住宅ローンの返済中に死亡したら、残りのローンはどうなるの?

2019.10.23 10

住宅ローンでマイホームを購入しても、ローン返済中に不慮の事故や病気などで完済前に死亡してしまう可能性は誰にでもあります。その場合、その後の住宅ローン返済はどうなるのでしょうか。住宅ローンには、借入時の条件として団体信用生命保険への加入があり、万が一債務者が死亡した場合は、ローン残高に相当する保険金が支払われる仕組みとなっています。今回は、住宅ローンの返済中に死亡した場合の手続きや、団体信用生命保険に加入していなかった場合の対処法について紹介します。

01団信に加入していれば、残りのローンは支払わなくても良い?

団体団信用生命保険(団信)とは、住宅ローン返済中に債務者が返済できなくなった場合、保険金によってローン残高が支払われる保険です。保険金は住宅ローンを提供している金融機関に支払われるため、遺族は住宅ローンの返済を免除され、対象となる不動産を相続することができます。

住宅ローンは30~35年など、長期にわたって返済していく場合が多いローンのため、債務者が病気や事故で死亡してしまうリスクは十分に考えられます。そうなるとローンが返済されなくなり、住宅ローンを提供している金融機関にとっては大きな損失となります。そうしたリスクを回避するために、ほとんどの住宅ローンで団体信用生命保険への加入が必要とされているのです。

団体信用生命保険については、以下のサイトも参考にしてください。

02債務者が死亡した後の諸手続きについて

住宅ローン返済中に債務者が死亡した場合、まずは団体信用生命保険へ加入していたかどうか確認する必要があります。住宅ローンを契約している金融機関へ連絡をし、保険に加入していた場合は保険金の請求手続きを行いましょう。その際に必要な書類は、「医師の死亡診断書」と「死亡の事実が記載された住民票」になります。

保険金の請求手続きに必要な書類

保険金の請求手続きに必要な書類
保険金の請求手続きに必要な書類

死亡以外にも債務者が「高度障害状態」になった場合は保険金が支払われます。高度障害とは、病気や怪我などが原因で身体機能が重度に低下している状態のことを言います。加入している団体信用生命保険の高度障害の基準について確認し、所定の手続きを行いましょう。

死亡診断書の提出など、遺族が行う手続きの注意点

債務者が亡くなり、団体信用生命保険へ加入していた場合は、保険金請求手続きを行います。生命保険会社が支払う保険金額は、保険金を支払う対象となる出来事が起きた時点でのローン残高が基準となります。例えば、死亡の場合は死亡日、高度障害の場合は症状の固定日となります。届けた内容が死亡か高度障害かによって、保険金額が異なる場合があります。一度保険金請求を行うと、他の届け出内容での請求はできないため、それまでの病状などを踏まえた上で、死亡、もしくは高度障害のどちらかで届け出をするか検討する必要があります。

団体信用生命保険は、保険の請求に時効があり、3年以上経過した場合は請求手続きが行えなくなる可能性があります。また、医師の死亡診断書を提出する際は、住宅ローンを契約している金融機関が定めた所定の用紙が必要になります。必要書類や提出期限については一度、金融機関に確認するようにしましょう。

保険金請求の期限

保険金請求の期限
保険金請求の期限

03もしも団信に加入していなかった場合は?

万が一、団体信用生命保険に加入していなかった場合、残りの返済はどうなるのでしょうか? 住宅ローンの中には、団体信用生命保険への加入が任意となっているものもあり、加入しないまま契約者が死亡してしまうケースもあるかもしれません。その場合は、当然ながら住宅ローンの返済は免除されません。

仮に、団体信用生命保険に相当する保険金が支払われる生命保険に加入していれば、保険金をローン返済に充てることが可能です。住宅ローンを契約する際は、不測の事態に備えて家族にローン返済の負担を残さないように備えておく必要があるでしょう。

相続者が債務を引き継ぎ返済する

ローン残高に対する支払い義務は相続人に生じます。しかし、住宅の不動産以外に財産がなく、住宅ローンを支払うのが難しい場合は「相続放棄」を検討しましょう。相続放棄をする場合は、相続の義務が発生してから3カ月以内に家庭裁判所で手続きを行います。相続を放棄した場合は住宅ローンの債務だけでなく、預貯金などの資産も相続できなくなるため、注意が必要です。

相続可能な期間

相続可能な期間
相続可能な期間

債務者が死亡した場合、家族や配偶者が住宅ローンの債務を引き継ぐのが一般的です。相続手続きの際にトラブルにならないよう、住宅ローン契約時に家族間で話し合いの場を設けることが望ましいでしょう。

「相続届」などの金融機関への手続きについて

住宅ローンの返済を引き継ぐ場合は、抵当権の変更登記を申請しましょう。抵当権とは、購入する住宅の土地や建物に金融機関が設定する権利、すなわち担保のことです。通常はローンが完済すれば抵当権の抹消登記を行いますが、万が一、住宅ローンの債務者が死亡した場合は、抵当権の債務者が変わることになります。そのため、抵当権の変更登記を申請する必要があるのです。

抵当権の変更登記には、被相続人から相続人への所有権移転登記(相続登記)と、債務者を被相続人から相続人へ変更する抵当権変更登記の2つの手続きが必要になります。住宅ローンを契約している金融機関から所定の申請用紙と相続届の書類を受け取り、必要事項を記載して、必要添付書類と一緒に提出しましょう。

抵当権の変更登記に必要な2つの手続き

抵当権の変更登記に必要な2つの手続き
抵当権の変更登記に必要な2つの手続き

法定相続人全員が記載された「戸籍謄本の写し」や、相続登記後の建物・土地の「登記事項証明書」の提出を求められるケースもあるので、必要な手続きについては一度、金融機関に確認するのが良いでしょう。

04団信に加入していてもローンが免除にならない場合はあるの?

住宅ローン契約時に団体信用生命保険に加入していても、契約者の死亡によるローン返済の免除を受けられないケースがあります。考えられるのは「住宅ローンの返済を延滞していた」「夫婦や親子で住宅ローンを組んでいた」という場合です。

返済が滞っていた場合は団信が失効

住宅ローンの返済を延滞した場合は保険金が支払われず、ローンの返済が免除されません。団体信用生命保険の契約が失効する可能性があるためです。金融機関は住宅ローンの利息から保険料を支払っているケースが多いため、ローンの返済が滞ったことで保険料の支払いも難しくなり、契約の失効へとつながってしまいます。

こうしたケースへの対処法として「任意売却」があります。任意売却とは、住宅ローンを残した状態で不動産を売却することを言い、債権者である金融機関からの同意が得られた場合に行えます。とはいえ、売却資金だけでは住宅ローンを完済できないはケースも考えられます。残った債務を返済できるかどうか確認した上で、任意売却について検討し、手続きを行うのが良いでしょう。

05夫婦や親子で住宅ローンを組んでいた場合

夫婦で住宅ローンを借りる際は、「連帯保証」「連帯債務」「ペアローン」の3つの方法があります。連帯保証もしくは連帯債務の場合で、夫婦どちらかが亡くなった場合は、ローン残高が免除されないケースがあります。例えば、連帯債務の場合で、債務者である夫が亡くなった場合、住宅ローンは免除されます。しかし、もし妻が亡くなった場合は、妻は団体信用生命保険に加入できないため、妻の持分についての返済義務が免除されません。

夫婦で住宅ローンを借りる際の3つの方法

夫婦で住宅ローンを借りる際の3つの方法
夫婦で住宅ローンを借りる際の3つの方法

住宅ローンの種類によっては、夫婦ともに団体信用生命保険に加入することができるケースもあります。一方で、夫婦のどちらかのみ加入を認められているケースもあります。上記の例の他にも、例えば親子でリレーローンを組んだ場合は、一般的には子どもが団体信用生命保険に加入し、親は加入しないケースがほとんどです。親が亡くなった場合は住宅ローンの返済は続くことになり、残された家族が返済義務を負うことになります。

もし住宅ローンの返済義務を引き継ぎたくない場合は、前述した「相続放棄」や、マイナスの遺産分がプラスの遺産分を超えない範囲で相続することができる「限定承認」の手続きを取るのが良いでしょう。

06ケガや病気(高度障害)の場合について

前述したように、住宅ローン返済中に債務者が死亡した場合や、高度障害になってしまった場合は、団体信用生命保険の保険対象となります。債務者が死亡ではなく高度障害になってしまった場合とは、どのような状態のことを表し、なぜ保険の対象となるのか解説します。

重大な病気やケガの場合のみ適用対象

高度障害とは、視力を失ってしまった状態や、言語や咀嚼の機能を永久的に失った状態、中枢神経系や胸腹部臓器に障害を残して常に介護を要する状態、体の一部を永久的に失ってしまった状態などを言います。「視力や言語機能を失ってしまった」「寝たきりの状態になってしまった」「手足2本以上が切断や麻痺などで動かせない」など、重い障害状態になった場合は、保険の適用対象となります。

重度障害の基準は、保険会社が独自に設定している場合が多いようです。高度障害保険金が支払われるケースは契約している団体信用生命保険によって異なりますが、基準を満たした場合は住宅ローンの返済が免除される可能性があります。

症状によっては、病気や怪我をしてからの日が浅い場合、あらためて申請が必要になるケースなどがあるため、注意が必要です。その他にも、故意に高度障害になった場合や契約前からすでに生じていた怪我や病気が原因で高度障害状態になった場合は、保険の対象外となる可能性もあるので、保険会社に確認するようにしましょう。

川添典子

監修:川添典子

住宅金融普及協会 住宅ローンアドバイザー/2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

大学卒業後、某ハウスメーカー就職。住宅販売の営業職として、顧客開拓、住まいづくりの提案、資金計画相談、販売後のアフターフォローを担当。仕事を通して、お客様の一番の関心事と不安はお金に関する事だと感じ、ファイナンシャルプランナー2級と住宅ローンアドバイザーの資格を取得。ハウスメーカーを退職後、暮らしに役立つライター・編集者として、お金・不動産に関する知識や情報を提供しています。

下澤一人

監修:下澤一人

宅地建物取引士宅地建物取引士

プロフィール

出版社勤務後、宅地建物取引士の資格を取得し、不動産専門新聞記者、不動産会社勤務を経て現在、編集者・ライターとして活動中。

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