マイホーム購入時の貯蓄額はいくら?購入後に現金はいくら残すべき?

10

マイホームを買うにはどれくらい貯蓄があればいいのでしょうか。このまま家賃を払い続けるのはもったいないから、早くマイホームを持ちたいとは思うものの、住宅購入時に貯蓄を使い果たしてしまうのも心配です。住宅の購入に必要な費用を確認し、購入前にどれだけ貯めておけば良いのかを考えます。

01住宅購入時の貯蓄はいくらあるといい?

住宅をキャッシュで買う人はほとんどいません。多くの人は住宅ローンの契約をして、長い時間をかけて返済していきます。住宅ローンを利用するなら、現金はいらないと思うかもしれませんが、実は、住宅を購入する際には住宅ローンの支払いとは別に現金が必要になるのです。

住宅購入に必要な費用

では、実際にどれくらいの金額が必要なのでしょう。住宅ローンの利用を前提とすると、住宅購入にかかわる費用は、購入時にかかる費用と、購入後にかかる費用があります。

購入時にかかるものには、購入価格や建設価格以外に必要となる税金、住宅ローンの借入費用や登記費用などの諸費用と、借入額を抑えローンの審査が通りやすくなるメリットもある頭金があります。購入後にかかるものには、住宅ローンの返済費用と税金など住まいを維持するための費用があります。

購入時にかかる費用

住宅の購入時にかかる諸費用と頭金について見ていきましょう。基本的には現金で用意するものです。

諸費用

諸費用は、住宅購入時の初期費用にあたるもので、不動産の取得にかかわる費用、住宅ローン契約にかかわる費用のほか、引っ越し費用などがあり、マンションか戸建てか、新築か中古か、住宅の購入価格やローンの借入金額によって必要となる費用は違います。

諸費用の目安は、新築マンションの場合は購入価格の3〜5%、一戸建ての場合は6〜10%前後だといわれています。例えば、4000万円のマンションを購入したとすると、必要になる諸費用は120万〜200万円、一戸建てだと240万〜400万円となり、かなり高額なお金が必要になります。

頭金

頭金は物件の価格から住宅ローンの借入額を除いたお金です。頭金を入れることで借入額は少なくなります。住宅ローンを契約する際、購入価格の1〜2割程度を頭金にすると良いといわれることがありますが、4000万円の物件を購入するなら、頭金に400万〜800万円を用意する計算になります。では、実際に住宅を購入した人はどのくらいの頭金を用意しているのでしょう。

金融機関と提携して全期間固定型の住宅ローン「フラット35」を提供する住宅金融支援機構の利用者調査によると、住宅の種別によって金額の違いはありますが、借入金に対して平均10%弱〜20%弱の頭金を準備していることが分かります。

2019年度フラット35融資利用者の資金調達・全国平均

  平均の頭金額(手持ち額) 購入価格を100とした場合の割合
注文住宅 621万9000円 18.0%
土地付き注文住宅 443万2000円 10.4%
建売住宅 282万4000円 8.1%
マンション 736万2000円 16.3%
中古一戸建て 209万円 8.1%
中古マンション 352万1000円 11.3%

出典:「2019年度フラット35利用者調査」P25〜30

購入後にかかる費用

購入後にかかる費用は、住宅ローンの返済費用と住まいを維持するための費用で毎月定期的に支払うものです。

住宅ローンの返済費用

住宅ローンは、返済終了まで毎月支払うものです。毎月返済のほか、ボーナス時に加算するという選択もできます。

住宅維持費用

毎年支払うことになるのが税金です。住宅を購入したら、毎年、固定資産税を納めなければなりません。都市計画区域に属している地域であれば都市計画税も課されます。

住宅ローンに加入すると必要となるのが保険です。住宅ローンを契約する際には、金融機関から団体信用生命保険(団信)と火災保険への加入が求められます。

団信は、ローンの返済中に契約者が死亡するなどして返済不能となった場合にローンの残債が完済される保険で、借入金によって保険料が異なります。一般的には団信の保険料は住宅ローンを契約した金融機関が負担するので保険料の負担はありません。ただし、3大疾病保障などの特約を付けた場合は住宅ローンの金利に上乗せされます。

火災保険は火災、風水害、落雷、爆発・破裂などによる建物と家財の損害を補償する保険で、自分で選ぶことができます。一般的には建物と家財の両方の保険に加入しますが、同等のものを再築、再購入するのに必要な額を保証する再調達価額を基準に保障額と保険期間を決め、補償内容と特約を検討した上で、複数の保険会社を比較します。また、火災保険では補償されない地震に備え、地震保険の加入も検討しておきましょう。

火災保険の保険料は、建物の構造や所在地、マンションか一戸建てかなどで保険料は異なります。

修繕にかかわる費用も必要です。

マンションの場合は、将来の大規模な修繕に備える修繕積立金を毎月支払います。また、共用部分の維持や管理のための管理費も支払わなければなりません。

一戸建てでは、修繕のための費用は自身で積み立てなければなりません。一般的には築20年を過ぎる頃から修繕が必要になります。高額になることが多いため、計画的な積み立てが必要です。

02住宅購入後を見越して手元に残しておくべき貯蓄額はいくら?

住宅の購入の際に、諸費用や頭金で貯蓄を使い果たしてしまっては、その後の生活が心配になります。では、どのくらいのお金を手元に残しておけばいいのでしょう。

手取り月収の3~4カ月分が目安

一般的に、会社員の世帯なら手取り月収の3、4カ月分が目安だと言われています。

会社員の場合、会社が倒産したり、あるいは解雇されたりすると、約1カ月後から失業手当(雇用保険)を受給できます。自己都合による退職の場合は、およそ4カ月後からの受給です。そうなると、失業してから手当を受け取る間の生活を支えるために、最低でも手取り月収の3、4カ月分は用意しておきたいところです。

03貯蓄ゼロで住宅ローンを組むには

マイホームの購入には住宅ローン以外にさまざまな費用が必要だということがわかりましたが、貯蓄なしで住宅ローンを組むことはできないのでしょうか。

本来なら、現金で支払う諸費用ですが、諸費用分を貸し出す諸費用ローンや、諸費用込みの住宅ローンも増えています。頭金なしで住宅ローンを借りられる金融機関も増えてきたの、貯蓄がゼロでも借り入れることも不可能ではありませんがリスクもあります。

貯蓄ゼロでローンを組むリスク

頭金なしで契約する住宅ローンのことをフルローン、購入時にかかる諸費用まで含めて融資するのはオーバーローンといいます。

こうしたローンを提供する銀行の審査に通れば、貯蓄がゼロでも住宅ローンを組むことができます。しかし、頭金がある場合に比べると借入金額が増えるため、一般的には審査が厳しくなり、金利も高くなります。

借入金額が大きくなれば、利息の負担も増え、返済総額は膨らみます。当然、月々の返済額も多くなります。急な出費があるときや失業してしまったときには、返済が滞る可能性があります。

返済ができなくなれば、大切なマイホームを手放さなければなりません。場合によっては、マイホームだけでは借入額に満たず、最悪の場合、自己破産に陥ってしまいます。特にオーバーローンを組むと、その可能性も高まります。

やはり、貯蓄なしで住宅購入を進めるリスクは、かなり高いと言わざるを得ません。

04マイホームの購入資金を貯めるコツ

貯蓄の重要性がわかっても、なかなかお金はたまらない。そんな方のために、マイホーム購入のための貯蓄をするコツを紹介します。

収支状況をチェックし見直す

まず現在の収支状況を見える化し、節約できそうなものをチェックします。

さらに毎月の固定費の見直しをします。携帯電話の料金、利用頻度が高くないサブスクリプションサービス、何となく支払っているサービスなど意外と見直せるものがあるかもしれません。

月々、見直して浮いたお金はそのまま貯蓄に回せるお金です。

天引き貯蓄の利用

給与が入ったら自動的に貯蓄される天引き貯蓄は有効な手法です。

財形貯蓄

毎月の給与から一定額を自動的に積み立てる財形貯蓄制度を使う方法があります。勤務先がこの制度を採用していることが条件ですが、財形貯蓄制度には財形住宅貯蓄があり、住宅の取得やリフォームを目的とするものです。同じく財形貯蓄制度の一つである財形年金貯蓄と合算して預入額と利子の合計が550万円までは利子が非課税になるというメリットもあります。1年以上の積み立てで残高が50万円以上ある場合は「財形住宅融資」を受けることもできます。

銀行の積立式商品

勤務先が財形貯蓄を採用していなくても、毎月決まった日に預貯金口座から自動的に差し引いて別の口座に積立ていく金融機関のシステムがあります。金融機関によって商品の内容は異なりますので、確認してみましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

関連キーワード

ご利用上の注意

  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただいたものとします。

0