住宅購入時に必要となる各種諸費用の内訳と費用

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住宅購入は高額になりがちですが、実際に買うときは物件価格そのものだけでなく諸費用が加算されることも忘れてはいけません。諸費用を住宅ローンに組み込む場合、諸費用を含めた金額で住宅ローンの予算を組む必要があります。そこでこの記事では、住宅購入時に必要となる諸費用と金額の目安について紹介します。住宅ローンの借入額を検討する材料にしてみてください。

01住宅購入時に必要な諸費用一覧

まずは、住宅購入時に必要な諸費用について説明します。金額の目安については後ほど解説するので、とりあえずどのような費用がかかるかを把握しておきましょう。

売買契約時

売買契約締結時にかかる費用としては「売買契約書の印紙代」と「仲介手数料」が挙げられます。印紙代は契約書を作成するときに、収入印紙を貼付して消印することで納める税金です。収入印紙を貼る必要のある契約書は法律で決められているため、注文住宅を建てる人は工事の施工に必要な建設工事請負契約書の印紙代もかかります。

一方、仲介手数料は購入する物件を不動産会社に紹介してもらった際に支払う手数料です。ただし仲介手数料という名前の通り、あくまでも第三者が所有している物件を仲介してもらった場合にのみ支払う必要が生じます。不動産会社が自ら所有している物件を購入する場合は、支払う必要はありません。

住宅ローン契約時

住宅ローン契約時に支払う費用としては「金銭消費貸借契約書の印紙代」「融資手数料」「ローン保証料」が挙げられます。金銭消費貸借契約書とは、簡単にいうと住宅ローンを組むときの契約書です。これも法律で定められた契約書であるため、売買契約書や建設工事請負契約書と同様に印紙代がかかります。

融資手数料やローン保証料は、融資を実行する金融機関や万が一返済が滞った場合に保証してくれる保証会社へ支払う費用です。いずれも住宅ローンを組む金融機関や利用する保証会社によって、かかる金額が異なることは覚えておきましょう。

また住宅ローン契約時に支払う費用としては、団体信用生命保険料もあります。団体信用生命保険料とは、返済義務を負う人が不慮の事故や病気などによって返済ができなくなった場合、その保険金で住宅ローンを返済するために加入する生命保険の保険料です。ほとんどの住宅ローンでは、利用する際に加入することが必須条件となっており、最初から毎月のローン返済額に保険料が含まれていることもあります。

住宅の引き渡しまで

住宅ローンの審査に通ってから住宅の引き渡しまでに必要な費用としては、火災保険や地震保険といった建物部分の保険料や登記費用、修繕積立基金の3つがあります。住宅ローンが残っている状態でもしも火災や天災によって自宅を失うと負債だけが残るという最悪の事態も想定されるので、できるだけ火災保険や地震保険には加入しておいた方がよいでしょう。

登記費用は住宅を取得したことを登記簿に登記する際に必要な費用です。登記しておくことで取得した不動産の所有権を守ることができるため、もし悪意をもった第三者が所有権を後から主張しても裁判で有利になります。登記費用には、登記するための登録免許税と司法書士へ支払う報酬などが含まれます。

修繕積立基金は、新築マンション購入者だけが対象になる費用です。マンションを購入すると大規模修繕に備えて修繕積立金を毎月支払うことになりますが、その負担を一部軽減する目的のために、「修繕積立準備金」「修繕積立一時金」などの名目で入居時にまとめて支払うお金になります。

税金

住宅購入時に支払う税金には、不動産取得税があります。土地や建物などの不動産を取得した際に支払う税金で、厳密にいうと購入時ではなく、購入後半年ほど経ってから送られてくる納付書をもとに金融機関などで納めます。不動産所得税が購入時に一度だけ支払う税金であるのに対して、不動産を取得したら毎年支払わなければいけないのが固定資産税や都市計画税です。いずれも毎年1月1日時点で不動産を所有している人に対して課される税金で、4月ごろに納付書が届きます。基本的には年4回の分割払いですが、希望すれば一括でまとめて支払うことも可能です。

その他

住宅購入時にかかるその他の費用としては「家具や家電、インテリアなどの購入費」があります。どれくらいの広さの住宅を購入するかにもよりますが、ゼロから家具や家電をそろえる場合にはそれなりの出費になるでしょう。反対にすでに賃貸住宅で暮らしていて、新居でも使える家具や家電が多い場合には、ある程度節約することもできます。ただしそれらの家具、家電などを運ぶ引っ越し代がかかることを忘れてはいけません。引っ越し代も、運ぶ荷物の量や繁忙期または閑散期といったシーズンでかかる費用が大きく変わる点には注意しましょう。

02それぞれの諸費用はいくらくらいかかる?少しでも安く抑える方法ってあるの?

諸費用については理解できたでしょうか。しかし住宅購入を考えている人のなかには、「実際にどれくらいかかるか」が気になっている人もいるでしょう。そこでこの段落では諸費用の目安と、少しでも安く抑えるコツがある場合には、その方法についても紹介します。

不動産売買契約書・工事請負契約書の印紙代

不動産売買契約書や工事請負契約書の印紙代にかかる費用は、前もって決められています。基準となるのは契約書に記載されている金額で、例えば「1000万円超~5000万円以下なら2万円」という具合です。印紙代は税金なので、交渉で値切ることはできません。ただし不動産売買契約書や工事請負契約書の印紙代については2022(令和4)年3月31日までに作成されたものに限り、軽減税率が適用されます。軽減税率が適用された場合、上記の例だと納める税金は1万円になります。

金銭消費貸借契約書の印紙代

金銭消費貸借契約書の印紙代も不動産売買契約書や工事請負契約書と同じように、契約書に記載されている金額で納める税額が異なります。基本的には不動産売買契約書と同じ税額で、例えば「1000万円超~5000万円以下なら2万円」です。金銭消費貸借契約書の印紙代にかかる費用も税法上決まっている金額なので、安く抑える方法は残念ながらありません。また不動産売買契約書や工事請負契約書とは異なり、軽減税率の適用外である点には気を付けましょう。

仲介手数料

不動産会社に支払う仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められており、売買金額が400万円を超える場合は「売買価格×3%+6万円+消費税」で算出できます。例えば5000万円の物件を仲介してもらった場合は、「5000万円×3%+6万円=156万円」に消費税を加算した171万6000円になる計算です。とはいえ宅地建物取引業法では、あくまでも上限を決めているだけなので、それより低い金額を支払っても問題はありません。そのため仲介手数料を少しでも安くしたいなら、交渉をして値切ったり最初から無料に設定したりしている業者を選ぶようにしましょう。

ただしあまり値切る姿勢を前面に出しすぎると、不動産会社の担当者のモチベーションやサービスの低下につながり、かえって不利益を被る可能性もあるので注意しなければいけません。また、そもそも不動産会社が所有している物件を購入する場合は仲介手数料がかからないので、最初からそうした物件を探すのもひとつの方法です。仲介手数料についてより詳しい情報を知りたい人は「不動産業者の仲介手数料の相場ってどのくらい?安く抑えるコツを紹介」を参考にしてください。

融資手数料

住宅ローンにおける融資手数料は、金融機関ごとに異なります。融資手数料で気を付けるポイントは、「借入金額に関わらず一定の金額がかかるタイプ(定額型)」と「借入金額に対して一定の割合がかかるタイプ(定率型)」の2つがある点です。前者は3万円前後、後者の場合は借入金額の2%程度が目安になります。一般的に定率型は融資手数料が高くなりがちなので、少しでも安く抑えたいなら定額型を選んだ方がよいでしょう。ただし定額型は融資手数料を安くしている分、金利が高くなっているケースもあるので気を付けなければいけません。

ローン保証料

ローン保証料の目安は、返済期間35年で元利均等返済の場合、一般的に融資額1000万円当たり20万円程度です。例えば融資額が3000万円なら60万円程度かかると考えておきましょう。ローン保証料も融資手数料と同じくローンを組む金融機関によって異なるため、少しでも安く抑えたいなら複数の金融機関を比較してみることが重要です。特にネット銀行ではローン保証料を無料にしているところも多いので、積極的に探してみるとよいでしょう。ただしローン保証料を低く抑えている金融機関は、その分融資手数料を高く設定しているケースもあるので、トータルでいくらになっているかを確認してから契約する必要があります。

また、ローン保証料には一括前払い型と呼ばれる「一括・外枠方式」と利息組み込み型と呼ばれる「分割・内枠方式」の2種類があり、どちらを選ぶかによって支払総額が異なる点にも注意しなければいけません。一般的に支払う総額では「一括・外枠方式」のほうが安く済みますが、一度に大きな金額を支払わなければいけない点はデメリットです。手持ち資金に余裕がある人は、一括・外枠方式の活用を積極的に考えてもよいでしょう。ローン保証料の支払い方式は、「住宅ローンの保証料とはどんなもの?お得な支払い方法は?」で詳しく解説しているので、気になる人は確認してみてください。

団体信用生命保険料

団体信用生命保険とは、借主が不慮の事故や病気などで万が一働けなくなった場合に、借入金の返済に充てるために加入する保険です。保険料の目安は借入金額3000万円、返済期間35年の場合では初年度で15~17万円程度になります。ただし保険料は住宅ローンの金利に含まれていることも多く、別途用意しなくてもよい場合が多いでしょう。また年数の経過とともに住宅ローン残高は減少するため、加入する保険金額も少なくて済むという理由から、団体信用生命保険料も年々安くなっていきます。団体信用生命保険は、住宅ローンを組む際に必ず加入しなくてはいけない必須条件となっている金融機関がほとんどです。そのため節約したい人は、団体信用生命保険の保険料を安くするというよりも、すでに加入している生命保険があればそちらの見直しをした方がよいでしょう。

火災保険料・地震保険料

火災保険や地震保険の保険料は、いずれも建物の構造や都道府県別の過去の事故状況によって変わり、基本的にはリスクの低い構造や地域であるほど保険料は安くなります。目安としては火災保険の場合は耐火性能に優れたT構造なら10年間で11~13万円ですが、木造などの比較的リスクの高い建物が含まれるH構造なら20~30万円です。一方、地震保険の場合は保険金額1000万円あたり年間で6500円~3万2600円程度が目安になります。

保険は万が一の事態に備えるためのものなので、一番大切なのは掛金よりも補償内容を重視することです。ただし少しでも節約したい場合は、「一年契約よりも長期契約を結ぶ」「補償内容を精査して不要な補償を外す」「免責金額を設定する」などの方法があります。また、職場の団体保険に加入すれば割引が適用されることもあるので、確認してみるとよいでしょう。住宅購入時の保険についての詳しい解説は「住宅ローン利用時の火災保険加入について−比較のポイントも併せて解説−」を参考にしてください。

修繕積立基金

住宅購入において、マンションならではの費用として挙げられるのが修繕積立金です。マンションなどの集合住宅では、共用部分などの修繕は基本的に住人同士が修繕積立金を拠出し合って支払います。しかし毎月の修繕積立金の額が多すぎると家計の負担になることから、入居時に一定額を支払う代わりに、毎月徴収する額を少なくする目的で集められるのが修繕積立基金です。

修繕積立基金は物件にもよりますが、20~50万円ほどが相場になります。一般的に専有面積が広く、本来の修繕積立金が高いほど修繕積立基金の相場も高くなる傾向がある点には注意しましょう。修繕積立基金の金額はあらかじめ規定されているため、交渉によって安くすることはできません。ただし新築マンションは、修繕費が多くかかる工事をすぐに行うことはないため、修繕積立基金を安く設定している物件も多いでしょう。

登記費用

登記費用としてかかる登録免許税の計算式は「固定資産税評価額(課税標準)×税率」です。ここでのポイントは、登録免許税の税率は物件を「取得した理由」によって異なる点です。例えば固定資産税評価額3000万円の土地を購入して所有権移転登記(税率2%)をする場合、「3000万円×2%=60万円」になります。ところが、固定資産税2000万円の土地を相続で取得して所有権移転登記をする場合は税率が0.4%になるので、「2000万円×0.4%=8万円」です。登録免許税には、さらに一定要件を満たした場合に軽減税率が適用されるケースもあるので、住宅を購入する前に詳細をよく理解しておきましょう。「登記費用はいくらかかる?不動産登記の諸費用も合わせて解説」で詳しく解説しています。

不動産取得税

不動産取得税の計算方法は基本的に「固定資産税評価額(課税標準額)×4%」です。ただし、2021(令和3)年3月31日までに取得した土地と住居は、特例措置によって税率は3%が適用されます。さらに新築・中古住宅は、それぞれ課税標準額から一定金額を控除する軽減措置があるので、条件を満たすと0円になるケースも珍しくありません。注意点としては不動産取得税の軽減措置を受けるときは、届出制になっていることです。一定の要件を満たした場合は、所轄する都道府県税事務所に必要書類を添えて申告する必要があります。不動産取得税の詳しい要件やシミュレーションは「不動産取得税とは?軽減はあるの?いくらかかるか計算方法も解説」を参照してください。

固定資産税

固定資産税は基本的に「固定資産税評価額(課税標準)×1.4%(標準税率)」で計算します。しかし、一定の要件を満たすと評価額を減額する軽減措置が設けられているのが特徴です。例えば新築住宅で土地部分の固定資産税評価額700万円、建物の固定資産税評価額1000万円で軽減措置が適用された場合は合計8万6300円(土地1万6300円、建物7万円)程度になります。ただし固定資産税の軽減措置の適用条件は細かい上、市区町村への申請が必要です。詳しい内容については「固定資産税の計算方法を解説!どうすれば安く抑えられる?」でご確認ください。

都市計画税

都市計画税は「固定資産税評価額(課税標準)×0.3%(制限税率)」で計算します。仮に固定資産税評価額2000万円の土地を所有しているときの計算式は「2000万円×0.3%」で、納める都市計画税は6万円です。都市計画税の軽減措置は土地のみにあり、課税標準を3分の1または3分の2にできます。ただし固定資産税のように、建物部分に関する軽減措置はありません。詳しくは「都市計画税とはどんな税金?固定資産税との違いをあわせて解説」で解説しています。

その他の費用

その他の費用としてかかる引っ越し費用は、実施する時期や荷物の量、引っ越し先までの距離によってかかる金額が大きく異なります。あくまでも目安ではありますが、家族3人で通常期に15キロ以内(市区町村内)で移動した場合は6万円程度が相場です。ただし繁忙期(3~4月、8月)に依頼すると、15キロ以内でも10万円以上かかるケースもあるので、少しでも節約したい場合はできるだけ繁忙期は避けましょう。

また新築分譲マンションに入居する場合は、同じ日に引っ越しが集中するとエントランスなどが混雑するという理由で、引っ越し幹事会社がそれぞれのスケジュールを取りまとめるケースが大半です。その場合は引っ越し時間が限定されるので、荷物の量や移動距離の長短にかかわらず、引っ越し会社への値引き交渉をするのは難しいでしょう。少しでも引っ越し料金を安くしたい場合は完成後すぐに入居するのではなく、平日などの引っ越しが少ない日を狙って入居時期をずらしたほうが賢明です。

さらに引っ越し費用以外にも、入居にあたって新たに家具や家電などを買いそろえると費用が多くかかります。住宅金融支援機構が調査した「住宅取得に係る消費実態調査(2014 年度)」によると、新築住宅へ引っ越し後1年以内に購入した家具や家電などの「耐久消費財費用」の平均は152万8000円でした。この金額のなかには自動車のような大きな買い物から、塀や物置、太陽光発電システムといった後から設置した設備も含まれていますが、新築住宅へ入居するにあたってそれなりの出費が必要になることが分かるでしょう。少しでも節約したい場合は、電気製品はモデルチェンジ時の型落ちを狙うなどの対策が必要です。

03住居の種類で諸費用は変動するの?

ここまでさまざまな諸費用を紹介してきましたが、すべての費用がどの住宅でもかかるわけではありません。例えば修繕積立基金は新築マンションのみにかかるため、戸建て住宅で予算に含める必要はないでしょう。また仲介手数料は基本的に中古などの仲介が入る物件のみで発生します。新築でも建売の場合は仲介してくれた不動産会社へ支払わなければいけないケースもありますが、その場合でもハウスメーカーから直接購入できれば基本的にかかりません。住宅の種類と修繕積立基金や仲介手数料の関係は下記の図を参考にしてください。

住宅の種類とかかる費用の関係図

住宅の種類 修繕積立基金 仲介手数料
新築一戸建て(注文住宅) × ×
新築一戸建て(建売住宅) ×
中古一戸建て ×
新築マンション ×
中古マンション ×

※〇は費用がかかる、×は費用がかからない、△は費用がかかる場合がある

04理想のマイホームを手に入れるカギは情報収集にあり!

住宅購入時に必要となる費用は、たくさんの種類があります。ただし購入する住宅のタイプによっては、覚える必要のない費用もあるので自分に関係のある費用に重点を絞って調べていくとよいでしょう。それでも覚える項目は多岐に渡るので大変かもしれませんが、住宅購入は多くの人にとって一生に一度の買い物です。理想のマイホームを手に入れるためにも最後まで妥協することなく情報収集に励んでみてはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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