住宅ローン審査で重要視されるのは「完済時年齢」!平均は何歳?40代なら早めの決断が必要?
2022年3月25日、国土交通省は「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」の結果を取りまとめ公表しました。調査結果によると、金融機関が住宅ローンの融資を行う際に考慮する項目として最も多く挙げられたのが「完済時年齢」でした。また「借入時年齢」も、金融機関が審査項目として挙げており、高齢になればなるほど住宅ローン申し込みのハードルが高くなりがちであることがわかります。 そこでこの記事では、住宅ローンの完済時年齢の平均や各金融機関が設定している完済時の上限年齢などを解説。年齢のほかに、どのような項目が審査時に考慮されるのかも合わせて紹介します。
01住宅ローンの完済時年齢の平均は?
まずは、大半の金融機関が住宅ローンの審査項目として挙げている、完済時年齢のデータを見ていきましょう。
2022年3月付で国土交通省が公表している「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」によると、住宅の種類別に見た住宅取得借入金の返済期間と、一次取得における世帯主の平均年齢は次のとおりです。
住宅の種類 | 住宅取得借入金の返済期間 | 一次取得における世帯主の平均年齢 |
注文住宅※ | (建築)32.9年 | 40.0歳 |
(土地)34.2年 | ||
分譲戸建住宅 | 34.1年 | 37.2歳 |
分譲マンション | 32.0年 | 39.5歳 |
中古戸建住宅 | 29.2年 | 43.2歳 |
中古マンション | 29.9年 | 43.6歳 |
※注文住宅の調査地域は全国、そのほかは三大都市圏における調査
※注文住宅は建て替えを除く
たとえば、注文住宅を購入した人の取得時平均年齢は40歳。完済するまでに平均で約33〜34年と考えると、単純計算で完済時の平均年齢は73〜74歳となります。最も完済時年齢の低い分譲戸建住宅でも約71歳であり、いずれの住宅でも完済時年齢は70歳を超えています。
02住宅ローンの利用要件では完済時年齢「満80歳未満」が主流に!
住宅ローンを利用する場合、金融機関が設定する年齢要件として「申込可能年齢」と「完済時年齢」があります。このうち申込可能年齢は20歳以上としている金融機関が多く、2022年4月から成年年齢が引き下げられたことに伴い18歳以上としている金融機関もあります。一方の完済時年齢は満75〜80歳未満が主流です。
利用要件の完済時年齢が80歳でも安心できない理由
かつての住宅ローンでは、利用要件の完済時年齢は満65歳が主流でした。しかし近年では、住宅購入の平均年齢が上がっていることや、定年退職の年齢が上がっていることなどを背景として、完済時年齢が引き上げられています。
現在では完済時年齢満80歳というのが主流ですが、収入源が年金のみとなれば、月々の返済によって老後資金が不足する可能性もあります。2021年4月に施行された法改正で「70歳定年」が盛り込まれましたが、あくまでも企業の努力義務に過ぎず、必ず70歳まで働けるとは限りません。
こうした動きに合わせ、老齢厚生年金の支給開始年齢を現在の65歳から68歳に引き上げるという案も浮上しています。実際、2022年4月から繰り下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられているのです。
上の実態を踏まえると、会社勤めの人であれば65歳の定年退職までに完済できるよう、住宅ローンを借り入れるのが理想と言えるでしょう。中には退職金で一括返済しようと考えている人もいるかもしれませんが、退職金は老後資金の不足を補うものでもあるため、できる限り返済に充てないようにしておくほうが無難です。
40代以降なら早めの決断が必要!
国土交通省「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、約99%の金融機関が融資を行う際に「完済時年齢」を考慮すると回答しています。仮に45歳の人が借入期間最長35年で住宅ローンを借り入れた場合、完済時年齢は上限の80歳。つまり、40代以降で借り入れるのであれば、早めの決断が必要ということです。
45歳を過ぎると定年まで残り20年程度しかなく、長期で借り入れると定年退職後も支払いが続きます。条件的には80歳まで住宅ローンを組めるものの、高齢になれば病気のリスクなども上がるため、金融機関の融資審査が厳しくなる可能性もあります。 まとまった資産がある人や、目立った持病がない人などは有利に働くケースもありますが、どちらにしても早めの決断が良いと言えるでしょう。
03融資審査では「完済時年齢」以外に何がチェックされる?
先ほども紹介した国土交通省「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」は、全国の金融機関(銀行、信用金庫等)を対象に実施される調査で、令和3年度は1208機関が回答しています。同調査によると、9割以上の金融機関が次のような項目を融資時の審査項目として挙げています。
審査項目 | 回答した金融機関の割合 |
完済時年齢 | 98.9% |
健康状態 | 98.5% |
担保評価 | 97.6% |
借入時年齢 | 97.1% |
年収 | 95.0% |
勤続年数 | 94.5% |
連帯保証 | 94.5% |
出典:国土交通省「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」
先述の通り、実に約99%の金融機関が「完済時年齢」を審査項目に入れていることがわかります。では、それ以外にどのような項目が審査時にチェックされるのでしょうか。各項目について簡単に解説していきます。
健康状態
融資審査の際に金融機関が重視するのは、「借り入れる人に十分な返済能力があるか」という点です。そのため、契約者の健康状態は重要な審査項目の一つです。
借入申込時、契約者の健康状態に不安があったり、持病があったりすると団体信用生命保険(団信)に加入できない場合があります。「団信に加入できない=住宅ローンを借り入れられない」ということです。
もし団信に加入できない場合、団信加入が任意であるフラット35での借り入れを検討しなければなりません。ただし、健康上の理由で団信に入れずフラット35を利用するケースでは、万が一途中で返済ができなくなった場合に備え、別途生命保険に加入しておいたほうが安心です。
通常の保険に加入できない人向けに、各保険会社が取り扱っている「引き受け基準緩和型保険」に加入できるか確認しておくといいでしょう。
担保評価
返済期間が長期に渡る住宅ローンでは、途中で収入が減ったり途絶えたりして返済が困難になる事態も考えられます。金融機関はそうした貸し倒れのリスクを想定して、購入する不動産に抵当権を設定します。万が一契約者が返済不能となった場合、抵当権を設定した不動産を売却して融資金額の回収に充てるのです。
よって住宅ローンの審査においては、抵当権を設定した不動産の評価額も重要なポイントです。これは、不動産の売却金額が住宅ローンの残高よりも少なく、十分に融資金額を回収できないという事態を防ぐためといえます。契約予定者の希望する借入金額よりも不動産の評価額が低ければ、それに応じて融資可能額も引き下げられる可能性があります。
借入時年齢
完済時年齢と同様、借入時年齢にも上限が設定されています。設定年齢は金融機関によって異なりますが、満65歳や満70歳といった設定が一般的でしょう。ただし、借入時年齢が高ければ高いほど将来的な返済不能リスクが高いと見なされ、融資の審査は厳しくなります。
上限に近い年齢で融資を受けようとすると、完済時年齢の上限により最長35年で借り入れることは難しく、短い借入期間で契約しなければなりません。短期間で返済しなければならないため、月々の返済額がアップし、将来返済が滞るリスクも高くなる可能性があるためです。
年収
年収は返済能力に直結する項目であり、多くの金融機関が重視しています。最近ではローンの利用条件として「将来に渡って、安定的かつ継続的な収入の見込みがある人」といった項目を挙げるなど、安定的な収入が見込める人であれば利用できる商品も増えてきました。
一方、フリーランスや個人事業主だと収入が不安定になりやすいため、たとえ高収入であっても会社勤めの人に比べて審査が厳しいと言われています。
フリーランスや個人事業主でも審査に通る可能性はありますが、利用条件に「個人事業主の利用は不可」と明記している金融機関もあるので注意が必要です。一定の収入があるなら、フリーランスや個人事業主でも借り入れしやすい住宅ローンを選ぶようにしましょう。
勤続年数
勤続年数は長ければ長いほど、「安定した収入がある」もしくは「今後昇給などにより収入が増える可能性がある」といった理由で、住宅ローンの審査に有利であることは間違いありません。ただし、近年はネットバンクの台頭により、勤続年数がまだ短い給与所得者(6カ月以上など)や有期雇用の人(契約社員や派遣社員など)であっても、住宅ローンを利用しやすくなりました。
また、かつて銀行等は勤続年数の目安を「3年以上」としているのが一般的でしたが、最近では勤続年数が2年程度でも審査に通るケースが見られます。転職したばかりで勤続年数が短い人でも「職務経歴書を提出すればOK」としている商品もあり、より多くの人が住宅ローンを利用しやすい環境になってきたと言えます。
連帯保証
原則、住宅ローンの借り入れに連帯保証人の設定は不要です。しかし、契約者一人では返済能力が不足していると判断された場合、親や配偶者の収入を合算し、連帯保証人もしくは連帯債務者に設定するケースがあります。
連帯保証人とは、契約者本人の返済が滞った際に返済を保証する人です。対する連帯債務者は、契約者本人と連帯して同じ債務を負う人のことを指し、契約者本人と同じ立場であると言えます。
連帯保証人・連帯債務者とも契約者同様に返済能力が求められるため、契約者との続柄や年収、他社からの借入状況、健康状態などの審査が行われます。
04物件が決まる前に金融機関の事前審査が受けられる「スゴ速」で適切な予算を把握してみよう
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。