住み替えに失敗しない! 体験談から学んで失敗を回避しよう

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「子どもが生まれて今の家では手狭だから住み替えたい」「子どもの教育環境のために引っ越したい」「子どもが独立したのを機に、夫婦2人暮らしに適したコンパクトな家に住みたい」など、結婚や出産、子どもの成長や独立といったライフステージに合わせ、今の家を売却して住み替えたいと考える人も多いのではないでしょうか。 持ち家を売却して新たな家を購入する「住み替え」は、段取りを少しでも間違えてしまうと失敗するケースが多く、事前の入念なプランニングが欠かせません。住み替えを成功させるにあたって、特に大切なのは「スケジュール管理」と「資金計画」の2つです。 そこでこの記事では、これから住み替えを検討している人へ向け、体験談をもとに住み替えに失敗しないためのポイントについて詳しく紹介していきます。

01住み替えで失敗する理由は「お金」と「タイミング」

「住み替え」とは、文字どおり「住まいを替えること」を指します。持ち家を売却し、新たな家を購入して住み替えるにあたっては、「今住んでいる家の売却」と「新たに住む家の購入」という2つの手続きを同時に行わなければなりません。

2つのうち、どちらか一方でも上手くいかないと住み替えはスムーズに進まないため、段取りをしっかりと決めておかないと失敗してしまうケースが多いのです。特に「お金」と「タイミング」についての段取りを間違えると、大きな失敗につながりやすいといえます。

まずは、住み替えにおける大きな失敗の原因になりやすい「お金」と「タイミング」の問題について、それぞれ解説していきましょう。

住み替えで失敗しがちな「お金」の問題

今住んでいる家を売却するにあたり、起こりがちなのが「売却価格の設定」の失敗です。住み替えを検討する人の多くは、持ち家を売却した資金で現在借り入れている住宅ローンを完済したいと考えていることでしょう。

しかし、現時点でのローン残債よりも安い価格で持ち家を売却してしまうと、ローンを完済できず借り入れの一部が残ってしまいます。住み替えを成功させるには、ローン残債以上の金額で持ち家を売却する必要があるのです。

よくある失敗が、持ち家の売却希望価格を相場よりも高く設定してしまい、なかなか売却できないというケースです。希望価格で売れないと「売れなかったらどうしよう」と不安になり、結局ローン残債よりも低い価格で売却してしまう人も多いという実情があります。売却できない期間が長くなるほど焦ってしまい、売却価格の設定を読み間違えるケースが増えます。

住み替えにあたっては、不動産取得税や登録免許税といった各種税金や引越し費用など、物件購入以外にも費用がかかる点も忘れてはなりません。安く売却してしまうと、こうした費用負担も重くのしかかってきます。

さらに持ち家が売却できていないのに、当初高めに設定していた売却価格を前提として新たな家を購入してしまうと、完済できなかった前の家のローン残債が費用に上乗せされます。結果として、住み替え後の月々の支払い負担が増えてしまい、家計を圧迫するという事態に陥ってしまうのです。

特に、物件価格以上の資金を借り入れる「オーバーローン」を組んでいる場合、ローン残債のリスクが高まるので注意が必要です。

住み替えで失敗しがちな「タイミング」の問題

住み替えでは「タイミング」を誤ると、余計にお金がかかる場合もあります。例えば新居が決まる前に今の持ち家を売却してしまった場合、新居を見つけるまで仮住まいとして賃貸物件を借りなければなりません。

こうなると仮住まいの家賃や、2回分の引っ越し費用が余計にかかってしまいます。反対に新居を先行して購入したものの予定どおり持ち家が売れない場合は二重ローンとなり、持ち家を売却するまでの間、月々の支払い負担が大きくなってしまいます。子どもの入学や進学、転職といった明確な引っ越しの期限があるケースでは、特にタイミングの見極めが難しいといえるでしょう。

ここまで、住み替えで失敗しがちな2つの問題について見てきましたが、ここからは実際に住み替えをする人がどんなことでよく失敗しているのか、具体例を挙げながら紹介していきます。

02体験談から学ぶよくある失敗

住み替えを成功させるためには「お金」と「タイミング」が大切だとわかっていても、実際に動き出すと失敗してしまう事例は多くあります。失敗しないためには、体験談から学ぶことも大切です。今回は、実際の体験談の中からよくある失敗例を4つ紹介します。それぞれ原因や解決策についても解説しますので、住み替えを検討している人は参考にしてください。

失敗談1:売却がうまくいかず二重ローンに

エピソード:持ち家の売却が思うように進まないのに、新居を先に購入してしまったため、2つの住宅ローンの支払いが発生してしまった

どうしても購入したい物件があるケースや、新居が必要なタイミングまでに時間的な余裕がないケースなどでよく見られる失敗の1つです。持ち家と新居の住宅ローンを同時に支払う状態のことをダブルローンと呼び、当然月々の支払い負担は大きくなります。

新居の購入は急ぎたいけれどダブルローンはできるだけ避けたいという人は、不動産会社に直接持ち家を売却する「買取」を検討するのも1つの方法です。

家を売却する方法は、大きく分けて「仲介」と「買取」の2種類があります。不動産会社の仲介によって見つけてもらった一般の人に物件を売却する「仲介」は、売主側の希望売却価格で売れる可能性がある一方、購入希望者の内覧対応が必要だったり、売却までにある程度時間がかかったりといったデメリットもあります。

対する「買取」は、売却価格が安くなりやすい(一般的に市場価格の7割程度)ものの、売却までに時間がかからず、内覧対応の手間もかかりません。買取を検討する場合、複数の不動産会社に依頼して、価格や内容に納得のいく不動産会社を選ぶようにしましょう。

失敗談2:調査不足で相場よりも格安で売却してしまった

エピソード:地価や相場感が分からず、不動産会社に言われるがまま安く売却してしまった

自分たちでエリアの地価や相場感を調べることなく、不動産会社に売却を相談した際「希望価格が高すぎて売れない」「このエリアならこの程度の価格が妥当」「築年数が古いのでもっと下げないと売れない」など言われるがまま、売却価格を安く設定してしまったという失敗例も多くあります。

実際には、築年数が経過していてもアクセスが便利な立地であれば、価格はそれほど下がらないケースも多いのです。地価や周辺相場はエリアの人気や時代の流れなどによって変動があるため、最新のデータをリサーチしておく必要があります。

こうした失敗を回避するには、自分の家の価値相場を知ることが大切です。不動産売却一括査定サイトを利用したり、エリアに強い不動産会社に査定を依頼したりといった方法が考えられます。価格査定を一社に絞る必要はないので、こちらの希望にしっかり寄り添ってくれる担当者のいる不動産会社を選ぶようにするといいでしょう。

失敗談3:早く売却し過ぎて仮住まいの費用がかさんだ

エピソード:「売ることを優先」したものの、新居選びが間に合わず、賃貸物件への仮住まいが必要になり、余計な手間や費用がかかってしまった

住み替えを検討して調べ始めると、「もし売れなかったらどうしよう」「安く売却することになったら困る」といった、持ち家の売却に関する心配ばかりが気になるという人も多いことでしょう。そのため、まずは持ち家の売却を優先して、住み替えのスケジュールを進めようとしてしまうのです。

しかし、実際は思った以上に早く買い手が見つかるというケースもあります。売却が遅すぎるとダブルローンのリスクが高まりますが、反対に売却が早すぎても仮住まいへの引っ越し費用や仮住まいの家賃など、コストが膨らむリスクがあるのです。仮住まいの立地やグレードによっては、月々の家賃負担が住宅ローンの返済額並みに膨らんでしまうケースもあるでしょう。

何事もバランスが大切で、住み替えにおいては持ち家の売却と新居探しを並行して進める必要があります。また持ち家が売れないことを恐れすぎると、売り急ぐあまり安く売ってしまう失敗にもつながりやすいのです。

どうしても売れないことが心配で、売れないリスクを回避したいのであれば、先ほど紹介した不動産会社の買取による売却を検討してみるのも1つの方法です。

失敗談4:新居の住み替えローンの審査に通らなかった

エピソード:売却した家の住宅ローンの残債がある状態で、新居の住宅ローンの借り入れを希望したところ、審査に通らなかった

住み替えでは、持ち家を売却した資金でローンを完済できなかった場合、旧居のローン残高と新居の購入費用を一括で借り入れられる「住み替えローン」の利用を検討する人が多くなっています。住み替えローンは使い勝手のいい商品ですが、新居の担保価値以上に借り入れることになるので、年収や返済状況について厳しい基準をクリアしなければなりません。

審査が通らず借入金額を減らされる、または借り入れそのものができないといった事態になれば、予定していた新居の購入が難しくなるため、借り入れできる資金の範囲内で一から新居探しをする必要が出てきます。持ち家は売却済みですから、仮住まいに引っ越さなければならず、結果的に家賃や引っ越し代といった追加費用が発生してしまうのです。

住宅ローンや住み替えローンの利用を検討する場合、世帯の経済状況や返済状況でどのくらい借り入れられるのかは事前に調べておきたいところ。持ち家購入時に住宅ローンの審査が通ったからといって、今回も通るとは限らないため要注意です。

03住み替えに失敗しないために押さえておきたい3つのポイント

体験談をもとに、住み替えにおけるよくある失敗例を4つ見てきました。こうした失敗を回避し、住み替えを成功させるためにはどのような点に注意すればいいのでしょうか。続いては、失敗のリスクを減らすために押さえておきたい3つのポイントを紹介していきます。

ポイント1:売買のタイミングを決めておく(「売り先行」「買い先行」)

住み替えはタイミングがとても重要です。持ち家の売却と新居の購入を同時に進行できるのが理想ですが、現実はなかなか難しいといえます。そこで知っておきたいのが、「売り先行」と「買い先行」という2つの住み替え方法です。事前に売り先行にするのか買い先行にするのかを決めておくと、タイミングで失敗しにくくなります。

まず「売り先行」とは、持ち家の売却後に新居を購入するという住み替え方法のことです。売り先行は、次のような点が特徴として挙げられます。

  • 持ち家の売却価格の確定後に新居探しができるので、資金計画が立てやすい
  • 買主との価格交渉に応じる必要がなく、希望売却価格で売りやすい
  • 新居決定前に売却するので仮住まい探しが必要であり、2回の引っ越し費用や仮住まいの家賃負担が発生する

対する「買い先行」は、持ち家の売却前に新居を購入し、引っ越した後に持ち家を売却するという住み替え方法です。買い先行には次のような特徴があります。

  • 新居探しに時間をかけられる
  • 仮住まい探しのための手間や仮住まいのための費用が発生しない
  • ダブルローンが発生しやすく、売却を急ぐと安値で売ってしまうリスクが高まる

自身のスタンスに合った住み替え方法を選ぶのがいいですが、資金計画が立てやすく希望価格で売却しやすい「売り先行」のほうが資金面の安心感はあるかもしれません。

ポイント2:複数の不動産会社を比較する

先ほど紹介したとおり、住み替えでは持ち家の価値を知ることも非常に重要です。希望売却価格が相場より高いとなかなか売却できず、反対に安すぎると売却損が出て、住宅ローンを完済できない可能性が高まります。

自分たちで相場感を調べるには限界があるため、まずは不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。不動産売却一括査定サイトを利用すれば、複数の不動産会社に一括で査定を依頼できます。

サイトを利用してある程度相場感がつかめたら、持ち家のエリアに強い中小の地元不動産会社や大手不動産会社に詳細な査定を依頼します。あまり多くの不動産会社に依頼すると混乱の元になりますので、依頼先は3〜4社程度に絞るといいでしょう。

ポイント3:比較をした上で同じ不動産会社に売買を依頼することを検討

持ち家の売却において信頼できる不動産会社を見つけたら、同じ会社に新居探しも依頼するという手があります。このメリットは、売りと買いの段取りを同時に進行できるという点です。

繰り返しになりますが、住み替えにおいてはタイミングが非常に重要です。売却と購入を同じ不動産会社に依頼すれば、新居を探しながら持ち家の売却手続きを進められるので、スムーズに住み替えできる可能性が高まるでしょう。仮に売りと買いを同時に行えれば、仮住まい探しが不要なうえ、資金計画も立てやすいという理想的な住み替えを実現できます。

ただし同じ不動産会社に依頼したからといって、必ずしも住み替えが順風満帆に進むとは限りません。もし買い手がなかなか見つからない場合には、先ほども紹介した不動産会社による買取も検討してみるといいでしょう。

04タイミングを間違えると命取り!資金計画もしっかり立てよう

初めて家を購入するケースと異なり、住み替えは持ち家売却と新居購入という2つの項目を同時に考えなければなりません。やるべきことが多すぎて混乱する人も多いのではないでしょうか。万が一タイミングを間違えてしまうと、資金計画が崩れてしまいかねません。 理想的な新居探しも大切ですが、資金計画が崩れてしまうと、将来経済的に立ち行かなくなって、せっかく住み替えた新居を手放さざるを得ない状況に陥る可能性もあります。そうならないためにも、緻密な資金計画とスケジュールを立ててから住み替えに着手することが大切です。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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