日本の人口減少16年連続、地方にマイホームを建てる前に知っておきたいこと

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総務省の最新データでは、日本の人口は減少が続いており、地方ではその影響がより深刻です。住宅は資産としての側面も持つため、このような状況を前にして「人口減少エリアでマイホームを建てても大丈夫だろうか」と不安を抱く人もいるのではないでしょうか。 たしかに、不動産は需要が大きいほど価値が高くなりやすいですが、単純に「人口減少=資産価値の低下」とは言い切れない面もあります。たとえば、「立地適正化計画に基づくエリア選び」や、「将来のライフプランを見据えた住宅購入戦略を立てる」ことで、資産価値が下落するリスクを抑えながら安心した家づくりを進めることも可能です。 そこで、この記事では人口減少時代に地方でマイホームを建てる前に知っておきたいポイントをデータと具体例の双方から解説します。

01日本の人口、16年連続減少──都道府県別で唯一の増加は東京

総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和7年1月1日現在)」によると、都道府県単位で日本人の人口が前年より増加したのは東京都のみで、日本全体としては16年連続の人口減少となりました。特に東北や四国、九州での減少幅が大きく、市区町村レベルでみると福岡市や仙台市などの地方中核都市では人口が増えている地域も一部ありますが、人口減少そのものは全国的に進んでいることが浮き彫りになっています。

日本で人口減少が起きている背景は主に以下の3つです。

  • 合計特殊出生率の低下により、全国的に出生数が減少している
  • 若年層が都市部へ流出し、地方の人口減少に拍車をかけている
  • 地方では高齢化率が上昇し、自然減(死亡数>出生数)の影響もある

若年層が流出することで地方の高齢化が進み、自然減も加速します。また、都市部へ移った若者は生活コストの増加や共働きによる負担などの理由から合計特殊出生率が下がって少子化が進み、さらに人口減少が進むといった具合に3つの理由は基本的に連動しています。

特に地方の中には人口減少は深刻な地域もあり、そこで住宅を建てると需要低下によって売却しにくくなる恐れがあります。こうした状況に直面すると「資産価値の低下につながるのでは」という不安を抱く人も多いでしょう。ただし、補助金制度の活用や立地選びの工夫次第で、資産価値下落リスクを抑えることも可能です。

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02人口減少エリアで住宅を購入するリスクとメリット

人口減少エリアでの住宅購入には資産価値下落リスクがつきものですが、必ずしもデメリットばかりではありません。そこで、資産価値下落リスクを抑えるポイントを解説する前に、まずは人口減少エリアで住宅を購入するリスクとメリットの双方を整理し、一緒に確認していきましょう。

資産価値下落のリスク

住宅などのいわゆる不動産の価格は、「欲しい」と思う人が多ければ多いほど一般的に高くなります。しかし、人口減少エリアでは、そこに住む人がそもそも減ってしまうので、必然的に住宅需要は下がり、売却価格は伸びにくくなる傾向があります。そうした傾向は特に公共交通機関が不便な郊外や過疎地で多く、こうした地域の住宅は値崩れリスクも高くなりがちです。住宅需要の乏しい地域では、相続時に「売れない不動産」として相続する側が困るケースもあります。

空き家増加による生活環境悪化のリスク

人口減少している地域では、空き家増加による生活環境悪化のリスクも見逃せません。周囲に空き家が増えると、住宅の管理不足による景観の悪化や、人目が届かないエリアが広がることで犯罪が発生しやすくなるといったリスクが考えられます。さらに人口減少が進むと、スーパーや病院などの生活インフラが撤退するリスクもあり、日常生活が不便になるかもしれません。

金融機関による融資・担保評価の制約リスク

不動産価格は需要の多いエリアほど高くなる傾向にあるため、人口減少エリアにある物件は住宅ローン審査の際に担保評価が低いという理由で不利になりがちです。場合によっては金融機関の担保評価が厳しく、希望額のローンを借りられないケースもあります。仮に住宅購入時は希望額のローンを借りられても、借り換えや売却を検討するときに思うような金額で評価されない場合があるなど、将来的に困る恐れがあることも頭に入れておきましょう。

土地価格の安さによるメリット

人口減少エリアで住宅を購入する最も大きなメリットは、予算が少なくても理想の住宅を手に入れやすいことです。一般的な傾向ですが、都市部に比べると人口減少エリアは住宅需要が少ないため、土地価格が安いことが多く、同じ予算であっても広い土地やゆとりのある間取りを実現しやすくなります。住宅ローンの毎月の返済額も抑えやすいので、住宅購入後の家計にも余裕を持たせやすいでしょう。

ただし、地方であっても市町村単位でリゾート開発や半導体関連の工場を誘致している一部地域では、地価が大幅に上昇している事例もあるため、事前のリサーチをしっかり行うことが大切です。

自治体による補助金・移住支援のメリット

人口減少に悩む地方では、都市部からの移住促進のために補助金を支給しているところも少なくありません。また、移住のみでなく、新築や中古住宅の購入およびリフォームに利用できる制度を用意している自治体もあります。中には「最大数百万円単位の支援が受けられる自治体もある」など、エリアによっては住宅にかかるコストを大幅に抑えられる場合があります。不動産の取得コストを抑えることで、資産価値の下落幅も少なくなるでしょう。

子育て支援・生活コスト軽減のメリット

移住支援と同様に、人口減少に悩む自治体では給食費の無償化や医療費助成、保育料減免など、教育や医療分野の支援を中心に子育て世帯に優しいところが多いです。支援を合わせると、まとまった額になることもあり、住宅ローン以外の家計負担を抑えるのに助かる場合があります。また、そうした支援で浮いたお金を住宅購入予算に充て、よりグレードの高い設備や間取りを採用し、理想のマイホームに近付けるのも1つの方法です。

03人口減少エリアで後悔しないマイホーム購入のチェックポイント

ここまで、日本のほとんどのエリアで人口減少が起きていること、またそうした地域で住宅を購入するリスクとメリットについて解説してきました。人口減少エリアでの住宅購入にはリスクがあるのも事実ですが、メリットも少なくありません。そこで、最後に人口減少エリアで住宅を購入する場合に、より安心して購入するためのチェックポイントを紹介していきます。

立地適正化計画の「居住誘導区域」を選ぶ

立地適正化計画の「居住誘導区域」とは、全国各地で進む人口減少地域に対応するために国土交通省が中心となり、生活に必要な施設を集約して整備を進める住宅地のことです。この地域では将来的な医療・福祉・商業・子育て支援などの施設建設や、インフラ投資・公共交通の維持が優先されるため、過疎化が進んで生活利便性が悪くなるリスクは低いと考えられます。

一方で、非誘導区域はこうした国の支援が受けられないため、すでに人口減少が進んでいる地域ではやがて将来のインフラ縮小や不動産の資産価値下落が進む可能性が高いです。仮にそのような地域を選ぶときは慎重な判断が求められます。

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子育て世帯や若年層の流入がある地域を選ぶ

人口減少しているエリアで住宅を建てる際は、「世代ごとの人口変動率」を確認することもポイントです。たとえば、30代~40代の子育て世帯が増えている地域であれば、しばらくの間は学校や商業施設の維持が期待でき、一定程度の住宅需要が保たれる可能性も高いでしょう。

近年では、自治体の子育て支援制度や交通の利便性といった住環境をSNSなどで事前に情報収集する人も増えており、「子育て世帯が多く集まる地域」という評判が高まれば、人口増加が期待できるかもしれません。実際に千葉県流山市や茨城県つくば市など、ファミリー層が移住して人気が高まったエリアでは人口増加が続いている地方都市も見られます。

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自治体の補助金や支援制度を活用する

人口減少に悩む地域を中心に、各自治体では住人を呼び込むためのさまざまな補助金や支援制度を用意しています。補助金などが手厚い自治体に住むことで、マイホーム購入の資金面でゆとりが生まれ、家計も楽になるはずです。具体的な事例を下記に表としてまとめておいたので、参考にしてください。

自治体 支援内容 条件 補助上限額
北海道津別町 新築住宅取得補助+子育て加算 床面積80㎡以上・10年以上定住 最大250万円+加算
長野県泰阜村 空き家解体後の新築補助 定住義務あり 最大400万円
広島県呉市 中古住宅購入+新婚・子育て加算 5年以上定住・自治会加入 最大100万円

これら以外にも、多くの自治体で似たような制度を取り扱っているので、住宅購入の予定地がある程度決まったら調べてみるとよいでしょう。なお、補助金や支援制度は年度ごとに利用できる枠や期限が決められており、先着順になっていることも多ため、できるだけ早めのリサーチを心掛けることが大切です。

将来の売却・相続を見据えた流動性を意識する

将来の売却や相続を見据えた流動性は、マイホームを購入する際にできれば考慮しておきたいポイントです。生活環境の変化で自分や子どもが住まなくなったときに賃貸や売却できない住宅は、将来の管理や税金の支払いで困るかもしれません。そのため、住む場所を探す際は、いざというときに「貸せるまたは売れる可能性が高い住宅」を意識するとよいでしょう。

具体的には、「駅まで徒歩圏」「幹線道路沿い」「スーパーや病院、学校などの生活施設が集積している」といったエリアは需要が残りやすく、不動産として活用しやすいです。近年広がりつつある「空き家バンク」への登録や、都市と地方を行き来しながら暮らす「二地域居住」といった活用方法も踏まえ、出口戦略まで視野に入れておくと、より安心です。

二地域居住とは、二地域居住とは、主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点を設けることです。

04人口減少エリアでも“賢い選択”は可能!まずは資金計画を立てよう

人口減少エリアでのマイホーム購入は将来的な過疎化の進行によるインフラの劣化やそれにともなう不動産価格減少などのリスクがあります。一方で、「土地価格が安い」「支援制度が充実している自治体が多い」などのメリットもあり、住むエリアをしっかり見定めることで賢い選択になり得るでしょう。

大切なことはリスクを理解したうえで、補助金や子育て支援制度を活用し、自分のライフプランに沿った住まいを選ぶことです。そのためにも、まずは資金計画を立てることから始め、不安を希望に変える家づくりを実現してみてはいかがでしょうか。当サイト内には、資金計画作成に役立つ「住宅ローンシミュレーター」を各種用意しています。住宅ローンの返済計画はもちろん、老後資金の試算にも活用できるので、ライフプランを検討する際の参考にしてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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