はじめての住宅ローン
憧れのマイホームを私は買えるのでしょうか?
年収400万円で住宅ローンは借りられる?無理なく返せる金額は?専門家が解説
新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
年収400万円の現実的な借入金額や、無理のない月々の返済額などについて詳しく解説します。
年収400万円あれば、住宅ローンの借り入れは可能です。ちなみに国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の1人当たりの平均給与は460万円。この数字から分かるように、年収400万円は平均給与より少し低いものの、給与所得者の平均値に近い年収であるといえます。しかし年収400万円以上あればおおむね問題ありませんが、年収400万円未満だと多少条件が厳しくなる点は覚えておきましょう。
たとえば、年収400万円未満の人が全期間固定型の住宅ローン「フラット35」を利用したいなら、「年収に対する(住宅ローンを含む全ての借り入れにおける)年間合計返済額の割合は、30%以内(年収400万円以上は35%以内)」という条件を満たしている必要があります。「全ての借り入れ」とは、「住宅ローン以外で借り入れしたローンも含めて」ということです。年収400万円の場合は、カーローンや教育ローン、カードローンも含めて年間合計返済額の割合を35%以内(140万円以内)に収めなければ、フラット35の利用はできないということになります。
しかしフラット35には、年収や収入の安定度は審査対象にならないというメリットがあります。以下の条件をクリアしていれば、派遣社員や契約社員、パートアルバイトといった雇用形態や勤続年数は問われず、遺族年金を含む年金受給者でも借り入れできます。
フラット35の申し込み条件
- 申込時の年齢が満70歳未満(※親子リレー返済を利用する場合は、70歳以上でもOK)
- 契約者が日本国籍である、もしくは永住許可を受けている方や特別永住者の方
フラット35とは、民間の金融機関と独立行政法人の住宅金融支援機構が提携して資金を安定的に貸し出す住宅ローンなので、比較的、低年収の人でも借り入れしやすいといえます。最長35年の全期間固定型になりますが、今後何らかの事情により収入が減って、年収400万円を下回るかもしれないと思う人は一度、検討してみるとよいでしょう。
「金融機関からどのくらい借り入れできるか?」を考える目安として、「年収倍率」という指標が参考になります。年収倍率とは、購入したい住宅が年収の何倍かを表す指標のことで、この年収倍率は金融機関が住宅ローンの審査をする際にも使われます。
ちなみに「2023年度 フラット35利用者調査」によると、新築物件の年収倍率は7~8倍程度、中古物件だと5~6倍程度となっています。年収400万円に当てはめると、新築物件で2800万〜3200万円、中古物件で2000万~2400万円が年収倍率から考えた適正な借入金額となるでしょう。
とはいえ、年収倍率は金融機関によって異なります。金融機関によっては、上限8倍までの融資額を貸し出すところもありますが…
提示された融資額の上限目一杯での借り入れはおすすめできません。
たとえば年収400万円で年収倍率8倍、最大借入可能額3200万円(変動金利0.375%、借入期間35年、ボーナス返済なし)で住宅ローンを組むと、月々の返済額は8万1131円。年収400万円(40歳未満、東京都在住、扶養なし)とすると、月収手取りは約26万円。他の借り入れがなければ、生活費として18万円ほど手元に残るイメージです。
ただし変動金利は金利上昇によって月々の返済額が上がるリスクがあるため、家計状況によっては負担増になるケースもあり、できれば避けたいところです。
では、具体的に月々どのくらいの金額なら家計負担がなく返済できるのか検証してみましょう。ちなみに家計に負担なく返せる月々の返済額は、手取り収入の20~25%といわれています。この数字を「返済負担率」といい、収入に対して返済額がどのくらいの割合かを示す指標です。返済負担率を計算する際は、住宅ローン以外にカーローンやカードローン、教育ローンなどがある場合は、その返済額も含めましょう。全ての借り入れを合算して20~25%に収めます。
返済負担率 = 年間返済額 ÷ 年収 × 100
先述したように年収400万円の月収手取りは約26万円で、26万円の20%は5万2000円、25%だと6万5000円となります。月々の返済額を6万円と仮定すると(借入期間は35年、ボーナス返済なし、変動金利0.375%で試算)、借入可能額は2361万円。この数字は、先ほど年収倍率で算出した2400万円とほぼ同額です。
ただし2400万円ほどの住宅を購入すると、登記費用や住宅ローンの事務取扱手数料といった諸費用が別途70万円ほどかかる点も覚えておきましょう。諸費用を住宅ローンに組み込むことが可能な金融機関もありますが、できる限り現金で用意しておく方が安心です。借入金額が少ない分、結果的に総返済額が抑えられます。
また住宅ローン契約締結後最長13年間は、住宅ローン控除が適用されるので控除された分の所得税を返済に回すなどの対策を取りましょう。控除額は「年末の住宅ローン残高 × 0.7%」(最大35万円)です。また収入に応じて、すまい給付金も支給されます。住宅の引渡し時期や床面積などの要件がありますので、適用されるかも忘れずにチェックしておきましょう。
シミュレーションの条件として、以下の数値を設定します。
【条件】 借入金額:2400万円 金利:0.375%(変動型 ※ただし借入期間中も同率と仮定) ボーナス返済額:なし |
借入期間 | 月々の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
25年 | 8万3821円 | 2515万円(うち利息額115万円) |
30年 | 7万497円 | 2538万円(うち利息額138万円) |
35年 | 6万983円 | 2565万円(うち利息額162万円) |
表のとおり、借入金額が2400万円と抑えられているため、借入期間を10年短くしても、利息分は47万円しか減りません。2400万円を借り入れするなら、最長35年で住宅ローンを組んで月々の返済額を抑えて、住宅ローン控除の適用が外れた時点で繰り上げ返済をして、元本を減らす方が利息負担の削減効果は大きいといえます。
シミュレーションの条件として、以下の数値を設定します。
【条件】 借入期間:35年 借入金額:2400万円 ボーナス返済額:なし |
金利タイプ | 月々の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
全期間固定:0.940% | 6万7079円 | 2819万円(うち利息額419万円) |
固定10年:0.495% | 6万2247円 | 2615万円(うち利息額215万円) |
変動:0.375% | 6万983円 | 2565万円(うち利息額162万円) |
上記の表を見てもわかるとおり、借入金額が2400万円の場合、全期間固定型と変動型の総返済額における利息額については257万円の差となっています。年に換算すると約7万円です。
変動型を選ぶなら、金利が上がる可能性を考えておくこと!
できる限り利息負担および月々の返済額を抑えたいという理由で変動型を選ぶなら、現状が超低金利なので、金利がこれから下がる可能性よりも上がる可能性を常に考えておきましょう。金利が上昇すると、月々の返済額が上がります。たとえば変動金利0.375%が0.9%に上がった場合、月々の返済額は6万6635円となり、月々5652円の増加、利息額も238万円増加します。
返済額アップを避けたいなら、全期間固定型を選ぼう!
最初から全期間固定型を選んでも月々の返済額は6万7079円なので、金利上昇によって返済額がアップするのを避けたいなら全期間固定型を選んでおくのも一つの方法です。そして、全期間固定型で家計を安定させておき、住宅ローン控除の適用が外れたら繰り上げ返済をして元本を減らす方法を合わせて考えることをおすすめします。
金融機関によっては年収がネックとなり、希望する借入金額に届かないケースも出てくるかもしれません。その対策として、頭金を入れて自己資金比率を増やすことも考えてみましょう。
頭金を用意する
一般的にいわれている頭金は、住宅価格の1~2割ほどです。住宅価格が2400万円の場合、頭金の相場は240万~480万円です。両親や祖父母から資金援助を得られるなら、2割以上の頭金を入れて借入金額を抑えることで審査も通りやすくなります。
手持ち金がなかったり資金援助が見込めなかったりする場合は、夫婦でペアローン、または収入合算を検討してみましょう。いずれも借入可能額を増やせるというメリットがあります。
ペアローンを利用する
ペアローンとは、夫婦それぞれで住宅ローンを組むことです。夫婦いずれも収入が確保できていることが前提となりますが、それぞれで住宅ローン控除の適用が受けられます。ただし2本分の住宅ローンを組むため、住宅ローンに関わる諸費用が2倍必要になる点は覚えておきましょう。
収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」があります。
もう一つの方法として、収入合算の連帯債務型があります。こちらは1つの住宅ローンに対して夫婦の収入を合算して借り入れることで、一人が住宅ローンの契約者(主債務者)となり、その配偶者が連帯債務者になります。そして、契約者と配偶者それぞれに住宅ローンの返済義務が生じます。ペアローンと異なり、夫婦で1本分の住宅ローンを組むので諸費用も1本分で済み、こちらも住宅ローン控除は夫婦ともに適用されます(※借入金額の持分割合で決まる)。ただし、連帯債務型を取り扱っている金融機関が少ないため、選択肢が狭まる点は注意しましょう。
連帯債務型と似たような住宅ローンに、収入合算の連帯保証型もあります。こちらは、一人が契約者となり、その配偶者が連帯保証人となります。月々の返済は契約者が行いますが、万が一返済が滞ったら、支払い能力の有無にかかわらず、連帯保証人が代わりに返済しなければなりません。扱っている金融機関が多い点はメリットですが、一人しか住宅ローン控除が受けられない点はデメリットといえるでしょう。
ペアローンや収入合算の住宅ローンを検討したい方は、こちらの記事をチェックしておきましょう。それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説しています。
年収400万円あれば、住宅ローンの借り入れは可能です。しかし適正な借入金額でなければ、月々の返済が負担となり、将来的に家計を圧迫するかもしれません。
特に最長35年で住宅ローンを組むなら、長期的な視点での返済計画が重要です。
サイト内の「借入可能額シミュレーター」で月々の返済額から予算を考えたり、「毎月の返済額シミュレーター」で借入希望額から月々の支払いイメージを掴んだりして、将来の生活設定をしっかり行いましょう。
住宅購入にあたって、自分がいくらまで住宅ローンが利用できるのかを確認しておくことは非常に大切です。
「物件を決めたけど、実は購入できるだけの住宅ローンを組むことができなかった!」といった失敗をすることなく、購入にあたってどのくらいの初期費用を用意する必要があるのか、また返済計画に無理がないかを理解したうえで、候補に挙げている物件の中から購入可能なマイホームを効率良く探すことができます。
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