1親子リレーローンの概要

親子リレーローンは、親子など親族同士のペアで同居するために住居の住宅ローンを組み、将来は親から子へと引き渡す形で2世代にわたり、借り入れを返済していく制度です。一般的には、中高年の親と成人した子のペアで融資を受け、始めは親がローンを返済していきます。高齢により親が定年退職した時点で、子が返済を引き継ぎます。ちなみに、親子リレーローンは新築購入時だけではなく、リフォームや住み替え、あるいは、借り換えなどの際にも利用することができる制度です。

親子リレーローンの特徴と利用するメリット

一般の住宅ローンは80歳までに借り入れを完済するという条件が一般的です。そのため高齢者の場合には長期のローンを組めません。しかし、親子リレーローンであれば、この問題を解決できます。また、親が高齢で返済期間が確保できないというケースに加えて、収入が少なく単独では住宅ローンを組めない、という場合にも便利です。実際、こうしたケースでの利用が多くなっているようです。親子で協力してローンの返済を行なっていくので「単独では住宅ローンの返済が厳しい」「高齢のためローンが組みづらい」といった悩みを解消できます。

親子リレーローンの要件

金融機関によって若干異なりますが、親子リレーローン利用者の要件は以下のようになります。

  • 同居中もしくは将来、同居を予定している親子であること
  • 借り入れ時に親の年齢が70歳未満であること
  • また、子の最終返済時の年齢が満80歳未満であること
  • 親から返済を引き継ぐ子どもは1人であること
  • 親子双方ともに安定した収入があること
  • 団体信用生命保険への加入

金融機関によっては、例えば住宅金融支援機構のフラット35など、他の要件を満たせば、親の年齢が70歳以上であってもローン融資を受けられるものもあるようです。また、団体信用生命保険に子のみが加入するのも、親子リレーローンの一般的な特徴です。この保険は債務者が死亡や重度の身体障害などで返済不能になった場合に、ローン残債をすべて保険会社が保障するものです。親である主債務者に死亡や重度の身体障害などといった事情が生じた場合に、連帯債務者である子がローンを引き継ぐことが前提となっている契約のため、こうした特徴となっています。

2親子リレーローンと親子ペアローンの違いは?

親子リレーローンに対して親子ペアローンという制度もあります。親子ペアローンとは、親族で互いに協力し合いながら住宅ローンを複数組むことにより、単独の契約では金融機関に断られるような金額などを、より有利な条件で融資を受けられる制度です。親族がそれぞれ単独で住宅ローンを組むだけの資金力がある場合に、ひとりでも住宅ローンを組めるけれども、例えば親と子で複数の住宅ローンを組んで協力し合うことにより、より多額の融資を引き出し、よりよい物件の購入を目指す方法です。

親子ペアローンと親子リレーローンの主な違い

  親子リレーローン 親子ペアローン
住宅ローン契約数 1本 2本
返済時期 初めは親、後に子がひき継ぐ 親子で同時に返済
団体信用生命保険 子のみが加入 親子ともに加入
住宅ローン控除 親子ともに適用 親子ともに適用

親子ペアローンの場合は、親子それぞれが団体信用生命保険に加入できるのもポイントの1つです。1つの住宅に、親子で2本の住宅ローンを並行して組み、並行して返済しているためです。

親子リレーローンが向いているケース

親が、すでに年金生活を送っていたり、働いていても収入が低くなっていたりする場合に、たとえ相当額の資産があっても、住宅ローンにとっては不利に働くケースも珍しくはありません。こうした場合にこそ、親子リレーローンを利用する価値があると言えるでしょう。現役世代で十分な安定収入のある子が、住宅ローンの返済の跡継ぎになることで、信用を補強しようというわけです。

親子ペアローンが向いているケース

例えば2世帯住宅を考えた場合に、親子双方の希望に即した、なるべく広く大きな住宅が欲しいと望むようであればこの制度は向いています。さらに、親からも経済的な協力を得られるので、この親子ペアローンで、単独では金融機関に断られてしまうような融資額の上限などもクリアすることが望めます。

3親子リレーローンの審査基準

親子リレーローンの審査基準については公表されていませんが、原則の審査項目は住宅ローンと変わりません。一般の住宅ローンの審査では借り手の返済能力について検討が行われます。親子リレーローンでは、特に子の経済状況や返済能力に審査の眼目が置かれます。子は住宅ローンを返済する親の義務を、将来、一手に背負うこととなる連帯債務者だからです。そのため、親だけでなく子が車のローンなど、他の借り入れや、あるいは滞納履歴などがあると審査に通らないケースもあることに注意しましょう。

4返済途中で親が亡くなった場合には、どうすればよいのか?

一般の住宅ローンを組む際には、団体信用生命保険に加入するのが一般的です。これにより債務者がローン返済途中に死亡した場合、残債を保険金で帳消しにできます。親子リレーローンの場合、団体信用生命保険に加入するのは、最後まで返済に責任を持つ子であるのが一般的です。そのため、親が予定している返済を終える前に亡くなった場合には、残った債務は子が引き受けます。この場合、親が支払う予定であった返済金額も、併せて子が払うことになるので、支払いが難しくなった、という事態も懸念されるところです。一方、親子ペアローンの場合には、親子双方が団体信用生命保険に加入するのが一般的なため、もしも返済途中で親が亡くなった場合でも、親の住宅ローンの残債は保険金によって相殺され、ゼロになります。もう一方の子どものほうの住宅ローンは別契約のため、返済は継続します。

返済が難しくなった場合の解決策

親子リレーローンを組んでいたところ親が急に亡くなってしまい、親の支払いも含めた残債の返済に子が窮してしまった場合、どのような解決策が考えられるでしょうか。こうしたケースでは、家の売却を考えるのも一つの方策です。家の売却額でローンの残債を相殺できるかどうかを調べてみましょう。もし、ローンの残債以上の金額で家を売却できそうであれば売却手続を進め、ローンを抹消してしまえばいいのです。

家を売っても負債のほうが多そうな場合には、次の方策を模索します。融資をしてもらっている金融機関に相談し、返済スケジュールの変更を含めた条件設定改変の交渉を改めて行うのです。これは一見難しそうにも思えますが、金融機関側でも返済を滞らせたまま、最悪の場合、不良債権と化すような事態を望んではいません。そうした懸念を払拭できるであれば、交渉に応じてくれる可能性も十分にあるのです。

また「住宅ローン特則」を利用する手もあります。これは住宅ローンの支払いが困難になり、「個人再生」、つまり裁判所を通じて借金減額を行うことを目的とした債務整理の手続きを進めたい人が利用できるものです。この手続きを行うと、住宅ローンの支払いが継続できるよう返済スケジュールの見直しができる場合があります。この特則には以下の4つの種類があります。

  • 期限の利益回復型

返済延滞によって金融機関から一括返済を求められた場合に、残った元金と利息分について原則3年(あるいは最長5年)の分割払いが認められます。

  • 最終支払期限延長型

ローンの返済期間を10年延ばすという形で、返済期間のリスケジュールをする方法です。

  • 元本据え置き型

元本の返済を一部のみ、もしくはゼロにして、利息分だけの返済を行うという方法です。

  • 同意型

金融機関の同意を得て、上記①〜③以外の特則を定める方法です。

兄弟が複数人いる場合の相続について

親子リレーローンでは、親と一緒に住宅ローンを組んでいる子が、基本的にはその家を相続することになります。しかし、実際に相続となった場合に、子に兄弟がいたとしましょう。この場合に住宅以外の財産が少ないような時には、相続人間(兄弟間)で引き継ぐ財産の金額に、大きな差が生じる可能性があります。これが親族間のトラブルを引き起こす可能性も否定できません。また例えば、子がローンを完済したにもかかわらず、名義を親と子の50%ずつとしていた場合など、相続の際には、税制上は親の名義分が相続財産となります。こういう場合にも、兄弟間の相続争いを誘発しかねません。そのような事態を事前に避けるためにも、親子リレーローンを利用する際には、将来、誰がどの資産を引き継ぐのか、他の相続人(兄弟)にある程度認識しておいてもらうことが必要です。

5親子ペアローンを利用する際のその他の注意点

親子ペアローンで注意しておきたいことは、まず親子ともにローンを組むため、契約時の手数料など、コストが倍の負担になる点です。また、より大きな融資を受けられるからといって、無謀な借り入れは避けるべきでしょう。返済中の思いがけない収入事情の悪化などにより、返済危機に陥るリスクもあります。親子ペアローンの利用は、あくまで慎重に検討したいものです。

名義変更などに関するケースの注意点

不動産の登記名義を変えるためには、その理由が必要とされます。理由とは売買・相続・贈与などです。例えば親子ローンの残債について、親の存命中に親子間のローン割合を変更する場合でも、親子間の贈与と見なされる場合があります。そうなると、贈与税がかかる可能性があります。住宅ローンの支払いを親に肩代わりしてもらい、不動産登記は子の単独名義にしたという場合でも、両親が肩代わりした分の金額が、両親から子への贈与と見なされます。こうした場合に贈与税を回避するためには、親が負担した金額相当の持ち分について、所有権を子から親へ移転する不動産登記を行う必要があります。

また、住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例については、住宅ローンの返済中に親に住宅ローンの返済を肩代わりしてもらった場合には、利用できません。この制度は直系親族(親や祖父母)から住宅を取得するための資金贈与を受ける場合に、一人あたり最大で1200万円が非課税となるものです。この特例には、「贈与が行われた年の翌年3月15日までに居住を開始すること」という要件があり、すでに住んでいる状態では、この特例の要件に合致しないのです。

こうした名義変更などに関するケースについては、金融機関などとよく相談をした上で、判断することをお勧めします。

他のローン借り入れ時の注意点

子が別のローンを組もうとしても、親子リレーローンを組んでいるため、借り入れができなくなるケースもあります。実質的には親が返済しているとはいっても、契約上、子は連帯債務者であるからです。つまり金融機関はダブルローンを組むと判断します。それゆえに、審査のハードルも高くなるのです。