土地の価格はどういう基準で決められる?3パターンに分けてご紹介

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定価がなく、値付けが難しい不動産の価格。中でも土地は価格を見極めるのが難しく、「土地を売りたいけど、価格をいくらにすればいいのかわからない」と悩む人も多いのではないでしょうか。今回は、土地の価格がどのようにして決められているのか、その基準を確認していきましょう。

01土地の価格はどうやって決まるの?

土地の価格は一般に「一物四価」(1つの土地に4つの価格がある)と呼ばれています。四価とは「実勢価格(時価)」「公示地価」「路線価」「固定資産税評価額」の4つの価格のことで、それぞれ次のような意味があります。

(1)実勢価格(時価)

実勢価格(時価)は実際に市場で取引される価格のことで、一般的には需要と供給のバランスが釣り合った、適切な価格だと考えられています。実勢価格はその土地の過去の取引実績から割り出されることが多く、過去に取引実績がない場合は、条件が似た近隣の土地の取引実績などをもとに割り出されます。なお、不動産広告などで表示されている価格は、原則として売主の希望価格であり、実勢価格ではありません。

(2)公示地価

国土交通省の土地鑑定委員会では全国の都市やその周辺地域から選んだ標準地(約2万6000地点)について毎年1月1日時点の適正価格を調査し、3月に公表しています。この価格のことを公示地価といい、土地の価格を決める際の指標の1つとして活用されています。

最新の公示地価は国土交通省が運営するサイト「土地総合情報システム」で確認できます。

(3)路線価

路線価とは、相続税や贈与税を計算する際の基準となる価格のことです。土地が面している公道ごとに価格が設定される路線価には種類が2つあります。国税庁が公表している路線価は「相続税路線価」、市町村(東京都の場合は都)が固定資産税を算出する際に使用する路線価は「固定資産税路線価」と呼ばれ、それぞれの課税額を算出するために利用されます。単に路線価という場合には、「相続税路線価」を指します。売買の実例価格や公示地価、不動産鑑定士等による鑑定評価額などを参考にして、原則として毎年7月1日に、1月1日時点の価格が公表されます。「相続税路線価」は公示価格の概ね80%が目安とされています。

相続税路線価は、国税庁のサイトで確認できます。

(4)固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、文字どおり固定資産税の標準となる価格のことで、各市町村(東京都23区の場合は都)が3年に1度算定して公表しており、地価公示価格の70%が目安とされています。

02基準地価とは?

もう1つ、土地の価格を知る目安としてぜひ確認しておきたい指標が「基準地価」です。

基準地価とは、国土利用計画法に基づいて各都道府県が全国約2万地点の基準地について毎年7月1日現在の価格を調べ、9月に公表するものです。基準地価は公示地価と同様、実際の土地の価格を決める際の指標の1つとして活用されます。公示地価が主に都市部とその周辺地域を標準地として調査対象にしているのに対し、基準地価は都市部以外の地域についても調査対象としていることから、公示地価を補完する指標と言うことができ、基準地価の推移には景況が色濃く反映されると言われています。

ここでは東京都が公表している基準価格の最高価格と最低価格、そして平均価格を見てみましょう。

令和2年地価調査 住宅地・商業地別平均価格等

※平均価格については100円未満を四捨五入

ここでは「区部」「多摩地区」「島部」で区分した価格のみを紹介しましたが、東京都のホームページでは都内の全区市町村別の価格も確認することができます。

なお、全国の最新の基準地価は公示地価と同じく、国土交通省のサイト「土地総合情報システム」で確認することができます。

03土地の価格を知るには?

では、具体的に土地の値段を知りたい場合、上にあげた5つの価格(「実勢価格(時価)」「公示地価」「路線価」「固定資産税評価額」「基準地価」)のうち、どれを見れば良いのでしょうか?

その答えは、「目的」によって異なります。ここからは、3つの主な目的別に土地の価格を計算する方法を見ていきましょう。

(1)土地を売りたいとき

所有する土地を売却するにあたっては、土地の価格を決める必要があります。土地の値段については特に法律の規制がなく、極端な言い方をすれば、自分の好きな価格をつけることができます。しかし、同じエリア内の似た条件の土地と比べて、あまりに価格が高すぎると買い手を見つけるのが難しくなり、希望するタイミングで売却できないことがあります。逆に安すぎても買い手に「欠陥があるのでは?」と不安感を持たれるだけでなく、何より適正価格で売却できないので損をする可能性が高くなります。そこで参考にしたいのが、上で紹介した「実勢価格(時価)」です。実際に近隣エリアの土地がどのくらいの価格で販売されたのか取引実績を確認して、1坪あたりの相場価格を見極め、その価格から自分の所有する土地の販売価格を算定してみましょう。

たとえば、100坪の土地を売りたい場合、周囲の土地が1坪30万円くらいで売買されているようなら、まず 3000万円前後が一つの目安と言えるでしょう。ただし、面積が同じくらいの土地でも、「どのような道路に、どう接しているか」(道路付け)によって、実際の価格は大きく変わりますので、より正確な価格を知りたいときは、近くの不動産業者などで確認してもよいですし、国土交通省のホームページでも確認できます。

(2)土地を相続したとき

他の財産と同様、土地を相続した場合も相続税の課税対象になりますが、相続税額を計算するためには、まず相続した土地の「相続税評価額」を求める必要があります。相続税評価額を求めるには「路線価方式」と「倍率方式」があり、路線価が決まっている土地は、「路線価方式」により以下の計算式で求めることができます。

土地の相続税評価額=路線価✕面積(㎡)

例えば、1㎡あたりの路線価が10万円の土地を500㎡相続した場合の相続税評価額は10万円×500㎡= 5000万円になります。

(3)固定資産税を知りたいとき

土地を所有していると年に1回、固定資産税をその土地がある市町村に納めなくてはなりません。固定資産税の納税額は、原則としてその土地の固定資産税評価額に基づいて計算<固定資産税額=固定資産税評価額×標準税率(1.4%)>されるので、納税額を知るには、まずは固定資産税評価額を調べる必要があります。固定資産税評価額は、前述のとおり、3年に1回見直しがあり、公示価格の概ね70%程度とされることが多いようです。

すでに所有している土地なら、年に1回送られてくる納税通知書に、その土地にかかる固定資産税評価額が記載されているので、確認してみてください。新たに購入した土地で前年の課税通知書がない場合は、その土地を購入した際の不動産業者に確認すると良いでしょう。

04不動産業者の査定を受ける際の注意点とは?

ここまで見てきたとおり、土地の価格を決めるヒントとなる指標は複数ありますが、やはり慣れていない人にとって、土地の適正価格を見極めるのは容易ではありません。そこで活用したいのが不動産業者の査定サービスです。査定サービスを利用すると、不動産販売のプロが、その土地はいくらで売れそうかを見極めて、査定価格を算出してもらうことができます。

査定をする際は実際に担当者が現地まで足を運び、詳しくその土地の条件などをチェックして行う「訪問査定」と、訪問はせずに土地の所有者から電話やメールなどによるヒアリングで得た情報や路線価などの情報をもとに行う「机上査定」とがあり、原則として無料で依頼することができます。また、不動産業者のウェブサイトで土地の基本的な条件(住所、面積、最寄り駅からの距離など)を入力するだけで、おおよその査定額を算出してくれるオンラインサービスを提供している会社もあります。机上査定やオンライン査定のほうが気軽ではありますが、訪問査定では実際に現地に行ったからこそわかる近隣地域の環境などの情報を加味して査定してくれるため、より現実的な価格を知ることができます。具体的な売却予定があるわけではないものの土地のおおよその価格が知りたい場合は、机上査定やオンラインでの査定をおすすめします。売却を本気で考えている場合など、実際の「売値」として土地の価格が知りたい場合は、訪問査定を受けることをおすすめします。

ただし、査定価格=売れる価格ではありません。また、ある会社から示された査定価格が必ずしも適正価格だとは限りません。むしろ査定した会社によって、数百万円も査定価格に差があることも珍しくないのです。査定を依頼する場合は1社に限定するのではなく、複数の会社に依頼し、査定額やその根拠を聞いたうえで依頼先を決めましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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