活用の場が広がるAI、住宅ローン審査や不動産価格査定でも!ただし利用時に注意点も
あらゆる分野において活用の場が広がるAIは、不動産の分野においても広く浸透しています。例えば、金融機関の住宅ローン審査においてはAIを活用した自動審査の導入が加速し、住宅ローンの審査スピードが従来よりも格段に速くなりました。金融機関だけでなく利用者にとってもメリットがあることから、AIによる住宅ローン審査が主流になりつつあります。 物件探しにおいてもAIの利用が進んでおり、AIによりエリアの不動産相場の上昇・下落を可視化するサービスを提供する不動産業者も登場しました。このサービスを上手に活用することで、希望エリアの買い時や売り時を利用者自らが判断できます。 この記事では、マイホームの購入や売却、住宅ローン契約でAIを使うメリットを紹介。不動産査定でAIを利用する際の注意点も解説します。
01事前審査にAIを導入する金融機関が多数
不動産分野におけるAIの活用方法として広く浸透しているのが、金融機関による住宅ローンのAIによる自動審査です。実際のAI自動審査の導入例を見ていきましょう。
銀行名 | AI自動審査の内容 |
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ソニー銀行 | ・2018年5月、住宅ローンの仮審査において、独自開発のAIによる自動審査の運用を業界に先駆けて開始 ・従来2〜6日程度を要していた仮審査結果の回答を最短60分に大幅短縮 ・約8万件の顧客データを学習したAIにより、データ送信からわずか数秒で結果が表示される仕組み |
住信SBIネット銀行 | ・2017年11月からAIによる自動審査を開始、2019年には日立製作所とAI審査に関する合弁会社を設立 ・優遇金利の設定など、より高精度な住宅ローンに関するAI審査の提供をスタート ・全国の地方銀行への提供も見込んで実用化 ・ソニー銀行と異なり、住宅ローンの本審査までAI審査で完結できる点が特徴 |
三菱UFJ銀行 | ・2018年10月、メガバンク初となるAI審査「住宅ローンQuick審査」をスタート ・従来に比べて少ない入力項目で事前審査できる点が魅力 ・審査申し込みから結果回答までの期間を、従来の約1日から最短15分へと大幅短縮 ・AI審査は事前審査のみだが、その後の手続きもすべてインターネットで完結 ・購入する物件が未定、口座を未保有の状態でも利用可能 |
みずほ銀行 | ・2020年3月、AIを活用したネット住宅ローンの簡単診断「みずほ AI事前診断」を導入 ・登録から最短わずか1分で、希望金額で借り入れられる確率を確認可能 ・事前診断で入力した情報が引き継がれるので、以降のスムーズな手続きを実現 ・三菱UFJ銀行と同様、購入物件未定、口座未保有の状態でも利用可能 |
上記のとおり、AI審査は審査スピードが格段に速くなる点が大きなメリットです。また、ほかにもAIの自動審査を導入することで金利や手数料が下がる可能性があったり、契約後のサービス拡充につながったりするなど、多くのメリットが考えられます。
02物件を選ぶ前に融資額を提示してくれるサービスも提供
2023年6月、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」と、住信SBIネット銀行などが出資したデータビジネス会社「テミクス・データ」が提携し、物件決定前に住宅ローン融資額を提示するサービスを、2023年度中を目途に導入予定であると発表しました。
住宅購入の流れは、利用者が希望物件の申し込み後、不動産会社を通して住宅ローンの事前審査・本審査を受けるというのが一般的です。ただこの流れだと、物件申し込み時点では融資の詳細が決定していないため、審査結果によっては希望借入金額に届かないケースがあります。また、自分の借入可能額がわからないまま購入検討を進めていかなくてはならず、予算や資金計画が見通しづらい点もデメリットです。
今回発表されたサービスを活用すれば、物件決定前に金融機関から借り入れられる金額を知ることが可能です。そのうえで確認した融資額の範囲内で物件選びができるようになるメリットを得られます。同様のサービスは、先ほど紹介した三菱UFJ銀行の「住宅ローンQuick審査」でも提供中で、今後も住宅ローンを活用した住まい選びの利便性向上が期待されます。
03AIがエリアの不動産相場の上昇、下落を可視化
不動産分野におけるAIの活用は、住宅ローン以外でも広がってきています。2023年8月、不動産AI事業などを手がけるエステートテクノロジーズ株式会社は、業界初となるAIによる「不動産価格上下ヒートマップ」の提供を開始しました。
このサービスは、同社の不動産価格AI査定エンジンを駆使し、都内の中古マンション価格に関するビッグデータから分析された相場価格の上昇・下落を、ヒートマップ形式で可視化するというものです。日ごとに更新される時価に基づいて、リアルタイムで正確な物件価値を把握し、エリア相場の市場動向も可視化します。ある時点におけるエリアの価格変動を表すデータはこれまでもありましたが、一定期間にわたる値動きを踏まえて上昇・下落の状況を可視化するのは業界初の試みだといわれています。
さらに、平均相場価格の上がり下がりを町丁目ごとの細かな粒度で確認できるのも大きなポイントです。カスタマイズすればマンション名で絞り込むことも可能で、物件ごとの取引価格の変遷も確認できます。
ヒートマップでは、築年数・広さ・価格変動を見る期間を選択でき、直近の指定した期間において価格が上昇したエリアと下落したエリアを、赤と緑の色分けで直感的に把握可能です。赤色の価格が下落しているエリアに物件を保有している場合には売却を促し、緑色の価格が上昇しているエリアでは新たな物件の購入を促すといった使い方が考えられます。個人で利用する場合、「このエリアは買い」「今が売り時」などの判断の大きな基準となるでしょう。
このように不動産購入・売却を強力にサポートしてくれるヒートマップですが、2023年8月現在、東京23区内のみの提供となっています。
ヒートマップは新たな試みですが、物件価格をAIが査定するサービスはすでに提供が進んでいます。AIによる不動産査定サービスで希望エリアの相場を確認し、住宅ローンの事前審査サービスで物件決定前に借入可能額を把握できれば、スムーズなマイホーム購入が実現できます。反対に物件売却時は、現在借り入れている住宅ローンを完済できる価格で売れるのか、大体の目安を知ることができるでしょう。
また、すべてAIによるサービスなので人を介す必要がなく、不動産会社による営業電話などのわずらわしさが軽減される点もメリットです。
04AIによる不動産査定サービスを使う際の注意点
今後ますます不動産分野におけるAIの活用が進み、AIによる不動産査定サービスも増えていくことが予想されます。AIによる不動産査定サービスは利便性が高い反面、利用に際しては注意すべきポイントもあります。利用者には、以下で解説する注意点を念頭に置いた、適切な使い方が求められるでしょう。
物件種別や地域によっては査定額の精度が異なる
AIによる不動産価格の査定では、物件種別やエリアによって査定額の制度が異なる点に注意しましょう。
現段階で高い精度が見込めるのは、主に都心部のマンション価格に関する情報です。AIはデータを学習したうえで査定を行うため、蓄積されたデータが多いほど算出結果の精度は高くなります。都心部はマンションの取引件数が多いため、大量のデータに基づいた比較的高精度なAI査定が可能です。
一方、郊外や地方などの蓄積データが少ないエリアでは、AI査定による精度が低くなる可能性もあります。
実際に売却できる価格より高く算出されやすい
AI査定は蓄積されたデータの中から、類似性が高いと考えられる物件情報を抽出して価格を算出する仕組みです。マンション売却を検討する際、エリアの相場を把握するのに適しています。
このとき注意しなければならないのが、実際に売却できる価格(成約価格)と売出価格に隔たりが出てしまう点です。売出価格とは売主が売却を希望する価格、成約価格とは実際に買主が購入した価格のことを指します。場合によっては、売出価格より成約価格の方が低くなる可能性もあります。
過去の取引事例をもとに算出しているAI査定では、売出価格をデータベースにしているケースも多く、成約価格との間にギャップが生まれやすいのです。AIによる査定額は成約価格に比べて高く算出される可能性があることを認識したうえで、参考にするのがよいでしょう。
物件の個別の条件が反映されない
AIの学習データには築年数や間取り、専有面積などの情報が含まれます。しかし、マンションの管理状況や部屋の状態、環境、リフォームの状況などは反映されません。不動産会社による訪問査定であれば反映されますが、AI査定は実際に目で見ないと確認できない内容は反映されないのです。
通常の訪問査定で評価ポイントとなる部分が査定に評価されないため、例えばリフォーム済み物件などはAI査定に不向きと考えられます。
05家探し前でも買えるのかすぐわかる!「スゴ速」を利用してみよう
不動産分野においてもAIの活用が進んでいます。AIによる住宅ローンの自動審査や不動産査定のサービスは、上手に活用することで不動産の購入や売却をスムーズに行えるでしょう。AIを利用する注意点もしっかりと押さえたうえで、適切な使い方を心がけたいところです。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。