マイホームが欲しい!賢い情報収集術は?

14

マイホーム取得に関する相談を受けることも多いファイナンシャルプランナーのK氏。マイホームは人生最大の買い物ともいわれますが、相談者の中には、ほとんど何の基礎知識もないまま購入しようとしていたり、偏った情報をうのみにしていたりする人も少なくなく、驚くことが多いと言います。では、どうすれば有効な情報をバランスよく集めることができるのでしょうか?K氏と一緒に、マイホーム購入に役立つ情報収集術について考えてみましょう。

01マイホームを取得した人たちの情報源は?

―今の時代、インターネットなどでいろいろな情報が手に入りますが、実際のところ、マイホームの取得の際にはどの情報源が一番役に立つのでしょうか?

K氏:取得する住宅の種類や立地などによって異なるので一概には言えませんが、独立行政法人住宅金融支援機構が住宅購入者を対象に「住宅ローンを利用する上で役立った情報源」を聞いたアンケートの結果が参考になるかもしれません。このアンケートで最も多くの人が「役に立った」と回答した情報源は、「住宅・販売事業者(営業マン、店頭、営業所など)」(同機構が提供する住宅ローン・フラット35の利用者:50.7%、その他のローンの利用者:40.4%)で、2位以下の「インターネット」や「金融機関」を大きく上回っています。

住宅ローンを利用する上で役立った情報源は?

情報源 フラット35の利用者 その他のローンの利用者
住宅・販売事業者 50.7% 40.4%
インターネット 30.7% 26.4%
金融機関 10.0% 17.0%
口コミ 8.6% 11.0%
FP、住宅ローンアドバイザー等の専門家 16.4% 8.2%
住宅情報誌 6.4% 8.8%
新聞記事 5.7% 8.7%
勤務先(福利厚生・職員向け説明会など) 9.3% 6.5%
モデルルーム・住宅展示場 11.4% 6.3%
住宅金融支援機構 7.9% 5.1%

出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2020年11月)」P14

―好きなときに手軽に情報収集ができるインターネットよりも、「住宅・販売事業者が役に立った」と回答した人が多いのですね。少し意外な気がします。

K氏:住宅・販売事業者、いわゆる不動産業者は不動産のプロですから、住宅ローンに関する情報だけでなく、例えば住宅の性能や工法、不動産取引特有の商習慣や税制優遇など、不動産に関わるあらゆる情報を提供してくれるのが特徴です。地域密着型の事業者の場合は、その地域の取引価格の相場や住環境に詳しいという強みもあります。

住まい探しや購入に必要な情報をピンポイントで提供してくれますし、情報+プロのアドバイスがもらえるというメリットもあります。

ただ、不動産業者は、あくまでも販売する側なので、その情報だけに頼るのは考え物です。信頼できる不動産業者見つけられれば良いですが、情報源自体を一つに絞らず、金融機関やFPなど、いくつか信頼できる相談相手を確保しておくと、バランスの取れた情報収集ができる可能性が高いでしょう。

02情報収集で注意すべきこと

―マイホームの購入については、まず誰に相談すれば良いのでしょうか。

K氏:まずは、段階に応じて情報収集のチャネルを整理しましょう。

まだ具体的に購入の条件などが絞り込めていない段階の人は、不動産業者や金融機関にいきなり問い合わせるのではなく、不動産情報誌やインターネットの不動産ポータルサイトでいろいろな物件を見て、自分の住みたい種類の不動産、間取りや設備、立地条件、金額などを具体的に絞り込んでいきましょう。

そしてある程度条件が絞り込めた時点で、専門家に相談しましょう。不動産業者は不動産のプロ、金融機関は融資のプロですから、住宅そのものに関する情報収集は不動産業者、住宅ローンに関する相談は金融機関、購入後の家計や資産設計についてはFPにというふうに、テーマに応じて相談相手を使い分けると良いですね。

なお、気になる物件について問い合わせする際には、対象の不動産の種類ごとに、問い合わせ窓口が異なることに注意してください。

原則として、新築分譲マンションの場合はディベロッパー(マンション開発を行う不動産会社)、中古マンションの場合は不動産仲介業者、一戸建て住宅や注文住宅の場合はハウスメーカーや建築会社が販売窓口になります。

―ほかに、情報収集にあたって注意すべきことはありますか?

K氏:逆説的ではありますが、相談者側も、ある程度の情報を提供できるようにしておくことです。というのも、私たちFPをはじめ、皆さんから相談を受ける立場の者は、例えば、購入したい不動産の種類(マンションか一戸建てか)、住みたいエリアはどこか、新築か中古か、自己資金はどのくらいあるのかなど、相談者の希望や条件に合わせて、必要な情報を提供しているのです。例えば、マイホームを買いたいが、どうしたら良いのかといった漠然とした質問には、回答もあいまいにならざるを得ません。必要な情報を効率よく集めるためには、事前に、自分自身の希望や条件を整理してリストアップしておくほうが良いですね。そうすることで聞きたいことも明確になりますし、相談もスムーズに進むと思います。

また、マイホーム購入の本来の目的を見失わないことも大切です。住宅ローン選びや物件選びをしていると、購入すること自体がゴールのように錯覚してしまいますが、マイホーム購入の本来の目的は、その住まいで安心して快適な生活を送ることのはずです。情報収集の際には、購入後の生活に関係する情報(周辺地域の治安、学区内の学校の評判など)や、団信の保障内容の確認、繰り上げ返済の条件の確認など、実際にマイホームに住み始めてからの生活を想定して、必要な情報を集めるようにしましょう。

また、そこに住むことになる家族の考えもきちんと確認しておきましょう。

―購入後の生活のこともあるので、家族の意見を聞くことも大切ですね。

K氏:そうですね。マイホーム探しは、その住宅に住む皆の意見を聞いて、家族全体で取り組むことが大切です。少なくとも物件を実際に見る内覧や現地確認には、家族皆で出かけるようにして、それぞれの立場から物件のチェックをするようにしてください。そして少しでも心にひっかかることや疑問に思ったことは、決してそのままにしないこと。購入した後になって「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように、わからないことは躊躇せず不動産業者や金融機関の担当者、もしくはFPなどの専門家に確認し、疑問や不安を解消した上で、購入に踏み切るようにしましょう。

03百聞は一見に如かず!実際に物件を見に行こう

―内覧に行く際には、主にどんなところを確認すれば良いのでしょうか?モデルルームやハウスメーカーの住宅展示場はおしゃれにコーディネートされているので、自分が生活しているイメージが抱きづらく、どこをチェックすれば良いのかわかりません。

K氏:マンションのモデルルームや住宅展示場での内覧では、実際に自分たちが住むことになるかもしれない物件を実際に見て、体験することができます。一方でおっしゃるように、普段の生活ではありえないような見せ方がされていて、かえって実感がわきにくいケースがありますね。そのため、物件を見に行く際には必ず事前にチェックリストを作って、一つずつ確認するようにしてください。不明な点などを担当者に聞くこともできますので、予約してから出かけることをおすすめします。

複数の物件を実際にチェックすることも、さまざまな知見も得られる大切な情報収集のひとつだと言えるでしょう。

チェックするポイント

内覧で必ずチェックしたいポイントは以下の通りです。下記のリストと共に、メジャーや筆記用具、メモ、カメラなどを持参しましょう。また、方角を確かめるための方位磁石や、電気の通っていない物件や、光が届きにくいところのチェックをするための懐中電灯があると便利です。

広さ

広告などで〇帖、〇㎡という数字は確認できても、現地に行かないと広さは実感できません。特に図面では広さがわかりにくいキッチンや脱衣所などでは、体を無理なく動かせるか、方向転換がスムーズにできるかなどのチェックをするようにしましょう。

ドアや廊下の幅

今使っている家具が持ち込めるだけの幅があるかどうか、測ってメモしておきましょう。

収納の数や大きさ

今の持ち物を収納できるスペースが確保されているかどうか確認しましょう。

コンセントの数や位置

今持っている電化製品を快適に使えるだけの数があるか、使い勝手の良い位置に設置されているかどうかを確認します。

音やにおい、振動など

近くに道路や線路がある場合は、車や電車が通過するまで待ち、どの程度の音や振動が伝わってくるかを確認しましょう。また、中古物件の場合は、生活臭やたばこのにおいなどが染みついている可能性があります。水回りなどに異臭がしないかどうかも確認しましょう。

日当たりや眺望

建売住宅や中古住宅、中古マンションでは近隣の建物で眺望や日当たりがさえぎられていないかどうかを確認しましょう。日当たりが良すぎると家具が傷みがちになったり、夏は室温が高くなりすぎてしまったりするおそれがあることも頭に入れておきましょう。

室内の汚れや不具合

中古物件の場合は、室内に汚れや不具合がないか、しっかり確認しましょう。収納の内部やシンク下なども開けてチェックし、もし不具合がある場合は、入居までに修理してもらえるかどうかも確認してください。

敷地内にある設備の位置と利用状況

マンションの場合は、駐車場や駐輪場、宅配ボックス、ごみ置き場など敷地内の設備の位置や、中古マンションでは駐車場や駐輪場などの利用状況を確認しておきましょう。

管理状態

中古マンションの場合は廊下やエントランス、ロビーなど共用部分の管理状況も確認を。電球が切れたままになっている、共用部の掃除が行き届いていない、ロビーに古い掲示物が張りっぱなしになっているなどがあれば、管理状態に問題がある可能性があります。

住民のマナー

同じく中古マンションの場合はドアの前に私物を放置している住民や、ベランダに私物を積み上げている住民などがいないかどうかチェックしましょう。マナーの悪い住民がいると、騒音やゴミ出しなどを巡ってトラブルになるおそれがあります。

以下はマンションや、建売住宅など、居住する地域が決まっている場合にチェックしておくべきものです。

利便性

最寄り駅やバス停、学校までの距離と所要時間を実際に歩いて確認しておきましょう。

近くに病院やスーパー、銀行、子供の遊び場など日常生活に必要な施設や店舗があるかどうかを確認するために、近所を散策してみることも大切です。そうすることで周辺の雰囲気も知ることができます。新築マンションのモデルルームは実際の場所から離れたところに作られていることもあるので、現地に行き、チェックしておくことが大切です。

治安・安全性

駅や学校までのルートの人通りや、街灯が十分に設置されているかどうかの確認も忘れないようにしましょう。できれば夜も物件の周辺に行き、雰囲気を確認しておきましょう。

04予算・借入可能額・毎月の返済額から、住宅ローンをシミュレーション

―物件や周辺環境については自分でもいろいろと確認できそうですが、住宅ローンについては仕組みや金利の計算が複雑そうですし、複数の金融機関に問い合わせたり話を聞きに行ったりするのは大変そうで、躊躇してしまいます。

K氏:確かに住宅ローンの返済額や借入可能額を自力で計算するのは難しいですし、複数の金融機関に問い合わせてローンを比較検討するのも大変です。そこで、利用したいのが、不動産情報のウェブサイトなどが提供している無料のシミュレーションサービスです。中でも、私がよくお客様におすすめしているのが、「スゴい住宅ローン探し」の住宅ローンシミュレーションです。このサービスでは、「借入可能額」、「毎月の返済額」、「住宅購入予算」の3項目に加えて、老後のお金も試算ができ、いくつかの数値を入力するだけで、その場で金額の目安を確認することができます。

例えば、賃貸住宅にお住いの方なら、「借入可能額」シミュレーターを使って、今支払っている家賃などの情報を入力すれば、今の家賃と同じ負担でどのくらいの借り入れができるのかが算出されます。もちろん、あくまでも試算なので算出された金額ぴったりの借り入れができるわけではありませんが、一つの目安として知っておくとローン選びの選択肢を絞るのに役立ちます。また、いずれのシミュレーターでも、借入金利の違う金融機関ごとに試算することができるので、比較検討も可能です。

その気になれば自分でもいろいろな情報が手に入る時代ですが、独力での情報収集には限界がありますし、場合によっては誤った情報を信じてしまったり、偏った情報だけを入手してしまったりするおそれもあります。各分野の専門家の力や便利なサービスを上手く使って、効率よく、正しい情報を集めるようにしましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

関連キーワード

この特集の他の記事

ご利用上の注意

  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただいたものとします。

0