持ち家・賃貸どちらがお得?FPが永遠の論争をバッサリ切る

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<ワンポイントアドバイス>
「持ち家を手に入れるか」、それとも「賃貸住宅に住み続けるか」、誰にでも当てはまる正解はありません。それぞれにメリット・デメリット、向き・不向きがあり、一概にどちらが優れているとはいえないものだからです。重要なのは、収入とライフプランにマッチした住まいを選ぶこと。「住まいに対して、どの程度のお金をかけられるのか」「どんな暮らしをしたいのか」を慎重に見極めることが、最適な住まい選びの第一歩といえます。

持ち家と賃貸住宅がコストパフォーマンスの面で比較されるケースは多々あります。しかし、画一的な判断基準は存在するのでしょうか。このページでは、経済的な側面を含めつつ、持ち家と賃貸住宅を比較し、住まい選びの指針となる情報を、ファイナンシャルプランナーの竹下さくら先生が紹介します。

01持ち家と賃貸住宅、「いくらかかるか?」での単純比較はできない

住宅は「人生最大」といわれるほどの高額な買い物です。多くの物件が数千万円以上の価格で、ほとんどの人はその代金を支払うために住宅ローンを利用しています。しかし、そもそも住宅は購入すべきなのでしょうか。毎月の家賃さえ支払うことができれば、お金を借りることなく賃貸住宅に住み続けることもできます。

そこで、よく話題になるのが、持ち家と賃貸住宅のどちらが経済的なメリットが大きいかという点です。しかしこの議論、個人の収入の状況や求める生活環境などの前提条件によって大きく結果が異なるため、持ち家か賃貸住宅かという二元論で比較しても結論が出ないというのが実際のところでしょう。

例えば、住宅購入・引越し後に固定で発生する住宅費用を毎月12万円とし、その生活を一生続けると考えてみましょう。持ち家の場合、賃貸住宅の場合、それぞれに以下のようなパターンが当てはまります。

持ち家を選んだ場合の諸条件

  • 住宅価格: 3620万円(新築マンション)
  • 住宅取得時の費用:頭金300万円/諸費用180万円(物件価格の5%と仮定)
  • 住宅ローン返済
    ・返済額:月額10万円 
    ・借入額: 3320万円
    ・返済期間:35年
    ・適用金利:年利1.4% 全期間固定
    ・返済方法:元利均等方式
  • 管理費・修繕積立金:月額2万

賃貸住宅を選んだ場合の諸条件

  • 初期費用
  • 敷金:22万円(家賃と2カ月分)/礼金:11万円(家賃と1カ月分)
  • 家賃:月額11万円
  • 管理費:月額1万円
  • 更新費用:2年に1度11万円

※借入金額、返済額は概算です。
※住宅ローン減税、固定資産税、修繕積立金等の値上げなど、上記以外の条件は考慮していません。

この条件に従って、持ち家・賃貸住宅の累計住宅費用をグラフにすると以下のようになります。

固定で発生する住宅費用を毎月12万円とした場合の50年間の累計住宅費用

この例では、35年目までは持ち家の場合も賃貸住宅の場合も経過年数に合わせて比例的に住宅費用が積み重なっていく形になっています。状況が一変するのは住宅ローン返済後です。持ち家の場合は「管理費・修繕積立金」しかかからないため、グラフはほぼ横ばいに。一方、賃貸住宅の住宅費用は、変わらず比例的に伸びていきます。費用だけを見れば、38年目には賃貸住宅のほうが累計住宅費用は高くなり、その差は経過年数とともに広がる結果になりました。

竹下さくら先生

<ワンポイントアドバイス>
持ち家と賃貸住宅を経済的な観点で比較する際には、住宅の資産価値という点も比較の材料になります。このページの解説では費用の比較しか行っていませんが、持ち家の場合は購入した住宅を自分の資産とすることができます。将来的に売却や買替えを考えているなら、経過年数に応じた住宅の資産価値も計算する必要があると覚えておきましょう。

さて、上のグラフだけを見ると、持ち家のほうが経済的なメリットが大きいような気がしてきます。しかし、そう簡単ではありません。実際には前述の条件では除かれている、さまざまな要素を考慮しなければならないからです。

代表的な要素のひとつが物件や設備の老朽化と居住人数の変化への対応です。持ち家の場合は自分でリフォームや設備の入れ替えをしなければなりません。また、居住人数が変わったとしても住宅費用は基本的に不変です。

一方、賃貸住宅であれば引越しをするだけで新しい住居での生活を始めることができます。さらに居住人数が変わったときには引越しをすることで、住居費用を調整することが可能。そこで、それぞれに下記の条件を加えて、シミュレーションをし直してみます。

持ち家・賃貸住宅両者に対する追加条件

  • 住宅取得・賃貸開始年齢:35歳
  • 居住人数の変化
    35~49歳:夫婦+子供(7歳)/51歳以降:夫婦のみ 

※子供が独立するため

持ち家を選んだ場合の追加条件

  • リフォーム・設備入替え費用
    54歳時(20年目):200万円/64歳時(30年目):200万円/74歳時(40年目):600万円

※54歳時(20年目)、64歳時(30年目)は中小規模、75歳時(40年目)は大規模なリフォーム・設備入替えをし、以降は不要とする

賃貸住宅を選んだ場合の追加条件

  • 家賃
    35~50歳:月額11万円/51歳以降:9万円
    ※51歳以降は子供の独立により、夫婦2人用の間取りの住居へと転居
  • 管理費
    35~50歳:月額1万円/51歳以降:1万円
  • 更新費用
    35~50歳:2年に1度11万円/51歳以降:2年に1度10万円
  • 引越し費用
    45歳時:33万円/51歳時:27万円 
    ※以降10年ごとに同等条件の物件に引越しをする。

物件や設備の老朽化と居住人数の変化への対応を考慮した場合の50年間の住宅費用累計

条件を追加した結果、持ち家の場合も賃貸住宅の場合も50年間の累計住宅費用はほぼ変わらないという結果に変わりました。

このように、持ち家と賃貸住宅の経済的なメリットを比較するシミュレーションは、与えられた前提条件によって結果が大きく異なってしまうものなのです。しかも、前提条件となる要素は無限に存在します。そのため、一般論として、持ち家と賃貸住宅のどちらがお得かを断言することは難しいのです。

02持ち家・賃貸住宅のメリット・デメリットを理解することが重要

持ち家と賃貸住宅を経済的な観点で単純比較できないとすれば、住宅を購入すべきか、賃貸住宅に住み続けるべきかをどのように判断すればいいのでしょうか。重要なのは、それぞれのメリット・デメリットを知り、自分が思い描いているライフプランにマッチするほうを選ぶことです。

持ち家のメリット・デメリット

主なメリット

・資産になる
・住宅ローン完済後の経済的負担が軽い
・同程度のコストを想定した場合、賃貸住宅に比べて品質が高い傾向にある
・広さ・間取りの選択肢が豊富
・リフォーム・建替えが自由

主なデメリット

・収入の変化に対応しづらい
・住宅取得時の経済的負担が大きい
・環境変化に対応するための経済的負担が大きい
・住宅の修繕・改修費用が自己負担となる

持ち家のわかりやすいメリットは、その住宅が自分の資産になるという点です。住宅ローンの返済を終えてしまえば、売却するのも自由ですし、リフォームなどをしない限り追加費用も発生しません。人生100年時代といわれる昨今、老後の住宅費用に対する不安を軽減できるのは持ち家の大きなメリットといえます。

また、物件の品質という側面でも持ち家にはメリットがあります。注文住宅であれば、自由に間取りや設備を決められますし、同程度のコストをかける場合、建売の戸建て住宅や分譲マンションも賃貸住宅よりもハード面での性能が高い傾向があります。

そのほか、広さ・間取りを豊富な選択肢から選べるのも持ち家を選ぶメリットといえます。例えば、賃貸マンションには家族向けの物件がそれほど多くなく、家賃も高額になりがち。一方、分譲マンションには家族向けの物件が多く、同程度の物件に住む場合に、家賃よりも毎月の住宅ローン返済額のほうが安くなるケースが少なくありません。

もちろん、持ち家にもデメリットはあります。最も大きいと考えられるのは、住宅ローンを組んだあと、収入の変化に対応しづらくなること。長い人生、病気やケガによって収入が急激に減少してしまうかもしれません。大きな出費を強いられるトラブルが起きることもあるでしょう。そんなときでも、毎月の住宅ローン返済を滞らせるわけにはいきません。住宅ローンが大きな負担としてのしかかってくる可能性があるのです。

そのほか、住宅購入時の負担が大きいこと、環境変化に対応するための経済的負担が大きいこと、修繕・改修費用が自己負担となることも挙げられます。どちらにも数百万円単位の出費が伴う場合が多く、一定の貯蓄を準備しておく必要があります。

賃貸住宅のメリット・デメリット

主なメリット

・引越しが手軽
・収入の変化に対応しやすい
・居住人数の変化に対応しやすい
・住宅の修繕・改修費用を他人に任せられる

主なデメリット

・家賃を支払い続けなければならない
・家族向けの物件が少なく、家賃が高額になりがち
・内装の変更やリフォームができない

賃貸住宅を選んだときの代表的なメリットは、手軽に引越しができること。転勤が多い人、将来的に親元に帰る可能性ある人など、「住む場所を決められない人」にとって賃貸住宅は合理的な選択となります。長期間、ひとつの場所にとどまらずに済むという点は、ご近所との人間関係をあまり気にせずに済むという利点にもつながります。

また、「引越しが手軽=住宅費用を変更しやすい」ということなので、急な収入の変化にも柔軟に対応できます。収入が減った場合は家賃の安い物件に引っ越すだけで済むため、経済的に不安定な状況が想定される人にとっては、賃貸住宅のほうが心配の種は少ないかもしれません。もちろん、収入が増えたときには、ランクの高い物件での生活を満喫することも可能です。

そのほか、子供の独立などにより居住する人数が変わった場合に、それに見合った住居に引越しをすることで、住宅費用を抑制することも可能です。

賃貸住宅の最大のデメリットといえるのが、住んでいる間ずっと家賃を支払い続けなければならないことです。特に退職後、年金収入しかなくなったときには家賃が大きな経済的負担となりえます。年金収入だけでは家計支出をまかなえず貯蓄を切り崩さないと暮らしていけない、いわゆる「老後資金 2000万円問題」も考慮して、家賃を支払い続けられるお金を蓄えておくことが大切です。

そのほか、前述した通り、家族向けの物件が少なく、家賃が高額になりがちなこと、内装の変更やリフォームを自由に行えないこともデメリットとして挙げられるでしょう。

竹下さくら先生

<ワンポイントアドバイス>
家賃の安い公営住宅や、礼金・更新費用・仲介手数料がかからないUR賃貸を退職後の住まいの選択肢に入れている人もいるかもしれません。しかし、公営住宅に住むには連帯保証人を求める自治体が多い状況ですし、UR賃貸に住むためには収入や貯蓄額の審査をクリアする必要があります。意外に入居条件が厳しい場合があるので注意しましょう。

03判断のポイントはココ!持ち家or賃貸住宅がおすすめなのはこんな人

ここまで持ち家と賃貸住宅の経済的な比較と、それぞれのメリット・デメリットの紹介をしてきました。一長一短があるため、どちらが有利、どちらがお得といった画一的な判断ができないことはおわかりいただけたでしょう。とはいえ、一定の指針が欲しいという気持ちも理解できます。そこで、持ち家、賃貸住宅それぞれに向いていると考えられる代表的なケースを紹介しておきましょう。

持ち家をおすすめできる代表的な例

退職までに住宅ローンの完済が可能な人

退職までに住宅ローンを完済することができる人には、持ち家は合理的な選択といえます。人生100年時代、退職後の人生が20~30年あると考えたとき、その間ずっと家賃を支払い続けるのはやはり大きな負担といえます。

とりわけ年金だけで生活費と家賃を賄い続けることは、今後、困難になることが予測されます。すでに述べたとおり、公営住宅やUR賃貸に入居するためにはさまざまな条件をクリアする必要があるため、現役時代にローンを完済できるのであれば家を購入することは良い選択肢になるでしょう。

現在の収入が安定している・貯蓄が十分にある人

収入が安定していれば、住宅ローン審査の際に低金利での借入れが実現する可能性が高まります。また、家を購入する際に頭金(物件価格の1~2割ほど)を用意することができれば、金融機関によっては金利面での優遇を受けることができる場合があります。頭金を支払うことで借入総額を抑えることができ、しかも金利面で優遇されていれば、毎月のローン返済額を少なくすることが可能なので、持ち家の購入は十分におすすめできます。

生涯をシングルで過ごす予定の人

生涯をシングルで過ごすことを決めている人にも持ち家はおすすめです。独身の高齢者が賃貸住宅を借りる際には、家賃の支払いや連帯保証人の問題がついて回ります。貸主の60%が高齢者の入居に何らかの拒否感を持っているというデータも出ているのが現状です。連帯保証人を付ける場合でも、遠くに住む兄弟などではなく、近くに住んでいて何かあった場合にすぐ駆けつけることができる人を求められるケースが増えています。

その点、持ち家であれば家賃の支払いや連帯保証人にかかわる問題は発生しません。現役で働いているときに家を購入し、退職までにローンを完済してしまえば、安心して老後を過ごすことができるのではないでしょうか。

竹下さくら先生

<ワンポイントアドバイス>
資産価値の側面から考える場合、良い立地の物件であれば購入を検討してみることも悪くありません。立地条件が良ければ、資産価値が落ちづらく、中には購入時とさほど変わらない金額での売却が実現するケースもあります。売却で得た収入を老後の老人ホーム入居の資金として確保するという考え方も可能です。

賃貸をおすすめできる代表的な例

住居の環境・条件を固定したくない人

前述の通り、賃貸住宅の最大のメリットといえるのが、そのときどきのライフスタイル・プランに合わせて転居が容易なことです。「転勤が多く、せっかく住宅ローンを組んでマイホームを手に入れても長く住むことができない」「将来的に実家で両親と同居する可能性が高い」「収入や家族構成に合わせて住居を柔軟に変更したい」という方には賃貸住宅に住み続けることもおすすめできます。

老後資金まで俯瞰した際に家賃を支払い続けられる人

賃貸住宅で一生を過ごすことを考えたときに、一番のネックになるのは「家賃を一生、支払い続けなければならないこと」です。これをクリアできるのであれば、賃貸住宅に住み続けるメリットは相対的に大きくなります。一定の資金を用意することができれば、常に真新しい住居で過ごすことができるほか、ライフスタイルにマッチした環境を手に入れることができます。

ここで上げたケースからも、持ち家と賃貸住宅、どちらを選ぶかの判断ポイントは、自分の収入や貯蓄、将来のライフプランであることがわかります。持ち家と賃貸住宅を画一的な切り口で比較することはできないのです。

自分が「どんな住宅で暮らす人生を送りたいのか」を念頭に、自分が持ち家と賃貸住宅、どちらに向いているのかを慎重に見極めてみてください。

竹下さくら先生

竹下さくら

CFP®、1級FP技能士。宅地建物取引士資格者

プロフィール

個人のコンサルティングを主軸に、講師・執筆活動等を行う。住宅購入関連の著書に『家を買おうかなと思ったときにまず読む本(日本経済新聞出版社)』『ローン以前の住宅購入の常識(講談社)』『書けばわかる! わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方(翔泳社)』などがある。

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