長期間続いている住宅ローン超低金利、2019年10月についに実施された消費税の増税。2020年の住宅ローンはどのような動きをしていくのでしょうか。2020年の金利予測とともに、増税に対応すべく始まっている支援制度について、ファイナンシャルプランナーの竹下さくら先生が解説していきます。住宅ローンを組むなら”今年”かもしれません。

12020年、住宅ローン金利はどう動く?まだ低いまま?

史上最低水準といわれて久しい住宅ローン金利。10年以上の長きにわたり、変動金利、固定金利ともに「低水準・ほぼ横ばい」で推移しています。金融機関やプランによって異なるものの、2020年2月現在の金利は変動金利型が0.5%、固定金利選択型(10年固定金利)が1.1%、長期固定金利では1.5%程度となっているようです。

2020年に限っていえば、市場全体として金利が大きく上昇することはないと予測できます。現在の史上最低水準の住宅ローン金利は、政府、日銀が景気回復のために実施した、大規模な金融緩和政策に端を発したもの。東京オリンピックを控えてさらなる景気浮揚が期待されるときに、そこにブレーキをかけるような金融引締めに急激に舵を切るとは考えづらいからです。

実際、2020年3月の時点では、変動金利と連動する政策金利について、大きな引き上げが行われる兆候は見られません。固定金利と連動する10年国債の利回りも、「±0.2%」の範囲内という低水準に収める方針が継続されており、大幅な上昇が起きる可能性は薄いでしょう。米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの発生といった景気に減退圧力をかける要因もあります。

ただし、中長期な金利動向を考えた場合には、一切の変化が見られないわけではありません。最近の傾向として、各金融機関に変動金利を引き下げる動きが見られます。2020年1月には0.399%という史上最低金利を発表した金融機関もありました。しかし、固定金利をわずかに引き上げている金融機関もあるのです。

じつは、こういった金利変動によって「変動と固定の金利に大きな差が生まれる」のは、変動金利で住宅ローンを借りている、借りようとしている人にとって注意したいシグナル。詳しい説明は複雑なので省きますが、住宅ローン金利は固定金利のほうが変動金利よりも早く上昇するのが基本です。つまり、変動と固定の金利に大きな差が発生しているときは、「変動金利の上昇が追い付いていない状況」である可能性があるのです。

変動金利のほうが固定金利よりも大幅に低いときには、変動金利の住宅ローンを選びたくなるもの。しかし、差が大きい背景には将来的な金利上昇が存在するかもしれません。場合によっては、その時点での固定金利よりも変動金利が高くなる可能性もあります。特に「1%以上の開き」があるケースでは、将来の金利上昇について、少し深読みしておいたほうがいいでしょう。

竹下さくら先生

<ワンポイントアドバイス>
住宅ローンの金利タイプは途中で変更することも可能です。「金利が上がり始めたら変動金利から固定金利に切り替えればいい」と考えている人もいるかもしれません。しかし、前述した通り、固定金利は変動金利よりも早く上昇し始めます。しかも、過去の傾向を見ると、金利は急速に上昇し、緩やかに下降するという性質を持っています。「気づいたときには固定金利に切り替えたとしても、家計を維持するのが難しい」というリスクも存在するので注意が必要です。

2消費税増税後の2020年、住宅購入支援政策はどうなっている?

2019年10月、消費税が8%から10%に引き上げられました。非常に高額な買い物となる住宅購入では、この2%が大きな負担となります。もしかすると「また、マイホームの夢が遠のいた」と感じた人が多いかもしれません。

しかし、消費税増税がなされた一方で、住宅購入支援についての政策が拡充されていることをよく知らない人が多いようです。住宅購入者の経済的負担を軽減すべく、さまざまな政策が実施されています。ここでは代表的な3つの政策をとり上げ、10%適用時のほうが有利になっているポイントを紹介していきます。確実に利用できるようになっておきましょう。

住宅ローン減税(控除)

住宅ローン減税(控除)とは、簡単にいうと「毎年末の住宅ローン残高または住宅の取得価格のうちいずれか少ないほうの金額の1%が10年間、所得税の額から控除される(所得税から控除しきれない場合は一部、住民税からも控除される)」制度です。

この住宅ローン減税が、消費税10%が適用される住宅を購入して、2020年12月31日までに入居する場合に限り、控除期間が3年延長される形に拡充されました。ただし、延長期間中の控除額はそれ以前の10年間と若干異なり、「毎年末の住宅ローン残高または住宅の取得価格のうちいずれか少ないほうの金額の1%」「住宅の取得価格の2%÷3」のいずれか少ないほうが適用される仕組みです。
※控除額の計算に用いられる「住宅の取得価格」には上限があり、「一般住宅」は上限4000万円、「認定長期優良住宅等」は上限5000万円です。

住宅ローン減税(控除)の控除期間

居住開始時期 2014年4月1日
~2021年12月31日
2019年10月1日
~2020年12月31日
2021年1月1日
~2021年12月31日
適用税率 8% 10% 10%
控除期間 10年 13年 10年

すまい給付金

すまい給付金は、そのものずばり消費税増税による住宅購入者の経済的負担を軽減するために創設された制度です。住宅ローン減税(控除)だけでは、十分に軽減効果を得られない人に対し、よりメリットが大きな仕組みになっており、収入によって給付金額が異なります。

すまい給付金は、適用される消費税が8%の場合と10%の場合とで、大きく2点の違いがあります。ひとつは給付対象となる年収の目安の上限で、消費税8%適用時は「収入額の目安が510万円以下」だったのに対し、10%適用時は「収入額の目安が775万円以下」となり、給付対象となる人が増えました。

2つ目は給付基礎額の上限です。消費税8%適用時の給付基礎額の上限が「30万円」だったのに対し、10%適用時には「50万円」へと拡大されています。またあわせて、給付基礎額と収入額の目安の区分も変更になりました。

すまい給付金の給付基礎額と収入額の目安

給付基礎額 給付基礎額
収入額の目安 消費税8% 消費税10%
775万円以下 0円 10万円
675万円以下 0円 20万円
600万円以下 0円 30万円
525万円以下 0円 40万円
510万円以下 10万円 40万円
475万円以下 20万円 40万円
450万円以下 20万円 40万円
425万円以下 30万円 50万円

※住宅ローンを使用しない場合には上記の表とは異なる給付基礎額、収入額の目安の区分があります。

竹下さくら先生

すまい給付金の対象となる住宅は、2021年12月31日までに引渡し、入居が完了している住宅に限られています(2020年3月時点)。2022年1月1日以降の制度は未定の状況なので、確実に給付金をもらいたいと考えるなら、住宅購入を早めに決断したほうがいいかもしれません。

住宅取得等のための資金に係る贈与税非課税措置

住宅購入をするときに、両親などから資金援助を受ける人も多いかもしれません。住宅の購入や新築、増改築の費用を直系親族(両親や祖父母)から援助してもらったときに、贈与税の負担を減らしてくれるのが、「住宅取得等のための資金に係る贈与税非課税措置」です。

すまい給付金と同様、消費税8%が適用される住宅にも適用されていた制度なのですが、消費税10%が適用される住宅を購入した場合には、より大きな金額が非課税となる仕組みになっています。また、環境性能、耐震・免振性能、バリアフリー性能などで一定の基準をクリアした「省エネ等住宅」は、非課税となる金額の上限がさらに大きくなります。

※省エネ等住宅の基準の詳細は国税庁のWebサイトを参照ください。

消費税8%の税率が適用される場合の非課税額上限

契約時期 一般住宅 省エネ等住宅
2016年1月1日
~2020年3月31日
700万円 1200万円
2020年4月1日
~2021年3月31日
500万円 1000万円
2021年4月1日
~2022年12月31日
300万円 800万円

消費税10%の税率が適用される場合の非課税額上限

契約時期 一般住宅 省エネ等住宅
2019年4月1日
~2020年3月31日
2500万円 3000万円
2020年4月1日
~2021年3月31日
1000万円 1500万円
2021年4月1日
~2022年12月31日
700万円 1200万円

竹下さくら先生

<ワンポイントアドバイス>
上の表を見るとわかる通り、非課税額の上限は時間が経過するにつれて減少していきます。もし、住宅購入にあたって両親や祖父母などから多額の資金を援助してもらう予定があるのなら、契約は早めに済ませられるよう早めの準備をしておいたほうがいいかもしれません。

3つの住宅購入支援に関する政策が、消費税増税に対応してどのように拡充されているかを見てきました。ここでひとつ気づくことがあります。いずれの政策も、時間の経過とともに有利な点が少なくなる、もしくはなくなっていくのです。

住宅ローン減税の控除期間延長は、2020年12月31日が入居のタイムリミット。すまい給付金は制度自体が2021年12月31日に終了予定で、それ以降の予定は未確定です。住宅取得等のための資金に係る贈与税非課税措置も2022年12月31日以降の予定は発表されていません。

消費税が10%に引き上げられたことによる経済的な負担は、将来的にずっと続いていきます。この負担を可能な限り抑えて住宅購入を実現したいなら、これらの制度が有効な期間内に決断をするのがスマートであることは確かです。2020年は住宅ローンの金利も史上最低水準が維持されると予測されています。もし、住宅を購入する予定があるのであれば、あまり長く悩まずに、2020年中に入居まで済ませてしまうのが賢い選択かもしれません。

※本ページに記載されている住宅ローン金利、税制度に関する記述は、2020年3月31日の周辺状況を鑑みたあくまでも予測であり、結果を約束するものではありません。

竹下さくら先生

竹下さくら

CFP®、1級FP技能士。宅地建物取引士資格者

プロフィール

個人のコンサルティングを主軸に、講師・執筆活動等を行う。住宅購入関連の著書に『家を買おうかなと思ったときにまず読む本(日本経済新聞出版社)』『ローン以前の住宅購入の常識(講談社)』『書けばわかる! わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方(翔泳社)』などがある。