年収800万円の適正な住宅ローン額はいくら?返済計画のポイントもチェック

2021.10.12 17

2019年に厚生労働省が公表した「国民生活基礎調査の概況」によると、所得金額の中央値は約437万円でした。世帯年収800万円となると、平均的な世帯よりも多くの収入を得られているケースが多く、「どれくらいまで住宅ローンを借りられるか」について気になっている方もいるのではないでしょうか。 そこで今回は、世帯年収800万円でこれから住宅を購入する予定の方に向けて「住宅ローンの借入可能額の目安」や「夫婦で住宅ローンを組む際の注意点」などを解説します。具体的なシミュレーション結果も記載しているので、返済計画を考えるときの参考にしてください。

01年収800万円で住宅ローンはいくら組める?

利用者の職業や年齢にかかわらず、収入に対して住宅ローンの借入金額が大きくなりすぎると返済が苦しくなったり、そもそも金融機関の審査に通らなかったりするので注意しなければいけません。そこで頼りになるのが、住宅ローンの借入可能額の目安を知るための「年収倍率」や、返済にあたって家計が苦しくならない返済額の目安を知るための「返済負担率(返済比率)」という指標です。住宅ローンを実際に借り入れする前にそれらの指標を理解しておくことで、計画的な返済ができるようになるでしょう。まずは、年収倍率から借入可能額をシミュレーションします。

一般的な年収倍率から見た借入可能額は4000万~4800万円

年収倍率とは、「購入予定のマイホーム価格が年収の何倍に相当するか」を算出する指標です。詳細な条件は各金融機関で異なるものの、一般的には住宅ローンの借入可能額の目安は年収の5~6倍くらいだとされています。つまり年収800万円世帯の場合、借入可能額は4000万~4800万円が1つの目安になるでしょう。とはいえ、この額を上限まで借り入れるのではなく、ある程度の頭金を用意する必要がある点は覚えておきましょう。

ただし購入する住宅の種類によって、平均的な年収倍率が異なる点には注意してください。国土交通省「令和2年度 住宅市場動向調査~調査結果の概要(抜粋)」によると、三大都市圏の中古住宅を購入した人の平均年収倍率は3.81倍(平均購入価格は2894万円)です。それに対して、購入価格が高くなりやすい新築注文住宅の平均年収倍率は6.67倍(平均購入価格は5359万円)となっています。

仮に年収800万円で新築注文住宅を購入し、平均年収倍率6.67倍であれば約5300万円となります。そして、頭金を20%(1060万円)と考えると、約4200万円を借り入れることになるので借入可能額の範囲内に収まるといえます。そのため、年収800万円世帯の場合、年収倍率を高めに設定すれば、全国の中でも地価の高い三大都市圏で新築注文住宅を建設することも夢ではありません。ただし、多くのお金を借りれば借りるほど、その分返済が大変になることは理解しておきましょう。

無理のない返済額は月々10万~14万円以下

住宅ローンを組むときに年収倍率で借りられる金額の上限を把握しておくことは重要ですが、それと同じくらい「無理のない返済金額はどれくらいか」を把握しておくことも大切です。そこで、役に立つのが「世帯年収に占める住宅ローンを含めた年間支払額の割合」を表す返済負担率という指標で、一般的に家計に無理のない範囲で返済できるのは、世帯年収ではなく手取り年収の20~25%だといわれ、30%を超えると返済負担が重くなります。ちなみに返済負担率の計算方法は、「年間のローン返済額合計÷手取り年収×100」です。

たとえば、年収800万円(都内在住、40歳未満、扶養なし)の方の場合、一般的な手取り収入は年額で約635万円(月額で約53万円)です。返済負担率が20%の場合は月々10万6000円、返済負担率25%の場合は月々13万2500円が返済額の目安となります。

仮に変動金利0.375%、返済期間35年、ボーナス返済なしという条件で毎月10万円の返済をする場合、総返済額の目安は4199万円になります。同じ条件で月々14万円の支払いをする住宅ローンを組んだ場合、総返済額の目安は5879万円です。

月々14万円の支払いになるのは、先述した新築注文住宅(平均購入価格5359万円)程度の住宅を購入したケースです。先ほどもお伝えしたように、価格が高い住宅を購入する場合は、適正な年収倍率の範囲を超えないためにも、できるだけ頭金を用意して借入金額を抑える必要があります。

また返済負担率で考えると、月々の支払いが14万円の場合は26.4%=年間のローン返済額合計168万円÷手取り年収635万円×100と、25%より若干高くなる程度ですが、他の借り入れがあると30%近くになる可能性も出てくるでしょう。

実際のマイホーム購入にあたっては物件の予算も関係してくるため、返済負担率を低くすることだけにこだわると、理想とする住宅の購入が難しくなるかもしれません。無理のない範囲で返済できる金額は各家庭の家計状況によっても異なるので、予算と返済のバランスを考えて住宅ローンの借入金額を決めることが大切になります。

なお、返済負担率はあくまでも、年収に占める返済金額の割合を示す指標です。そのため、住宅ローン以外にもカードローンや教育ローンなどがある場合は、それらの返済額も含めて計算しましょう。また住宅購入にあたっては、登記費用や住宅ローンの事務取扱手数料などの諸費用がかかります。

5000万円程度の住宅を購入する場合は、それらの諸費用だけで一般的に150万円以上かかるので、予算を考える際はそのことも忘れてはいけません。基本的に借入金額が多くなればなるほど返済負担率も高くなるので、できれば諸費用は住宅ローンに含めず現金で用意しておくほうが安心です。

02用意する頭金の平均額は?

できるだけ年収倍率や返済負担率を抑えるには、借入金額を少なくする必要があり、そのためには頭金を用意することがポイントです。住宅購入で用意する頭金は一般的に住宅価格の1~2割程度だといわれています。ただし、国土交通省「令和2年度 住宅市場動向調査」によると、もう少し高い割合で頭金を用意している人も多い点は留意しておきましょう。同調査によると、土地購入資金を除いた注文住宅の建築資金は全国平均で3168万円、三大都市圏平均で3383万円でした。そのうち、自己資金の平均額はそれぞれ848万円(26.8%)と1057万円(31.2%)で、多くの世帯で住宅購入資金の3割程度の頭金を用意していることが分かります。

以上のことから、仮に5500万円の住宅を購入する際は550万(1割)~1650万円(3割)程度が頭金の目安だといえるでしょう。頭金をたくさん用意するほど借入金額が抑えられるため支払う利息が減り、結果的に総支払額が減少する点は大きなメリットです。ただし、手元にある預貯金のすべてを頭金として入れてしまうと、突然の病気や事故など、不測の事態が起きたときに対応できない恐れもあります。突然の出費があったときに慌てないように、最低でも毎月の生活費の3カ月分は現金で確保しておくほか、それ以外の出費にも備えるのであれば6カ月分は手元に置いておきたいところです。子どもがいる場合の教育資金など、直近で予定されているライフイベントを考慮しながら、何かあってもしばらくは困らない程度の資金を手元に残すことに留意して頭金の額を検討しましょう。

03年収800万円だと、月々の返済額はいくらが適正?

ここまで、年収800万円の方が組める住宅ローンの上限額の目安や無理のない返済額などについて解説してきました。しかし住宅ローンは借入金額が同じでも、返済期間や金利タイプによって総返済額や月々の返済額が異なります。そこでここからは、住宅ローンの利用を前向きに考えている方に向けて、返済期間と金利タイプ別の月々の返済額と総支払額のシミュレーションを紹介します。

【返済期間別】総返済額、月々の返済額はどのくらい?

まずは、返済期間別のシミュレーションを紹介します。なお、高額になりがちな新築注文住宅を購入すると仮定して、借入条件は借入金額5500万円、変動金利0.375%(ただし、借入期間中は同率と仮定)、ボーナス返済なしです。以上の条件により算出したシミュレーション結果は以下の通りです。

借入期間 月々の返済額 総支払額
25年 19万2089円 5764万円(総利息264万円)
30年 16万1556円 5817万円(総利息317万円)
35年 13万9754円 5871万円(総利息371万円)

上記表のとおり、借入期間を長く設定すればするほど、同条件でも支払利息が増えることが分かるでしょう。これは月々の返済額が少なくて済む分、元本の減りも少ないことが原因です。とはいうものの、借入期間25年と35年の総支払額の差は、およそ100万円です。年収800万円(手取り年収約635万円)の世帯で借入期間25年の返済を行うと、手取り収入における返済負担率は36%以上になるため、毎月の家計はかなり苦しくなることが予想されます。そのため無理をして借入期間を短くするよりは、借入期間を長くして月々の返済額を抑えたほうが良い場合もあることは覚えておきましょう。

ただし注意しなければいけないのは、今回のシミュレーションでは借入期間中の金利は同率だと仮定している点です。変動金利は固定金利に比べて契約当初の金利が低いというメリットがあるものの、将来的に金利が上昇すると総支払額が増える可能性があります。借入金額が少ないほど金利上昇の影響は軽くなりますが、5000万円という高額なローンを組む場合は、金利が上昇した際に受ける影響がそれなりに大きくなるため気を付けなければいけません。変動金利のメリットを活かしつつ、金利上昇リスクのデメリットを避けたい方は、頭金をできるだけ多く入れて借入金額を抑えるなどの対策を検討しましょう。

【金利タイプ別】総返済額、月々の返済額はどのくらい?

次に金利タイプ別の月々の返済額と総返済額をシミュレーションしていきます。金利タイプ別のシミュレーション条件は借入金額5500万円、返済期間35年、ボーナス返済なしです。選択する金利タイプによってどれくらいの差が生じるのでしょうか。なお、金利については借入期間中ずっと同率と仮定しています。

金利タイプ 月々の返済額 総支払額
全期間固定 (0.940%) 15万3723円 6460万円(総利息960万円)
10年固定 (0.495%) 14万2650円 5993万円(総利息493万円)
変動 (0.375%) 13万9754円 5871万円(総利息371万円)

シミュレーションからは選ぶ金利のタイプによって、総利息に大きな差が生じることが分かります。全期間固定型と変動型の総利息の差はおよそ600万円と、実に2.5倍以上です。ただし、変動型には金利上昇リスクがありますが、全期間固定型は返済期間中ずっと同じ金利が適用されるため、そのようなリスクはありません。全期間固定型は低金利の恩恵を受けられないものの、金利上昇局面においても毎月の負担が増えず、計画的な返済ができる点は大きなメリットになります。

なお、年収800万円(手取り年収約635万円)の世帯で上記シミュレーションの全期間固定型を選択した場合、手取り年収における返済負担率は29%です。返済が難しくなる目安の30%未満ではありますが、住宅ローン以外のローンがあるとさらに家計が苦しくなる可能性は高まります。そのため、金利上昇リスクが心配で全期間固定型を選択する方は、利用する金融機関を吟味して少しでも適用金利の低いところと契約するとよいでしょう。

たとえば全期間固定型のフラット35のなかには、頭金を1割以上入れると優遇金利の適用を受けられるプランがあります。今回は全期間固定型0.940%でシミュレーションしましたが、仮に0.3%低い0.640%で計算し直すと総支払額は6143万円となり、金利差で317万円も抑えられます。全期間固定型を選ぶ場合は、そのような優遇金利が適用されるプランを利用して、少しでも総支払額を下げるようにしましょう。

また、頭金を用意することが難しい方や、固定金利と変動金利のどちらにするか判断がつかない方は、とりあえず10年間だけ固定金利にしたり、固定型と変動型をミックスしたりするという方法もあります。特に、10年固定型は変動型と比べても金利差が小さいうえ、契約当初から10年間は金利上昇リスクがないというメリットがあるので、様子を見たい人におすすめです。

04夫婦で住宅ローンを組むときの注意点

夫婦どちらかだけが単独で契約するシングルローンでは審査に通らないことが予想される場合、夫婦2人で住宅ローンを組むことを検討している方もいるでしょう。夫婦2人で利用できる住宅ローンには、「ペアローン」と収入合算の「連帯債務型」および「連帯保証型」の3種類があります。

ペアローンとは1つの住宅に対して、夫婦それぞれが別々の住宅ローンの契約者となるローンです。1人で契約するよりもトータルでの借入可能額を増やせる点や2人分の住宅ローン控除を受けられる点がメリットになります。一方で、住宅ローンの契約が2つになることで、契約にかかる諸費用も2本分かかってしまう点はデメリットです。

収入合算の連帯債務型は夫婦のどちらかが主債務者、もう一方がその連帯債務者となる住宅ローンの契約形態です。主債務者でない方も連帯債務者となるため、1つの住宅ローンに対して最初から夫婦それぞれが債務の全額を負う形になります。ペアローンと同じように、どちらかが単独でローンを組むよりも借入可能額を増やせる点や夫婦それぞれで住宅ローン控除を受けられるのに加えて、契約自体は1つなのでかかる諸費用も1本分だけで済む点がメリットです。ただし、返済途中で離婚した場合でも住宅ローンの連帯債務者の返済義務はなくならない点には注意しましょう。また、連帯債務型の住宅ローンを取り扱っている金融機関があまり多くない点もデメリットに挙げられます。

収入合算の連帯保証型は、夫婦のどちらかが債務者となり、もう一方がその連帯保証人となるローンです。連帯債務型と異なるのは、連帯保証人は債務者が返済できなくなった場合に限り、その時点で返済能力があるかないかを問わず、返済義務が生じる点です。ほかのローンと同じく単独で住宅ローンを組むよりも借入可能額は増やせますが、債務者が1人であることから住宅ローン控除は1人分しか適用されません。

夫婦で支払う住宅ローンの詳細については、下記の記事も参考にしてください。

05無理のない返済計画のために気をつけたいこと

夫婦共働きで世帯年収800万円の方が住宅ローンを組む場合に気を付けたいのが、ライフイベントによって配偶者の収入が減少することです。具体的には妊娠や出産、育児や親の介護、病気やケガ、会社の業績悪化による給料減少などが挙げられます。安定した生活を営むためには、これらの出来事が起こってもマイホームを手放さなくて済むような返済計画を立てなくてはいけません。また老後のことを考えると、定年退職後にも住宅ローンの支払いが残るような返済計画はできれば避けたほうがよいでしょう。

そうしたリスクを抑えるためのひとつの手段として、住宅ローン控除などの減税制度を上手に活用する方法があります。たとえば、住宅ローン控除は年末時点での住宅ローン残高の1割を10年間にわたって所得税や住民税などから控除してくれますが、年間で最大40万円までしか控除されません。つまり、今回のシミュレーションのように総額4000万円以上の住宅ローンを組む場合は、シングルローンを組むよりもペアローンや収入合算の連帯債務型のように夫婦それぞれで住宅ローン控除を受けたほうがお得になることがあります。

また、消費税率アップによる消費者の負担を軽減するための制度である「すまい給付金」も要件に当てはまれば、最大で50万円の給付が受けられます。それぞれの持ち分で申請する仕組みなので、ペアローンや連帯債務型で住宅ローンを組んでいる方は忘れずに申請しましょう。

06年収800万円でもシミュレーションで無理のない返済計画を立てよう!

国土交通省の資料からは年収800万円の世帯なら、三大都市圏で新築注文住宅を建設することも夢ではないことが分かります。とはいえ、住宅ローンは30年など長期にわたって返済を続けなければいけないので、ローン契約する際は育児や親の介護による収入減少などといったリスクまで考慮しておくことが大切です。無理のない返済計画を立てるために、最適な借入可能額がどれくらいかを把握したい方はサイト内の「借入可能額シミュレーター」や「毎月の返済額シミュレーター」を使って試算してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP(R)認定者・一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)・DC(確定拠出年金)プランナー・住宅ローンアドバイザー・証券外務員

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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