70歳を超えても住宅ローンは組める? 高齢者向けの住宅ローンなどを紹介

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一般的にマイホームの購入というと、結婚や出産を機に考える人が多いでしょう。しかし、マイホームに求める役割や考え方は、その時々の状況によって変化するものです。例えば、「子どもが独立したので、夫婦2人で暮らせる家が欲しい」「定年退職後、故郷に戻ってから家を建てたい」といったように、子育てや仕事を終え、第二の人生の始まりともいえる70代でマイホーム購入を検討する事例が挙げられます。とはいうものの、高齢でのマイホーム購入にあたり、「住宅ローンが組めるのか」といった心配をする人も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、70歳を超えてマイホームを手に入れたい人に向け、住宅ローンの利用可否から高齢者に最適な住宅ローンについてまで解説します。この記事を読めば、高齢者であっても無理のない住宅ローンの利用ができるようになるでしょう。

01高齢者でも住宅ローンは利用できる?

結論からいうと、70歳を超える高齢者であっても、条件次第で住宅ローンを利用できます。ただしほとんどの金融機関では、「借入時年齢」と「完済時年齢」に制限を設けているため、利用するためにはその条件を満たしていなければいけません。まずは、高齢者が住宅ローンを利用する際にチェックするべき項目について解説します。

借入時は70歳、完済時は80歳までなら可能性あり

まず前提として、住宅ローンの利用にあたっては若者や高齢者といった縛りはありません。ただし、金融機関側も資金を返済してもらわなければ困るので、ほとんどの金融機関で住宅ローンの利用条件に「借入時年齢」と「完済時年齢」が設定されています。住宅ローンの借入時年齢は「満65歳未満」が主流でしたが、平均寿命や定年退職の高年齢化といった影響を受けて、近年では「満70歳未満」または「70歳の誕生日まで」などに引き上げる金融機関が増えてきました。

一方、完済時年齢については主に「満80歳未満」となっています。ネットバンクのソニー銀行のように「満85歳未満(ワイド団信の場合は満81歳未満)」に設定(2022年2月現在)しているところもありますが、70歳で完済時年齢満80歳未満の住宅ローンを利用する場合、10年間(80歳-70歳)で住宅ローンを完済する必要があります。

仮に返済期間10年で1200万円の借り入れをするのであれば、返済利息を含めない単純計算でも年間120万円(月額10万円)の返済が必要になり、家計の負担になるケースも多いでしょう。そこで、高齢者におすすめのローンとして挙げられるのが、「リバースモーゲージ」です。

リバースモーゲージとは、マイホームを担保にする資金調達方法で、自らの持ち家に継続して住み続けながら、契約者が死亡したときには担保となっていた不動産を処分して借入金を返済する仕組みのローンです。生存中は利息分の支払いだけを負担すればよく、主な収入源が年金のみとなる高齢者にとってはメリットといえるでしょう。リバースモーゲージの詳細については、後述の「リバースモーゲージを活用する」で詳しく紹介します。

金融機関別の住宅ローン年齢制限

一般的な住宅ローンには完済時年齢が設定されているため、70歳以上で利用するには毎月の返済額が高くなり、現実的ではないという人もいるでしょう。ただしまとまった資金がある人なら、それを頭金にあてて毎月の返済額を抑えられる場合があります。そこで、退職金などの手持ち資金があり、通常の住宅ローンの利用を考えている人に向けて、主な金融機関の「完済時年齢」「借入時年齢」を下記に一覧でまとめてみました。

金融機関名 借入時年齢 完済時年齢
みずほ銀行 満71歳未満 満81歳未満
三井住友銀行 満70歳の誕生日まで 満80歳の誕生日
三菱UFJ銀行 70歳の誕生日まで 80歳の誕生日まで
りそな銀行 70歳未満 満80歳未満
PayPay銀行 65歳未満 80歳未満
住信SBIネット銀行 満65歳以下 満80歳未満
auじぶん銀行 満65歳未満 満80歳の誕生日まで
新生銀行 65歳以下 80歳未満
イオン銀行 満71歳未満 満80歳未満
ソニー銀行 満65歳未満 満85歳未満(ワイド団信の場合は満81歳未満)
フラット35 70歳未満 80歳

上記の通り、借入時年齢は金融機関によってバラバラですが、完済時年齢は80歳未満が主流です。以前は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携してサービスを提供する「フラット35」のみが完済時年齢80歳未満でしたが、近年は民間金融機関の上限も上がってきていることが分かります。

02モデルケースから住宅ローンの利用を考える

手持ち資金がある場合、リバースモーゲージではなく、一般の住宅ローンを利用したほうがよいケースもあります。しかし、高齢での住宅ローン利用は返済期間が短くなりがちで、住宅購入に十分な資金を借り入れできない恐れがあることから、利用を躊躇している人もいるのではないでしょうか。ここからは、60代・70代で住宅ローンを利用する場合のモデルケースを紹介します。どれくらいの資金を借り入れできるか一緒に見ていきましょう。

【ケース1】60代の場合

60代で住宅ローンを組むときに、まず注意したいのが借入時年齢です。金融機関のなかには、借入時年齢の上限が65歳未満というところもあるので、60代後半の人はあらかじめ確認しておきましょう。また、借入時年齢70歳未満という住宅ローンであっても、返済期間に条件が付いているケースが多くあります。

例えば、35年間固定金利の「フラット35」の返済期間は、15年(申込み本人または連帯債務者が満60歳以上の場合は10年)以上で、かつ「80歳-申込時の年齢」もしくは「35年」のいずれか短い年数(1年単位)が上限となっています。

つまり、60歳で申し込んだ場合の返済期間は、10年以上20年以下の範囲でしか選べません。さらに、年収400万円未満の人は、すべての借り入れに対して年収に占める年間合計返済額の割合(総返済負担率)が30%以下でなければいけないという決まりもあります。その条件から考えると、もし年金が受給できる65歳まで年収400万円を確保できたとしても、年間の返済額は「120万円(月々10万円)=400万円×30%」以下に抑えなくてはいけません。

上記を踏まえ、毎月の返済額10万円(ボーナス返済なし)、返済期間20年、金利1.23%でサイト内の借入可能額シミュレーターで試算すると、借入可能額は2126万円になりました。ただし、年収200万円でシミュレーションすると、借入可能額は1063万円です。60代で組む住宅ローンは、借入時の年収によって借入可能額が大きく変わります。適正な借入可能額を把握するためにも、まずはマイホーム購入を検討する年齢で、どの程度の収入が見込めるかを確認しましょう。

【ケース2】70代の場合

それでは、次に60代で紹介した例を70代に当てはめて考えてみましょう。70歳でフラット35の借り入れをすると、「80歳-申込時の年齢」が適用され、返済期間は10年です。60代と同じように年収400万円をキープできた場合、返済期間10年の借入可能額は1128万円になります。ただし、実際には定年退職して収入源が年金だけになり、年収400万円をキープするのは難しいという人も多いでしょう。そこで平均的な年金受給額から、適正な借入可能額を考えてみます。

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)受給者の老齢年金の平均年金月額は14万4366円(男性17万391円、女性10万9205円)です。一方、国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は5万6252円となっています(いずれも令和3年12月現在)。

現役世代に共働きをしており、夫婦ともに平均的な厚生年金が受給できるなら、「月額27万9596円=17万391円+10万9205円」程度の収入が期待できます。それに対して、妻が専業主婦で国民年金のみの受給である場合は、「月額22万6643円=17万391円+5万6252円」ほどです。これらの金額はあくまでも平均年金月額から試算したものであり、年金は現役時代の収入や納付月数などによって受け取れる金額が異なる点には注意しなければいけません。とはいうものの、この数値が老後に住宅ローンを組むときの借入可能額の目安にはなるでしょう。

上記の年金受給額では、共働きと片働きのいずれの場合も年収400万円未満となるので、総返済負担率30%以下までしか借り入れできません。つまり、共働き夫婦の場合は月額8万3878円、片働きの場合は月額6万7992円が毎月の返済額の上限目安となります。その額から計算すると、借入可能額の目安は前者が902万円(毎月の返済額8万円)、後者が677万円(毎月の返済額6万円)です。

このように70歳で住宅ローンを組むと、借入可能額が少なくなりやすいことが分かるでしょう。そのため、退職金などのまとまった資金をマイホーム購入にあたっての自己資金に回さないと、理想とする住宅を購入できない可能性があります。

そこで手元資金が十分でない高齢者におすすめなのが、リバースモーゲージを利用する方法です。リバースモーゲージの特徴としては、毎月の返済が利息分だけであり家計に与える影響が少ないことが挙げられます。例えば、住宅金融支援機構の満60歳以上向けの住宅ローン商品「リ・バース60」で「借入金2000万円、適用金利1.975%」の条件でシミュレーションしてみると、毎月の返済額は3万2916円になりました。これは、同じ条件で返済期間35年の一般的な住宅ローンを組んだ場合における毎月の返済額6万5996円のおよそ半分の金額です。ただし、リバースモーゲージにも利用にあたっていくつかの条件があり、その点については次の章で詳しく解説していきます。

03リバースモーゲージを活用する

先述したように、リバースモーゲージには「毎月の返済額が抑えられ、経済的な負担軽減につながる」といったメリットがあります。そのため、70歳といった高齢でマイホームを購入する際に非常に役立つサービスです。ここからはリバースモーゲージの特徴について解説します。

リバースモーゲージとは、どんな制度のこと?

リバースモーゲージは、「自宅を担保にして金融機関から融資を受けるシニア向けのローン」です。自宅は担保に入るものの、返済が滞らないかぎりそのまま自宅に住み続けることができます。また通常の住宅ローンと大きく異なるのが「毎月の返済は利息のみ」である点です。

通常の住宅ローンと違って元本の返済がないため毎月の返済額が少なくてすみ、収入源が年金のみの人でも家計に与える負担が減る点はメリットだといえます。元本については、契約者が亡くなったとき(連帯債務で借り入れをした場合は、主債務者および連帯債務者が共に死亡したとき)に「相続人が一括返済」または「担保物件(自宅および土地)の売却」のいずれかによって返済する仕組みです。主な商品に、住宅金融支援機構と提携している民間の金融機関で利用できる「リ・バース60」があります。

自宅を担保に入れることに抵抗のある人もいるかもしれませんが、仮に子どもが将来自分の住んでいる自宅に住まない場合はいずれ処分しなくてはいけません。契約者が亡くなったときに売却できるリバースモーゲージなら、残された家族の処分にかかる手間が軽減される点もメリットです。

なお、リバースモーゲージは住宅の購入や建設に特化した資金調達方法ではありません。資金使途は汎用性に富んでおり、住宅の建設や購入以外にもリフォームや借り換え、老後資金の一部として利用することもできます。

04高齢者が住宅ローンを利用するときに気をつけたいポイント

ここまで紹介してきたように、金融機関によって借り入れ条件に違いはあるものの、高齢者でも住宅ローンが利用できることを分かっていただけたのではないでしょうか。ただし、「定年退職の間際」や「定年退職後」に住宅ローンを利用する際は、注意しなければいけないポイントがあるので紹介します。

住宅ローンの審査項目

住宅ローンを申し込むと金融機関によって審査が行われますが、高齢者の場合は特に「完済時年齢」「借入時年齢」「健康状態」「雇用形態」の4点で引っかかる可能性が高いので注意しましょう。

まず完済時年齢については、先述のように各金融機関で完済時年齢の上限が異なります。住宅ローンは個人が長期にわたって返済をするのが前提のローンであるため、一般的に年齢が高くなるほど健康リスクなどの観点から審査に通るのが難しいといえます。無理のない範囲で完済できる資金計画を心掛けましょう。

次に借入時年齢については、こちらも完済時年齢と同様に上限が設定されています。完済時年齢は80歳で設定しているところが多いのに対して、借入時年齢は65歳未満や70歳未満など、金融機関によって異なります。そのため、自分の年齢に合った金融機関を選びましょう。ただし、契約時の年齢が高くなるほど返済期間が短くなり、それに伴って審査が厳しくなることは頭に入れておかなければいけません。

3つ目の健康状態については、住宅ローンの借り入れをする際に民間の金融機関では「団体信用生命保険」(以下、団信)への加入が必須(フラット35は任意加入)です。しかし、団信は健康状態によっては加入できないケースもあります。万が一、契約者に持病などがあり、団信に加入できないと借り入れが難しくなることが考えられます。

最後の「雇用形態」は、毎月しっかり返済できるかどうかを金融機関が確認するうえでも重要なポイントです。以前に比べて非正規雇用者でも住宅ローンを組みやすくなりましたが、近年でも「安定した収入が継続的にあること」という条件を提示している金融機関も少なくありません。また、金融機関によっては「収入が年金のみの人は利用不可」と定めているケースもあるので、あらかじめ確認しておくほうが無難です。

生活資金をきちんと確保しておく

住宅ローンを組むときに忘れてはいけないのが、生活資金をきちんと確保しておくことです。定年退職後の収入源は年金のみという人も多いでしょう。毎月の返済額を年金収入から差し引いても、ゆとりを持った生活ができるかどうかについて、実際に住宅ローンを組む前に確認しておくことが重要です。平均寿命が延び続けている昨今では、老後資金も以前と比べてより多くのお金が必要になっています。あらかじめしっかりした返済計画を立てておかないと、老後の生活資金が足りなくなるといった事態に陥るかもしれません。

資金計画を立てるときは、マイホーム購入後にかかる定期的な修繕費や固定資産税などの維持費の支払いが必要になる点も忘れないようにしましょう。せっかくマイホームを手に入れても、老後資金が底をついてしまっては本末転倒です。そのようなことがないように、しっかりとシミュレーションしておくことが、ゆとりを持った老後を送るポイントだといえます。

0570歳でも住宅ローンが利用しやすい昨今、無理のない資金計画でマイホーム購入しよう!

厚生労働省「令和2年簡易生命表」によると、平均寿命は男性81.64歳、女性87.74歳です。男女を平均した年齢は84.69歳となっており、以前に比べて日本人の寿命は延びています。そのような背景から、住宅ローンの利用条件となっている年齢制限も引き上げられており、以前よりも70歳で住宅ローンを組やすくなっているのが現状です。

ただし高齢者の住宅ローンの利用は、返済期間が長い若者に比べると審査に通りにくい傾向があるため、老後資金も含め、しっかりとした資金計画を立てておくことが大切です。サイト内には「住宅購入予算」「借入可能額」「毎月の返済額」「老後のお金」といった4つのシミュレーターが用意されているので、それらを活用しながらマイホーム購入を実現させましょう。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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