はじめての住宅ローン
親子で同居したい!けど、ローンが組めない…
「親子リレーローン」とは?2世代にわたって返済するメリット
下澤一人
出版社勤務後、宅地建物取引士の資格を取得し、不動産専門新聞記者、不動産会社勤務を経て現在、編集者・ライターとして活動中。
「将来は親と同居して老後の面倒をみたい」、あるいは「2世帯住宅を購入して子どもの家族と一緒に住みたい」という方にぴったりな「親子リレーローン」について詳しく解説します。
親子などの親族2世代にわたって住宅ローンを返済していく仕組みです。
親子リレーローンは、親子など親族同士で同居するために住宅ローンを組み、将来は親から子へと引き渡す形で2世代にわたり返済していく仕組みです。一般的には、中高年の親と成人した子が融資を受け、始めは親がローンを返済していきます。高齢により親が定年退職した時点で、子が返済を引き継ぎます。
- 中高年の親と成人した子のペアで融資を受ける
- 始めは親がローンを返済していく
-
高齢により親が定年退職した時点で、
子が返済を引き継ぐ
ちなみに親子リレーローンは、新築購入時だけではなくリフォームや住み替え、あるいは借り換えなどの際にも利用できる仕組みです。
「契約者が高齢の場合」や「収入が少なくて住宅ローンが組めない場合」に便利!
住宅ローンは一般的に「80歳までに完済すること」を条件にしています。そのため高齢者の場合には長期のローンが組めません。しかし、親子リレーローンであればこの問題を解決できます。また、収入が少なくて単独では住宅ローンが組めないという場合でも利用できて便利です。
親子リレーローンの主な審査基準は、子の経済状況や返済能力!
親子リレーローンの審査基準については公表されていませんが、基本的な審査項目は一般の住宅ローンと変わりません。一般の住宅ローンの審査では借り手の返済能力について検討が行われますが、親子リレーローンでは特に子の経済状況や返済能力に審査の眼目が置かれます。子は、住宅ローンを返済する親の義務を将来一手に背負うこととなる連帯債務者だからです。そのため、親だけでなく子が車のローンなど他の借り入れ、あるいは滞納履歴などがあると審査に通らないケースもあることに注意しましょう。
同居中もしくは将来、同居を予定している親子であること ・借り入れ時に親の年齢が満70歳未満であること ・最終返済時の子の年齢が満80歳未満であること ・親から返済を引き継ぐ子どもは1人であること ・親子ともに安定した収入があること ・子が団体信用生命保険へ加入すること |
他の要件を満たせば、親の年齢が70歳以上であってもローン融資を受けられる金融機関もあるようです。
ただし、同居の要件についてはどの金融機関も同じではなく、フラット35の親子リレーでは、親子リレー返済の後継者の要件として以下の要件を満たせばいいことになっています。
- 申込者本人の子ども(もしくは孫などの直系卑属)、またはその配偶者で定期的な収入があること
- 申込時の年齢が70歳未満であること
- 連帯債務者であること
必ずしも同居を要件としている金融機関ばかりではないことも知っておきましょう。
また、団体信用生命保険に子のみが加入するのも親子リレーローンの特徴です。この保険は債務者が死亡や重度の身体障害などで返済不能になった場合に、住宅ローンの残債をすべて保険会社が保障するものです。親子リレーローンは、親である主債務者に死亡や重度の身体障害などといった事情が生じた場合に、連帯債務者である子がローンを引き継ぐことが前提となっている契約のため、こうした特徴となっています。
親子リレーローンを利用するメリット
親が高齢でも住宅ローンを組みやすい
多くの金融機関では、住宅ローンの申込条件に年齢制限を設けており、完済時年齢を80歳としています。高齢だと、借入金額に対する毎月の返済額によっては、完済時年齢の要件を満たさないことも考えられます。
しかし、親子リレーローンを利用することにより、後継者である子どもの年齢を基に返済期間を設定できるため、高齢でも住宅ローンが利用できます。また、長期間のローンを組めるということは、それだけ毎月の返済額を抑えられることにもつながります。
親と子の収入を合算できる
親子リレーローンを利用して2世帯住宅を建てる場合、通常の戸建てと比べて延べ床面積が多く必要です。そのため、建築費用が高額になることが考えられます。
そのようなときに親子リレーローンを利用することで、親と子の収入を合算した額で申し込めるため、最終的な借入可能額が大きくなるといったメリットがあります。
年金収入のみでも利用できる
住宅ローンを申し込むには、「安定かつ継続した収入がある」という条件を満たさなければなりません。また、金融機関によっては年金収入だけでは安定した収入とみなさず、申し込めない所もあります。
親子リレーローンでは、年金収入も収入として認められるため、より住宅ローンを利用しやすくなります。
親と子それぞれに住宅ローン控除が適用される
親子リレーローンで住宅ローンを組む際に、持ち分を親と子で分けることで、親と子の両方が住宅ローン控除を受けられます。もちろん住宅ローンの適用を受ける要件を満たす必要がありますが、要件を満たすなら親と子で住宅ローン控除を利用することによる節税効果が期待できます。
親子リレーローンを利用するデメリット
子どもが別の住宅ローンを組めなくなる
親子リレーローンでは、子どもが親の連帯債務者になります。そのため、親が返済している間であっても、子どもは親の返済が困難になったときには親に代わって返済する義務が生じます。
そのため、子どもが転勤などで別の場所に家を買おうとしても、住宅ローンを組めない可能性があります。
贈与や相続に関するトラブルが発生しやすい
親子リレーローンを利用して返済を行なう場合、返済額は住宅の持ち分に応じた額でなければなりません。そのため、親子リレーローンを利用しているにもかかわらず、家の名義を子どもだけにしてしまうと、親から子に対する「みなし贈与」と判断されてしまいます。
また、購入する物件は相続財産となりますので、相続発生時に相続人同士でもめることのないよう、事前に被相続人および相続人同士で話し合っておく必要があります。相続人が複数いる場合は、購入する不動産以外の相続財産を確保しておくなどの対策を取っておきましょう。
子どもの同居が難しくなったときに親の負担が増える
親子リレーローンでは親と子の同居が要件ですが、子どもがまだ結婚していない場合だと、結婚後に配偶者が同居を嫌がり別居する可能性もあります。逆に別居したいけれど、親子リレーローンを組んでいるためそれがかなわないといった問題も考えられます。
親子リレーローンを利用している以上、子どもと別居している場合でも親は住宅ローンの返済を行わなければなりません。
親子リレーローンの利用を考えるなら、将来にわたって同居が確定することを事前にしっかりと確認する必要があります。
親子ペアローンとは、複数の住宅ローンを親族で組むことにより金融機関から融資を受けられる仕組みです。それぞれが単独で住宅ローンを組むだけの返済能力がある場合に、より多額の融資を受けることでより良い物件の購入を目指す方法です。
親子リレーローン
住宅ローン契約数 | 1件 |
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債務者 | 初めは親、後に子が引き継ぐ |
団体信用生命保険 | 子のみが加入 |
住宅ローン控除 | 親子ともに適用 |
親子ペアローン
住宅ローン契約数 | 2件 |
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債務者 | 親子で並行して返済 |
団体信用生命保険 | 親子ともに加入 |
住宅ローン控除 | 親子ともに適用 |
1つの住宅に対して親子それぞれが個別に住宅ローンを組んでいるので、親子ともに団体信用生命保険に加入できます!
親子リレーローンが向いているケース
親がすでに年金生活を送っていたり働いていても収入が低くなっていたりする場合、たとえ相当額の資産があっても住宅ローンにとっては不利に働くケースも珍しくはありません。こうした場合にこそ、親子リレーローンを利用する価値があると言えるでしょう。現役世代で十分な安定収入のある子が住宅ローンの返済の跡継ぎになることで、信用を補強しようというわけです。
親子ペアローンが向いているケース
例えば2世帯住宅を考えた場合に、親子双方の希望に即した、なるべく広く大きな住宅が欲しいと望むようであればこのローンは向いています。親からも経済的な協力を得られるので、単独では金融機関に断られてしまうような融資額でもクリアすることが望めます。
契約時の費用が2件分かかります。
親子ペアローンを利用する際に注意しておきたいことは、親子ともにローンを組むため、契約時の手数料などの費用が2件分になる点です。また、より大きな融資を受けられるからといって無謀な借り入れは避けるべきでしょう。返済中の思いがけない収入事情の悪化などにより、返済危機に陥るリスクもあるため、あくまでも慎重に検討したいものです。
名義変更を行うと贈与税がかかる場合があります。
不動産の登記名義を変えるためには、その理由が必要とされます。理由とは売買・相続・贈与などです。例えば親子リレーローンや親子ペアローンの残債について、親の存命中に親子間のローン割合を変更する場合でも、親子間の贈与と見なされる場合があります。住宅ローンの支払いを親に肩代わりしてもらい、不動産登記は子の単独名義にしたという場合でも、両親が肩代わりした分の金額が、両親から子への贈与と見なされます。
こうした場合に贈与税を回避するためには、親が負担した金額相当の持ち分について、所有権を子から親へ移転する不動産登記を行う必要があります。
こうしたケースについては、金融機関などとよく相談をした上で対応を判断することをお勧めします。
親子リレーローンの場合
前述の通り、最後まで返済に責任を持つ子が団体信用生命保険に加入するのが一般的です。そのため、親が返済を終える前に亡くなった場合には子が残債を引き受けます。
親子ペアローンの場合
親子双方が団体信用生命保険に加入するのが一般的です。もしも返済途中で親が亡くなった場合でも、親の住宅ローンの残債は保険金によって相殺されてゼロになります。ただし、子どもの住宅ローンは別契約のため返済は継続します。
住宅ローンの残債より家の売却金額が大きい場合
親子リレーローンを組んでいたところ親が急に亡くなってしまい、親の支払いも含めた残債の返済に子が窮してしまった場合、どのような解決策が考えられるでしょうか。こうしたケースでは、家の売却を考えるのも一つの方策です。家の売却額でローンの残債を相殺できるかどうかを調べてみましょう。もし、住宅ローンの残債以上の金額で家を売却できそうであれば売却手続を進め、ローンを抹消してしまえばいいのです。
住宅ローンの残債より家の売却金額が小さい場合
家を売っても負債のほうが多そうな場合には、次の方策を模索します。融資をしてもらっている金融機関に相談し、返済スケジュールの変更を含めた条件設定改変の交渉を行うのです。これは一見難しそうにも思えますが、金融機関側でも返済を滞らせたまま不良債権と化すような事態を望んではいません。
交渉に応じてくれる可能性は十分にあります!
また「住宅資金特別条項(通称:住宅ローン特則)」を利用する手もあります。これは住宅ローンの支払いが困難になった人が、自宅を残した状態で「個人再生」つまり借金減額を行うことを目的として、裁判所を通じて債務整理の手続きを進めたい場合に利用できるものです。この手続きを行うと、住宅ローンの支払いが継続できるよう返済スケジュールの見直しができる場合があります。この特則には以下の4つの種類があります。
期限の利益回復型 |
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返済延滞によって金融機関から一括返済を求められた場合に、残った元金と利息分について原則3年(最長5年)の分割払いが認められる |
最終支払期限延長型 |
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ローンの返済期間を10年延ばすという形で、返済期間をリスケジュールする方法 |
元本据え置き型 |
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元本の返済を一部のみ、もしくはゼロにして、利益分だけの返済を行うという方法 |
同意型 |
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金融機関の同意を得て、上記の型以外の特則を定める方法 |
住宅以外の財産が少ない場合や親の残債があった場合はトラブルになりやすいので、誰がどの資産を相続するのかあらかじめ確認しておきましょう!
親子リレーローンでは、親と一緒に住宅ローンを組んでいる子が、基本的にはその家を相続することになります。しかし実際に相続する際、子に兄弟がいたとしましょう。この場合に住宅以外の財産が少ないような時には、相続人間(兄弟間)で相続する財産の金額に大きな差が生じる可能性があります。これが親族間のトラブルを引き起こす可能性も否定できません。
また例えば、子がローンを完済したにもかかわらず名義を親と子で50%ずつとしていた場合など、税制上は親の名義分が相続財産となります。こういう場合にも相続人同士の争いが起きかねません。そのような事態を避けるためにも、親子リレーローンを利用する際には、将来誰がどの資産を相続するのかについて他の相続人にも事前に認識しておいてもらうことが重要です。