どちらが有利?「フラット35」、「買取型」と「保証型」の違いは?

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最長35年の全期間固定型の住宅ローンとして人気の「フラット35」には、「買取型」と「保証型」の2つのタイプがあるのをご存じですか?今回は「買取型」と「保証型」の違いを確認するとともに、どちらを選んだ方がお得なのか見ていきましょう。

01フラット35の「買取型」と「保証型」、それぞれどんな特徴がある?

フラット35は、独立行政法人住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供している最長35年の全期間固定型の住宅ローンです。

フラット35には、「買取型」「保証型」があり、一般的にフラット35と呼ばれる商品は、買取型のフラット35のことで、「保証型」の場合は買取型と区別するためにフラット35(保証型)と表記されます。

フラット35(買取型)とは

通常、短期での資金調達を行っている民間金融機関にとって、回収に時間がかかる全期間固定型の住宅ローンは取り扱いが難しいとされています。住宅金融支援機構では、住宅ローン契約締結後に金融機関から住宅ローンを買い取り、それを担保とする債券を発行、機関投資家に販売することによって資金を調達する仕組みにより、民間金融機関による全期間固定型の住宅ローンの提供を可能にしています。この仕組みで提供される住宅ローンがフラット35(買取型)です。

フラット35(保証型)とは

一方、金融機関が提供する住宅ローンに住宅金融支援機構が保険をかけ、利用者がローンを返済できなくなった場合に、住宅金融支援機構が金融機関に保険金を支払うという仕組みで提供されるのが、フラット35(保証型)です。

買取型・保証型ともに申し込みや審査、契約などの手続きは各金融機関で行いますが、買取型は全国321の金融機関で取り扱われているのに対し、保証型の新規受け付けを取り扱っているのは住信SBIネット銀行や広島銀行、クレディセゾン、ARUHIなど8金融機関のみです(2021年4月1日現在)。

取り扱い金融機関が少ないこともあって、申込件数は買収型が保証型を大きく上回っています。しかし、近年、保証型の申込件数は増加傾向にあり、住宅金融支援機構の発表(※1)によれば、2019年度分フラット35全体の申込件数は前年度比106.4%でしたが、保証型の申込件数は前年比136.4%と大きく増加しており、フラット35申込件数全体に占める割合も11.6%(2018年)から14.8%(2019年)に伸びています。この要因として同機構では、取り扱い金融機関が増えたこと、新規参入以外の取り扱い金融機関でも申込件数が増えたためと分析しています。

※1 出典:独立行政法人住宅金融支援機構・プレスリリース(2020年5月29日)

なお、利用するには買取型、保証型ともに、住宅金融支援機構が定める以下の要件を満たす必要があります。

  • 申込時に70歳未満であること(親子リレー返済の場合を除く)
  • 日本国籍を有すること(外国籍の場合は永住許可を得ていること、もしくは特別永住者であること)
  • 総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)が以下の範囲であること。
  • 年収400万円未満の場合:30%以下
  • 年収400万円以上の場合:35%以下
  • 申込者本人またはその親族が住む新築住宅の建築・取得資金または中古住宅の取得資金であること
  • 住宅金融支援機構が定める「技術基準」を満たす住宅であること
  • 住宅の床面積が以下の基準を満たしていること
    • 一戸建て住宅:70㎡以上
    • マンション:30㎡以上

「買取型」と「保証型」の違い

買取型と保証型とでは、上記のとおり、住宅金融支援機構が金融機関を支援する仕組み自体が異なります。では、利用者にとっては、どのような違いがあるのでしょうか?下記にまとめてみました。

ローンの貸し手

フラット35(買取型) 金融機関(ただし、住宅ローンは融資後に住宅金融支援機構が買い取る)
フラット35(保証型) 金融機関

借入期間

フラット35(買取型) 15年以上35年以内(1年単位)。ただし、完済時の年齢が80歳までとなるまでの年数と比較していずれか短い年数。また、申込み本人または連帯債務者が満60歳以上の場合、返済期間は10年以上。なお、年収の50%を超えて合算した収入合算者がいる場合には、申込み本人と収入合算者のうち、高い方の年齢が基準となる。親子リレー返済を利用する場合は、収入合算者となるか否かにかかわらず、後継者の年齢を基準とする
フラット35(保証型) 取り扱い金融機関によって異なる

借入額

フラット35(買取型) 100万~8000万円で建設費または購入価額(非住宅部分に関するものは除く)の90%以内
フラット35(保証型) 8000万円が上限。建設費または購入価額の9割または10割まで。上限は取り扱い金融機関によって異なる

団体信用生命保険の加入

フラット35(買取型) 任意。新機構団体信用生命保険制度(※2)を利用できる
フラット35(保証型) 任意。ただし、各金融機関が指定する団体信用生命保険への加入が必須の場合がある。新機構団体信用生命保険制度は利用できない

※2 加入者が死亡・所定の身体障害状態になった場合に、住宅の持ち分や返済割合などにかかわらず、以後のフラット35の返済が不要となる生命保険

担保

フラット35(買取型) 借り入れ対象の住宅とその敷地に住宅金融支援機構を抵当権者とする、第1順位の抵当権が設定される
フラット35(保証型) 借り入れ対象の住宅とその敷地に金融機関を抵当権者とする、第1順位の抵当権が設定される

繰り上げ返済手数料

フラット35(買取型) 利用者の負担はない
フラット35(保証型) 取り扱い金融機関によって異なる

金利

適用される金利については次のような違いがあります。

フラット35(買取型) 金融機関によって異なる(金融機関が設定できる。ただし、住宅金融支援機構が毎月定める基準がある)。

<各金融機関が設定している金利の範囲>
・返済期間15~20年:年1.240%~年2.040%(2021年4月現在)
・返済期間21~35年:年1.370%~年2.170%(2021年4月現在)
フラット35(保証型) 金融機関によって異なる(金融機関が自由に設定できる)。
一般的には買取型よりも金利が低く設定されている。

フラット35は全期間固定型の住宅ローンであり、市場金利の変動リスクを受けない分、適用される金利が変動型のローンに比べて高めに設定されています。

そうした中で、フラット35(保証型)は金融機関にとって商品設計の自由度が高いため、自己資金の基準や年収比の返済割合などを買取型に比べて厳しくすることで、金利が低く設定される商品も増えています。現状では、借り入れ条件が同じ買取型と比較すると金利は0.05~0.33%程度低くなっています。頭金をある程度用意できる、あるいは月々の返済に余裕をもって対応できる人にとっては、全期間固定型のメリットと金利引き下げという恩恵を受けることができる商品と言えるでしょう。

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02取り扱い金融機関による「つなぎ融資」の有無に注意

ここまで見て来たとおり、フラット35(保証型)は、買取型に比べて金融機関の裁量で決定される要素が多く、金利や借入期間、返済方法などの要件は金融機関によって異なります。

どの金融機関を選ぶかには、万人に共通する「正解」はなく、結局は個々人が自己判断することになりますが、注文住宅の新築を予定している人は、その金融機関が「つなぎ融資」を目的としたローンを扱っているかどうかを必ず確認しておきましょう。

つなぎ融資とは?

原則として、住宅ローンの融資は購入した建物の引き渡し日に行われます。したがって、注文住宅を新築する場合は、建物が完成してハウスメーカーや工務店から施主(ローンの利用者)に引き渡されたタイミングで融資が実行されることになります。しかし、注文住宅の場合、工事の着工時に支払う着工金、上棟時に支払う中間金、竣工時に支払う竣工金など、完成前に不動産業者に支払わねばならない費用があり、総額が新築費用の半額以上になることも珍しくありません。「つなぎ融資」は、こうした完成前に必要な費用を一時的に建て替えるために金融機関が利用者に行う融資のこと。つなぎ融資は、文字通りあくまでも「つなぎ」のための融資なので、建物の完成後に住宅ローンの融資が実行されると、その資金ですぐに返済する契約になっています。

フラット35はあくまでも住宅の新築や取得を対象とする住宅ローンです。そのためつなぎ融資の制度は用意されていません。つまり、フラット35の融資は建物の完成前に行われることはなく、あくまでも完成後に行われるものです。しかし、フラット35を扱っている金融機関の中には、フラット35の利用者を対象に別途、つなぎ融資のためのローンを用意しているところがあります。

クレディセゾン「つなぎローン」

クレディセゾンと契約するフラット35(買取型・保証型)の借入内定金額以内で、住宅の完成までに必要な資金または中古住宅購入後のリフォームに必要な資金の融資が受けられるローンです。

  • 金利:年2.475%(2021年4月現在)
  • 融資形態:最大4回までの分割可
  • 融資金額:500万円以上8000万円以下(フラット35の承認金額以内)
  • 事務手数料:11万円(税込)フラット35の融資実行金から差し引き
  • 返済方法:フラット35の融資実行金から差し引くことによる一括返済

参考:https://finance.saisoncard.co.jp/flat35/product/bridgeloan/

ARUHI「フラットつなぎ」

ARUHIと契約するフラット35(買取型・保証型)の借入承認金額以内で、住宅完成までに必要な資金または中古住宅購入後のリフォームに必要な資金の融資が受けられるローンです。

  • 金利(2021年4月)
    • Aタイプ:年3.475%
    • Bタイプ:年1.350%
  • 融資形態:最大4回までの分割可
  • 融資金額:100万円以上8000万円以下(フラット35の承認金額以内)
  • 事務手数料
    • Aタイプ 11万円(消費税込み)
    • Bタイプ 5万5000円+融資金額×0.803%(消費税込み)
  • 返済方法:フラット35の融資実行金から差し引くことによる一括返済

参考:https://www.aruhi-corp.co.jp/product/flat_tsunagi/

なお、フラット35(保証型)を扱っている金融機関のすべてが、ローン利用者に対してつなぎ融資を提供しているわけではありません。たとえば、低金利でフラット35(保証型)を提供していることで知られる住信SBIネット銀行では、つなぎ融資を行っていません。

こういった金融機関ごとの特徴や相違点をすべて自分で調べ、比較検討するのは容易ではありません。自分で情報収集するのも大切ですが、各金融機関の担当者に直接話を聞く、あるいはファイナンシャル・プランナーに相談して、第三者的な立場からのアドバイスを受けるなど、専門家の力を借りることをお勧めします。

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03フラット35のスゴいポイント:買取型と保証型

  • 一般的に保証型は買取型よりも金利が低く設定
  • 保証型の申込件数は増加傾向に

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