住宅費高騰で東京から脱出の子育て世代、人気エリアに集中か

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東京都心を中心に住宅価格が高騰している昨今、子育て世帯の東京脱出傾向が鮮明になっています。内閣府が2024年2月に公表した『2023年版 日本経済レポート』によると、住宅費高騰が原因で多くの子育て世代が、東京都内から東京以外の首都圏各県へと転出している実態が明らかになりました。 一方、首都圏近郊では、東京都からの転出者の受け皿として子育て世代の人口が増えているエリアもあります。 この記事では、住宅費高騰を背景に東京を脱出した子育て世代が向かったエリアがどこなのか紹介するとともに、なぜそのエリアが選ばれているのか理由も解説します。

01住宅費高騰で子育て世代が東京から他の首都圏に人口流出

冒頭で紹介した内閣府の『2023年度 日本経済レポート』によれば、子育て世代に該当する25〜44歳、その子どもたちと考えられる0〜14歳の人口は、東京都から東京都以外の首都圏各県へ流出する傾向が見られるといいます。

子育て世代が東京から脱出している大きな要因が、東京都内の住宅価格高騰です。東京都では一人暮らし向けの賃貸価格がそれほど大きく上昇していない一方、ファミリー向けの賃貸価格や分譲マンション価格は上昇し続けています。

住まい情報サイト「LIFULL HOME’S PRESS」の「LIFULL HOME’Sマーケットレポート2023年10~12月期」によると、東京23区のシングル向き賃貸物件の掲載平均賃料は前年比105.6%と上昇しているものの、コロナ禍の2021年頃から5000円程度高い水準に収まっています。

しかし、ファミリー向き賃貸経営の掲載賃料は19万2662円となり、前年比116.6%の大幅上昇となりました。分譲マンション価格の高騰を受けたファミリー層の賃貸ニーズの高まりや、消費者物価の上昇により契約更新時に家賃を値上げするケースが増えていることなどが、主な要因と考えられています。

実際、2022年には東京都内に居住している子育て世代の25〜44歳人口のうち、およそ1.5万人が首都圏3県(神奈川県・埼玉県・千葉県)に流出しました。埼玉県さいたま市、千葉県流山市、神奈川県海老名市など、利便性が高く子育て世代向け施策が充実している自治体では、人口が大きく増加しています。

このように子育て世代が住宅価格の高い東京を脱出し、物件価格・賃料の低い首都圏近郊へと向かう流れが強まっているといえるでしょう。

02子育て世代が選ぶエリアは「東京から30分圏内」

一般的に通勤時間と既婚女性の有業率は逆相関の関係にあるとされ、内閣府のレポートによれば、通勤時間が15分長くなると、既婚女性の有業率は5.0%低下するとの研究結果もあるといいます。

このことから、育児による時間制約が厳しい子育て世帯では、都心から距離のある郊外物件を取得することによる平均通勤時間の増加が、女性の就業率を押し下げる原因になる可能性もあるでしょう。住宅価格や家賃の安さを求めて郊外に引っ越したものの、通勤時間の長さから働くことを諦めざるを得ない女性も一定数いると見られるのです。

共働き世帯で夫婦2人とも従来の職場で働き続けるためには、「東京から30分圏内」というのが一つのラインとされ、このエリアが子育て世代の移住先として多く選ばれています。具体的にどのようなエリアが人気なのか見ていきましょう。

若者や子育て世代の流入と定着が進む埼玉県和光市

1つ目は、埼玉県の南部に位置する和光市です。市内にある和光市駅は、東京メトロ副都心線・有楽町線の始発駅となっており、東京都心への通勤・通学に便利なエリアです。池袋駅はもちろん、新宿三丁目駅や渋谷駅までも電車で30分圏内であることから人気を集めています。

かつては和光市でも子育て世帯の流出傾向が見られましたが、現在は子育て世帯の定着を図ろうと支援策に力を入れています。

特に、フィンランドの制度をモデルとして実施している「ネウボラ制度」は大きな注目を浴びる制度です。市内に5カ所ある子育て世代包括支援センターにケアマネージャーを配置し、妊娠から就学まで包括的な支援を実施するというもので、不安を抱える子育て世代から大きな支持を得ています。

しかも、和光市の周辺は比較的地盤が強いため、地震などの災害にも強いと考えられています。防災面での強さからこのエリアを選ぶ子育て世代も多くいる状況です。

待機児童ゼロを3年間維持する神奈川県川崎市

神奈川県川崎市も、東京を脱出した多くの子育て世代に選ばれる都市の一つです。川崎市は東京都に隣接することから、いずれの駅も渋谷駅や新宿駅、品川駅・東京駅など都心部まで電車で30分圏内となります。市内にある小田急線の生田駅・読売ランド前駅・向ヶ丘遊園駅・新百合ヶ丘駅、JR南武線の宿河原駅・久地駅は、渋谷まで30分圏内の駅でも、特に家賃相場が安い駅となっています。

川崎市の特徴は、保育所の待機児童が3年連続でゼロとなっていることです。2023年4月時点の保育所の利用申請者数は3万6491人、利用児童数は3万4968人とどちらも過去最多でしたが、幼稚園の預かり保育などにより受け皿を増やして対応しました。

独自の子育て支援が注目を浴びる千葉県松戸市

東京を脱出した子育て世代の千葉県内における大きな受け皿となっているのが松戸市です。松戸市の中心駅であるJR常磐線・松戸駅は上野駅まで18分、東京駅まで24分、品川駅まで33分と、都内への通勤・通学に非常に便利な街であり、子育て世代の人口が増えているエリアです。

子育て世代を惹きつけているのが「結婚新生活住宅支援」や「三世代同居等住宅取得支援」など、松戸市独自の子育て支援施策です。前者は一定の所得を下回る新婚世帯に対して最大60万円を補助するというもの、後者は市内で三世代同居する場合に最大100万円を支援するという制度です。

こうした支援策が功を奏し、日本経済新聞社と日経BPの情報サイト「日経クロスウーマン」が発表する「2023年版 共働き子育てしやすい街ランキング」で、堂々全国1位に輝きました。

03松戸市は「フラット35」地域連携型が利用可能!子育てプラスと併用でさらに金利引き下げ

都心部の住宅価格高騰の影響を受け、子育て世帯の東京脱出・首都圏の他県への流入の流れが顕著になっています。特に、都心まで電車で30分圏内にある埼玉県和光市・神奈川県川崎市・千葉県松戸市などで、子育て世代の流入が増加しています。

こうした人気エリアは、今後住宅価格や賃料水準が高まっていくことも予想されますが、例えば今回紹介した松戸市では「フラット35」地域連携型が利用可能です。「フラット35」Sや「フラット35」子育てプラスと併用すれば、住宅ローンの借入金額を大幅に引き下げられます。

子育て世帯がマイホームを取得するなら、全期間固定金利のフラット35の利用を検討してみるのもいいでしょう。

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新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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