住宅ローンの申し込みに必要な納税証明書とは?使用用途から入手方法まで解説
住宅ローンの申し込みで必要となる書類の1つに「納税証明書」があります。金融機関から、借り入れする人の収入や納税状況を審査する目的で提出を求められます。今回は「納税証明書」の入手方法をはじめ、よく似た書類である「課税証明書」との違いやその他の注意点を紹介します。この記事を読めば、納税証明書の使用用途についてきちんと理解できるはずです。
01住宅ローン申し込み時に提出する納税証明書とは?
「納税証明書」とは、所得税や法人税、消費税といった納税者の納付すべき税金(国税)が納められているかを証明するために、税務署が発行する書類です。「納税証明書」には課税額だけでなく、納付済みの税額や未納分の税額についてもすべて記載されています。また住民税といった地方税に関する「納税証明書」もあり、こちらの発行元は各市区町村です。そのため実際のローン申し込み時は、「国税」と「地方税」に関する納税証明書の用意が必要になります。
住宅ローンの申し込みでも「納税証明書」が必要ですが、すべての人に提出を求められるわけではありません。納税証明書の提出が必要となる人は、主に個人事業主(フリーランス)や法人代表者です。会社勤めの人が住宅ローンを借り入れる場合は、源泉徴収票と合わせて前年の所得を確認できる「課税証明書」を添付すれば、納税状況を証明できます。
金融機関としては、万が一ローン返済が滞った場合に備えて、借り入れする人の納税状況を見てローン返済能力を判断する必要があるためです。
「納税証明書」は住宅ローン以外でも、必要となるケースが多くあります。例えば担保権の設定、帰化申請、保証人になる場合の各種契約時、さらに身近なところでは軽自動車の継続審査や保育園の申請、児童手当、医療費や年金受給の申請で必要です。
ところで、よく似た書類に「課税証明書」がありますが、「課税証明書」は「課税された税額がいくらなのか」を証明する書類です。したがって、「納税証明書」と異なり、「納税したこと」の証明にはならない点に注意してください。ただし、課税証明書には前年1年間分の所得額や各種の控除額、課税額の内訳、所得割か均等割の区分や課税額などが細かく記載されているので、各融資などの際には幅広く利用されています。
ちなみに課税証明書の発行元は各区市町村です。この2つはまぎらわしいので、提出書類を用意する際に取り間違えないように注意しましょう。
02納税証明書の種類
「納税証明書」は大きく分けて4種類あります。それぞれは下記の通りです。
納税証明書の種類 | 証明内容 |
納税証明書(その1) | 納付すべき税額、納付した税額、未納の税額などを証明するための書類 |
納税証明書(その2) | 所得金額の証明 個人は申告所得税および復興特別所得税に係る所得金額、法人は法人税に係る所得金額になる |
納税証明書(その3) | 未納の税額がないことの証明。税目を指定した「その3の2」(申告所得税および復興特別所得税と消費税、地方消費税)や「その3の3」(法人税と消費税及地方消費税)の証明も含まれる |
納税証明書(その4) | 証明を受けようとする期間に、滞納処分を受けたことがないことの証明 |
金融機関に住宅ローンを申し込む際、必要な書類は「その1」と「その2」となります。なお、ここでいう「納税証明書」は所得税や法人税などの国税に関する証明書類です。住民税などの地方税に関する納税証明書は各市区町村が窓口になります。
03納税証明書はどこで入手する?
国税に関する納税証明書は基本的に「その1」から「その4」まで、税務署が管轄しています。したがって、請求先も管轄の税務署となります。請求方法はオンライン申請、税務署窓口、郵送の3つです。それぞれの入手方法について解説します。
オンライン
e-Tax(国税電子申告・納税システム)での申請によって、インターネットを通じての納税証明書の交付請求が可能です。書面の納税証明書は税務署窓口または郵送、電子納税証明書(電子ファイル)はオンライン上で取得できます。オンライン申請は税務署窓口での待ち時間がなく、いつでもどこからでも申請できるので非常に便利です。ただし、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用するには、専用ソフトのインストール作業や電子証明書、ICカードリーダライタの準備といった手間がかかるので、電子申請をしたことのない人にとっては少し面倒かもしれません。
なお、納税証明書の受け取り方法は自由に選べますが、書面請求の場合は請求日当日の受取を指定すると、多少時間がかかることがあります。交付手数料については下記の通りです。また、オンラインにて申請する際の手数料は電子納付となります。
書面の納税証明書の交付手数料
納税証明書の種類 | 手数料 |
納税証明書(その1) | 税目数×年度数×枚数×370円 |
納税証明書(その2) | 年度数×枚数×370円 |
納税証明書(その3) その3の2、その3の3を含む |
枚数×370円 |
納税証明書(その4) |
電子納税証明書の交付手数料
納税証明書の種類 | 手数料 |
納税証明書(その1) | 税目数×年度数×370円 |
納税証明書(その2) | 年度数×370円 |
納税証明書(その3) その3の2、その3の3を含む |
370円 |
納税証明書(その4) |
税務署窓口
納税証明書を請求するために税務署窓口行く場合は、以下の書類が必要です。
- 必要事項を記載した納税証明書交付請求書
- 手数料の金額に相当する収入印紙又は現金
- 本人確認書類および番号確認書類
- 本人(法人の場合は代表者本人)または代理人本人であることを確認できる本人確認書類
- 本人の番号確認書類(個人のみ、法人の場合は不要)
- 本人(法人の場合は代表者)からの委任状。代理人の方(家族、代表者以外の役員、従業員を含む)が来署される場合に必要
税務署窓口での発行手数料は以下の通りです
税務署窓口での発行手数料
納税証明書の種類 | 手数料 |
納税証明書(その1) | 税目数×年度数×枚数×400円 |
納税証明書(その2) | |
納税証明書(その3) その3の2、その3の3を含む |
枚数×400円 |
納税証明書(その4) |
郵送
郵送で納税証明書を請求することも可能ですが、その場合は以下のものを同封する必要があります。
- 必要事項を記載した納税証明書交付請求書
- 手数料の金額に相当する収入印紙
- 所要の切手を貼った返信用封筒
- 番号確認書類の写しおよび本人確認書類の写し(個人のみ、法人の場合はいずれも不要)
郵送での発行手数料は400円です。ちなみに納税証明書の交付請求には、収入印紙または現金での手数料が必要となりますが、税務署に赴いて請求する場合のみ現金納付が可能となっています。また、収入印紙を貼って手数料を納める場合は、収入印紙には絶対に消印をしないように注意してください。消印したものは無効となります。
04納税証明書記載・提出時の注意点
納税証明書を入手する前に、金融機関へ提出する際の注意点についても説明します。
納税証明書の有効期間を定めている金融機関も
納税証明書については、特に有効期間は定められていませんが、金融機関によっては「発行後3カ月以内のもの」など納税証明書の有効期間を定めていることがあるので、その期間内に発行されたものを提出するように気を付けましょう。
複数年度分の証明書が必要になることも
借り入れする人の返済能力を確かめるために、数年分の納税証明書の提出を求められることがあります。何年分の納税証明書が必要か、各金融機関の定めた要件を確認しましょう。金融機関によって「直近分」「直近3年分」など、期間設定はさまざまです。ちなみに税務署に請求できる納税証明書の年度は、原則として直前の年分(事業年度・課税期間)からさかのぼって3年前までとなります。
また、納税証明書は「その1」から「その4」まであるので、どの種類が必要なのかも間違えないように準備しましょう。複数の金融機関で住宅ローンの申し込みを行う場合は、金融機関ごとに違う要件で混乱しないように、事前に情報整理しておくことも重要です。
05金融機関によって要件が異なることも!納税証明書を用意する前に事前にチェックを
納税証明書は、主に個人事業主や法人代表者が住宅ローンを申し込む時に金融機関から求められる書類です。国税に関する納税証明書は税務署、都道府県税等の納税証明書は各市区町村で取得できます。金融機関によって用意すべき書類の有効期限や種類が異なることが多いので、事前に要件をよく確認してから発行手続きを進めていきましょう。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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