マンション購入にかかる税金とお得な優遇制度を紹介
立地条件など利便性の高い物件が多いことから、マンション購入を検討している人も多いでしょう。しかしマンション購入にはさまざまな税金がかかるので、予算を検討するときに「どれくらいの税金がかかるか」をある程度把握しておくことが重要です。そこでこの記事では、マンション購入にかかる税金を「購入前」と「購入後」に分けて、金額の目安を紹介します。また税制上の優遇措置やその申請方法についても解説するので、参考にしてください。
01マンションの購入時にかかる税金は主に3つ
マンション購入時に課される税金としてイメージしやすいのは、消費税でしょう。不動産購入にあたって土地部分は対象外ですが、建物部分に10%の消費税が課されます(2020[令和2]年時点)。しかし消費税以外にも「印紙税」や「不動産取得税」「登録免許税」といった3つの税金が課されるので、それぞれの概要について解説します。
印紙税
印紙税は正式な契約書や領収書に対して課される税金です。不動産取引においては、売買契約書や建築に関する請負契約書、住宅ローンの借り入れ時に交わす金銭消費貸借契約書などが対象になります。
印紙税の特徴は、契約書に記載されていれる金額に応じて課税金額が決められている点です。領収書の場合は記載されている金額が5万円以下であれば非課税ですが、それを超えると課税対象になります。一方、不動産売買契約書や請負契約書の場合は基本的に1万円以上から課税対象となり、納付する税額は200円から最大で60万円です。ただし、2022(令和4)年3月31日までに作成される不動産売買契約書と請負契約書については軽減措置が適用され、最大でも48万円となっています。
不動産取引に係る契約書の印紙税額一覧(2020年4月1日現在)
契約金額(契約書1通または1冊あたりの記載金額) | 印紙税額 |
100万円を超え200万円以下のもの | 200円 |
200万円を超え300万円以下のもの | 500円 |
300万円を超え500万円以下のもの | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
出典:国税庁ホームページ「建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置」
詳しくは「不動産売買時に必要な印紙税とはどんな税金?」で解説しているので、興味がある方は参考にしてください。
不動産取得税
不動産取得税は土地や住宅などの不動産を取得したときに、1度だけ支払う税金です。不動産取得税は印紙税と違って契約書に記載されている価格ではなく、市区町村が決定する固定資産税評価額をベースに算出しています。本来の税率は土地・建物ともに4%なので、原則的には「土地(または建物)の固定資産税評価額×4%」で算出する仕組みです。ただし、2021(令和3)年3月31日までに取得した場合は、「税率3%」と「宅地の固定資産税評価額を2分の1に減額できる」という軽減措置が受けられます。
また上記の軽減措置とは別に「床面積が50㎡以上240㎡以下」などの要件を満たした場合に限り、土地と建物それぞれに控除額が用意されています。軽減措置と控除額の両方が適用された場合の計算式は、建物が「(固定資産税評価額-控除額)×税率3%」で、土地が「(固定資産税評価額×1/2×税率3%)-控除額」になります。
控除される金額は建物と土地でそれぞれ異なる上、建物については築年数によっても違うので気を付けましょう。例えば建物部分は新築日が1997(平成9)年4月1日以降である場合は、1200万円が控除されます。しかし新築日が過去になるにつれて控除額が下がる仕組みになっているので、中古住宅の場合は満額の控除が受けられない可能性があります。一方、土地における控除額の計算は少し複雑で、「4万5千円」もしくは「(土地1㎡当たりの固定資産税評価額×1/2)×(住宅の課税床面積の2倍[200㎡が限度])×税率3%」のいずれか高い金額です。
仮に土地の固定資産税評価額1400万円、建物の固定資産税評価額1500万円(土地60㎡、課税床面積75㎡)の新築マンションを取得した場合(軽減措置の適用対象)でシミュレーションしてみましょう。この場合、建物の不動産所得税は「9万円=1500万円-控除額1200万円×税率3%」です。それに対して、土地はまず「21万円=1400万円×1/2×税率3%」を算出し、ここから控除額を差し引きます。控除額は、上述の計算式から「52万5000円={1400万円÷60㎡×1/2=11万6666円}× {75㎡×2(≦200㎡)=150㎡ }×3% (100円未満は切り捨て)」です。控除額の比較対象である4万5000円より大きいことから、控除額は52万4000円になります。
その結果、このケースでは「控除前の不動産取得税21万円-控除額52万5000円」を計算するとマイナスになるため、土地の不動産取得税はかからず、建物部分の9万円だけを納めればよい計算です。なおマンションの場合、計算上使われる課税床面積は基本的に共用部の持ち分割合も含みます。そのため、実際に生活している部屋の延床面積よりも広くなるケースが多い点は覚えておきましょう。
登録免許税
登録免許税は、不動産を購入するに行う「登記」に際してかかる税金です。新築マンションを購入する場合は「所有権保存登記」、中古マンションを購入する場合は「所有権移転登記」がそれぞれ必要になります。さらに住宅ローンを組む際、その不動産を担保に入れる必要がありますので、それを登記簿に記載する「抵当権設定登記」も必要です。
登録免許税の計算式は「課税標準×税率」で、課税標準は固定資産税評価額がベースとなっています。固定資産税評価額は3年に一度評価替えが行われ、一般的には築年数の古い中古マンションの方が新築マンションより安くなりやすいのが特徴です。また登録免許税は、登記の種類ごとに税率が異なる点にも気を付けましょう。登録免許税の本来の税率は以下の通りです。
- 土地の所有権移転登記2%
- 新築建物の所有権保存登記0.4%
- 中古建物の所有権移転登記2.0%
- 抵当権設定登記0.4%
ただし、登録免許税にも軽減措置が設けられていて、対象になれば2022(令和4)年3月31日までなら以下の税率になります。
- 新築建物の所有権保存登記0.15%
- 中古建物の所有権移転登記0.3%
- 抵当権設定登記0.1%
- 土地の所有権移転登記1.5%(※2021[令和3]年3月31日まで)
例えば軽減措置の対象になる固定資産税課税評価額4000万円(土地部分:2300万円、建物部分:1700万円)の新築マンションを買った場合、所有権保存登記にかかる費用は土地部分が「3万4500円=2300万円×0.15%」、建物部分が「2万5500円=1700万円×0.15%」となり、合計6万円となります。そのマンション購入に3500万円の住宅ローンを組んだ場合の抵当権設定登記費用は「3万5000円=3500万円×0.1%」がかかります。このケースにおける登録免許税の目安は、合計9万5000円になることが分かるでしょう。
02マンション購入後にかかる税金は主に2つ
ここまでマンション購入時にかかる税金について解説してきました。しかしマンション購入後には、固定資産税と都市計画税が毎年かかります。それらの税金の概要についても知っておきましょう。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有する人に対して課税されます。地方税という扱いから税額については各市区町村(東京23区の場合は東京都)が定めている「固定資産税評価額」をベースに算出するのが特徴です。上述したように、固定資産税評価額は3年に1度評価替えが行われます。そのため、固定資産税も基本的には新築マンションより築年数が経過している中古マンションの方が安くなる傾向にあることは覚えておきましょう。
固定資産税の計算方法は「課税標準(固定資産税評価額)」×「標準税率1.4%」です。ただし、2022(令和4)年3月31日までに新築された建物には軽減措置(中古住宅は適用外)が用意されており、対象になると床面積120㎡までの課税標準が最大5年間にわたって2分の1になります。なお土地については、小規模住宅用地((200㎡以下の部分)または一般住宅用地(200㎡超の部分)に該当すれば、それぞれ課税標準を「6分の1」もしくは「3分の1」にする軽減措置があります。土地の軽減措置に期限は設定されていません。
ここで固定資産税の目安を知るために、「建物の固定資産税評価額1800万円(専有面積75㎡)、土地の固定資産税評価額2000万円」の新築マンションでシミュレーションしてみましょう。軽減措置が適用される前の固定資産税は土地が「28万円=2000万円×1.4%」、建物は「25万2000円=1800万円×1.4%」の合計53万2000円です。
軽減措置が適用されると小規模住宅用地に該当するので、土地の固定資産税は「4万6600円=2000万円×標準税率1.4%×軽減率1/6」、建物の固定資産税は「12万6000円=1800万円×標準税率1.4%×軽減率1/2」になります。合計すると17万2600円となり、軽減措置の適用前と比べておよそ3分の1で済む計算です。ただし前述したように、建物の軽減措置は最大で5年間しか適用されないため、その後、納める税金が高くなることは覚悟しておきましょう。
都市計画税
都市計画税は各都市が定めている「都市計画区域」のうち、「市街化区域」にある土地や建物に課される税金です。固定資産税と同じように固定資産税評価額をベースに計算しているため、一般的には中古マンションの方が新築マンションよりも安くなります。
計算方法は「課税標準(固定資産税評価額)×税率(0.3%の制限税率)」です。税率の名称が制限税率となっていることからも分かるとおり、都市計画税の税率は0.3%が上限です。そのため、各自治体で0.3%より低い税率を採用することは可能ですが、実際にはほとんどの自治体で上限を採用しています。
また、都市計画税の計算で注意する点としては「都市計画税の軽減措置は土地のみにある」ことです。固定資産税のように新築住宅への軽減措置はありません。適用されると、「小規模住宅用地(200㎡以下の部分)」は課税標準を3分の1、「一般住宅用地(200㎡超の部分)」は課税標準を3分の2として計算できます。
それでは、都市計画税の金額の目安を知るために、「建物の固定資産税評価額1800万円(専有面積75㎡)、土地の固定資産税評価額2000万円」の新築マンションでシミュレーションしてみましょう。このケースでは小規模住宅用地の対象になるので、土地の都市計画税は「1万9900円=2000万円×軽減率1/3×標準税率0.3%」です。一方、建物には軽減措置がないため、標準的な計算式をそのまま当てはめると「5万4000円=1800万円×標準税率0.3%」となり、合計で7万3900円が支払う金額の目安になります。
03マンション購入で利用できる税制優遇措置の手続きについて
マンション購入でかかる税金には、優遇措置が用意されているものも多いです。そこで、ここからは優遇措置の手続き方法をはじめ、住宅ローン控除やすまい給付金など、家計に役立つ情報についても紹介します。
不動産取得税
不動産取得税の軽減措置は申告制になっているため、適用を受けたい人は各都道府県税事務所などの窓口へ行って手続きをする必要があります。申告期限は各都道府県によって異なりますが、一般的には税務申告と同じく不動産の取得後60日以内が目安です。東京や大阪など、地域によっては60日より短い期間となっていることもあるので、自治体のホームページで調べておきましょう。
申請にあたって必要になる書類は軽減措置の申告書や不動産売買契約書、登記事項証明書、検査済証などが挙げられます。ただしこちらも、申請する自治体によって異なるケースがあるので注意しなければいけません。不動産取得税の概要や申請方法の詳細は「不動産取得税とは?軽減はあるの?いくらかかるか計算方法も解説」を参照してください。
登録免許税
登録免許税の軽減措置を受けるには、登記を行う前に要件を満たした住居であることを証明する「住宅用家屋証明書」を入手しておく必要があります。登記手続きを行う際に住宅用家屋証明書を登記申請書に添付していなければ、軽減措置は適用されません。登記を行ったあとに提出しても軽減措置の適用は認められないので、マンションが所在する市区町村へあらかじめ申請しておきましょう。
実務上では登記は司法書士に代行してもらうことが多いでしょうが、その場合も軽減措置が受けられているかを渡される書類等で確認した方が無難です。なお、床面積50㎡以上の住宅用家屋のうち、認定長期優良住宅と認められた場合、さらに控除額が上乗せされるケースがあります。登録免許税についてより詳しい情報を得たい人は「登録免許税っていくらかかる?計算方法と軽減措置を紹介」をチェックしてみてください。
固定資産税・都市計画税
固定資産税や都市計画税の軽減措置を受けるには、購入した物件がある市区町村への申告が必要です。期限は申告が必要となる事由が発生した翌年の1月31日までとなっており、年末が近づいてから物件を取得した人はあまり時間的な猶予がない点には気を付けましょう。また、固定資産税や都市計画税の軽減措置は種類が多いことが特徴で、申請する内容によって書式や提出先、提出期限などが異なります。
例えば「住宅用地の固定資産税の軽減措置」なら「固定資産税の住宅用地等申告書」、「認定長期優良住宅に係る固定資産税の軽減措置」なら「長期優良住宅に係る固定資産税減額申告書」などが必要です。それぞれの自治体によって書類の名称も微妙に違ったりするので、あらかじめ申請する予定の軽減措置について、各自治体のホームページで確認しておきましょう。固定資産税や都市計画税の軽減措置については「固定資産税の計算方法を解説!どうすれば安く抑えられる?」や「都市計画税とはどんな税金?固定資産税との違いをあわせて解説」で詳しく解説しています。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は毎年の年末時点における住宅ローン残高と住宅取得費用のうち、いずれか少ない金額の1%を最大10年間にわたって所得税から控除してくれる制度です。ただし、2019(平成31・令和元)年10月の消費税引き上げに合わせて、2020(令和2)年12月31日までに入居した場合は控除期間が13年間に拡充されています。
対象になるための要件は「控除を受ける年の所得が合計で3000万円以下」「床面積が50㎡以上であること」などです。申請方法は入居した年の翌年2月中旬~3月中旬にかけて行われる確定申告で申請することになっていますが、会社員などの給与所得者は2年目以降、年末調整で還付が受けられます。
住宅ローン控除の詳細については「Vol.5【マイホームを買ったら必ず実践!】住宅ローン減税(控除)っていったいなに?」「住宅ローン控除の仕組みと節税できる金額」「住宅ローン控除を受けるための確定申告の方法」を確認してください。
投資型減税(認定住宅新築等特別税額控除)
投資型減税は長期優良住宅や低炭素住宅といった、地球環境に配慮した住宅が対象になる減税制度です。住宅ローン控除と違って、こちらはローンを利用せず現金購入した場合に利用可能な制度になっています。原則として、その年分の所得税額から最高65万円が減額され、控除しきれなかった分は翌年の所得税からも引かれる点はメリットです。
主な要件には「新築、または建築後に使用履歴のない住宅」「認定長期優良住宅または認定低炭素住宅(建築物)」「自ら居住する(セカンドハウスは適用外)」などがあります。申請方法については住宅ローン控除と同じく、購入した年の翌年の3月15日までに確定申告で申請することとなっています。投資型減税はメリットの大きい制度ですが、「認定住宅であることの証明書」「登記事項証明書(全部事項証明書)」「売買契約書の写し」など、用意する書類が多い点はデメリットです。詳しい内容について知りたい人は「住宅ローン控除(減税)」の基本と計算方法」を確認してください。
すまい給付金
ここまで税金の軽減措置を紹介してきましたが、すまい給付金は要件を満たした場合にお金をもらえる給付金制度です。消費税の引き上げによって経済的負担が増した住宅購入者を対象にしています。もともと2014(平成26)年4月の消費税8%への引き上げ時に創設された制度ですが、2019(平成31・令和元)年10月の消費税10%への引き上げによって、2021(令和3)年12月まで期間が延長されています。
すまい給付金の要件は「住宅を所有した人がそのまま居住者であり、収入が775万円以下」「住宅ローンを利用しない場合は年齢が50才以上」などです。申請方法は取得した住宅に居住を開始したあとで給付申請書を作成し、必要書類を添付して「全国にあるすまい給付金申請窓口に持参」または「すまい給付金事務局宛てに郵送」することになっています。ただし、申請手続きは登記上の住宅取得者が各自で行うことになっているため、マンションを共有名義にしている場合はそれぞれが申請しなければいけません。すまい給付金の詳細について知りたい人は「「すまい給付金」とはどんな制度?―条件・給付額・申請手順―」をご覧ください。
04税金の納付に関する注意点
税金の納付にあたって、まず注意しなければいけないのは、そもそも「納税通知書は正しい金額で計算されているかどうか」です。残念ながら税金を計算する職員も人間なので、ミスをすることもあります。実際に固定資産税においては、2012(平成24)年に総務省が公表した資料によると「2009(平成21)年から2011(平成23)年までの3年間に税額修正を行った自治体が97%もあった」という調査結果が出ています。納税通知書が送られてきても、念のため金額が合っているかをチェックしてから支払う癖をつけましょう。
また、少しでも税金の納付をお得にしたい人におすすめなのが、固定資産税のキャッシュレス決済です。キャッシュレス決済を利用してポイントが貯まれば、実質的な節税につながります。ただし、クレジット支払いは各市区町村によって、支払える税金の限度額や決済手数料が定められているため、注意が必要です。貯まるポイントより手数料の方が高いと本末転倒なので、気を付けましょう。
05マンション購入では軽減措置を大いに活用しよう
マンション購入にかかる税金には、購入時にかかるものと購入後に毎年支払うものの2つがあります。いずれの場合も軽減措置が適用されるケースはそれなりに多いので、これからマンション購入を検討している人はしっかり情報収集に励んでみてください。サイト内の「住宅ローンシミュレーション」なら、目的別のシミュレーションで住宅ローンへの疑問が解決できます。税金の軽減措置を調べるのと同時に、マイホーム購入の予算もチェックしてみてはいかがでしょうか。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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