無担保住宅ローンとは?仕組みやメリット・デメリットについて解説

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通常の住宅ローンは、自宅を担保に入れるのと引き換えに融資を受けることができます。これに対し、担保なしで利用できるのが無担保住宅ローンです。自宅に抵当権を設定したくない人やスピーディーに借り入れたい人は、無担保住宅ローンも併せて検討するといいでしょう。 この記事では、無担保ローンの概要とメリット・デメリットを詳しく解説します。最後まで読めば、自身の経済状況やスタンスに合わせた住宅ローン選びの参考になるはずです。

01無担保住宅ローンとは?

一般的に住宅ローンは有担保ローンであり、借り入れにあたっては金融機関が購入物件に対して抵当権を設定し、担保とします。万が一、債務者によるローン返済が滞った場合には、抵当権を行使して購入物件を競売にかけ、得られる売却代金を債権回収にあてるのです。

一方、融資対象の土地や建物を担保に入れることなく、借り入れられるローンを無担保ローンといいます。無担保ローンは担保が不要なため、対象不動産に抵当権を設定する必要もありません。

上記だけ見ると、無担保ローンは有担保ローンに比べてコストや手間がかからないうえ、競売にかけられることもなく、メリットの多い住宅ローンであるように感じる人もいることでしょう。しかし、無担保ゆえのデメリットもあるので、利用にあたっては十分な注意が必要です。

02なぜ担保する必要があるのか?

繰り返しになりますが、大半の住宅ローンは有担保であり、無担保ローンは少数派です。住宅ローンを組むとき、なぜ資産を担保する必要があるのでしょうか。2つの理由を紹介します。

お金を返せない場合に備えた保証である

万が一、債務者がローンを返済できない状態に陥ったとき、返済する代わりに債権者へ引き渡されるのが担保です。返済不能時に残債分を回収することが目的のため、融資額の決定にあたっては担保となるものの価値が十分かどうかも重視されます。担保には「物的担保」と「人的担保」の2種類があります。

「人的担保」とは、債務者が返済不能に陥ったとき、債務者に代わって返済義務を負う人や法人のことで、代表例として「連帯保証人」や「連帯債務者」が挙げられます。ちなみに、住宅ローンの借入時には、多くの場合で保証料を支払う必要があります。この際、支払い先である「保証会社」も、債務者の支払いを一時的に肩代わりする役割を果たす法人であるため人的担保の一種です。

もう一つの「物的担保」は、債務者が返済不能に陥ったとき、債権回収にあてられる財産のことです。住宅ローン借入時に担保となる自宅も物的担保にあたります。金融機関などの債権者は、いざというときに物的担保を強制的に差し押さえできるような権利を設定します。「抵当権」は、こうした金融機関が設定する権利の一種です。

担保の価値が融資額と同等程度であれば、金融機関の債権回収が不能になるリスクを低減できるため、いざというときに備えるための保証として抵当権が設定されるのです。

抵当権を設定するために担保が必要だから

住宅ローンを組む際に自宅を担保にする理由としては、金融機関が抵当権を設定するために必要だからということも挙げられます。

抵当権とは、債務者が返済不能になった際、金融機関が債務者の財産などから優先的に返済を受ける権利のことです。金融機関が抵当権を行使するときに返済を受ける原資となるのが担保であり、裏を返せば、担保がないと金融機関は抵当権を設定できないといえます。

融資額が数千万円単位になる住宅ローンは、個人にとっては返済負担が大きなものであり、金融機関からすれば貸し倒れリスクが高いといわざるを得ません。そのため、担保を求める必要性は高いといえます。

抵当権について詳しく知りたいときはこちらの記事をご覧ください。

抵当権設定登記とは?費用感と手続きの流れを紹介
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03無担保ローンのメリット・デメリット

担保の重要性が高いことから、大半の住宅ローンは有担保となっています。そのようななか、無担保ローンを組むことにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれ具体的に見ていきましょう。

無担保住宅ローンのメリット

まずは、無担保住宅ローンを組むメリットを3点紹介します。

購入した家に担保が設定されない

無担保住宅ローンでは購入した家を担保としないため、金融機関による抵当権が設定されません。仮にローンを返済できない状態になったとしても、抵当権設定がないので、強制的に差し押さえられたり競売にかけられたりする心配がないのは大きなメリットです。

ただし、あくまでも強制的な手段が取られないだけで、残債の返済を迫られた結果として自宅を手放さざるを得なくなることはあります。

担保あり住宅ローンより審査期間が短い

無担保住宅ローンは、通常の担保がある住宅ローンに比べて審査期間が短い傾向にある点もメリットの一つです。

通常の住宅ローンでは本人の属性や収入状況、信用情報などに加え、融資対象となる物件の担保価値が十分かどうかも審査しなければなりません。人的担保として保証人や連帯債務者を必要とするローンであれば、保証人や連帯債務者の属性や収入状況などの審査も求められます。

一方、無担保住宅ローンは本人の属性や収入状況、信用情報などの項目だけ審査すればいいので、担保ありのローンに比べて審査に手間がかかりません。融資が少額であれば最短即日、融資額が大きい場合でも5日程度のうちには審査結果が出るのが一般的です。よって、融資のスピードを重視する人は無担保住宅ローンの利用が向いているといえるでしょう。

事務手数料・保証料などが安く抑えられる

無担保住宅ローンは、通常の住宅ローンと比較して事務手数料や保証料などの初期費用を安く抑えられるというメリットもあります。

なぜなら、無担保住宅ローンでは抵当権を設定しないため、抵当権設定登記に際してかかる登録免許税や司法書士に支払う報酬がかからないからです。これにより15〜20万円程度のコストカットにつながります。

また、保証会社に支払う保証料や事務手数料がかからないケースも多く、さらに数十万円の費用を圧縮できる可能性があるでしょう。

ローン関連費用を含む、住宅ローン借入時の諸費用については以下の記事をご覧ください。

住宅ローンの諸費用って何?どれくらいかかる?節約する方法は?
2019.03.12

また、住宅ローン借入時に必要な事務手数料については、こちらの記事で詳しく解説しています。

住宅ローンの事務手数料とは?相場やその他の費用についてチェックしよう
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無担保住宅ローンのデメリット

上記のようなメリットがある無担保住宅ローンですが、無担保であるがゆえのデメリットもあります。利用を検討する際は、以下で紹介するデメリットも理解したうえで判断しましょう。

借入金額の上限が低い

無担保住宅ローンは担保がないので、金融機関にとってはリスクが高いローン商品です。そのため、通常の担保ありの住宅ローンに比べ、借入上限額が低めに設定されています。通常の住宅ローンでは上限額の目安が1億円程度なのに対し、無担保ローンは500〜2000万円程度が相場です。

無担保住宅ローンは多額の融資が必要なケースでは利用できない可能性が高いため、2000万円以下の借り入れや、セカンドハウス購入費用の調達などに用いることをおすすめします。

返済期間が短い

担保がないので返済期間が短い点も、無担保住宅ローンを利用するうえで気を付けたいポイントです。通常の住宅ローンが最長35年(一部を除く)であるのに対し、無担保住宅ローンの返済期間は最長でも15〜20年程度が一般的です。短期間で返済しなければならない分、毎月の返済負担は大きくなります。

金利が高くなる場合がある

無担保住宅ローンは、通常の住宅ローンに比べて金利が高いケースが多いのもデメリットです。これは、万が一のときでも、金融機関は抵当権行使による債権回収ができないため、リスク分を金利に上乗せしようと考えるからです。

無担保住宅ローンは返済期間が短いとはいえ、15〜20年程度は返済し続けなければならず、金利のわずかな差が返済額に大きく影響します。返済期間が短いうえに金利が高いとなれば、返済負担がさらに大きくなるため注意が必要です。

04無担保住宅ローンにはデメリットもある!利用は慎重に検討しよう

自宅を担保に入れる必要がない無担保住宅ローンにはメリットがある一方、返済負担の増大につながるデメリットも存在します。無担保住宅ローンの利用を検討する際は「審査期間が短い」「初期費用が安い」といった目先のメリットだけで考えるのではなく、数十年にわたる返済のことも踏まえ、慎重に判断する必要があるでしょう。

自分の収入の範囲内で無理なく返済できるのは月々どれくらいなのか、年収から考えるとどれくらいの予算で家を探すのがいいのかなど、ローンに関する疑問を解消するにはシミュレーションを活用するのがおすすめです。当サイトでは、目的別に4種類の住宅ローンシミュレーションを用意しています。

シミュレーション結果を踏まえて、無担保住宅ローンを利用すべきかじっくり検討してはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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