住宅ローンの変動金利がどのくらい上がると未払い利息が発生する?分岐点を把握しよう

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日本銀行(以下、日銀)は2022年12月19~20日にかけて開いた金融政策決定会合で、長期金利の変動許容幅をこれまでの0.25%から0.5%に拡大する方針を決めました。その影響を受けて、住宅ローンの固定金利はすでに上昇が始まっています。一方で、住宅ローンの変動金利については今のところ大きな動きはありません。 とはいえ、変動金利で住宅ローンを組んでいる人は、今後急激な金利上昇が起きた際、利息が返済額を上回ることによって起きる「未払い利息」の発生には気を付けておいたほうがよいでしょう。未払い利息には発生する分岐点があり、事前にシミュレーションしておくことが可能です。そこで、この記事では変動金利で住宅ローンを借り入れしている人に向けて、「金利が何%になったら未払い利息が発生するのか」や「未払い利息が発生する分岐点の計算方法」を解説します。

01変動金利の住宅ローン、リスクの1つ「未払い利息の発生」

まず、未払い利息が発生する理由についておさらいしましょう。未払い利息の発生原因は変動金利の住宅ローンの仕組みと深く関係しています。変動金利の住宅ローンは「金利の見直しは6カ月ごと」「元利均等返済における毎月の返済額の見直しは5年ごと(5年ルール)」が一般的です。

また、5年ごとに毎月の返済額を見直しする際は、1.25倍が上限として定められている「125%ルール」があります。例えば、3500万円の住宅ローンを元利均等返済方式で変動金利0.6%、借入期間35年という条件で借り入れしていた場合で、仮に金利が2倍の1.2%になると毎月の返済額は以下のようになります。

  • 変動金利0.6%…毎月の返済額9万3000円(利息1万8000円+元金7万5000円)
  • 変動金利1.2%…毎月の返済額9万3000円(利息3万6000円+元金5万7000円)

元利均等返済方式では仮に金利が2倍になったとしても、見直しがかかる5年ごとでなければ毎月の返済額が変わることはありません。ただし、金利が上昇すると毎月の返済額のうち、支払っている利息の割合が増えていることがわかるでしょう。短期間に極端な金利上昇が起こった場合は、利息の支払い割合が増えてやがて毎月の返済額を上回る可能性があり、その超えた部分を「未払い利息」と呼びます。

今回、日銀は大幅な金融緩和策の修正によって長期金利の変動幅の上限を0.5%に引き上げました。それによって長期金利に連動する住宅ローンの固定金利は上昇しています。現在のところ、日銀の金融緩和策の修正が住宅ローンの変動金利に直ちに影響することはないといわれていますが、住宅ローン契約者のうち変動金利を選んでいる人は約7割と圧倒的です。今後はこれまで日本の住宅市場を支えてきた超低金利時代が終わり、金利上昇によって返済額が増えるだけではなく、未払い利息が発生する人が出てくることも懸念されています。

なお、変動金利の最新動向や金利変動時のリスクをより詳しく知りたい方はそれぞれ下記のページを参照してみてください。

変動金利の最新動向を知りたい方

金利変動時のリスクをより知りたい方

02未払い利息が発生する分岐点を計算してみよう

未払い利息は一度発生すると、通常の返済とは別に支払わないと返済終了時までどんどん溜まってしまいます。最悪のケースでは通常の返済が終わったあとでも未払い利息分だけを返済し続けなくてはいけない場合もあるので、未払い利息が発生する状況を絶対に避けるためにも早めの対処が大切です。実は未払い利息が発生する金利水準を、事前に把握することはそれほど難しくありません。

未払い利息が発生する金利水準を把握するための計算式は「毎月の返済額÷現在のローン残高×12カ月×100」です。例えば、現在のローン残高3500万円、変動金利0.9%、毎月の返済額10万円という条件で計算してみると、未払い利息の分岐点は3.428%=10万円÷3500万円×12カ月×100であることがわかります。つまり、このケースでは金利が3.428%まで上昇すると未払い利息が発生するということです。変動金利の住宅ローンを組んでいる人は、自分の借り入れ条件を計算式に当てはめてチェックしてみてください。

03変動金利が上昇したら繰り上げ返済の検討を!

未払い利息は変動金利で住宅ローンを組んでいる際の不安要素の1つではあるものの、あらかじめ分岐点を把握しておくことで、その不安感を軽減できます。ただし、仮に未払い利息が発生しなかったとしても、契約期間中に金利が上昇すると利息の返済額が増える分、元本部分の返済額が減る事実に変わりはありません。その結果、5年ごとの見直しの際に毎月の返済額が増える可能性は高まります。

住宅ローンの変動金利を組んでいて今後も金利の上昇傾向が続くと考える場合は、固定金利の住宅ローンへの借り換えを検討するのも1つの選択肢です。とはいえ、住宅ローンの金利は基本的に変動金利よりも固定金利のほうが先に上昇するので、変動金利が上昇した段階で検討するとかなり高い金利で契約するしかない状況も考えられます。また、住宅ローンの借り換えには一般的に30万~100万円ほどの手数料や諸費用がかかることも忘れてはいけません。

変動金利で金利が上昇したときの対処法について知りたい方

そのため、利上げが行われた場合に最も有効な手段といえるのは、「繰り上げ返済」になります。特に借入金額が多かったり、金利が高かったりするケースでは繰り上げ返済をする時期が早ければ早いほど返済負担を軽減しやすいです。繰り上げ返済には「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つのタイプがあり、利息軽減効果は返済期間短縮型のほうが大きくなります。ただし住宅ローン控除を利用している場合は、ローン残高が減ることで受けられる控除額が少なくなる恐れがあるので、繰り上げ返済をした場合にどのくらい返済額が減らせるかをシミュレーションしたうえで、お得になる方を選ぶようにしてください。

繰り上げ返済について知りたい方

04未払い利息が発生する分岐点と合わせて、金利の違いで毎月の支払額がどのくらい変わるかシミュレーションしておこう

今回紹介したように、変動金利で住宅ローンを組んでいる人は短期間で極端な金利上昇が起こると未払い利息が発生する恐れがあります。ただし、発生する分岐点は事前に把握できるので、まずは慌てずに計算してみることが大切です。その結果、未払い利息が発生する金利まであまり余裕がない場合は、繰り上げ返済できるように家計をやりくりするなどの対策を考えましょう。

その計算をする際は、金利の違いで毎月の支払い額がどのくらい変わるかをチェックしておくことをおすすめします。サイト内にある「毎月の返済額シミュレーター」では、金利の違いで毎月の返済額がどのくらい変わるかを簡単に計算できるうえ、金利ランキングの一番低い金利との比較もできるので便利です。総支払額を確認しながらベストな金融機関を探すのに役立つシミュレーターなので、ぜひ試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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