近年、ネット銀行の住宅ローンに関する話を耳にする機会が増えました。人生で最も大きな買い物ともいわれるマイホーム。そのための多額の借入れをオンラインで完結させるスタイルは、正に”令和時代”の住宅ローンといえるかもしれません。そんなネット銀行の住宅ローンのメリット、デメリット、そして現状がどのようになっているのかを見ていきます。

1ネット銀行で住宅ローンを組むメリット

ネット銀行で住宅ローンを組むことのメリットは、まず一般的な銀行に比べて金利が低いことです。現在は超低金利といわれるほど住宅ローンの金利が低水準にあるため、差があるといっても0.1%、0.2%程度なのですが、住宅ローンは借入元金が大きいので、少しの差でも返済全体を考えると大きな違いになってきます。

また、店舗に出向く必要がないこともメリットのひとつです。今でこそ一般的な銀行でも土曜、日曜にローン相談会などを開催することがありますが、それでも契約となると平日に店舗に出向かなくてはなりません。仕事で休みが取りにくい人にとっては面倒なことです。ネット銀行であれば相談から契約まですべてネット上で完結するので、休みが取りにくい人でも利用しやすいでしょう。

3つ目に挙げておきたいのは、ほとんどの場合、住宅ローンの一部を繰り上げ返済する際の手数料がかからないこと。繰り上げ返済とは、毎月の返済額とは別に住宅ローンの元金を返済することです。

一般的な銀行でもネットで手続きをする場合は、手数料が無料になるのが通常なのですが、窓口で手続きをすると5,000~30,000円程度の手数料がかかります。一方、ネット銀行は最初からインターネット利用を前提に考えられているので、一部繰り上げ返済の手数料は基本的に無料です。

青野泰弘先生

ネット銀行の住宅ローンのメリットとして「保証料がかからない」という情報もあります。しかし、ネット銀行は保証料が必要ないケースが多い代わりに、融資事務手数料を借入金額の2.2%(税込、2020年3月現在)としているのが一般的です。これを、一般的な銀行の保証料+融資事務手数料と比較した場合、同程度の金額になることもあり、保証料が不要であることがメリットとはいいにくいでしょう(一部のネット銀行では、保証料なしで融資事務手数料が固定といったプランもあります)。

2ネット銀行の住宅ローンのデメリット

ネット銀行の住宅ローンにおけるデメリットとして考えられるのは、審査期間が比較的、長いこと。実際の審査期間は公表されていませんが、概ね1ヶ月程度は必要だといわれています。事前審査は一般的な銀行に比べてスピーディに行われることも多いのですが、本審査に時間がかかってしまうケースが多いようです。

ちなみに本審査に時間がかかってしまう要因として、書類の不備が発生しやすいという要因もあります。ネット銀行の住宅ローンで本審査を申し込む場合、必要書類を自分自身で作成・送付する必要があります。このときに記入漏れなどがあると、再度、書類を作成し、送付しなおさなければならないのです。このやり取りに時間を取られる人が少なくありません。

また、対面でのやり取りができないネット銀行では、個々の事情に合わせて急ぎで対応してほしいと思っても難しいのが現状です。ネット銀行で住宅ローンを組む際には、審査期間に余裕を持もたせて行動したほうがいいでしょう。

一般的な金融機関に比べて、審査基準が厳しくなる傾向もあります。ネット銀行の事前審査は、申請内容に応じて画一的に合否が決められるケースが多いため、少しでも基準に達していないと、審査を通過できないのです。自営業者などは節税すると所得が低くなりますので、ネット銀行の審査では不利になる場合があります。

加えて、ネット銀行は融資にあたって保証会社を利用しないのが一般的なので、もし債権が回収不能になった場合には、その損失をすべて被ることになります。このような理由もあり、審査が厳しくなりがちなのです。

つなぎ融資に対応していないネット銀行があることにも注意をしたいところです。つなぎ融資とは、注文住宅を建てる際など、物件が完成する前に手付金や中間金などの支払いが発生するケースに対して、物件完成後に支払われる住宅ローンとの間をつなぐための融資のことをいいます。一部のネット銀行はこのつなぎ融資を販売していません。

3ネット銀行の住宅ローン金利が低い理由

ネット銀行の代表的なメリットとして、金利の低さを挙げました。それではなぜネット銀行が総じて、一般的な銀行に比べて金利を低く抑えることができているのでしょうか。

ネット銀行と一般的な銀行の大きな違いは、ネット銀行はインターネットバンキングのサービスのみを提供しており、実際の店舗や独自のATMを持たないということです。そのため、店舗の維持費がかからず、人件費なども抑制できます。また、ATMは独自のものではなくコンビニや他の金融機関と提携して運用しており、この維持管理費も削減されています。

これらのコスト面での優位性が、ネット銀行の金利が安い最も大きな理由です。コストが低ければ、少ない利益でも企業を存続することができます。銀行にとっての利益は、融資に対する利息の受け取り。削減された企業の運用コストを金利の低さという形で、消費者に還元しているというわけです。

ネット銀行と一般的な銀行の住宅ローン手続き

次に住宅ローンに関する手続きについて、一般的な銀行とネット銀行の違いを見てみましょう。ネット銀行でも普通の銀行でも、手続き全般については大きな違いはありません。下の図にあるように、仮審査から始まって、最後に融資が下りるという形になります。

違いがあるのは、仮審査の依頼、本審査申込書の提出(融資の依頼)、融資の契約の部分です。いずれの場合もネット銀行ではネット上で完結(銀行によっては郵送が必要)するのですが、普通の銀行では、店舗に出向いて、紙の書類に記入し、押印をすることになります。

青野泰弘先生

<ワンポイントアドバイス>
ネット銀行と呼ばれる金融機関の代表例を下にまとめてみました。インターネットに関連する企業が単独、もしくは普通の銀行と組んで参入していることがうかがえます。

・auじぶん銀行:KDDIと三菱UFJ銀行の共同設立
・SBI住信ネット銀行:SBIホールディングスと住友信託銀行の共同設立
・ジャパンネット銀行:Zホールディングス(旧ヤフー)と三井住友銀行の共同設立
・楽天銀行:楽天カードの100%子会社
・ソニー銀行:ソニーファイナンシャルホールディングスの100%子会社

4ネット銀行の住宅ローンは今後どうなる?

ネット銀行の住宅ローンの利用者は、今後、増加していくと考えられます。下記のグラフは、住宅金融支援機構ホームページに掲載されている「民間住宅ローン貸出動向調査」の過去10年分の中から、銀行が重視する販売チャネルを抜き出したものです。

※出典:住宅金融支援機「民間住宅ローンの貸出動向調査」2010~2019年度調査結果より作成

また、1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で住宅を購入した人を対象としたアンケート「第24回 不動産流通業に関する消費者動向調査(一般社団法人 不動産流通経営協会)」によれば、住宅購入の際にネット銀行を利用した人の割合は、2017年度に13.7%であったものが2019年度では24.0%まで上昇しています

この2つの調査からいえることは、住宅購入者がネット銀行を重視する傾向は年々増しているということです。

今、都市銀行などでは、店舗の運営費の負担を軽減するため店舗の統廃合を進めており、窓口はどんどん減っています。それと同時に通信技術の発達も進み、住宅購入にも大きな変化を与えると考えられます。

例えばモデルルームについても、現在は代表的な部屋しか見ることができませんが、VR(バーチャル・リアリティ)の発達によっていずれはすべてのタイプの部屋が仮想現実の中で見えるようになるでしょう。それと平行して、銀行のインターネット化も進展するでしょう。未来の住宅取得では、モデルルームに行かずにVRで部屋を確認し、ネット銀行で住宅ローンをシミュレーションしてそのまま申し込むという流れになってくると想像できます。

審査についても、現在は職歴や個人信用情報などを主な審査基準として行われていますが、将来的にはアプリでの支払履歴などのビッグデータをAIが分析し、点数化して審査するスコアリングという手法が中心になっていくことが考えられます。これにより本審査の審査期間が短縮されると同時に、自分のスコアを事前に知ることができ、資金計画を立てるのも簡単になるでしょう。

今後の通信技術の進展は、住宅ローンの借り入れのほとんどをネット経由に替えてしまうかもしれません。ただしそれはネット銀行だけでなく、普通の銀行のネットバンキングも含まれます。どの銀行を使うかは、金利だけでなく保障部分も含めて、自分自身で考える必要があります。必要があれば専門家に相談するなどして、自分にあった住宅ローンを選択するようにしてください。

青野泰弘先生

青野泰弘

ファイナンシャルプランナー(CFP®)

プロフィール

1964年静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、国際証券に入社。その後トヨタファイナンシャルサービス証券、コスモ証券などで債券の引き受けやデリバティブ商品の組成などに従事。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。