一戸建ての建築費用はいくら必要?坪単価での平均も合わせて考える
マイホームとして一戸建てを建てたいと考えてはいるものの、建築費が高そうで躊躇している人も多いのではないでしょうか?今回は一戸建てを建てる際の費用の平均やその内訳、費用を抑えるためのポイントなどを解説します。
01一戸建ての建築にかかる費用の平均や内訳は?
まずは、一戸建ての建築には平均してどのくらいの費用がかかるのかを見ていきましょう。国土交通省が行った「令和4年度住宅住宅市場動向調査」によると、注文住宅で土地も同時に購入した場合の建築費用は平均5,436万円、建て替え(土地はすでに取得済み)の場合の建築費用は平均4,487万円、自己資金比率は前者が30.6%、後者が46.7%でした。
注文住宅の新築費用の平均と自己資金比率
土地購入の有無 | 建築費用の平均 | 自己資金比率 |
---|---|---|
土地を同時に購入した場合 | 5,436万円 | 30.2% |
土地を同時に購入しなかった場合 | 4,487万円 | 46.7% |
出典:国土交通省 令和4年度住宅市場動向調査報告書 P.48
続いて、建築費用の内訳を見ていきましょう。建築費用は大きく、土地代、本体工事費、別途工事費(付帯工事費)、諸費用に分けられます。
土地代
住宅を建築するための土地を購入する費用です。土地の価格は広さや形状、エリアや利便性などによって異なりますが、公益財団法人全国宅地建物取引業協会が行った「土地・住宅に関する消費者アンケート調査(2017年)」によると、一戸建てを建てるための土地の購入費の全国平均は約1600万円、首都圏の平均は約2680万円、中部圏の平均は約1606万円、近畿圏の平均は約1669万円でした 。
出典:公益財団法人全国宅地建物取引業協会「2017年土地・住宅に関する消費者アンケート調査」P19
本体工事費
本体工事費とは建物本体の建築工事にかかる費用のことです。本体工事費の金額は建築する建物の広さや設計、建材などにより異なるので一概には言えませんが、一般的には一戸建ての建築にかかる総費用(土地代を除く)の70%程度が目安とされています。
別途工事費(付帯工事費)
別途工事費(付帯工事費)とは建物本体以外の工事にかかる費用のことを指します。別途工事費は、住宅を建築する際に土地に古家がある場合にかかる解体費用、駐車場や庭の造成工事、屋外給排水工事や上下水道引き込み工事、外堀工事や地盤補強工事、ガス工事や電気設備工事、エアコン設置工事など多岐にわたり、費用は一戸建ての建築にかかる総費用(土地代を除く)の約20%程度が目安と言われています。
諸費用
諸経費とは一戸建ての建築にかかる総費用のうち、本体工事費・別途工事費を除く費用のことで、主に次の費用が含まれます。
主な諸費用
- 登録免許税(登記費用)
- 印紙税(建築工事請負契約書などの作成時に必要)
- 住宅ローンの手続費用
- 火災保険や地震保険の保険料
- 地鎮祭や上棟式などの費用
- 不動産取得税
- 引っ越し代金
こうした諸費用は原則として住宅ローンの融資対象に入らないため、自己資金で賄うか、別途諸費用ローンで借り入れる必要があることに注意が必要です。
02坪単価の平均はどのくらい?
ハウスメーカーや工務店の広告などで、一戸建ての建築費の目安として「坪単価●●円」と表記されていることがあります。坪単価とは、一般的に「建物の建築費を延床面積で割った1坪(約3.3㎡)あたりの価格」のことを指します。この計算式に従うと、たとえば、建築費が2500万円で延床面積が100坪の家の場合、坪単価は25万円ということになります。
では、坪単価の平均はどのくらいなのでしょうか?当然、建築費は建物のグレードや設計・デザインにかかる費用によって異なるので、同じ床面積でも坪単価が大きく異なることが珍しくないため一概には言えませんが、一般的なハウスメーカーの坪単価の相場は30万~50万円、高級な住宅を提供するとされるハウスメーカーでは70万円程度から、工務店は50万円程度からが目安となる金額のようです。
ただし、坪単価の決め方には法律で定められたルールがなく、ハウスメーカーや工務店によっては延床面積ではなく、敷地面積や施工面積(ロフトや玄関ポーチなど延床面積に含められない部分の面積も含め、施工の全範囲の面積)を基準に坪単価を割り出しているところがあります。敷地面積や施工面積は延床面積より広いので、これらを基準に割り出した坪単価は、延床面積を基準にした場合よりも安くなります。このため、建築費を安く見せるために、あえて敷地面積や施工面積を基準にした坪単価を広告などで提示しているケースも珍しくありません。建築業者を選ぶ際には、提示された坪単価の数字だけを単に比較するのではなく、その坪単価の基準が延床面積かどうかを確認するようにしましょう。
また、実際に家を建てた人から「建築費が事前に聞いていた坪単価で計算した金額を超えてしまった」という声も聞かれます。これは、坪単価を算出する際の「建築費」は本体工事費のみで、別途工事費や諸費用が含められていないケースがあるからです。工事が始まってから後悔しないように、一戸建てを建てる際には、坪単価で算出した建築費に別途工事費や諸費用がかかることを念頭において、予算計画を立てることが大切です。
03一戸建て建築費用を抑えるためのポイント
冒頭で紹介した国土交通省の調査結果からもわかるとおり、一戸建ての建築にはかなり高額な費用が必要になります。住宅ローンを組むとしても、その金額が多ければ多いほど、借入期間が長くなり、毎月の返済負担も大きくなりがちです。少しでも後々の負担を減らすためには、できるだけ建築費用を安く抑えたいものです。ここでは、建築費用を安く抑えるためのヒントをいくつかご紹介しましょう。
理想をすべて実現しようとしない
建築費は「こだわり」が強ければ強いほど高くなってしまいます。せっかくのマイホームだからといって、理想をすべて実現しようとせず、たとえば壁紙や床材など、経済的な余裕ができてからリフォームなどで取り替えられるものについては、最初は安価なもので済ませるようにすれば、建築費用を抑えることができます。
外観をシンプルにする
建物の形がシンプルであればあるほど、建築費用は安く抑えられると言われています。特に正方形や長方形など凹凸のない四角形の建物は、屋根や外壁に使う材料が少なくて済むだけでなく、施工の手間も省けるため、建築費を安く抑えられる可能性が高くなります。2階建ての場合は1階と2階の形と面積を全く同じにして、四角形を2つ積み重ねたような形状にすると費用を抑えることができます。
間取りをシンプルにする
建物の形状だけでなく、間取りもできるだけシンプルなものにした方が、予算を抑えやすくなります。壁や仕切りを極力少なくすることで、材料や施工の手間を省くことができるからです。逆に天井を高くして部屋の一部を2層式にしたロフトや中2階を設けるなど、凝った間取りにすると、その分建築費が高額になってしまいます。
別途工事費を抑える
本体工事費だけでなく、別途工事費も見直しましょう。たとえば駐車場の舗装はいったん見送って後回しにする、庭の植栽は自分でやる、外壁の素材のグレードを落とすなどの工夫をすれば、別途工事費を抑えることも不可能ではありません。
立地を見直す
土地から購入して一戸建てを建てる場合は、立地を見直すことで土地代を抑えることができます。たとえば駅からの距離の許容範囲を広げる、最寄り駅に特急がとまらない駅を選ぶなどにより数百万円単位で土地代を下げることも可能です。
土地の仲介手数料を確認する
仲介手数料は注文住宅の場合は土地を購入する際、売主と買主の間に入って仲介業務を行う不動産業者に支払う手数料です。仲介手数料の金額は、宅地建物取引業法で上限が定められています。
仲介手数料の金額はあくまでも上限の額です。不動産業者によっては仲介手数料を上限より減額するところもありますので、確認してみましょう。
住宅ローン等の諸費用を見直す
住宅ローンを組む際にも手数料や税金などの諸費用が発生します。そうした諸費用の見直しも検討してみましょう。
火災保険の節約
住宅ローンの利用ではほとんどの場合、火災保険への加入が求められます。火災保険料は住宅の種類などにより異なりますが、新たな住宅にどのような補償が必要かをあらかじめリストアップすると同時に、保険会社だけでなく保険会社と同様の補償を行うJA共済や全労済などにも資料請求をして比較することで負担の軽減に努めましょう。
マイホームは建てること自体が目的ではなく、そこで快適に暮らすことが本来の目的です。しかし、快適さを重視しすぎるあまり、建築費用の予算をオーバーしてしまうと、ローンの返済額が増えて生活が苦しくなったり、本来他の目的に使うはずだった貯金(教育資金や老後資金など)を使ってしまったりするおそれがあります。まずは資金計画をしっかり立てて、予算内で理想に近い住まいを実現できるよう、妥協できる点・できない点をしっかり見極めた上で家作りを始めるようにしましょう。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。