勤続1年未満での転職に潜む落とし穴とは?キャリア・お金・信用、3つの注意点を解説

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終身雇用制度がすでに過去のものになりつつある昨今、若者の間では「職場環境と自身の考え方や働き方が合わないなら、早く辞めたほうがいい」という声が多く聞こえるようになりました。その背景には、いわゆるZ世代を中心に「タイパ(タイムパフォーマンス)重視の考え方」が広がりつつあることが影響しており、今や勤続1年未満での転職も当たり前になりつつあります。 しかし、焦りや勢いで安易に退職を決めると、転職活動で不利になったり、住宅ローンの審査が通らなかったりと思わぬ落とし穴にはまるかもしれません。そこで、この記事では勤続1年未満で転職を検討・実行する際に気を付けておきたい「キャリア」「お金」「信用」に関する注意点をわかりやすく解説します。

01【キャリア面での落とし穴】短期離職が不利に働くことも

勤続1年未満で退職すると、転職活動で不利になるかもしれない理由としては「採用する側の印象が悪くなるリスク」が挙げられます。

介護離職や結婚・出産によるライフスタイルの変化など、致し方ない退職理由があるなら別ですが、そうした特段の事情がない場合、短期離職は採用側に「またすぐ辞めるのではないか」と不安を抱かれる要素になります。職歴は履歴書や職務経歴書の中でも目立ちやすく、印象を左右するポイントの1つなので、前職の勤続年数が短い人は選考において不利になる可能性があることを頭に入れておきましょう。

仮に短期離職をした場合は、次の就職活動で採用側に転職を決意した理由を明確に伝えることが重要です。人材の流動化が進んでいる昨今では、転職回数よりも「なぜ転職したか」が重視される傾向にあるため、前向きな理由やスキルアップの意図があるのなら、それをしっかり伝えましょう。転職を複数回した人の面接では一貫性のある退職理由が好まれやすいので、自己成長や目標に沿った選択だったことを論理的に説明するように意識しましょう。

02【お金の落とし穴】ボーナス・税金への影響も

短期離職者がお金の面で気を付けておきたいポイントは「ボーナスの受け取り」です。企業によっては就業規則でボーナスの支給条件に「支給日に在籍していること」と明記されている場合があり、退職日が支給日よりも前の人は対象外とされる恐れがあります。そのため、ボーナスを退職後の生活費としてあてにするつもりの人は、事前に支給有無を確認しておくことが大切です。

また、「社会保険料や住民税の支払い」も気を付けておきたいポイントです。特に住民税は「前年の所得」に基づいて課税されるため、退職時期によっては退職後の無収入期間でも支払い続ける必要があるので気を付けましょう。健康保険や厚生年金といった社会保険は退職日の翌日が資格喪失日となり、保険料はその前月まで発生します。健康保険には退職後2年間の任意継続もしくは国民健康保険に切り替えるという選択肢がありますが、任意継続の保険料は在職中の半額負担とは異なり、全額負担になるため支払う保険料がそれまでより増えるケースもあるので注意してください。

いずれにしても、退職後は税金や社会保険料の支払いなどで想定より手取収入が減るリスクがあります。お金の問題は事前にしっかり確認しておかないと、急な出費で生活に余裕がなくなった結果、次の職探しで「とにかく働くこと」が目的になり、条件の良くない職場を選ばざるを得なくなるかもしれません。すると、「妥協した転職」を繰り返すことになり、キャリア形成において負のループに陥ることも考えられます。

03【信用の落とし穴】住宅ローンやカード審査に響くことも

短期離職をするときに、意外と見落としがちなのが「住宅ローン」や「各種ローン・クレジットカード審査」などの金融面での信用評価です。すべての審査が当てはまるわけではありませんが、一般的に銀行や金融機関は「勤続年数」を信用力の重要指標として見ています。勤続年数が1年未満の短期離職を繰り返すと、「安定継続した収入が得られない」として評価され、クレジットカードの新規発行や限度額引き上げなどに影響する可能性があり、特に高額な借り入れになる住宅ローン審査は通りにくくなるでしょう。転職が住宅ローン審査や返済に与える影響については、以下の関連記事で詳しく解説しているので、確認してみてください。

転職が住宅ローンの審査や返済に与える影響―借り入れ前と返済中の注意点―
[返済] 2025.04.17

そうした信用力低下への対策としては以下のようなものがあります。

  • 転職前に必要なローン審査を通しておく
  • 住宅ローンではフラット35などの勤続要件が比較的緩い商品を選ぶ
  • 預貯金などで信用力を補う(自己資金を増やして、そもそもの借入額を減らす)

住宅ローン審査に通るためのポイントについて、もう少し具体的に知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

勤続年数が短くても住宅ローンの審査に通る方法
[審査] 2025.06.19

04短期転職を決める前に!「信用」と「将来の選択肢」を見直そう

キャリアアップや職場環境を変えたい場合など、明確な目的を持った転職は決して悪いことではありません。ただし、その際は「辞める前の準備」と「情報収集」をしっかりしておくことがポイントです。特に住宅ローンやクレジット審査など、「目に見えない信用力」が重視されるお金の問題においては、短期離職が将来の選択肢を狭める要因となることがあります。退職を検討するときは将来の住宅購入や家族設計などのライフプランを視野に入れて、自分にとって適切な退職のタイミングを見極めることを意識してみてください。

将来的なマイホーム購入を検討している方は、転職を決める前に「無理なく返済できる金額」を計算しておくとよいでしょう。一般的に住居費は手取り月収の2~3割以内が無理のない範囲だといわれており、そこから逆算して「転職先で最低限欲しい年収ライン」をイメージしておくと、住宅ローン審査も通りやすくなるはずです。

当サイト内には現在の家賃をベースにして予算を考えられる「借入可能額シミュレーター」、利用者の年齢や年収・家族構成からぴったりな住宅予算を計算してくれる「住宅購入予算シミュレーター」など、住宅ローン予算作成に役立つ各種シミュレーターがあるので、転職後の住宅購入に資金面で不安がある方は試してみてはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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