太陽光パネルを無償設置できる「0円ソーラー」、住宅ローン借入金額の軽減に!ただしデメリットも

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地球温暖化を防ぐ取り組みは自治体にも波及しつつあり、東京都は2025年4月以降の新築建物に太陽光発電設備の設置や省エネ性能の確保を必須とする制度を始める予定です。住宅市場のニーズが変化しつつある昨今、ついに初期費用0円で自宅の屋根に太陽光パネルを設置できる、いわゆる「0円ソーラー」のサービスを始める事業者も出てきました。 一般的に太陽光発電設備の設置費用は5kw当たり135万円が目安ですが、当該サービスを利用すれば初期費用は事業者がすべて負担するため、住宅所有者は実質0円で太陽光発電設備の恩恵を受けられます。それによって、住宅ローンの総借入額を減らすことができ、返済負担軽減にもつながるでしょう。ただし、0円ソーラーにはメリットだけでなくデメリットがあるため、注意が必要です。そこで今回は、マイホームに太陽光発電設備を設置しようか迷っている人に向け、0円ソーラーの概要について解説していきます。

01初期費用がかからない「0円ソーラー」とは?

0円ソーラーはその名のとおり、初期費用が一切かからずに自宅に太陽光発電設備を設置できるサービスです。なぜ、そのようなサービスが可能かというと、「発電した電力の売電料または設備のリース料などで事業者が初期費用を回収する仕組みを構築しているから」です。詳しくは後述しますが、0円ソーラーには主に3種類のプランがあり、どの契約形態であっても約10年という期間をかけて事業者側が利益を得られるような仕組みとなっています。

例えば、プランによっては概ね10年間は発電した電力のうち、自宅で使用した電気料金を事業者に支払うものもあります。事業者は約10年の間に利用者から徴収する電気料金と余った電力の売電収入で初期費用を回収できるというわけです。ただし、契約期間終了後は住宅所有者に無償で太陽光設備が譲渡されるケースが多いため利用者にもメリットがあり、こうした仕組みから「0円ソーラー」と呼ばれています。

0円ソーラーの種類

0円ソーラーには主に「電力販売契約」「リース契約」「屋根借り」といった3つの種類があります。ここからは、それぞれの特徴について解説します。

電力販売契約

電力販売契約は事業者が設置した太陽光発電設備で発電した電気の消費分、もしくは発電量に応じた毎月の電気代を事業者に支払うタイプです。契約期間内に発電した電気は事業者のものという契約タイプなので、仮に電力が余った場合は事業者が売電収入を得ることになり、住宅所有者が売電することはできません。契約期間の目安は10年から20年程度です。

リース契約

住宅所有者が事業者から太陽光発電設備を長期間リースするタイプです。発電した電気は住宅所有者のものとなるので自家消費するのはもちろん、売電収入を得ることもできます。ただし、契約期間中は毎月決まったリース料を事業者に支払わなければいけません。契約期間は5年から20年程度が多く、0円ソーラーの中では最も普及している契約タイプです。なお、電力販売契約とリース契約で設置した設備はいずれも契約期間終了後に住宅所有者へ無償譲渡されるのが一般的です。

屋根借り

屋根借りは事業者に太陽光発電設備を設置するためのスペースとなる屋根を貸し出し、その賃料を受け取るタイプです。設置する太陽光発電設備は事業者のものであり、住宅所有者は生み出された電力を自家消費することも売電することもできません。年間で得られる賃料は1万円から2万円程度が相場で、それほど高額ではないことから、どちらかというと借家の大家が収益向上のために契約しているケースが多いです。

02初期費用が0円だと住宅ローンの負担軽減にも!

0円ソーラー最大の特徴は、やはり初期費用0円という点です。初期費用を抑えることで住宅ローンの借入額を減らすことができ、返済負担を軽減できます。2024年3月19日、日銀はついにマイナス金利政策の解除に踏み切りました。市場ではしばらくの間、急激な利上げが行われることはないと見込まれており、住宅ローンへ直ちに大きな影響を及ぼす可能性は低いと言われているものの、日銀の政策が転換期を迎えていることは確かです。

今後の金利上昇局面を見据えると0円ソーラーを利用して住宅ローンの借入額を抑えるのも選択肢の1つになります。また、そもそも住宅ローンの借入額には限度があるので、設置費用が高額になりがちな太陽光発電設備を住宅ローンに組み込めない場合も少なくありません。

その点、0円ソーラーは契約者の費用負担がないので、そのような心配をすることなく自宅に太陽光発電設備を設置できます。一般的なサイズである5kwの太陽光発電を設置する際にかかる費用の目安は135万円程度ですが、そこで浮いた費用を住宅の内装や設備に使うことで、グレードアップしたマイホームを手に入れることもできるでしょう。

03まだまだある!0円ソーラーのメリット

0円ソーラーには、「住宅ローンの負担軽減」以外にもメリットがあります。それは、まず「メンテナンスフリーであること」です。太陽光発電設備は設置後に自然災害等が原因で故障するリスクがありますが、0円ソーラーは契約期間中のメンテナンスを事業者が請け負っているケースが多いです。そのため、万が一故障したときでも安心して事業者に対応を任せることができます。また、「契約期間が終了したあとは契約者に無償譲渡される契約形態が多い」「災害等で停電したときは非常用電源として使えるので便利」といった点も魅力です。

その他には、発電した電力を自家消費できるタイプの契約形態であれば「電気代の節約」に役立つうえ、環境に優しい電力として「地球温暖化防止のためのカーボンニュートラルの実現に貢献できること」もメリットとして挙げられます。

040円ソーラーのデメリットも押さえておこう

0円ソーラーは契約形態によって、それぞれデメリットがあります。例えば、電力販売契約や屋根借りで発電した電気は事業者のものなので、売電収入を得ることはできません。一方、リース契約では発電した電気を自家消費したり、売電したりすることが可能ですが、それらの利益が毎月支払うリース料を下回ると実質的に損をするリスクがあります。

また、その他にも「どの住宅でも利用できるわけではない」「契約期間中に解約すると違約金が発生する恐れがある」といったリスクもあります。0円ソーラーには「契約者の年齢制限や建物の築年数制限」があることが多く、詳細は事業者によって異なるものの、一般的に年齢制限は50歳未満~70歳未満、築年数制限は10年未満~40年未満が目安です。

さらに、たとえ転勤などのやむを得ない事情であっても、契約期間中に引っ越しやマイホーム売却などによって解約すると違約金が発生する可能性があります。0円ソーラーの契約期間は10年程度と長期間に及ぶので、契約の際は解約条件についてもしっかり確認しておくことが大切です。

05全国の自治体で太陽光パネルの設置義務化が続々

近年、住宅への太陽光発電設置に注目が集まっているのは、全国各地の自治体が続々とカーボンニュートラルへの取り組みを強化していることと関係があります。上述したように、すでに東京都では2025年4月から新築建物への太陽光パネル設置義務化がスタートする予定で、同様の取り組みは検討中のところも含め、京都府、神奈川県川崎市、群馬県など全国各地に広がりを見せつつある状況です。

対象となる建物の条件はそれぞれの地域で異なる(例えば、東京都は新築戸建ても対象、京都府は延床面積300㎡以上の建物など)ものの、今後はこうした制度を採用する自治体がますます増えていくことが予想されます。

なお、太陽光パネル設置を義務化する自治体では、制度の開始と同時に補助金を出して利用者負担を軽くする試みをしているところもあることは知っておきましょう。例えば東京都では4kwの太陽光パネルを新築住宅に設置した場合に40万円の補助金が出る場合があると試算しているほか、今後は0円ソーラーに対しても設置にかかる費用を事業者に助成することでサービス利用料の低減を図るとしています。

このように住宅の省エネ対策はさまざまな補助金の対象となることがあるので、自宅に太陽光パネルを設置したい人は自治体のホームページなどをチェックしてみることをおすすめします。

06住宅ローンの借入金額を抑えたいなら0円ソーラーを上手に利用しよう

今回紹介したように、0円ソーラーには「初期費用がかからない」「電気代が節約できる場合がある」などといったメリットがあります。それぞれの契約形態によってメリット・デメリットが多少異なる点には注意が必要ですが、いずれにしても住宅ローンの借入額を抑えることで総返済額を減らせるのは大きなメリットでしょう。日銀は2024年3月に開催された金融政策決定会合でついにマイナス金利政策の解除を決定しました。それによって、今後はこれまで低水準で推移してきた変動金利の動向が不透明な状況になりつつあります。

これから住宅ローンを組む人は、「自分の世帯年収では借入額はどれくらいが妥当なのか」「金利の違いで毎月の返済額はどれくらい変わるのか」をしっかり把握しておいたほうが無難です。当サイト内には、適切な予算を算出するための「住宅購入予算シミュレーター」、検討している金融機関の金利と金利ランキングの一番安い金利との比較もできる「毎月の返済額シミュレーター」などの各種シミュレーターを用意しているので、ぜひ試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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