水道料金の値上がりラッシュ、人口減少エリアは要注意!土地の資産価値にも影響か

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今、水道料金が全国的に値上がりしています。まず、全国各地で水道管や浄水設備の更新時期が近づいており、さらに送水に必要となる電気代の高騰が追い打ちとなったことが背景となっているようです。そのため、水道事業の維持を理由にやむを得ず水道料金の値上げに踏み切る自治体が増えているのが現状です。 特に人口減少が著しいエリアは今後もさらなる水道料金の値上げが予想され、土地の資産価値にも影響する可能性も懸念されています。そこで今回は「水道料金」に着目し、水道料金と人口減少の関連性を中心に土地選びにおいて、どんな影響があるかについて解説します。

01水道料金の値上がりラッシュ!全国的に波及

全国的な広がりを見せる水道料金の値上がりラッシュの実情について、見ていきましょう。

岡山県岡山市は2024年度以降、水道料金を平均20.6%値上げする方針を決めました。これは3~4人家庭の平均使用量(40立方メートル)に換算すると、月額5126円から6181円へのアップ、1055円もの値上がりです。

また、神奈川県営水道でも老朽化した水道管の更新をはじめ、大規模地震に備えるための施設整備に約1兆円が必要などの理由で、水道料金の引き上げを来年秋に行う予定とのことです。このように、各地の事業者が値上げに追い込まれている状態が続いています。

他にも2023年4月から宮城県の石巻市、東松島市で29年ぶりに約20%の値上げ、長野県飯田市では2024年度から平均18%の値上げが予定されているほか、青森市弘前市も2025年度から13.9%の値上げを予定しています。

静岡県にいたっては2020年以降、全自治体の4割以上が水道料金の値上げに踏み切っており、これまで何とか料金の据え置きを維持していた浜松市や熱海市でも、今後の水道料金の値上げ方針が示されています。

02なぜ水道料金は値上がりするのか

水道料金が値上がりする大きな理由の1つに、水道事業は各地域単位での独立採算制で運営されている点にあります。

水道の維持管理費用は、地域によってかなりの差があります。地域ごとで水源からの距離、水道の規模、またどれくらいの人口がいるかによっても料金設定が異なります。同じ県内であったとしても、大きな水源から遠いなど立地条件に恵まれない地域は相対的に水道料金が高くなりやすいのです。

例えば千葉県は地理的、地形的要因から水道料金が高い地域として知られます。中でも九十九里地域、南房総地域は水資源が乏しく、水道料金が高い地域です。

猛暑日がない「涼しい街」として話題の勝浦市は、移住希望者が多い人気の自治体であるものの、水道料金の高さでは県内ワースト1位です。立方メートル当たりの水道料金は264.55円で、3~4人家庭の平均消費量(40立方メートル)に換算すると、1カ月の水道代が1万582円となり(平成28年4月1日現在で試算)、県内で一番水道料金が安い八千代市(1立方メートル当たり88.55円)と比べて、3倍近くの差をつけています。

エネルギー価格の高騰、人口減少の影響も大きい

地域ごとで水道維持費に差があることに加えて、老朽化した設備更新費や送水にかかる電気代の高騰も水道料金の値上がりの要因です。特にコロナ禍以降は世界中で燃料や資材の取り合いが起こっていますが、ここへ来てインフレと円安の影響が追い打ちをかけています。

水道事業の維持コストは上がる一方で、事業収入を増やすのは容易ではありません。人口減少エリアだと、「利用者が減る=水道料金の収入が減る」状態となり、足りない分は利用者1世帯当たりの水道料金を引き上げて補うことになります。

人口減少が深刻な水道料金の値上げにつながることを示す代表例が、北海道の夕張市です。夕張市は、2019年時点で全国一水道料金が高い自治体でした。夕張市は2007年に事実上の財政破綻を起こして以降、人口減少に歯止めがかからない状態が続いており、このままのペースだと2043年の総人口減少率は68%と予測されており、水道料金の改定率は323%アップとなる2万8956円まで高騰する予定です。

03人口減少エリアは土地の資産価値が下りやすい

そもそも土地の資産価値は、人が集まりやすいところほど高くなるのがセオリーといえます。人口増加の進むエリアは一般的に、治安や交通の便に優れた「住みやすい街」と評価されるので、その土地に対する需要そのものが高まります。人口増加によって人やモノ、サービスも集まり税収も増えるので、公共サービスの質と量も充実する好循環を生み出せるでしょう。

これに対して人口減少エリアでは税収が減っていくため、公共サービスの質の低下、生活コストの増大によってますます住み心地が悪くなるので、さらなる人口減少に歯止めをかけられない「負のスパイラル」に陥ります。

このように人口の増減は、各エリアの将来性を占う重要な判断材料です。そして水道料金の値上がりは人口減少と密接な関係にあるため、その土地の将来性を見極めるための指標の1つとして注目されています。

人口増加率と土地選びについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事でも解説していますので、ぜひ参考にお読みください。

いま人が集まる街は?「人口増加率」を指標に資産価値が上がるエリアを見つけよう
[ニュース] 2023.08.11

ただし「立地適正化計画」参画の有無によって資産価値の低下が回避されることも

ただし、人口減少エリア全てが将来性を期待できないわけではなく、例外的な地域も存在します。それは、国が進める「立地適正化計画」の参画エリアです。

「立地適正化計画」とは、地方自治体が都市機能を集中させるエリアとそれ以外のエリアを「線引き」し、都市機能を一定エリアに集中させることで生活圏の集約化を図る都市計画です。

「立地適正化計画区域」によって同じ地方であっても、指定区域内外における都市インフラの差が広がると予想されており、この差が不動産の資産評価にも大きく影響すると推測されています。同計画は2016年8月から始まっていますが、参画する自治体は年々増加中です。人口減少のエリアであっても「立地適正化計画区域」であれば高い人口密度が維持されるため、水道料金の爆発的な値上がりが回避される可能性もあるしょう。

土地選びの際には水道料金と人口減少の相関関係だけでなく、立地適正化計画の対象エリアかどうかにも注目してみてください。

なお、「立地適正化計画」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

2025年、立地適正化計画が加速する?家の資産価値に影響も!土地探しの際にチェックしよう
[ニュース] 2023.02.24

04土地選びでは人口が増えるエリア、減るエリアの見極めも大切

土地選びの際は、人口が増えているエリアかどうかを見極めたうえで購入を検討することが大切です。人口増加エリアは単に土地の資産価値だけでなく、交通の利便性や生活のしやすさなど、多くの点で優位な点が存在すると考えられます。実際に人口の増えている地域では、水道料金値上がりの予定がないケースが多いです。

例えば、総務省の住民基本台帳に基づく人口動態調査(2023年1月1日時点)で、人口増加率が最も高かった都市は第1位が千葉県印西市、第2位が千葉県流山市、第3位が茨城県つくば市でした。

この3都市のうち、第2位の千葉県流山市、第3位の茨城県つくば市は今のところ水道料金の改定予定はありません。両都市とも比較的水道料金の高い都道府県にありながら、当面の間は今の状態で水道事業を維持できると判断したようです。

もちろん水道料金の値上がりにはたくさんの要因が絡みますので、水道料金の設定だけで土地の将来性を判断することは難しい面もあります。水道料金の設定は、土地の将来性を見極める判断材料の1つとして今後も注目しておきましょう。生活コストを考えるうえでも役立つはずです。

05物価高騰が続く昨今、家計に負担のない住宅ローン返済を心がけよう

円安と原材料費の高騰によって、新たに家を買う人にとっては判断の難しい時期に入ってしまいました。賃金が思うように上がらないにもかかわらず物価上昇圧力が強い現状では、水道料金の値上がりは家計を直撃する問題です。水道料金の高い地域は人口減少が進んでいる可能性もありますので、土地や家を選ぶ際には候補となる地域ごとに料金設定を比較してみましょう。

これから住宅ローンを借り入れする人は、水道光熱費の高騰などを念頭に入れたうえで、無理のない返済計画を立てておくことが大切です。当サイト内の返済シミュレーションを活用して、夢のマイホームを手に入れる現実的なプランを模索してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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