住まいの買い替えには「住み替えローン」を上手に活用しよう

2021.05.25 2019.10.23 16

せっかく住宅ローンを組んで、長く住もうと思って購入した住居も、何かのきっかけで住み替えに迫られることがあります。住宅ローンがまだ残っている場合には、家の買い替えにも金銭的な不安が残ります。そんな場合にうまく活用したいのが「住み替えローン」です。ここでは、「住み替えローン」の概要やメリット、デメリットなどを紹介します。

01住み替え(買い替え)ローンとは?

「住み替えローン」は、今の家を売ってもローンをすべて返しきれない場合に、新居の購入資金に加えて、その残債までまとめて貸してくれるというローンです。金融機関によっては「買い替えローン」と呼んでいるところもあります。

住み替えローンは、すでに住宅ローンをある程度返済した履歴のある人、つまり金融機関にとってある程度信用の置ける顧客が対象となっています。それゆえに融資限度額も大きく設定され、比較的優遇される制度となっています。

住み替えローンの利用条件

利用条件としては、今の自宅を売ってもローンを返しきれないことです。住宅ローンの残額が今の家の時価を上回っていて、家を売却してもローンが残ってしまう、いわゆる「オーバーローン」の状態です。その場合は住み替えローンを利用して借入をすることができます。反対に自宅の売却をすればローンを完済できる「アンダーローン」の場合には、住み替えローンを利用することはできません。

住み替えローンのメリット

住み替えローンのメリットは、自宅を売却してもローンを完済できない時に、自己資金を使わずに家の買い替えができる点です。どうしても住み替えがしたくとも、ローンを完済する自己資金がない、あるいは、何かとお金が必要な住み替え時に、自己資金をなるべく取り崩したくないという人にとっては、有効なローンだと言えます。

住み替えローンのデメリット

売買のスケジュールにあまり余裕を持たせられないため、新居をゆっくり探せない可能性があります。住み替えローンでは売買の決済を同じ日に合わせなくてはならないため、スケジュールがタイトになりがちです。新居探しも、売却が決まらないと購入予算も決められないため、売却のスケジュールに合わせて行うことになります。その点に注意しておきましょう。

住み替えローンのシミュレーション

住み替えローンを利用した際に、実際にどのような支払いになっていくのかを見てみましょう。シミュレーションをするにあたり、条件を以下とします。

現在住んでいる家(売却予定)

  • ローン残高:2500万円
  • 売却金額:1800万円
  • 売却後の残存額:700万円(=2500万円−1800万円)

新しい家(購入予定)

  • 新しい家の購入額:3000万円
  • 住み替えローンの借入額:3700万円(=700万円+3000万円)

現在住んでいる家のローン残高が2500万円であるに対し、売却金額が1800万円だとすると、700万円分が残ることになります。そこに、新しい家の住宅ローンが3000万円加わります。つまり、合計で3700万円の住宅ローンを返済していくことになります。

02住み替えローン利用時の手順

生活面の変化などによって、より暮らしやすい新居に買い換えたいと思う場合に、住み替えローンを利用することができます。利用の際の手順は以下のようになります。

住み替えローン利用時の手順
住み替えローン利用時の手順

自宅の購入希望者と新居を同時に探す

自宅の売却を希望するのに際し、購入希望者を募ります。また、同時に新居探しも始めます。いずれも不動産会社の協力を得るのが良いでしょう。住み替えローンを利用するつもりであることを伝えた上で、自宅売却の際の査定額を算出してもらい、売却に向けて動いてもらいます。また新居を探す際にも、いろいろと情報を得ることができます。

自宅売却の手続きをする

自宅の売却に際して、購入希望者が現れたら買付申込書を不動産会社から受け取ることになります。これは買付金額や契約条件に関する先方の希望などが細かく記されている書面です。条件がお互いに整ったら、なるべく早めに契約を結びましょう。手付金の額と引き渡し希望日などを、不動産会社を通して調整を行います。

売買契約を済ませたら売主として、あとは引き渡すのみです。なお引っ越しについては、シーズンだと混み合って引っ越し会社の手配が整わない可能性も大きくなります。これについてはなるべく余裕を持って、手配を済ませるようにしましょう。

ローン残債に関する諸手続を行う

住み替えローンの場合には、ローンの残債が残っている家を売却するわけですから、一般的に、「今の家の売却」と「新居の購入」を同じ日にしなければいけません。売却相手から手付金を受領し、それに並行する形で新居の手付金を支払って、売買契約を結びます。双方の引き渡しを同じ日にすることによって、新居に融資を実行してもらうと同時に前の家の融資も清算してもらうことにより、抵当権を抹消します。

03住み替えローン利用時の注意点

前述のように住み替えローンは、金融機関にとってある程度信用の置ける顧客が対象となっているため、融資限度額も大きく設定されており、比較的優遇される制度となっています。

それゆえに気をつけたいのは、借りすぎないことです。新居の価値を大きく超えて融資を受けることにより、もしもローンの返済が苦しくなって売却しようとした場合に、多額の借金が残る可能性が高くなります。

住み替え時の家の買い手が決まってから新居を申し込む

今、住んでいる家の買い手が決まってから、新居を申込むのがよいでしょう。気に入った家は、見つかれば買い付けられます。しかし、今住んでいる家は、いくら売りたいと望んでも買い手がいなければ売れません。特に、売り出し価格を下げたくない場合には、なかなか買い手が見つからないケースも多いようです。半年や1年も売れ残ってしまう可能性さえあります。不動産会社にタイミングの調整や手順をよく相談しながら、堅実に事を進めることをお勧めします。

審査基準は通常ローンより厳しいことを認識しておく

審査されるポイントは、健康状態・勤務状況などの個人属性や、他からの借り入れがないかといった信用情報が主となります。通常の住宅ローン審査と同じですが、住み替えローンの方が個人属性の通過基準は高くなっています。

住み替えローンは、低金利で住宅ローン控除も受けられるなど、ほぼ通常の住宅ローンと同等に扱われています。住宅ローンと大きく異なるのは、借り入れ時に新居が担保割れの状況になっている点です。これまで住んでいた住宅ローンから売却価格を引いた残債が、新居の住宅ローンに上乗せされているからです。

住み替えローンの計算式
住み替えローンの計算式

銀行は融資の際に、その不動産に抵当権を設定します。つまり、その担保だけでは足りないことを承知で、住み替えローンは貸し付けを行うことになるのです。そのために回収できないリスクを補うだけの年収や勤務年数、勤務先などが大きく影響してくるのです。

つなぎ融資は賢く利用する

住み替えローンの場合に、よく利用されるのがつなぎ融資です。住み替えローンを利用する際に、一時的な資金不足を補うために利用する短期の融資が「つなぎ融資」です。住み替えでは、家の売却と新居の購入をほぼ同時に行います。その際に、それぞれの引き渡しのタイミングをうまく図ることが大切となります。売却よりも購入が先になると、資金繰りにも困りかねません。

このように、もしも購入物件の代金支払いが、売却物件の代金受領よりも先に来てしまった場合などに、このつなぎ融資を利用できます。つなぎ融資には、住み替えの際に、気に入った物件を逃さず購入できるというメリットがあります。これによって転居先が決まる前の余計な引っ越しを回避できます。あるいは、前の家を空き家状態で内覧させることができるので、売却がより容易となります。

しかしながら、やはり余分な融資によって、余計なお金がかかることになります。それによって資金計画にも狂いが生じる可能性も否めません。こうしたデメリットも押さえながら利用するのが賢明です。

つなぎ融資に関しては、以下のサイトも参考にしてください。

04住み替えはどんな時に必要になるのか?

単純に「今の家よりもグレードの高い家に住み替えたい」と希望する場合もあるでしょう。しかし、当初は最善の立地や間取りだと思い住み始めた家でも、時の流れに従って、生活面でさまざまな弊害が生じることもあります。そんな時に家を買い替えよう、という気持ちが頭をよぎります。

具体的な住み替え事例

住み替えの理由は、大きく分けて「今の住居に不満を感じた」、「子どもが独立した」、「定年退職した」の3つがあります。それぞれの事例について、さらに詳しく掘り下げてみましょう。

住み替えの理由
住み替えの理由

今の住居に不満を感じた

住まい・設備の老朽化や転勤、子どもの進学などで通勤・通学に時間がかかるようになったことをきっかけに、居住者の不満が徐々に募っていきます。さらに、子どもが大きくなってみたら「うちは手狭だ」などと思うこともあるでしょう。離婚や近隣とのトラブルから引っ越しを考えざるを得ない状況に追い込まれるケースもあるようです。

子どもが独立した

子どもの独立は、その後の夫婦の生活環境をガラリと変えます。間取りの上でも子ども部屋の必要がなくなるため、夫婦2人で住むには広くなりすぎだと感じられるかもしれません。過度の広さゆえに、かえって不便が生じるのです。子どもの世話もなくなり、「これからは自分たちの老後の心配を」となれば、住まいの見直しを考え始めるのも当然でしょう。

定年退職した

定年ともなれば、いよいよ老後の生活が始まるといっても過言ではありません。若い頃には便利に思えた間取りや土地柄も、体力の衰えなどとともに不便なものへと変化していく場合もあります。健康面や安全面、あるいは金銭面から考えて、高齢者夫婦が一軒家からコンパクトなマンションへの住み替えを考えるのも、今では一般的なようです。

05住み替えローン以外の選択肢

住み替えの場合には住み替えローン以外にも、一部の金融機関によって実施されているダブルローンという方法を取ることもできます。これにより現在のローンを残したまま、新居のローンも組むことができます。借り入れにはそれに見合った年収が必要となりますが、住み替えの際に仮住まいの手間と費用がかからないという利点があります。

ダブルローンについては以下のサイトも参考にしてください。

06返済に窮したために家を売却する場合

上記のような住み替え事例の場合は、条件に合えば住み替えローンの利用も検討できます。
しかし、この場合とは異なり、たとえば失業や経済的な理由などで今の持ち家のローンを支払いきれなくなったため、ローンの残っている家を売却するのは可能なのでしょうか?
通常、ローンが残っている不動産を売却する時は、抵当権が残らないように残債を完済しなければなりません。売却した金額で残債を完済するか、それができなかった場合には預貯金などを切り崩して、払い切る形を取らざるを得ません。

任意売却という方法

このような場合にローンの残っている家を売却する際には「任意売却」という便利な方法もあります。家を売ってもローンの残債が完済できない場合でも、特別に金融機関など債権者からの承諾を得て自宅の売却を行えます。これを任意売却と言います。ローンの残債よりも安い金額で自宅を売ることを認めてもらうのです。

なぜ、金融機関はこんなことを認めるのでしょうか?債務者によるローン返済の滞納が続くと、債権者は「競売」という方法で物件を売却することになります。それを融資額の回収に当てるのです。競売とは、住宅ローンなどの借入金を返済できなくなった時、借り入れの担保となっている土地や建物などの不動産を、裁判所が強制的に売却するものです。

ところが、この競売では売却益が市場価格の50~70%ほどに下がってしまうのが通例です。これでは債権者にとって、あまりメリットがありません。また、現金化にも時間がかかります。つまり債権者にとっても、任意売却によって、できるだけ市場価格に近い値段での売却を目指すほうが得なのです。

また、これに伴いローンの残債についても、債務者にとって無理のない金額に見直す方向を考え始めるなど、確実に融資額を回収できる道を模索し始めます。

任意売却のメリット

任意売却には、債務者にとっていくつかのメリットがあります。競売情報は新聞やネットで公開されるために、近所や職場に事情を知られてしまう可能性がありますが、その点任意売却であれば、売却に際して通常の不動産売却と同じ方法を取るので、第三者に事情を知られずに事を進められます。

売却活動についても、債権者と協議しながら進める必要はありますが、通常の不動産取引と同様に、自分の意志に即して行えます。競売であれば所有者の意思はまったく関知されないので、大違いです。

また、競売では残債の一括返済を求められますが、任意売却では無理のない範囲での分割返済が可能となります。さらに任意売却により親族や投資家に物件を購入してもらった場合、家賃を支払えば売却後も自宅に住み続けられます。

任意売却のデメリット

任意売却のデメリットについても、押さえておきましょう。まず、住宅ローンを借り入れる際に連帯保証人などの債務連帯者を立てた場合には、その連帯保証人から任意売却に対する同意を得ることが必要となります。夫婦共同で自宅所有する場合など、連帯保証人を立てるケースは多いです。しかし、仮に連帯保証人に連絡が取れず、同意が得られない場合には任意売却はできません。

これに対して競売の場合には、裁判所が強制的に行う不動産売却であるため、連帯保証人などからの同意は必要がありません。しかし、連帯保証人の義務については免除されるわけではなく、もしも競売後に債務者が自己破産をした場合などには、連帯保証人の財産などが差押えられる場合もあります。また、任意売却は市場価格に近い金額で販売を行いますが、残債と市場価格の開きが大きすぎるような場合には、金融機関が任意売却に同意しないケースもあります。

任意売却に際して、どこに依頼をすれば良いのか分かりにくいというデメリットもあります。任意売却では通常の不動産取引とは異なり、非常に特殊な法律などに関連する専門知識や経験が必要とされます。また、任意売却に関するガイドラインといったものは特にありません。ですから一般的な不動産会社には頼めないと考えたほうがよいでしょう。

任意売却は債務整理の一種に当たります。そのため、その方面に強い弁護士が主体となり問題解決にあたる必要があり、これに加えて税理士や宅地建物取引主任者といった不動産売却の専門家の力も必要です。こうした人材を揃えているか、あるいは任意売却に関する経験や実績が豊富かなど、よく調べて、相談先となる企業などを探すのがよいでしょう。

任意売却については以下のサイトも参考にしてください。

川添典子

監修:川添典子

住宅金融普及協会 住宅ローンアドバイザー/2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

大学卒業後、某ハウスメーカー就職。住宅販売の営業職として、顧客開拓、住まいづくりの提案、資金計画相談、販売後のアフターフォローを担当。仕事を通して、お客様の一番の関心事と不安はお金に関する事だと感じ、ファイナンシャルプランナー2級と住宅ローンアドバイザーの資格を取得。ハウスメーカーを退職後、暮らしに役立つライター・編集者として、お金・不動産に関する知識や情報を提供しています。

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