高齢でも住宅ローンが組める親子リレーローンとは

2021.06.04 12

Bさんは54歳の会社員。妻と、24歳の一人息子と一緒に賃貸マンションで暮らしています。年齢が高いことから新たに住宅ローンを組むことをあきらめていましたが、息子から親子リレーローンの話を聞き、親子リレーローンを使ったマイホームの取得を考えることにしました。

01親子リレーローンとは

親子リレーローンとは、ひとつの物件に対して親子が共に1つの住宅ローンを契約し、リレーのバトンをつなぐように、親子が順に2代にわたって返済するものです。「親子」という名称ですが、配偶者や親族でも契約が可能な金融機関もあります。

Bさんは、親子リレーローンを申し込むために何が必要かを調べてみました。まずは安定した収入があることや、良好な健康状態であることなどが大切なようです。

54歳のBさんが気になったのが年齢制限です。金融機関によって違いはありますが、一般的に住宅ローンは、申込時に65〜70歳未満であること、完済時に75〜80歳未満であることが条件となっています。契約者が定年を迎えた際に返済が滞ることを危惧しての条件ですが、例えば転勤のある仕事で全国をまわり、定年を迎えた後にマイホームを持ちたいと考えるBさんのような人には厳しい条件です。

Bさんは年齢が高くなると長期の住宅ローンを組むことは難しいと理解していましたが、親子リレーローンなら子どもの年齢を基準に返済期間を決められるので、利用できそうです。

親子リレーローンを利用するための要件

Bさんはさらに親子リレーローンを利用するためにはどういう要件を満たせばよいのか調べました。申込要件は金融機関によって違いますが、おおよそ以下のようになっています。

  • 同居中、もしくは将来的に同居を予定している親子
  • 借入時の親の年齢が満70歳未満であり、子は満20歳以上である
  • 子の最終返済時の年齢が満80歳未満である
  • 返済を引き継ぐ子が1人
  • 親子の双方に安定した収入がある
  • 団体信用生命保険(団信)に加入できる

その他、前年の税込年収額や、給与所得者の場合は勤続年数なども考慮されるようです。金融機関や商品によって違いがあるため、よく確認することが必要です。

親子リレーローンの借入額比率と持ち分(所有権)比率

親子リレーローンでは、親子同士で持ち分の比率を自由に決めて登記することになります。仮にローンを親子で半分ずつ負担しても、親が1/10、子が9/10といった持ち分比率にすることもできるようです。

しかし、このような持ち分比率にすると、住宅ローンの借入額比率は同じなのに、親から子に不動産が贈与されたとみなされ、贈与税の対象となってしまう可能性があることがわかりました。

持ち分の比率を住宅ローンの負担の比率に比例して設定すれば、贈与税の対象にはなりません。もっとも親が亡くなると、親の持ち分は相続税の対象となります。

ただし、贈与税は相続税よりも高い税率が設定されているようです。

住宅ローンが4000万円として、先の例のように親子が5/10ずつ負担し、持ち分比率を親が1/10、子が9/10の持ち分比率とした場合、子が負担すべき4/10の返済分(1600万円)を親が贈与したとみなされた場合、贈与税の課税価格は455万円となります(※1)。

(※1)参考:贈与税の計算と税率(暦年課税)

また、相続税についても調べてみましたが、財務省の調査を見ると、死亡者数に対する相続税の課税件数は8.3%にすぎません。Bさんの場合は、仮にこれから資産を増やして7000万円の相続財産があったとしても、相続する妻と子が負担する相続税は160万円です。

(※2)参考:国税庁「相続税の税率」

そのため持ち分の比率は住宅ローンの負担の比率に比例して設定したほうが良いようです。もっとも税金についての詳しいことは、自分で判断することが難しいケースが多いので、必ず税理士などに相談する必要があるようです。

02ペアローンとの違い

親子リレーローンについて調べていたBさんは、息子から親子リレーローンと同じように2人でローンを返していく「ペアローン」というものもがあるらしいよと教えてもらいました。

ペアローンはひとつの物件に対して、一定の収入がある複数の人がそれぞれに住宅ローンを契約し、互いに連帯保証人になるという仕組みの商品です。多くは夫婦での契約ですが、金融機関によっては同性パートナーや親子での契約が可能な場合もあります。

親子リレーローンと、親子でペアローンを利用する場合の違いをまとめてみました。

親子リレーローンと親子でペアローンを利用する場合の違い

親子リレーローン ペアローン(親子)
ローン契約の数 1つ 2つ
返済 まずは親が返済をはじめ、その期間は子が返済する必要はない 親子それぞれが同時に返済を始める
団体信用生命保険(団信) 子の側のみが加入することが多い 親子それぞれに加入する

親子リレーローンが1つの住宅ローンの契約を2人で引き継いで返済するものなのに対して、ペアローンは二人が契約した2つの住宅ローンをそれぞれが返済するというものです。

また、住宅ローンの返済中に契約者に万が一のことがあった場合、保険金により残りの住宅ローンが弁済される団体信用生命保険(団信)の加入についても違いがあります。ペアローンではペアを組む親子や夫婦それぞれが団信に加入するのに対し、親子リレーローンは親か子のどちらかが団信に加入します。金融機関によっては、親子両方が団信への加入を求められることもあります

親に万一のことがあった場合

Bさんには気になることがありました。自分と息子がリレー式でローン返済をする場合、自分の分の返済が終わらない間に自分の身に万一のことがあったら、息子はどうなってしまうのだろうということです。団信に加入していると、加入者が保険期間中に死亡もしくは高度障害状態になった場合にはローンの残債を払ってもらえることは理解していましたが、親子リレーローンでは、団信に加入できるのは子どもだけという商品もあります。子どもだけしか団信に加入していない場合、Bさんが返済期間を終えないうちに万一のことがあると、Bさんの残債を全て息子が引き継いで返済していく必要があるのです。

また、親子ともに団信への加入が必要な商品もありますが、特に親の側が高齢による健康の問題で、団信加入ができないといったこともあるようです。団信の加入ができないときには、ローン契約自体ができないこともあることを知り、Bさんは健康管理の大切さを改めて感じるとともに、加入している生命保険の契約を確認することにしました。

住宅ローン控除

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、要件を満たした場合、対象の住宅に住み始めてから要件を満たした場合、対象の住宅に住み始めてから今なら13年間、ローン残高の1%分の税金が控除される制度です。親子リレーローンでは、Bさんと息子のそれぞれが持ち分に応じた住宅ローン控除を受けることができます。

親子リレーローンの支払いはBさんから始まり、Bさんが支払っている間、息子の側は支払いをしません。しかし住宅ローン控除はローン残高に対して適用されるため、ローンの支払いを始めていない息子にも控除が適用されるのです。

03親子リレー返済のメリットとデメリット

親子リレーローンの検討を進めるBさんは、そのメリットとデメリットを整理することにしました。

親子リレーローンのメリット

親子リレーローンのメリットは以下の通りです。

返済期間を長くでき、月々の支払額を抑えられる

多くの住宅ローンでは、完済時の年齢が満80歳未満であることが条件となっています。現在54歳のBさんが単独で住宅ローンを組む場合は、年齢の1年未満は切り上げて計算するため、80から55を引いた最長25年のローンしか組めません。しかし親子リレーローンでは子どもの年齢が基準となるため、最長35年の住宅ローンを組むことができます。

同じ借入額を返済するなら、長期間での返済を行った方が、1カ月あたりの支払い額を抑えることができます。借入額を4000万円とし、返済期間を25年と35年で試算して比較すると月々の返済額はおよそ約3万8000円も抑えられることがわかりました。

借入額4000万円の返済例

1カ月の支払額
返済期間25年 13万9701円
返済期間35年 10万1639円

※借入希望額4000万円、ボーナス払いなし、金利0.375%で返済する場合

借入額を増やせる

親子リレーローンでは親子の収入を合算できるため借入可能額が増え、物件選びの選択肢が増えます。息子の将来を考えて、一般住宅よりも高額になりがちな二世帯住宅を建てたいといった検討もできるようになるでしょう。

また、Bさんの息子はまだ若く、年収がそれほど高くありません。年収が低いために借入希望額を借りられないといった場合に親子リレーローンを利用すれば、Bさんが息子の住宅取得をサポートすることにもなります。

さらに、前述の通り、Bさんも息子も住宅ローン控除を受けることができます。

親子リレーローンのデメリット

親子リレーローンには以下のようなデメリットもあります。

万一の時の備え

Bさんも心配している通り、団信に息子しか加入できない商品の場合は、Bさんが亡くなる、あるいは所定の高度障害になった時には残債を息子が引き継いで返済していくことになります。親の分のローンが減らないまま子が引き継ぐことになるとローン破綻を起こすリスクがあります。Bさんは、現在加入している生命保険で何とかカバーできそうですが、もしもの時の備えは大切だと痛感しました。

相続でトラブルとなる可能性

親子リレーローンは、同居を予定している親子が利用します。親が支払う分、子が支払う分の比率がそのまま物件の持分比率になることが一般的で、親が死亡した場合、親の持分は相続の対象となります。Bさん一家の場合は息子が一人っ子なので心配ありませんが、兄弟姉妹がいた場合には、事前に親子や兄弟間で相続財産の配分を決めておかないとトラブルとなる可能性があります。

新たなローンが組めないことも

親子リレーローンでは、親の返済期間中には子どもの支払いがありません。しかし契約上では子どもは親の連帯債務者となっています。そのため、Bさんの息子は、自分が支払いしていない期間だとしても、親子リレーローンの契約期間中に新たな住宅ローンを組むことは難しくなります。

親の年齢がネックになって長期のローンが組めない場合や、子どもの年収が低くて希望額の借り入れができない場合などに、親子リレーローンは役に立ちそうなことが分かりました。Bさん一家には、親子リレーローンは選択肢の1つとなりました。Bさんは自分の身に万一のことがあったときに息子に大きな負担をかけないように、健康管理をしっかりするとともに保証についてもしっかり考え、親子リレーローンについて前向きに検討してみようと思っています。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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