はじめての住宅ローン
万が一のことなんて考えたくない!けど…
住宅ローンの返済中に死亡したらどうなる?団体信用生命保険について解説
川添典子
住宅金融普及協会 住宅ローンアドバイザー/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
今回は、住宅ローンの返済中に死亡した場合の手続きや、団体信用生命保険に加入していなかった場合の対処法について紹介します。
住宅ローン契約者が死亡したら返済はどうなる?
住宅ローンの契約者が亡くなった場合、団体信用生命保険(団信)に加入していれば保険金で残りのローンは完済され、家族に返済義務は残りません。団信に未加入だった場合は、残りのローンを相続人が引き継ぐことになります。
団体信用生命保険とは?
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン返済中に債務者が死亡や高度障害状態などによって返済ができなくなった場合、保険金によってローン残高に相当する保険金が支払われる仕組みです。保険金は住宅ローンを提供している金融機関に支払われるため、遺族は住宅ローンの返済を免除され、対象となる不動産を相続することができます。
住宅ローンは30~35年など、長期にわたって返済していく場合が多いローンのため、債務者が病気や事故で死亡してしまうリスクは十分に考えられます。そうなるとローンが返済されなくなり、住宅ローンを提供している金融機関にとっては大きな損失となります。そうしたリスクを回避するために、ほとんどの住宅ローンで団体信用生命保険への加入が必要とされているのです。
団体信用生命保険については、以下のサイトも参考にしてください。
死亡だけでなく所定の高度障害も保障対象
住宅ローン返済中に債務者が高度障害になってしまった場合も団信の保険対象となります。
高度障害とは、視力を失ってしまった状態や、言語や咀嚼の機能を永久的に失った状態、中枢神経系や胸腹部臓器に障害を残して常に介護を要する状態、体の一部を永久的に失ってしまった状態などを言います。「視力や言語機能を失ってしまった」「寝たきりの状態になってしまった」「手足2本以上が切断や麻痺などで動かせない」など、重い障害状態になった場合は、保険の適用対象となります。
高度障害の認定基準は、保険会社によって異なります。基準を満たした場合は、契約している団体信用生命保険の内容に応じて、住宅ローンの返済が免除される可能性があります。
症状によっては、病気や怪我をしてからの日が浅い場合、あらためて申請が必要になるケースなどがあるため、注意が必要です。その他にも、故意に高度障害になった場合や契約前からすでに生じていた怪我や病気が原因で高度障害状態になった場合は、保険の対象外となる可能性もあるので、保険会社に確認するようにしましょう。
- 住宅ローン契約者が死亡した場合、団体信用生命保険(団信)に加入していれば保険金で残りのローンが完済され、家族に返済義務は残らない
- 団体信用生命保険(団信)とは、死亡や高度障害によって返済が困難になった場合に、保険金でローン残高が相殺される仕組みのこと
- 高度障害も団信の保障対象となるが、認定基準は保険会社によって異なるため、契約内容を事前に確認しておくことが重要である
- 故意による高度障害や、契約前からすでに生じていた病気・怪我が原因の場合は、保険の対象外となる可能性がある
住宅ローン契約時に団体信用生命保険に加入していても、契約者の死亡によるローン返済の免除を受けられないケースがあります。考えられるのは「住宅ローンの返済を延滞していた」「告知義務違反をしていた」「夫婦や親子で住宅ローンを組んでいた」という場合です。
住宅ローンを延滞すると団信が失効する
住宅ローンの返済を延滞した場合は保険金が支払われず、ローンの返済が免除されません。団体信用生命保険の契約が失効する可能性があるためです。金融機関は住宅ローンの利息から保険料を支払っているケースが多いため、返済が滞ることで保険料の支払いも難しくなり、契約の失効へとつながってしまいます。
こうしたケースへの対処法として「任意売却」があります。任意売却とは、住宅ローンを残した状態で不動産を売却することを言い、債権者である金融機関からの同意が得られた場合に行えます。とはいえ、売却資金だけでは住宅ローンを完済できないケースも考えられます。残った債務を返済できるかどうか確認した上で、任意売却について検討し、手続きを行うのが良いでしょう。
任意売却の仕組み


告知義務違反をしていた場合、保険金が支払われない
団信に加入していても、加入時の告知で健康状態などに虚偽があった場合、「告知義務違反」とされ、契約が解除され、保険金が支払われないことがあります。また、加入後一定期間内の自殺など免責事由に当たる場合も支払対象外です。免責の条件は保険会社ごとに異なるため、約款を確認しましょう。
夫婦や親子で借りていた場合は免除されない可能性がある
夫婦で住宅ローンを借りる方法には「連帯保証」「連帯債務」「ペアローン」の3つがあり、契約方法によって万が一の際の保障範囲が異なります。
まず「連帯保証」と「連帯債務」では、原則として主債務者のみが団体信用生命保険(団信)に加入します。そのため、主債務者が亡くなればローンは免除されますが、一般的に団信に加入できない連帯保証人や連帯債務者が亡くなった場合は、ローン残高は一切減額されず、残された主債務者が引き続き全額の返済義務を負うことになります。
一方「ペアローン」は、夫婦それぞれが別々にローンを組むため、お互いが個別に団信へ加入できます。ただし、この場合で免除されるのは亡くなった本人のローン残高のみであり、生存しているパートナーのローンはそのまま残り、返済を続ける必要があります。
このようなリスクへの備えとして、連帯債務の利用時に夫婦ともに団信へ加入でき、どちらに万一があっても全額完済される「夫婦連生団信」という選択肢もあります。
夫婦で住宅ローンを借りる際の3つの方法


また親子リレーローンでは、一般的には子どもが団体信用生命保険に加入し、親は加入しないケースがほとんどです。親が亡くなった場合は住宅ローンの返済は続くことになり、残された家族が返済義務を負うことになります。
後述の通り、住宅ローンの返済義務を引き継ぎたくない場合は、「相続放棄」や、プラスの財産の範囲内でだけ負債を弁済する「限定承認」の手続きを取るのが良いでしょう。
- 団信に加入していても、住宅ローンの延滞・告知義務違反・夫婦や親子での借り入れ方法によっては、保険金が支払われないケースがある
- 住宅ローンを延滞すると団信が失効し、保険金が支払われなくなる。延滞が続く場合の対処法として、金融機関の同意のもとローンを残したまま不動産を売却する「任意売却」という選択肢がある
- 加入時の告知に虚偽があった場合は「告知義務違反」とされ、契約が解除され、保険金が支払われない。また、免責事由に該当する場合も支払対象外となるため、約款を事前に確認しておくことが重要である
- 「連帯保証」「連帯債務」では原則として主債務者のみが団信に加入するため、連帯保証人や連帯債務者が亡くなってもローン残高は減額されず、主債務者が全額の返済義務を負い続ける
- 「ペアローン」では夫婦それぞれが団信に加入できるが、免除されるのは亡くなった本人のローン残高のみであり、パートナーのローンはそのまま残る。どちらに万一があっても全額完済される「夫婦連生団信」という選択肢もある
- 親子リレーローンでは一般的に子どものみが団信に加入するため、親が亡くなってもローン返済は続き、残された家族が返済義務を負う
保険金の請求手続きは下記のステップで実施します。
ステップ①:金融機関へ連絡して団信の加入状況を確認する
住宅ローン返済中に債務者が死亡した場合、まずは団体信用生命保険へ加入していたかどうか確認する必要があります。住宅ローンを契約している金融機関へ連絡し、保険に加入していた場合は保険金の請求手続きを行いましょう。
ステップ②:保険金請求手続きに必要な書類を提出する
手続きの際には、「医師の死亡診断書」や「死亡の事実が記載された住民票」などを準備し、金融機関に提出しましょう。提出後、団信の引受先の保険会社によって保険金の支払い対象になるか、審査が行われます。
保険金の請求手続きに必要な書類


先述の通り、死亡以外にも、債務者が高度障害状態になった場合は団信の保障対象となる場合があります。加入している団体信用生命保険の高度障害の基準について確認し、所定の手続きを行いましょう。
ステップ③:保険金が支払われ、ローンが完済される
審査に通過すると、保険会社から金融機関へ直接保険金が支払われ、住宅ローン残高がゼロになります。遺族に現金が振り込まれるわけではありません。
ステップ④:ローン完済後は抵当権の抹消・相続登記を行う
保険金の支払いが完了したら、金融機関から完済を証明する書類を受け取り、法務局で抵当権抹消登記の手続きを行う必要があります。住宅ローンが保険金によって完済されても、不動産に設定されている抵当権が自動的に消滅するわけではありません。
また、抵当権を抹消するためには、前提として不動産の名義を亡くなった方から相続人へ変更する「相続登記(所有権移転登記)」もあわせて行う必要があります。これらの登記手続きは非常に複雑なため、相続のタイミングでまとめて司法書士などの専門家に依頼することも検討するとよいでしょう。
- 債務者が死亡した場合、まず金融機関へ連絡して団信の加入状況を確認し、「医師の死亡診断書」などの必要書類を提出して保険金の請求手続きを行う
- 死亡だけでなく高度障害状態も保障対象となるため、身体機能が重度に低下した際は速やかに基準を確認し、給付を申請する
- 審査通過後は、保険会社から金融機関へ直接保険金が支払われ、住宅ローン残高がゼロになる。遺族に現金が振り込まれるわけではない
- ローン完済後も抵当権は自動的に消滅しないため、相続登記と抵当権抹消登記の手続きが別途必要である
保険金請求手続き時には、請求のタイミングや保険金の請求の時効など、いくつかの注意点があります。
注意点①:請求のタイミングによって保険金額が異なる可能性がある
生命保険会社が支払う保険金額は、保険金を支払う対象となる出来事が起きた時点でのローン残高が基準となります。死亡の場合は死亡日、高度障害の場合は症状の固定日時点のローン残高が適用されるため、請求のタイミングによって保険金額が異なる点に注意が必要です。
注意点②:届け出内容は一度確定すると変更できない
届け出る内容が死亡か高度障害かによって、保険金額が異なる場合があります。一度保険金請求を行うと、同じ事由に対して別の届け出内容での請求はできません。そのため、それまでの病状などを踏まえた上で、死亡、もしくは高度障害のどちらかで届け出をするか検討する必要があります。
注意点③:保険金の請求には3年の時効がある
団体信用生命保険は保険の請求に時効があり、3年以上経過した場合は請求手続きが行えなくなる可能性があります。また、医師の死亡診断書を提出する際は、住宅ローンを契約している金融機関が定めた所定の用紙が必要になります。必要書類や提出期限については一度、金融機関に確認するようにしましょう。
保険金請求の期限


注意点④:審査期間中の引き落とし分は後日返金される
必要書類を金融機関に提出した後、保険会社によって保険金支払いの審査が行われます。この審査が完了するまでには、概ね1〜2ヶ月程度の期間がかかるのが一般的です。
ここで注意しなければならないのは、審査が完了するまでの間も住宅ローンの返済を継続しなければならないという点です。そのため、結果を待っている間にローン返済金が口座から引き落とされるケースがあります。もし残高不足などで支払いが滞ってしまうと、万が一審査に通らなかった場合に延滞扱いとなるリスクもあるため注意が必要です。
ただし、無事に審査を通過して保険金が支払われれば、契約者の死亡日以降に引き落とされた分の返済金は後日返還される仕組みになっています。返金される時期や細かい条件については、金融機関や引受先の保険会社によって異なる場合があるため、手続きの際に窓口で確認しておくと安心です。
- 保険金額は死亡日・症状固定日時点のローン残高が基準となるため、請求のタイミングによって金額が異なる場合がある
- 保険金の請求内容は一度確定すると変更できないため、死亡・高度障害のどちらで届け出るか、病状などを踏まえて慎重に検討する必要がある
- 団信の保険金請求には3年の時効があることに注意する
- 審査期間中(概ね1〜2ヶ月)もローンの返済を継続する必要があるが、審査通過後は死亡日以降に引き落とされた返済金が後日返還される
- 診断書の提出には金融機関指定の用紙が必要な場合が多いため、まずは借入先の窓口へ必要書類と期限を速やかに確認する
住宅ローンの中には、団体信用生命保険への加入が任意となっているものもあり、加入しないまま契約者が死亡してしまうケースもあります。その場合は、当然ながら住宅ローンの返済は免除されません。
住宅ローンの返済を引き継ぐ
団信未加入や、すでにローンを滞納していて団信が失効している場合は、借金である住宅ローンはそのまま相続人に引き継がれます。
住宅ローンの返済を引き継ぐ場合は、抵当権の変更登記を申請しましょう。抵当権とは、購入する住宅の土地や建物に金融機関が設定する権利、すなわち担保のことです。通常はローンが完済すれば抵当権の抹消登記を行いますが、万が一、住宅ローンの債務者が死亡した場合は、抵当権の債務者が変わることになります。そのため、抵当権の変更登記を申請する必要があるのです。
抵当権の変更登記には、被相続人から相続人への所有権移転登記(相続登記)と、債務者を被相続人から相続人へ変更する抵当権変更登記の2つの手続きが必要になります。住宅ローンを契約している金融機関から所定の申請用紙と相続届の書類を受け取り、必要事項を記載して、必要添付書類と一緒に提出しましょう。
抵当権の変更登記に必要な2つの手続き


法定相続人全員が記載された「戸籍謄本の写し」や、相続登記後の建物・土地の「登記事項証明書」の提出を求められるケースもあるので、必要な手続きについては一度、金融機関に確認するのが良いでしょう。
住宅ローン返済が難しいときは相続放棄を検討する
ローン残高に対する支払い義務は相続人に生じます。しかし、住宅の不動産以外に財産がなく、住宅ローンを支払うのが難しい場合は「相続放棄」を検討しましょう。相続放棄をする場合は、自分に相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に家庭裁判所で手続きを行います。相続を放棄した場合は、住宅ローンの債務だけでなく預貯金などの資産も相続できなくなるため注意が必要です。
相続可能な期間


団信未加入の場合は事前に家族で話し合っておく
団信に加入していない場合、債務者が死亡すると家族や配偶者が住宅ローンの債務を引き継ぐことになります。相続発生後にトラブルにならないよう、住宅ローン契約時から家族間で万が一の際の対応について話し合っておくことが望ましいでしょう。
また、団信の代わりとなる生命保険に加入し、保険金をローン返済に充てられるよう備えておくことも選択肢のひとつです。
- ローンを引き継ぐ際は、相続登記と抵当権変更登記の2つの手続きが必要となる
- 住宅ローンの返済が難しい場合は「相続放棄」を検討できるが、相続発生から3カ月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要がある。なお、放棄した場合は預貯金などの資産も相続できなくなる点に注意が必要である
- 団信の代わりとなる生命保険に加入し、死亡時の保険金をローン返済に充てるという備え方もある
- 団信に加入していない場合は、万が一の際のトラブルを避けるために、住宅ローン契約時から家族間で対応を話し合っておくことが望ましい
Q. 住宅ローンの返済中に契約者が死亡した場合、残りのローンはどうなりますか?
A. 団体信用生命保険(団信)に加入していれば、保険金で残りのローンが完済され、家族に返済義務は残りません。一方、団信に未加入だった場合は、残りのローンを相続人が引き継ぐことになります。
Q. 団信の保障対象となるのは死亡した場合だけですか?
A. 死亡だけでなく、高度障害状態になった場合も保障対象となります。ただし、高度障害の認定基準は保険会社によって異なるため、契約している団信の内容を事前に確認しておくことが重要です。
Q. 団信に加入していても保険金が支払われないケースはありますか?
A. 住宅ローンを延滞していた場合は団信が失効し、保険金が支払われなくなります。また、加入時の告知に虚偽があった場合は告知義務違反とみなされ、契約が解除されます。夫婦での借り入れでは、連帯保証・連帯債務の場合は主債務者以外が亡くなってもローンは減額されず、ペアローンの場合は亡くなった本人分のローンしか免除されない点にも注意が必要です。
Q. 保険金の請求手続きはどのように進めればよいですか?
A. まず住宅ローンを契約している金融機関へ連絡し、団信の加入状況を確認します。次に「医師の死亡診断書」などの必要書類を提出し、保険会社による審査を受けます。審査通過後は、保険会社から金融機関へ直接保険金が支払われ、ローン残高がゼロになります。なお、遺族に現金が振り込まれるわけではありません。
Q. 保険金請求の手続きで気をつけることはありますか?
A. 保険金額は死亡日・症状固定日時点のローン残高が基準となるため、請求のタイミングによって金額が異なる場合があります。また、請求内容(死亡・高度障害)は一度確定すると変更できないため、病状などを踏まえて慎重に検討する必要があります。さらに、保険金請求には3年の時効があるため早めの手続きが重要です。審査期間中もローンの返済継続が必要ですが、審査通過後は死亡日以降に引き落とされた返済金が後日返還されます。
Q. 団信に加入していなかった場合、どのように対応すればよいですか?
A. 住宅ローンは相続人に引き継がれるため、相続登記と抵当権変更登記の2つの手続きが必要となります。返済が難しい場合は、相続発生から3カ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うことができますが、預貯金などの資産も相続できなくなる点に注意が必要です。また、団信の代わりとなる生命保険に加入し、死亡時の保険金をローン返済に充てるという備え方もあります。
住宅ローンの返済中に万が一のことが起きた場合、団体信用生命保険(団信)に加入していれば、保険金によって残りのローンが完済され、家族が返済に苦しむ事態を避けることができます。一方で、延滞や告知義務違反によって団信が機能しないケースや、夫婦・親子での借り入れ方法によって保障範囲が異なるケースもあるため、契約内容を今一度しっかりと確認しておくことが大切です。
住宅ローンは長期にわたる大きな契約です。この機会にご自身の契約内容を見直し、家族と万が一の際の対応について話し合っておくことが、安心したマイホームライフへの第一歩となるでしょう。






