住宅ローン借り換えが不安な方へ!失敗ケースから注意点を学ぼう

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住宅ローンの借り換えとは、すでに契約している住宅ローンから別の住宅ローンに切り換えることで、金利を低く設定して総支払額の負担を軽減できるメリットなどがあります。ただし、借り換えをする過程では、さまざまな問題が生じる可能性があります。そこで今回は、住宅ローンの借り換えにおける失敗例について紹介します。

01住宅ローン借り換えについて

住宅ローンの借り換えとは、前述のようにすでに契約している住宅ローンから別の住宅ローンに切り換えることを言います。借り換えの際には、ローンの残額や残りの返済期間はもちろん、新しく契約する住宅ローンの諸費用などによって、借り換えの効果が左右されます。そのため、借り換え先の候補としている金融機関に試算をしてもらい、メリットがあると分かった時点で事前審査を申し込むのが一般的な方法です。

金融機関によっては、「金利を下げたいので借り換えを検討している」と相談すると、条件を変更してもらえるケースもあります。ここで注意したいのが、金利ばかりに目がいきがちな点です。住宅ローンの借り換えの際には、誰もが陥りがちな失敗例がいくつかあります。あらかじめ注意点を理解し、問題を避けるために対処する必要があります。

住宅ローン利用者が抱く借換時の不安とは?

住宅ローンの借り換えを検討したくても、知識に乏しいことを理由に借り換えをしていない方がいるのは、アルヒ株式会社が行ったアンケート調査(※)からも分かります。このアンケートでは、「知識や情報が少ないので二の足を踏んでいる」や「借り換えを行うための手続きなどが面倒に思う」との声が見受けられます。

また、新生銀行の「離婚に伴いお借り換えされたお客さまの声」によると、借り入れ先として希望していた金融機関に電話で問い合わせたところ、「担当者によって回答が異なる」「状況を伝えるだけで門前払いをされた」「仮審査をしてくれたものの、最終的には住宅ローンではなく、金利が高い貸付を提案された」といったケースも発生しているようです。

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02借換時の失敗ケース1:金利選択

住宅ローンの借り換えをすると、毎月の支払額や総支払額を抑えられるのが、メリットの一つです。しかし、借り換えをしたことで逆効果になってしまったというケースも多くあります。その一つが金利選択によるものです。

固定型から変動型に借り換えた失敗ケース

借換時における金利選択の失敗例としてよくあるのが、全期間固定型、あるいは、固定期間選択型から変動型へ借り換えた後、思っていた以上に金利が上昇し、支払総額が大きくなってしまったというケースです。例えば、全期間固定型の住宅ローンから、借り換えにより変動型を選択した場合、借り換え当初の金利が低かったとしても、利率が上がってしまえば金利負担は大きくなってしまいます。変動型を選択するならば、返済額や総支払額が逆に増えてしまう可能性があることにも注意し、ある程度金利が上昇したとしても借り換えの効果を得られるかどうか確認する必要があるでしょう。

金利の選択に関しては、以下も参考にしてください。

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仮に、住宅ローン残高が2500万円、残りの返済期間が20年あるとします。現在、0.5%の金利が適用されており、それが1%もしくは1.5%になった場合の毎月の返済額および総返済額がどのように変わるか試算してみましょう。

金利 毎月の返済額 総返済額
0.5%(A) 7万4793円 2693万円
1.0%(B) 8万409円 2896万円
B-A 5606円 203万円
1.5%(C) 8万6280円 3109万円
C-A 1万1487円 416万円
C-B 5871円 213万円

試算の結果、金利が0.5%上昇するに伴って、総返済額が約200万円ずつ増加することが分かります。借り換え後の金利差が1%ある場合は、最終的な総返済額に400万円以上の差が生まれます。

毎月の返済額だけを見ると、0.5%の増加で約6千円の違いですので、そこまでの負担は感じないかもしれません。ただし、総返済額には大きな差が生まれますので、金利の上昇によって総返済額がどのくらい変わるのかをシミュレーションし、無理のない返済額であることを確認してから借り換えることが大切です。

03借換時の失敗ケース2:手数料の比較検討

住宅ローンの借り換えをする際、一つの金融機関で事前審査が通った時点で他社との比較をせず、すぐに決めてしまいがちです。しかし他社も検討すれば、借換時の手数料が比較的安い金融機関が見つかるかもしれません。手数料や諸経費について、総合的に判断した上で、住宅ローンの借り換えを検討することをお勧めします。

借換時にかかる諸経費の具体的な金額については、住宅ローンを契約する金融機関や、住宅ローンの借入額・期間・金利などによって異なります。金額の相場は、約30万~80万円と言われており、借り換え前に「全額繰り上げ返済手数料」「抵当権抹消費用」など、借り換え後には「融資手数料」「印紙税」「登記費用」「ローン保証料」などの諸経費が発生します。

借り換え前後にかかる諸経費

借り換え前 全額繰り上げ返済手数料
抵当権抹消費用 など
借り換え後 融資手数料
印紙税
登記費用
ローン保証料 など

借換時の手数料は、借り換え後の住宅ローンに含めることも可能です。借り換えによる返済額から諸費用を差し引き、それでもメリットとなるかどうかを慎重に検討した上で決めるべきでしょう。また、借り換えの場合でも審査があるため、手続きのための時間を確保することも必要になります。

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仮に、借入残高2000万円(残りの借入期間30年)を1.2%から0.9%のローンに借り換えた場合を見てみましょう。

金利 毎月の返済額 総返済額
1.2%(A) 6万6181円 2384万円
0.9%(B) 6万3413円 2284万円
差額(A-B) 2768円 100万円

この借り換えの場合、毎月の返済額を約3000円、総返済額を約100万円削減できます。

しかし、借換時に発生する諸費用が100万円を超えてしまうと、借り換えでお得になることはなく、最終的な負担が増える結果になってしまいます。これだと借り換えた意味がありません。

04借換時の失敗ケース3:審査基準の確認不足

借り換えを検討している多くの方が「借り換えの審査に落ちたらどうしよう」という悩みを抱えているようです。一度住宅ローン審査を通っているからといって、借換時の審査にも通るとは限りません。仮に離婚などで借り換えを検討する場合には、以前と変わらぬ安定した収入状況を証明する必要があるでしょう。

住宅ローンの審査において重要になるのが、年間の返済額が年収に占める割合を表す「返済負担率」です。最初の借入時よりも年収が減っている場合や、新たに車のローンやキャッシングローンを抱えている場合には、返済負担率が基準を超え、借り換え自体が難しくなります。

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また、住宅ローンの借り換えを検討する時点で、体調面に変化が起こっていることも考えられます。契約の際、多くの場合「団体信用生命保険(団信)」への加入が義務付けられています。しかし、借換時に健康状態が悪化しているようだと、団信には加入できません。これにより審査に通らなくなる可能性があります。

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住宅ローンの引き落としに関する不備や、クレジットカードの支払い延滞によって信用情報が記録されている場合なども、借り換えの審査に落ちる要因となってしまいます。借り換えの失敗を防ぐために、住宅ローン審査の基準についてあらかじめ確認しておきましょう。

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05借換時の失敗ケース4:持ち家の担保価値の低下

住宅ローンの借り換えを行う際に注意したいのが、住宅ローンで購入した不動産の担保価値です。新築物件を購入するために住宅ローンを組んだ場合、一般的には不動産価値よりも、収入や勤続年数などの人的評価に重点が置かれる傾向があります。しかし、借り換えの場合は対象住宅が中古物件となります。そのため、「住宅の不動産価値」が「住宅ローン残高」よりも価値として上回っていること、もしくは同等であることが求められます。

借り換えを行う場合の条件

住宅の不動産価値住宅ローン残高

物件の価値は居住年数の長短のみにより判断されるものではありません。例えば、10年前に駅から徒歩15分にある駐車場付きの戸建て住宅を購入していたとします。今現在、駅から徒歩10分の場所に10年前にはなかったタワーマンションなどが建っている場合には、所有している戸建て住宅の不動産価値は低いと判断され、借入額が少なくなってしまう可能性があります。住宅ローンの借り入れの際は、物件審査によって融資額の上限に影響が出るため、注意が必要です。

住宅ローンを新規で契約する際は、「売買代金」や「工事請負契約金額」の100%を融資の上限とする金融機関がほとんどです。しかしながら、たとえ新築として、たった1日経過しただけでも、売りに出す場合には購入時の2~3割ほどの低価格でしか売れません。金融機関にとって、不動産は大切な担保となります。新規の借り入れから長い時が経過している場合には、物件の価値だけでなく、取り壊し費用を視野に入れて融資額を決める金融機関もあります。

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金融機関によっては、住宅ローンの借り換えに限り、担保価値の200%まで融資可能と設定するケースもあります。しかし、居住年数がかなり経っている場合には、まずは不動産の担保価値についてあらかじめ調べた上で借り換えを検討しましょう。

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06借り換えが成功しやすい条件とは

住宅ローンの借り換えには成功しやすい条件があります。借り換えを検討しているなら、以下の条件をクリアしているかどうかをチェックしてみましょう。

1.借り換え前後の金利差が1%以上ある

まず、借り換えることにより、金利が1%以上下がることが条件です。借入期間や借入金額によっては、0.5%下がるだけでも大きな利息削減効果を生む可能性もあります。

借り換えを検討するにあたっては、借り換え後に適用される金利によってどのくらいの利息負担が削減できるのかをシミュレーションし、最終的に自分に合った金融機関で借り換えるようにしましょう。

シミュレーションの際には、借り換えを行うことによって発生する諸費用も含めたうえで計算することも忘れないようにしましょう。諸費用は金融機関によって異なりますので、かかる諸費用の額によっては思ったほどの利息負担減少につながらない可能性もあります。

2.住宅ローン借入残高が1000万円以上ある

借り換えを行うことで得られるメリットは、借入残高が多いほど大きくなると言われています。なぜなら上でも述べたとおり、借り換えは借り換え先の金融機関にとっては新規契約の扱いとなり、住宅ローン契約にかかる諸費用が発生するからです。

諸費用には事務手数料や保証料などさまざまな項目があり、100万円近くの額になることも珍しくありません。

借入残高が1000万円以下の場合、諸費用の額が負担となり、結果的に借り換えるメリットが少なくなってしまう可能性があることを覚えておきましょう。

3.返済期間が10年以上残っている

借り換えによる金利差の効果は、残りの返済期間が長いほど大きくなります。住宅ローンの返済方法では元利均等返済を選択している人が多く、残りの返済期間が短くなるほど返済額に占める元本の割合が多くなるからです。そのため、いくら金利の低い金融機関に借り換えたとしても、利息負担削減効果は思ったよりも得られない可能性があります。

借り換えで発生する諸費用によっては、借り換えを行わずに現在の住宅ローン契約のまま返済を続けたほうがいいケースもあります。

07失敗しないためのチェック項目

住宅ローンの借り換えに失敗しないためには、以下の項目をチェックしておきましょう。

1.諸費用を含めた利息負担削減効果が得られているか

借り換えを行う際には金利にばかり気を取られてしまいがちですが、借り換えによる諸費用が発生することを忘れてはいけません。諸費用の額によっては、金利の低い住宅ローンに借り換えたとしても、あまりメリットが得られないケースもあり得ます。

そのため借り換えを行うにあたっては、必ず諸費用を含めた額でシミュレーションを行い検討するようにしましょう。

また、金融機関によっては諸費用を住宅ローンの借入金額に含められないところもあり、その場合は現金で用意しなければなりません。諸費用を支払うことによって一時的に手持ちのお金が減ってしまうため、その後の家計に影響がないかも確認しておきましょう。

2.金利上昇リスクへの対策は取れているか

借り換えによって、全期間固定型から変動型もしくは固定期間選択型へ金利プランを変更する場合は、今後の金利上昇リスクも視野に入れておかなければなりません。

変動型であれば5年ルールや125%ルールが適用されるものの、金利の上昇率次第では未払い利息が発生し、完済時の返済額が大きくなる可能性があります。

そのためにも毎月の返済額に余裕を持たせ、繰り上げ返済を計画的に行うほか、仮に未払い利息が発生した際にも対応できるよう手持ちの資金も確保しておきましょう。

3.申込者の属性や信用情報に問題がないか

借り換えは借り換え先の金融機関にとって新規の申し込みにあたるため、申し込みを受けた後は審査を行います。審査でよく見られるのは、年収や勤務先、勤続年数などの属性ですが、信用情報機関への照会も必ず行われます。

前回の住宅ローン申込時には信用情報に問題がなかったとしても、それ以降に延滞などの信用事故を起こしており、その情報が信用情報機関に登録されていた場合、審査に通ることは難しくなります。

不安な場合は、借り換えを申し込む前に信用情報機関に対して情報開示の請求を行い、自分の信用情報を確認しておきましょう。

また、借り換え前に転職し収入が下がったなどのケースでは、審査に通ることが難しくなるケースも考えられますので、転職などを考えている場合はタイミングに注意が必要です。

4.健康状態に問題がないか

一般の金融機関で住宅ローンを申し込む場合、団体信用生命保険への加入が必須です。これは借り換えだとしても同じです。当初借り入れた時期からかなり年数が経っている場合、その間に病気になったり、持病が悪化したなどのケースも考えられます。特に高齢になるにつれ、病気になる確率は高くなるため注意しておきましょう。

団体信用生命保険へ加入ができない場合、審査に通らず借り換えができませんので、自分の健康状態を事前に確認しておくことが大切です。もちろん、持病があった場合でも加入できるワイド団信も用意されていますが、金利の上乗せが発生するケースが多く、結果的に金利の引き下げ効果が薄れてしまいます。

川添典子

監修:川添典子

住宅金融普及協会 住宅ローンアドバイザー/2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

大学卒業後、某ハウスメーカー就職。住宅販売の営業職として、顧客開拓、住まいづくりの提案、資金計画相談、販売後のアフターフォローを担当。仕事を通して、お客様の一番の関心事と不安はお金に関する事だと感じ、ファイナンシャルプランナー2級と住宅ローンアドバイザーの資格を取得。ハウスメーカーを退職後、暮らしに役立つライター・編集者として、お金・不動産に関する知識や情報を提供しています。

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