「210万円÷12カ月=17万5000円」で、17万5000円が年収600万円の人の毎月の返済額の上限額です。

フラット35の住宅ローン返済イメージ

フラット35の住宅ローン返済イメージ
フラット35の住宅ローン返済イメージ

また、民間銀行の住宅ローンの返済負担率も金融機関ごとにさまざまで、その内のほとんどが以下のように細分化されています。

民間銀行の住宅ローンの返済負担率

年収 返済負担率
100万円以上300万円未満 20%以下
300万円以上450万円未満 30%以下
450万円以上600万円未満 35%以下
600万円以上 40%以下

フラット35の住宅ローンの返済負担率

年収 返済負担率
400万円未満 30%以下
400万円以上 35%以下

※出典:住宅金融支援機構『【フラット35】ご利用条件』https://www.flat35.com/loan/flat35/conditions.html(2020年5月15日)

それでは、フラット35と民間銀行の住宅ローンの返済負担率の基準を比べてみましょう。

年収430万円の場合

フラット35では年収400万円以上の返済負担率の基準は35%以下となります。民間銀行の住宅ローンは年収300~450万円の場合30%以下となっており、返済負担率の基準がフラット35と比べて厳しくなっているのが分かります。

年収600万円の場合

フラット35は年収400万円以上の基準が一律35%以下となっているため年収600万円でも基準は35%以下となりますが、民間銀行の住宅ローンでは年収が600万円以上の場合、基準が40%以下となります。つまり年収600万円以上の場合では民間銀行の住宅ローンのほうが基準は緩和されていることになります。

(2)融資率

融資率とは「購入する住宅価格に対する借入金の割合」のこと。簡単に言い換えると、物件価格に対して、借り入れで賄う部分の割合です。例えば4000万円の物件購入を検討しているとします。頭金を700万円用意していたら、借り入れが必要な金額は3300万円となります。「3300万円(借入額)÷4000万円(物件価格)=0.825」となり、この場合の融資率は82.5%ということになります。

融資率の計算

融資率の計算
融資率の計算

フラット35では、この融資率が9割を超えてしまうと、金利が上がってしまいます。反対に融資率が9割以下だと金利が安くなります。最近では住宅ローンも低金利が続き、比較的借り入れしやすくなっています。ただし、住宅ローンの支払いは長期間にわたります。長い間返済していく中で、金利がたとえ安くても、総返済額になると大きな差が出ます。実際にどのくらいの差が出るものなのか検証してみましょう。

<計算例>

※フラット35を利用して借入額 3000万円、返済期間は35年間としています。2020年5月時点でフラット35を取り扱っている金融機関が提供する金利の最頻値で比べています。

融資率 頭金 金利 総返済額
9割超 無し 1.560% 3896万円
9割以下 500万円 1.300% 3114万円

計算によると総支払額に782万円もの差が出ました。また、金利が低い住宅ローンを利用できれば、同じ毎月の返済額でも借入額は大きくなるので、購入できる物件の選択肢もその分増えます。

(3)借入限度額

借入限度額は、年収や返済負担率などに関係なく定められています。財形住宅融資では4000万円、フラット35では8000万円、一般的な民間銀行の住宅ローンでは1億円と上限額が設定されています。借入限度額は、それぞれの金融機関で独自に定めているもので、最近の民間銀行の住宅ローンでは、1億円以上でも借りられるところも増えています。

借入限度額
借入限度額

(4)安定して支払いができるか

住宅ローンの借入金額を決める上で、安定的にローンを返済し続けることがポイントの一つとなります。勤め先、年収、勤続年数などが考慮され、公務員など安定性のある職業だったり、年収が多かったりすると、借入希望額での住宅ローン審査を有利に運べます。自営業や正社員でもインセンティブ契約の場合、収入が多くても安定性を欠くために減額されるケースもあります。勤め先が官公庁や上場企業の場合、借入金額だけでなく金利も優遇されます。

(5)担保価値

担保価値も借入可能額を決める条件の一つとなります。支払いが滞った際に、しっかりと回収できるかどうか、物件を事前に確認するのです。

住宅ローンの借入可能額は以上のような条件で決められます。特に返済負担率については事前に試算できるので、どのくらいであれば毎月返済していけるか気になる場合には自分で計算してみると良いでしょう。

ただし、住宅ローン以外にも車のローンやカードローンなどがあれば、それらも含めての計算となります。また、それぞれの家庭によって生活費や教育費など、予算の使い道はまったく異なります。しっかりと計算したいという場合には、ファイナンシャルプランナーに相談するのも手でしょう。

担保価値について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

02返済負担率を決める「審査金利」って何?

返済負担率の計算には「審査金利」というものも使われます。審査金利は、住宅ローンの審査の際に利用される金利のことで、住宅ローンを利用する際に実際に適用される金利(適用金利)よりも高く設定されています。この審査金利から年間返済額を算出して、返済負担率を求めます。

年間返済額の計算

年間返済額の計算
年間返済額の計算

返済負担率を計算する時に、金利が実際の適用金利か、あるいは審査金利であるかによって、同じ年収でも借りられる金額が変わってきます。住宅ローンの金利は、返済途中で上昇する可能性があります。その際に返済が滞ってしまわないように、金融機関はリスクヘッジをしているのです。そのために各金融機関では、審査のための金利を設定していることが一般的です。審査金利は各金融機関によって異なりますが、おおよそ3〜4%が相場となっています。

住宅ローンの審査には適用金利ではなく、希望の融資額に対して審査金利を適用して、年間返済額を計算します。その結果が返済負担率の範囲に収まっていれば、住宅ローンの審査に通ることになります。返済負担率の上限は25%前後に設定している金融機関が多いと言われていますが、前述の通り各金融機関や年収により異なります。

03適用金利と審査金利のシミュレーション

では、住宅ローンを利用する際に実際に適用される金利である「適用金利」と、住宅ローンの審査で用いられる金利である「審査金利」での借入可能額について、この2つをシミュレーションしてみましょう。住宅ローンの借入可能額は、「借入可能額=住宅ローンの年間返済可能額(円)÷12カ月÷審査金利での100万円あたりの月返済額(円)×100万円」で求めます。

借入可能額の計算

借入可能額の計算
借入可能額の計算

例えば、年収500万円の人が返済期間35年で借りて、返済負担率の基準を35%で計算した場合を想定します。

適用金利を利用した場合と審査金利を利用した場合の借入可能額

年収(税込) 500万円
返済負担率 35%
年間返済額(上限)※ 175万円(他のローンはなし)
適用金利(年0.5%の場合)での借入可能額(上限) 約5610万円
審査金利(年3.0%の場合)での借入可能額(上限) 約3780万円

※年間返済額の求め方は、「年間返済額の上限額=税込年収×返済負担率−ほかのローンの年間返済額」で計算します。

適用金利では約5610万円の借り入れが可能なのに対して、審査金利で計算すると借入可能額は約3780万円となり、約1830万円の差が出ました。

適用金利と審査金利の差
適用金利と審査金利の差

今回は車のローンなどの他のローンは借り入れをしていない条件で計算しましたが、他に借り入れているものがあれば、それも含めて計算されます。今回のケースで言うと、年間返済額は175万円でしたが、車のローンの年間返済額が50万円あるとしたら、175万円−50万円=125万円となり、年間返済額の上限は125万円となります。つまり、借入可能額もその分減ってしまいます。希望の融資額を組みたい場合は、住宅ローンの審査をする前に、他のローンは完済してしまうほうが良いでしょう。まとまったお金がないという場合は、親に一時的に借りて、後で返すという方法もあります。

他に借り入れているものがある場合

他に借り入れているものがある場合
他に借り入れているものがある場合

希望する毎月の返済額から全体の借入可能額をシミュレーションすることも可能です。リクルートの用意している借入可能額シミュレーターでは、4つの項目を入力することで全体の借入可能額をシミュレーションできます。

04借入可能額と返済可能額を比較する

最後に、金融機関が定める「借入可能額」と無理せず返せる「返済可能額」を比較してみましょう。どのくらいの借り入れが自分には適切なのかを決める際の参考にしてください。

300万〜600万円の年収別比較

ここでは年収300〜600万円の場合での借入可能額と返済可能額をそれぞれ計算します。借入可能額については、最初にご紹介したフラット35で定められている返済負担率の30%を基準として計算していきます。また、返済可能額については、多くの金融機関で上限とされている返済負担率25%で計算していきます。

※金利1%、元利均等返済、返済期間は30年

年収300万円の場合

借入可能額 返済可能額
毎月返済額 7万5000円 6万2500円
借入融資額 約2300万円 約1900万円

年収300万円の場合でシミュレーションした時に、借入可能額と返済可能額を比較してみると、毎月の返済額で約1万円の差となり、借入融資額については約400万円の差が出ました。

年収400万円の場合

借入可能額 返済可能額
毎月返済額 約11万6000円 約8万3000円
借入融資額 約3600万円 約2500万円

年収400万円になると、借入可能額と返済可能額では、毎月の返済額の差は約3万円で、借入融資額の差は約 1100万円にもなります。毎月の返済額で3万円も差が出てくるとなると、その差は大きく感じます。

年収500万円の場合

借入可能額 返済可能額
毎月返済額 約14万5800円 約10万4100円
借入融資額 約4500万円 約3200万円

年収500万円の場合だと、毎月返済額の差は約4万円にもなります。借入融資額については、約 1300万円もの差が開いていて、選べる物件やエリアなど大きく変わってきそうです。

年収600万円の場合

借入可能額 返済可能額
毎月返済額 17万5000円 12万5000円
借入融資額 約5400万円 約3800万円

年収600万円にもなると、その差はさらに開きます。借入可能額と返済可能額の毎月返済額の差は5万円にもなり、生活に大きく影響しそうな金額です。毎月どの程度の生活費や娯楽費などにかけているか、しっかりとシミュレーションしたいところです。

借入融資額については約 1600万円の差となります。借入融資額の差があれば、選ぶ物件の条件にも大きく影響が出てきます。「生活費を少し削ってでも立地にこだわる」「教育費など多く必要になりそうだから希望する物件の条件を下げる」など、自分たちがどのような生活を送りたいのか、どんな環境に住みたいのか、しっかりと検討したいところです。

「借りられる金額」と「無理せず返せる金額」の違いに注意

「(金融機関から)借りられる金額」と「無理せず返せる金額」は違うことを覚えておきましょう。同じ年収だとしても、それぞれ人によって収入の使い道は異なります。例えば教育費にしても、子どもが理系に進むか文系に進むかで教育費が変わります。私立か公立かでも何千万もの差が出てきます。ですから「年収が〇〇万円だから、〇〇万円なら返せる」ということは一概には言えません。借りられる金額ばかりに目がいっては、あとで生活が苦しくなってしまうこともあります。また、教育費や生活費などの支出以外にも、転職などによる収入の変化や、最近では残業を禁止している企業もあり、残業代が出なくなったことで収入が減ってしまうケースもあります。将来のこともしっかりと見据えて資金計画を立てることが大切です。

下澤一人

監修:下澤一人

宅地建物取引士宅地建物取引士

プロフィール

出版社勤務後、宅地建物取引士の資格を取得し、不動産専門新聞記者、不動産会社勤務を経て現在、編集者・ライターとして活動中。

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