夏に快適な涼しい家を作る3つのコツ!光熱費の抑制で家計負担を軽減しよう

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2024年、日本では円安や人手不足などが要因で物価高騰が続いています。そんな折、2024年夏の気温は全国的に平年よりも高く、9月10月も高い気温が続くと予想されている状況です。物価高騰と厳しい暑さのダブルパンチによって、エアコン代など光熱費の家計負担が増えていることを実感する人も少なくないのではないでしょうか。 気象庁の資料によると、地球温暖化によって今後も熱帯夜や猛暑日が増え続け、日本の年平均気温は100年あたり1.16℃の割合で上昇する見込みです。そのため、これから家づくりをするのであれば光熱費の節約に貢献する「涼しい家」は必須だといえるでしょう。しかし一口に「涼しい家」といっても、どのような点に注意して住宅を建てればいいのでしょうか。そこでこの記事では、今後も暑くなることが予想される夏を乗り切るのに役立つ「涼しい家づくり」をするための3つのコツと、利用可能な補助金制度を紹介します。

01夏涼しい家を実現するためのコツは3つ!

今後ますます暑くなっていく夏を快適に過ごすには、室内温度を下げることが必要です。そのためには、外からの熱気を遮断することはもちろん、日差しを遮ったり、湿度を下げたりすることもポイントになります。そこで、ここからは夏に涼しい家を実現するために押さえておくべき3つのコツ「高気密・高断熱」「日射遮蔽」「湿度対策」について解説します。

高気密・高断熱

住宅の室内温度を低く保つには、外気の影響を受けにくくすることが大切です。外気の熱の影響を受けやすい住宅では、いくらエアコンを稼働させても外気との温度差で冷暖房の効率が悪くなってしまい、光熱費高騰の要因となってしまう恐れがあります。

そこでポイントとなるのが、壁や窓から伝わる熱を減らせる「高断熱住宅」です。特殊な素材を使用する高断熱住宅では室内温度が外気の影響を受けにくいので、夏は涼しく、冬は暖かく過ごしやすい温度を保ちやすくなります。

ただし、いくら断熱性に優れた住宅をつくっても、外気が直接入ってくるような隙間が多い住宅では意味がありません。そのため、高断熱と同じくらい家の隙間が小さく、空気の出入りが少ない「高気密住宅」を目指すことも重要になります。

住宅の断熱性と気密性に関しては、具体的な数値で判断することが可能です。それぞれの判断の目安になる断熱性のUA値、気密性のC値については、以下で解説するので住宅建設の参考にしてください。

2025年以降、東京で家を建てるならUA値の最低基準は0.87以下

断熱性能は壁の内部に設置される断熱材などによって左右されるため、断熱性が高い住宅かどうかを見た目だけで判断するのは難しいといえます。そこで、注目したいのがUA値(外皮平均熱貫流率)という指標です。

UA値とは屋根や外壁、床、窓およびドアなどの開口部といった建物の表面を指す、一般的に外皮と呼ばれるところを介して、「住宅全体の熱がどれくらい逃げやすいか」を表す数値になります。

具体的な計算方法は「UA値(w/㎡・k)=建物の熱損失量の合計(w/k)÷外皮面積(㎡)」です。建物の外皮1㎡あたり平均して何wの熱が逃げるかで判断しますが、個人でこの計算をするのは難しいでしょう。そのため、基本的にUA値は数値が小さいほど夏はエアコンの冷気が外に逃げにくく、冬は外気の影響を受けにくいため暖かさが保てるなど断熱性に優れた住宅であることを覚えておけば大丈夫です。

ただし、国が定めるUA値の基準は地域によって以下のように異なる点には注意してください。

地域区分ごとのUA値の基準値

地域 平成28年
省エネ基準
ZEH基準
北海道 0.46 0.4
青森県、岩手県、秋田県 0.56 0.5
宮城県、山形県、福島県、
栃木県、新潟県、長野県
0.75 0.6
茨城県、群馬県、埼玉県、
千葉県、東京都、神奈川県、
富山県、石川県、福井県、
山梨県、岐阜県、静岡県、
愛知県、三重県、滋賀県、
京都府、大阪府、兵庫県、
奈良県、和歌山県、鳥取県、
島根県、岡山県、広島県、
山口県、徳島県、香川県、
愛媛県、高知県、福岡県、
佐賀県、長崎県、熊本県、
大分県
0.87
宮崎県、鹿児島県
沖縄県

日本では温暖化防止対策の一環として、2025年4月以降に着工する全ての建築物を対象に平成28年省エネ基準を満たすことが義務化されています。例えば、2025年4月以降に東京都で住宅を建てる場合は、UA値0.87以下を満たさなければいけません。ただし、2030年には省エネ基準が引き上げられ、ZEH基準が新築住宅に求められる予定です。現行では、平成28年省エネ基準が最低等級であることから、これから家を建てるならUA値はZEH基準を目指しましょう。初期コストは多少上がりますが、トータルで見れば光熱費の削減につながります。

断熱性や気密性は基本的に高ければ高いほどそこで快適に過ごしやすくなるものの、ハウスメーカーや工務店によってはオプション扱いのところも珍しくありません。そのようなところに依頼すると、コストが想定よりも高くなる恐れがあるので、できれば標準仕様でUA値や次に紹介する気密性のC値が小さいハウスメーカーや工務店を選んだ方が、追加費用がかからないという点で安心できます。

省エネ基準に高気密「C値」の基準値はなし!「1.0」を目安にしよう

室内と外気の空気がどれくらい出入りしているかを表す気密性を判断する数値としては、「隙間相当面積C値(以下、C値)」が挙げられます。C値もUA値と同様に数値が小さいほど高気密であると判断され、一般的には室内の空気が漏れにくく隙間風が少ない快適性の高い住宅だと判断できます。C値は「建物全体の隙間の合計(㎡)÷建物の延床面積(㎡)」で計算でき、厳密にいうと「建物の床面積1㎡当たりの隙間面積を表す値」です。

例えば、床面積100㎡でC値20の場合、住宅全体で200㎡の隙間が空いていることを意味します。同じ床面積でC値1.0の場合の隙間は100㎡という計算なので、数値が小さいほど高気密住宅だと判断できるわけです。では、C値がどれくらいの住宅を建設すべきかについてですが、残念ながらUA値のように国が示した基準値と呼べるものは2024年8月時点で存在しません。ただし、一般的に高気密住宅とうたっているメーカーや工務店ではC値1.0が基準となっていることが多いので、それを目安にするとよいでしょう。

C値に優れた高気密住宅では室内の快適な空気をキープしやすくなるので冷暖房効率が高まり、夏場の涼しい家づくりに貢献するだけでなく、冬場のヒートショック防止結露防止にも役立ちます。また、建物の隙間が少ないことで、音漏れリスク解消につながるなどさまざまなメリットが得られます。

一部ではC値を高めても意味がないという意見もありますが、それは主に「窓や断熱材の性能が低ければそこから熱が伝わってしまうので、高気密性だけを追い求めても意味がない」という趣旨です。つまり、気密性と断熱性の双方に気を付けることが快適に暮らせる住宅づくりのポイントだといえます。

日射遮蔽

上述したように、涼しい家づくりには高気密・高断熱に優れた住宅であることがとても重要です。しかし、それだけでは猛烈な日差しが降り注ぐ真夏の室内環境を快適に保つには不十分です。なぜなら、いくら高気密・高断熱にして外気の流入を防いだとしても、窓から入ってくる熱量がとても大きいからです。

窓は室内を明るく開放的にする役割がありますが、そのためにはガラスのような光を透す素材を用いる必要があり、季節によって多少違いがあるものの、一説には家全体の60~70%くらいの熱が窓から侵入するといわれています。そのため、真夏でも快適に過ごせる住宅を作るにあたって、窓から入ってくる熱量をいかに抑えるかも大きな課題となるわけです。

窓から入る日射を抑えるには、住宅の外部に太陽光を遮るものを設置するのが基本になります。例えば、「南側の窓の上部に庇や軒を出す」「ルーパーやシェード、すだれを設置する」「シャッターや雨戸を活用する」といった方法です。このように窓から日光が入り込んでくるのを外部で遮断することを「日射遮蔽」と呼びます。また、メーカーが取り扱っている製品のなかには遮熱性の高いガラスも存在するので、日当たりが特に厳しい立地にある住宅では日射遮蔽物と併せて使用するとより効果が高まるでしょう。

なお、窓の断熱性能はハウスメーカーの商品ごとにある程度決まっているので、あとから家全体をグレードアップすると多額の追加費用が発生する恐れがあります。涼しい家を建設する際は、ハウスメーカーが標準仕様としている窓の断熱性能についてもしっかりチェックしておくことが大切です。涼しい家にするための窓に関する詳しい解説は以下の関連記事で紹介しているので、こちらも確認してみてください。

(近日公開)【関連記事】家づくりは「窓」にもこだわるのが正解 夏涼しく光熱費抑制とメリット多数

湿気対策

ここまで熱い外気から室内温度を快適に保つポイントについて解説してきました。高気密・高断熱に加えて、日射遮蔽を施した住宅であれば室内温度を快適に保ちやすくなるはずです。ただし、ここで忘れてはいけないのは、人が室内で快適に過ごすには温度だけでなく湿度にもこだわらなくてはいけないことです。湿度が高いと室内温度がそれほど高くないにもかかわらず、ジメジメとして汗をかきやすく不快感を覚えやすい環境になることがあるので気を付けましょう。

湿度が低い環境というのは、空気中の水分量が少ない状態のことです。つまり、空気中に水分を保持できるスペースが余っている状態なので、体から出る汗が蒸発しやすくなって体感温度が下がり、涼しく感じやすくなります。しかし梅雨をはじめ気温の高い夏は、湿度が高くなる傾向にあるので汗が蒸発しにくく、気化熱による体温調節がうまくできなくなり、その結果、さらに暑さを感じて汗をかく悪循環に陥りやすくなるというわけです。

住宅の湿気対策として有効なのは、空気の入り口と出口を意識した風通しのよい間取りにすることです。例えば、玄関とリビングの大きな窓が対面にあるような住宅では入り口から出口まで風が吹き抜けやすくなります。ただし、風の吹きやすさは各住宅の立地や隣地の状況によって変わりやすいので、自然風を効率的に取り込むにはあらかじめ現地を視察して、普段から風が吹いてくる方向を把握しておくことが大切です。一般的には窓を北側と南側に設置すれば、どの季節でも通風がよく、自然の風がスムーズに抜けやすいといわれています。ただ、2つの窓が直線上になければ風通りの効果は薄れてしまいますので、間取りを考える際に意識しておきましょう。

とはいえ、せっかく自然の風が入りこみやすいように窓の位置を工夫しても室内の間仕切りが多いせいで空気が循環しなくては意味がありません。そのため、室内で空気が循環するように仕切りを減らした間取りづくりや湿度が部屋にこもらないような換気設備も設計段階でしっかり検討しておきましょう。特に、近年設置される機会が増えている24時間換気は湿度対策に有効なのでおすすめです。

そのほかでは、室内の湿度を一定に保つ働きがある調湿建材を住宅の部材として採用するのも1つの方法です。調湿建材は使用する構造部分(天井や壁、柱など)によってさまざまなものがあり、例えば、構造体は鉄骨やRCよりも水分を含むことができる木造のほうが、調湿性能があり湿気対策になるといわれています。また、自然素材の珪藻土を利用した壁は夏に湿気を吸って、冬は必要に応じて放出する特徴があるうえ、インテリアなどと組み合わせれば高いデザイン性も期待できるので、調湿建材として人気があります。

02涼しい家を建てるために活用できる補助金制度

涼しい家を建てるにはさまざまな工夫が必要で、それには当然のことながらコストがかかります。どれくらいのコストがかかるかは採用する設備によって変わるものの、優れた断熱性能の住宅にするには数百万円単位のお金がかかることも珍しくありません。そこで、頼りになるのが各種の補助金です。補助金によっては涼しい家づくり以外に活用できるものもあるので、これからマイホームを手に入れる予定の人は確認しておいたほうがよいでしょう。今回紹介したような涼しい家づくりに活用できる補助金には下記のような制度があります。

子育てエコホーム支援事業

当該制度は物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による新築住宅の取得を推進するための制度です。要件を満たせば、注文住宅の新築および新築分譲住宅の購入において、1戸当たり40万~100万円を補助してくれます。要件は子育て世帯(申請時点において、2005年4月2日以降に出生した子を有する世帯)・若者夫婦世帯(申請時点において夫婦であり、いずれかが1983年4月2日以降に生まれた世帯)かつ、取得する住宅が長期優良住宅またはZEH住宅であることなどが挙げられます。

なお、長期優良住宅のUA値の基準値は省エネ基準と同じ(0.87以下)ですが、耐震性や維持管理・更新の容易性など、その他にも満たさなければいけない要件は多いです。一方、ZEH住宅はUA値が省エネ基準よりも低い数値(地域ごとに0.4以下、0.5以下、0.6以下)が求められるうえ、太陽光パネルの搭載が含まれるといった点には注意してください。ただし、太陽光発電で作るエネルギーと消費エネルギーの収支を実質的にゼロ以下にすることを目指しているので、その分活用できる補助金が多いのはメリットです。

先進的窓リノベ事業

先進的窓リノベ事業は断熱窓への改修を促進し、既存住宅の省エネ化を促すことを目的に創設された制度です。目的に「既存住宅の省エネ化」とあるように、リフォームのみを対象としている点については注意しなければいけませんが、中古戸建を購入して断熱窓リフォームを行った場合も対象となり、1戸あたり200万円を上限に補助を受けられます。

また、改修するのに使用した製品の性能によっては、上述した子育てエコホーム支援事業と併用可能である点もメリットです。ただし、当該制度は断熱改修に特化した事業で、子育てエコホームで対象となっている製品より補助額が高い反面、求められる性能も高い点には気を付けましょう。さらに、同じ工事個所では補助金申請は出来ないので、それぞれ違う工事個所で申請することも制度を活用するうえでのポイントです。

既存住宅の断熱リフォーム支援事業

こちらも中古住宅のみを対象とした制度で、補助対象経費の3分の1以内で戸建てなら一戸当たり120万円(玄関ドア5万円含む)を上限に補助金を受け取れます。補助対象製品には断熱材や窓、ガラス、玄関ドアなどが含まれ、蓄電システムや蓄熱設備、熱交換型換気設備等、EV充電設備を設置した際には別途5万~20万円の補助金がそれぞれ出ます。ただし、先述の「先進的窓リノベ事業」とこの「長期優良化リフォーム推進事業」は併用できないため、リフォーム内容によってどれを申請するかはよく検討してください。

なお、いずれの補助制度も年度の予算に限りがあります。予算上限に達してしまうと、その時点で年度内の申請は打ち切られることがあるので、検討段階で施工業者に確認しておきましょう。

03これからは涼しい家づくりが必須!光熱費の負担増加を抑えよう

物価高が続く昨今、今後はこれから戸建てを建設する人を中心に、固定費の中でも割合が大きくなりやすい光熱費を減らせる省エネ住宅が主流になっていくかもしれません。日本では2025年4月から改正建築物省エネ法の施行によって、住宅の省エネ基準適合が原則義務化されますが、それだけをクリアしても年々厳しくなる猛暑に適した涼しい家になりにくいのが現状です。

予算の関係はあるかもしれませんが、できればより涼しい家になりやすい長期優良住宅やZEH住宅が標準仕様のハウスメーカーや工務店を選んだほうが、追加費用が発生しにくく安心して依頼できるでしょう。

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新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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