夢のマイホームのために頭金はいくら貯めるべき?返済額とのバランスで考えよう
マイホームの購入に住宅ローンを借りる場合、頭金はどのくらい必要なのでしょうか。今回はマイホーム購入までに貯めておきたい頭金の目安とその確実な貯め方、住宅ローンを借りる上での注意点などをご紹介します。
01マイホーム購入のためにいくらぐらい貯蓄すべき?
まずは、マイホームの購入にはどのくらいの費用がかかるのかを見ていきましょう。独立行政法人住宅金融支援機構が住宅ローン「フラット35」の利用者を対象に行った調査によると、購入するマイホームの種類と平均所要資金、所要資金の年収倍率(所要資金を世帯年収で除したもの)は、それぞれ以下のような結果となっています。あくまでも平均値なので1つの目安に過ぎませんが、マイホームの取得には中古の場合でも年収の5倍以上、新築の場合は6~7倍以上かかることがわかります。もちろん、マイホームの購入を全額自己資金でまかなえるケースは稀で、金融機関の住宅ローンを利用する人が多く、数年~数十年かけてローンの返済をしていくことになります。
不動産の種類 | 平均所要資金 | 年収倍率 |
マンション | 4521万円 | 7.3倍 |
土地付き注文住宅 | 4257万円 | 7.1倍 |
建売住宅 | 3494万円 | 6.7倍 |
注文住宅 | 3454万円 | 6.5倍 |
中古マンション | 3110万円 | 5.8倍 |
中古戸建 | 2574万円 | 5.5倍 |
02マイホーム購入に必要な頭金はいくら?
住宅ローンを利用してマイホームを購入する場合、購入にかかる費用の全額を借りるのではなく、一部を頭金として支払い、その残額分のローンを組むのが一般的です。
一般的には購入価格の1割~2割を頭金として支払った上で住宅ローンを組むことが多いようです。株式会社リクルート住まいカンパニーが行った調査でも、首都圏で新築マンションを契約した人の自己資金比率は平均19.1%でした。
出典:株式会社リクルート住まい カンパニー 「2019首都圏新築マンション契約者動向調査」p.12
最近ではフラット35のように頭金ゼロでも購入費用を全額借り入れできるローンも次々に登場しています。しかし、頭金が少なければ、その分、借入額が増え、返済期間が長くなり、毎月の返済額も高くなります。また、頭金なしの場合、住宅ローンの審査は頭金がある場合と比較すると厳しくなります。住宅ローンを利用してマイホームを購入するのであれば、上記の調査結果のように2割程度は頭金を用意したほうが良いと言えるでしょう。
03頭金を確実に貯めるには?
では、マイホームの頭金を効率よく貯めるにはどうすれば良いのでしょうか?おすすめしたいのは、将来マイホームを持ちたいという希望があるのなら、具体的な購入予定が決まってから貯蓄を始めるのではなく、できるだけ早い段階で将来のマイホーム購入に備えて、頭金を含めた資金のための貯蓄を始めておくことです。貯蓄の基本は支出の無駄を省くことですが、頭金は金額が大きいので、一般的な節約術などで貯めるのは容易ではありません。できるだけ早く確実に貯めるために、以下の方法を検討すると良いでしょう。
財形貯蓄制度を活用する
勤務先の企業で採用していれば、財形貯蓄を活用するのも一案です。財形貯蓄とは、勤務先の企業や団体が毎月の給与から一定額を天引きし、積み立ててくれる制度のこと。財形貯蓄には、いくつか種類がありますが、マイホームの購入や新築・リフォームに目的が特化された「財形住宅貯蓄」には、以下のようなメリットがあります。
財形住宅貯蓄のメリット
- 財形年金貯蓄と合わせて元利計550万円まで利息が非課税になる
- 給与から天引きされるので着実に貯めることができる
- 資金の使途が住宅関連向けに制限されていて、他の目的では使えないため確実に貯めることができる
先取り貯蓄をする
給与をもらったらすぐに貯蓄専用口座に一定額を移してしまい、残りの収入で生活をする方法です。貯蓄分は最初からないものという前提で生活できれば、毎月着実に貯蓄を増やすことができます。
収入を増やす
支出を抑えるだけでなく、収入を増やす姿勢も大切です。スキルアップや資格取得で昇給を狙うのも良いですが、勤務先の規定で禁止されていなければ、就業後や週末にアルバイトや副業を検討してみても良いでしょう。増えた収入を貯蓄にまわせば、節約よりも大きな効果が得られる可能性があります。
また親や祖父母からの援助をマイホーム購入の頭金に当てる人も少なくありません。援助が受けられる可能性のある人は、父母・祖父母からの資金提供を受けて、住宅を新築・増改築等をした場合に贈与税が一定額まで非課税になる「住宅取得等資金の贈与税を受けた場合の非課税」などの活用を検討してみるのも良いでしょう。
04住宅ローンの毎月の返済額をシミュレーション
続いて、頭金がある場合とない場合とでは、毎月の返済額がどのくらい違うのか確認してみましょう。毎月の支払額は金利の設定や返済期間によって異なるため一概には言えませんが、金融機関のホームページなどで提供されているオンラインシミュレーションのサービスを使うと目安を知ることができます。「住宅ローンシミュレーション」の「毎月の返済額を試算する」を使って、頭金ゼロの場合とそうでない場合の違いを比較してみましょう。
4000万円のマイホームを35年ローンの利用で購入するケース
(金利は固定1%、ボーナス払いなしと仮定)
頭金ゼロの場合
借入総額:4000万円
毎月の返済額:11万2914円
年間の返済額:135万4968円
総返済額:4745万6629円
頭金800万円を支払う場合
借入総額:3200万円
毎月の返済額:9万331円
年間の返済額:108万3972円
総返済額:3796万5282円
頭金を購入金額4000万円の20%を用意することで、月々の返済額や総返済額が大きく変わることがかります。
実際に住宅ローンを選ぶ際には、金融機関の担当者に必ず正確な金額などを確認した上で比較検討するようにしましょう。
05住宅ローンを借りる上での注意点
ここまで見てきたとおり、住宅ローンを利用してマイホームを購入する際には、購入にかかる費用の全額をローンで借り入れるよりも、一部を頭金として支払って借入額を減らしたほうが、月々の返済額や総返済額を抑えることができる、住宅ローンの審査に通りやすいといったメリットが期待できます。
一方、最近ではフラット35のように頭金ゼロでも利用できる住宅ローンも増えており、頭金が用意できない人や頭金分を他の目的に使いたいという人でも利用しやすくなっています。ただし、マイホームの取得には、不動産の購入費用だけでなく、主に次の費用も必要だということには注意が必要です。
仲介手数料
不動産業者の仲介でマイホームを購入した場合は、仲介手数料を支払わねばなりませんが、法律により上限が設けられています。仲介手数料は「(物件価格✕3%+6万円)+消費税」という速算式で求められます。2000万円の物件の場合の仲介手数料(上限)は、(2000万円✕3%)+6万円=66万円(消費税別)となります。
住宅ローン手数料
利用する金融機関により定められた手数料です。
登記費用
新築物件の場合は「所有権保存登記」、中古物件の場合は「所有権移転登記」が必要で、それぞれ費用が発生します。
火災保険料、地震保険料
住宅購入時には火災に備えるために、火災保険への加入が一般的です。取り扱いをする保険会社に対し、これらの保険料を支払う必要があります。住宅ローンを組む場合は、ほとんどの金融機関が火災保険の加入を義務づけています。また、地震等(地震、噴火またはこれらによる津波)が原因で起きた火災は通常の火災保険では補償されないため、そうした被害に備えるためには地震保険に加入する必要があります。保険料は建物の構造と所在地によって異なりますが、どの保険会社と契約しても補償内容や保険料に差はありません。
不動産収得税
不動産を取得したときには、不動産取得税が課されます。不動産取得税の税額は原則として、以下の式で求めることができます。
不動産取得税額=固定資産税評価額✕標準税率(4%)
ただし、令和3年3月末までに取得する土地と住宅については、標準税率が4%から3%に軽減されています。
購入する不動産の価格や固定資産税評価額によって異なるものの、マイホームを購入すると不動産取得の購入代金以外に上記のような費用が発生し、その総額は100万円以上かかるケースも珍しくありません。
こうした費用以外にも、売買契約時に売主に支払う手付金(物件価格の5~10%程度が一般的)が必要ですし、引っ越し費用など新居での生活を始めるにあたっての費用も想定しておく必要があります。
将来マイホームを購入する予定のある人は、頭金や諸費用を計画的に準備しておくようにしましょう。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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