住宅ローンの審査にさえ通れば良い?返済後も見据えた検討を

2021.06.04 10

新聞や雑誌などで活躍するファイナンシャルプランナーのS氏は、住宅ローンの相談を受ける時、審査にさえ通ればそれでいいと考えている人が意外に多いと感じていると言います。ほとんどの人が不動産業者に言われるままに金融機関を選び、返済が始まってからの生活についてもあまり気にしていないと指摘するS氏に、返済後も見据えた住宅ローン選びについて話を聞きました。

01住宅ローンの選び方

ファイナンシャルプランナーのS氏には住宅の購入に関する相談が数多く持ち込まれます。相談に来る人たちはどのように住宅ローンを選んでいるのでしょうか?

多くが不動産業者に勧められるままに

-住宅ローン選びで一番多いのはどういったパターンでしょうか?

S氏:不動産業者が提携している金融機関に事前審査を申し込み、他と比較をすることもなく、そのまま借りようとしている人が多いですね。住宅ローンは期間も長く金額も大きいので、誰もが本当に返していけるのかどうか不安に思うものです。そんな時に、「銀行が貸してくれるということは返済能力があるということです。大丈夫ですよ」と不動産業者に背中を押されると安心して手続きを進めるケースが多くなるようです。確かにその気持ちはわかります。

-不動産業者と提携している金融機関の住宅ローンを利用することは良くないのでしょうか?

S氏:必ずしもそうとは言えません。金融機関がローン審査を行うときには、年収や雇用形態、勤務年数、信用情報などの「借りる人に対する審査」のほかに、購入する物件の所在地や建物の構造など「購入する物件に対する審査」があります。住宅ローンでは、購入予定の物件が担保となりますが、その物件の担保価値が明確でないと、住宅ローンの審査をすることができません。その情報はもちろん不動産業者が持っています。また、不動産業者と提携している金融機関での審査なら、手続きの一部を不動産業者が代行してくれる場合もあります。自分で金融機関を選ぶと、審査に必要な書類を自ら準備をし、物件にかかわるものは不動産業者に依頼する必要があります。

不動産業者と提携している金融機関での手続きでは、そうした手間のかかる作業が軽減されるのでそれは大きなメリットです。

-だとすれば、問題はなさそうな気がしますが

S氏:それでも私は各金融機関で自ら情報を集めることをお勧めしています。

つい、忘れがちですが、不動産業者は顧客の将来の返済に責任を負うわけではありません。無理なく返していけるローンを組むための情報収集は自分自身で行うべきだと相談にいらっしゃる方には伝えています。

-これから住宅購入を検討する人向けに、インターネットのウェブサイトで、住宅ローンを返済するための試算ができるサービスが提供されています。Sさんがおすすめするサービスはありますか?

S氏:スゴい住宅ローン探しの「住宅ローンシミュレーション」は使いやすいと思いますよ。

ここでは、住宅購入予算・借入可能額・毎月の返済額・老後のお金の4つのシミュレーションができます。今の家賃から住宅購入の予算を考えたい人、金利や返済期間の違いで月々の支払いがどのように変わるか比較したい人など、目的別に使用できて大変便利です。

住宅ローンの審査にさえ通れば良い、ではなく、事前のシミュレーションを行い、余裕を持った資金計画を立てるようしましょう。

02借入可能額と注意点

Sさんによると、住宅の購入を検討する人たちの最も興味のあることは住宅ローンの借入可能額だそうです。何を目安に考えれば良いのでしょうか?

総返済負担率から目安を知る

-借入可能額を調べる方法はありますか?

S氏:借入可能額についての質問を受けた時、まず私が説明するのは「総返済負担率」です。

総返済負担率は税込みの年収に占めるローンの年間総返済額のことで、金融機関では一定の割合の範囲を定めて審査を行っています。総返済負担率は金融機関や住宅ローンの種類によって異なりますが、30%から35%を上限としているところが一般的です。収入が低いと上限はさらに低くなります。住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供する住宅ローンのフラット35では年収400万円未満の場合の総返済負担率の上限は30%、年収400万円を超える場合は35%と基準を定めています。

年収が400万円、総返済負担率が35%の場合で考えてみましょう。

年間返済額の上限は、400万円×35%=140万円となり、それが借入可能額の上限となります。140万円を12カ月で割った約11万6666円が毎月の返済額の上限です。

この額が「いくら借りられますか?」の回答の目安になるのですが、ここで注意しておきたいのは、年間返済額には、住宅ローン以外の借り入れの返済額も含まれることです。仮に月々3万円のマイカーローンがある場合は、上記の例での返済額の上限は約8万6666円となります。

そうしたことを理解したうえで、先に紹介したシミュレーションのサービスを利用すると、より具体的にいくら借りられるのか、返済はどんなふうに行えば良いのかなどを実感することができるでしょう。

借りられるだけ借りることは避ける

-借入可能額の上限まで借り入れすれば良いのでしょうか?

S氏:借りられることと、返済できることは必ずしもイコールではありません。借りられるだけ借りることは避けましょうと相談にいらっしゃる方にはアドバイスをしています。

住宅を購入した後も、住宅ローンの返済はもちろん、毎年の固定資産税や、住宅が市街化区域にあれば都市計画税を毎年納めなければなりませんし、マンションの場合は管理費や修繕積立金の支払いもあります。さらに教育費や老後の資金など、将来への備えも必要なので、住宅ローンの返済だけで家計に余裕がなくなってしまうような借り方は避けた方が良いのです。

金利はいつ決まる?

-住宅ローンの金利は変わりますが、契約した住宅ローンで適用される金利は、申し込んだ日なのか、あるいは融資が実行された日なのでしょうか?

S氏:金融機関は一般的に毎月の第一営業日に住宅ローンの金利を公表します。実際に利用する住宅ローンの金利のことを「適用金利」といいますが、適用金利が決まる時期には「申込時金利」と「実行時金利」の2つがあります。

申込時金利は住宅ローンの申込を行なった時点の金利、実行時金利は融資実行日時点の金利です。多くの金融機関は「実行時金利」を適用しています。

新築マンションや注文住宅などでは、売買契約を行なってから物件が完成して引き渡されるまでに時間がかかります。融資が実行されるのは、住宅ローンの契約者が、完成した物件の所有者になった時点です。住宅ローンの契約から、融資の実行日までの期間が長い場合は、金利が高くなる可能性があることには留意しておきましょう。

諸費用は現金で払ったほうがいい

-物件の代金以外にかかるお金があると聞きました。いくらくらいかかるのでしょうか?

S氏:不動産物件を購入する際には、物件の代金以外にも印紙税や登記費用、住宅ローン事務手数料などの「諸費用」が必要となります。新築マンションでは物件価格の3~5%程度、注文住宅では土地、建物の総額の10~15%が目安だと言われます。

住宅ローンに組み込んで払う、あるいは諸費用ローンを借りるといった方法もありますが、なるべく現金払いにするべきです。住宅ローンに組み込むと、不動産の購入に充てられるはずの借入可能額が減り、諸費用分の金利が上乗せされます。また、諸費用ローンは一般的には住宅ローンより金利が高くなります。

仮に4000万円のマンションを購入するとして、諸費用に5%かかると200万円になります。諸費用を含めた資金計画を立てておくことが大切です。

03住宅購入費以外の準備も必要

人生の3大資金と言われるうちの1つが住宅にかかるお金だとS氏は話します。あとの2つは教育資金と老後資金。いずれも多額の費用が必要となるものです。

ライフプランを考える

-住宅ローンの返済で教育資金や老後資金を用意できないということは避けたいですね。

S氏:今後の人生には住宅の購入、教育資金、車の購入、老後の生活など大きな資金が必要となるいくつかのイベントが想定されます。そうしたお金が必要となるタイミングや金額を想定して計画を立てることをライフプランといいます。ライフプランを具体的にイメージするための便利なツールがあります。日本FP 協会と金融広報中央委員会が提供しているもので、いずれも無料で利用ができ、これから住宅購入を考える人はもちろん、住宅を購入した人にも役立つものです。

日本FP協会のウェブサイトでは、家計の収支確認票、家計のバランスシート、ライフイベント表、家計のキャッシュフロー表がダウンロードできます。

また、金融広報中央委員会の「知るぽると」で生活設計診断では家族構成、収入、支出、年金などを入力すると、現行の制度を反映したシミュレーションができます。

ローンの審査に通ったからそれでおしまいではなく、住宅ローンを返済しながら将来必要となるお金を把握し、返済後も見据えた準備することを意識しておくようにしましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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