競売物件が15年ぶりに増加、今こそ狙い目?マイホーム購入者に広がる選択肢
マイホームの取得方法はハウスメーカーに依頼して新築したり、不動産会社を通して購入したりするだけでなく、競売物件の入札に参加する方法もあります。2024年の競売物件の出品数は前年比で2009年以来、15年ぶりに増加しました。近年、首都圏を中心にマンション価格が高騰していることもあって、今後は「市場価格よりも安く手に入れやすい不動産」として競売物件の人気が高まるかもしれません。ただし、競売物件は一般的な不動産市場で取り引きされる物件とは異なるため、いくつかの注意点があるのも事実です。 そこで、この記事では競売物件の出品数が増えている背景や競売物件をマイホームとして検討する際に注意しておきたいポイントなどを解説していくので、これから住宅探しを始める人は参考にしてください。
01競売物件とは?
近年、競売物件の出品数が増えている背景を説明する前に、まずは競売物件の定義について確認しておきましょう。競売物件とは裁判所が債権回収の一環として市場に出す物件のことで、不動産会社が扱う一般的な不動産取引で売買される物件とは異なります。債権回収として出品される関係上、競売に出される物件はさまざまで、一般的な物件以外の特殊な形状の土地や狭小住宅、市街化調整区域内の物件など、一般市場では流通しにくい不動産が取り引きされることも珍しくありません。
競売物件の一番の特徴は市場価格の70~80%で取り扱われることが多い点(人気のある物件は80%以上になることもある)です。仮に相場が5000万円の物件なら3500万~4000万円ほどで購入できる場合が多いので、少しでも安く不動産を取得したいと考える人にとっては大きな魅力を感じる方法だといえるでしょう。
02住宅ローンの滞納によって自宅が競売にかけられるケースも
先述のように、近年、競売物件は増加傾向にあります。一般社団法人不動産競売流通協会※1によると、2024年の競売物件数は2009年以来15年ぶりに前年比で増加に転じました。また、不動産競売落札情報を取り扱う専門企業「エステートタイムズ」※2によると、東京都の競売物件の申立債権者で最も件数が多かったのは住宅金融支援機構の10.9%で、オリエントコーポレーション、三菱UFJローンビジネス、ジャックス、SMBC信用保証がそれに続くとのことです。
競売物件のこうした内訳を見ると、個人向け住宅ローンの「フラット35」を取り扱っている住宅金融支援機構や、個人向け融資の保証業務を行っているオリコおよびSMBC信用保証といった機関が多いことがわかります。このことから、企業の倒産だけでなく、個人が行う不動産投資やマイホームの購入でローン支払いが滞り、競売にかけられる物件が増えていると推測されます。
特に東京都心では新築マンションの平均価格が一般年収の18倍に到達するなどマンション価格高騰が続いていることもあって、中には無理をして住宅ローンの借入金額を上げてしまい、その結果返済が苦しくなってやむをえず自宅を競売にかけるケースも増えているようです。
03マイホームを購入したい人が競売物件を購入するメリットとリスク
競売物件は一般の不動産市場で取り引きされる物件とは異なるものの、物件そのものに瑕疵があるわけでなければ、取得後にマイホームとして利用しても問題ありません。実際に、競売物件をマイホームとして購入する場合、基本的に住宅ローンの利用も可能です。競売物件をマイホームとして購入するメリットには以下が挙げられます。
▼競売物件をマイホームとして購入するメリット
- 割安で購入可能(市場価格の7割程度で手に入る場合が多い)
- 希少性の高い物件が出回る可能性がある
- 投資用物件としての価値がある
一方、デメリットとしては以下が挙げられます。
▼競売物件をマイホームとして購入するデメリット
- 内覧が難しいため、物件の状態が不明な場合がある
- 瑕疵担保責任がないため、購入後の修繕が自己負担になる
- 現入居者の立ち退き交渉が必要なケースがある
- 情報収集が必要で入札手続きなどの手間もかかる
競売物件は市場価格よりも安く手に入れやすい反面、物件の状態や入居者の状況などを自分で確認しなければいけない点がデメリットです。必要によっては、落札後に現入居者との交渉を自分で行わなければならず、交渉が上手くいかないことも考えたうえで入札に参加する心構えが大切になります。不動産会社を通して購入する一般的な不動産取引よりも自己責任となる部分が大きいことは理解しておきましょう。
競売物件を選ぶべきかの判断基準
競売物件にはメリットだけでなく、デメリットもあるのでマイホームとしての用途を考えているときに、向いている人とそうでない人がいます。まず、競売物件をマイホームの選択肢の1つとするのに向いているのは、以下のような人です。
- 自身で調査やリスク管理ができる人
- 資金に余裕があり、修繕やトラブル対応も見込んでいる人
競売物件は自分で情報収集をしなければならないため、それができる時間的な余裕がある人でないと、入札後にトラブルに巻き込まれる可能性が高いです。また、物件はそのままの状態で引き渡されるため、後から修繕の必要性に気が付いたときでも対応できるだけの資金的余裕がある人のほうがよいでしょう。
一方で、「初めての住宅購入で手続きを慎重に進めたい人」や「物件の状態や取引手続きの透明性を重視する人」は一般的な不動産取引を選んだほうが無難です。競売物件は市場価格よりも安く手に入れられるとはいえ、高額な買い物であることに変わりはないので、少しでも購入にかかるリスクを減らしたい人にはあまり向いていません。
04競売特有のリスクを理解し、しっかりと準備を整えよう
2024年の競売物件数はリーマンショックのあった2009年以来、15年ぶりに前年比で増加しました。日本銀行による利上げによって住宅ローン金利の上昇が懸念される状況においては、個人の住宅ローン返済が厳しくなることが予想されるため、今後も競売物件が増えるかもしれません。競売物件特有のリスクに注意する必要はあるものの、少しでも割安に理想のマイホームを手に入れたいと考える人は、まず自分の予算をしっかり確認したうえで情報収集してみてはいかがでしょうか。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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