住宅ローンの支払い遅延、約10人に1人が経験あり!あなたは大丈夫?

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住宅ローンを組むにあたっては、誰もが無理のない返済計画を立てようとするでしょう。しかし、計画作成時に予期していなかった突発的なトラブルによって返済が滞る可能性は、誰にでもあるものです。実際に一般社団法人住宅ローン問題解決支援機構が行った「住宅ローンの支払い遅延に関する調査(2022年)」によると、住宅ローンの支払いが1日でも遅れた経験がある人は、全体の9.3%でした。つまり住宅ローン利用者のうち、およそ10人に1人は支払い遅延の経験があるということです。 もしも住宅ローンの支払い遅延が発生したらどうやって対処すればいいのでしょうか。この記事では、住宅ローンの支払い遅延が発生したときの対処法と、支払い遅延を発生させないために気を付けるべきポイントについて解説します。

01住宅ローンの支払い遅延の主な理由は「収入減」!約6割も

一般社団法人住宅ローン問題解決支援機構が行った「住宅ローンの支払い遅延に関する調査(2022年)」では、住宅ローンの支払いが1日でも遅れた経験があると答えた人は、全体の9.3%でした。その内訳をもう少し詳しく見てみましょう。遅延が発生した理由は、下記の通りとなっています。

  • 第1位:収入減 63.0%
  • 第2位:残高不足・うっかり 11.0%
  • 第3位:教育費の拡大 5.5%
  • 第4位:家族の浪費 4.8%
  • 第5位:精神疾患 4.1%

その他:その他(病気、事故、ギャンブル、離婚など)

出典:一般社団法人住宅ローン問題解決支援機構「住宅ローンの支払い遅延に関する調査(2022年):みんなの遅延期間は?対処法は?」

回答が最も多かった収入減の内訳は、会社の残業規制による「残業代の減少」と「業績低迷によるボーナスの減少やカット」がともに31.5%を占めています。近年、官民を挙げて取り組んでいる働き方改革やコロナ禍など、さまざまな影響によって得られる給与収入が減り、住宅ローンの支払いが滞ってしまうケースがあるようです。

また、第2位になったのは、口座の残高不足などが該当するうっかりミスでした。こちらは返済計画が狂ったわけではないものの、何度も繰り返すと金融機関の心証が悪くなってしまう恐れがあるので、極力避ける努力をしたほうがよいでしょう。最近では残高不足で引落ができなくなりそうなときにアプリ上で通知してくれるサービスなど、以前に比べるとうっかりミスでの支払い遅延が起きにくい仕組みも登場しています。支払い遅延をしたことがある人の内、10%以上の人がうっかりミスを経験しているので、これから住宅ローンを組む予定の人は、何らかの対策をしておくことをおすすめします。

なお、同調査では支払い遅延が解消するまでの期間についても調べており、約70%の人が「1カ月~1カ月未満」でした。長い人でも、3カ月以内にほとんどの人の支払い遅延が解消しています。一般的に1カ月支払いが遅れると金融機関から請求書が届くので、その時点で遅延に気づいて支払う人が多いようです。ただし、支払い遅延がその後も続くと2カ月目には請求書に加えて催促の電話がかかってくるようになり、3カ月を超えると差し押さえを示唆する内容の催告書が届く恐れもあります。万が一、住宅ローンの遅延に気が付いたら、どのように対処すればいいのでしょうか。

02住宅ローンの支払い遅延に気づいたら、どう対処すべき?

もしも支払い遅延が発生してしまったら、まずは住宅ローンを組んでいる金融機関に連絡し、すぐに返済しましょう。先述の調査によると、支払い遅延を解消した方法として最も多い回答は「親族からの借り入れ」でした。何らかの理由で収入が減少してしまったときに十分な貯蓄があれば、そこから拠出できるかもしれません。しかし貯蓄が十分にないうえ、病気やけが、離職などが原因で働けなくなった場合は、先行き不透明ですぐにお金を用意することが難しい場合もあるでしょう。そのようなときは親族にお金を借りて、とりあえず返済している人が多いようです。

通常、住宅ローンの支払い遅延は1~2回程度発生しても、すぐに金融機関に連絡して返済すれば大きな問題になることはありません。しかし、あまりにも頻繁に繰り返すようだと、金融機関からの信頼を失い、住宅ローンの一括返済を求められる可能性もあります。具体的な対応は金融機関によって異なるものの、一般的に支払い遅延が3カ月以上続くと催告書が届き、「期限の利益の喪失」、つまり住宅ローン利用者が月々分割で返済する権利を失ってしまいます。

そのような事態に陥らないために、遅くとも支払い遅延から2~3カ月が経過した時点で送られることの多い、催告書が届いた時点ですぐに返済することが大切です。ただし、その際の返済額は通常、支払わなければいけなかった金額に加えて、遅延損害金が加算されています。遅延損害金の利率は年利14%前後であることが多く、1日単位で計算されるため、できるだけ早く支払ったほうが家計に与えるダメージは少ないです。また、住宅ローンの支払い遅延が3カ月(61日)以上続くと、個人信用情報機関に金融事故情報が登録される可能性が高くなります。これは、いわゆるブラックリストに載ることを意味していて、その後は新しいクレジットカードの作成やほかのローンの借り入れが制限される恐れがあるので、気を付けてください。

もし3カ月(61日)以内に住宅ローンの支払い遅延が解消できなかったらどうなる?

住宅ローンの支払い遅延が3カ月(61日)以上にわたって続くと、代位弁済の予告通知が届くことがあります。代位弁済とは銀行から保証会社に債権が移ることを指し、そのまま放置するとローン残高の一括請求を通告される可能性があります。仮に一括返済ができない場合は裁判所に競売が申し立てられ、最終的に住宅を明け渡さなくてはいけません。しかし、どちらにせよ住宅を失うのであれば、競売にかけられる前に任意売却するのも選択肢の1つとして覚えておきましょう。

任意売却とは不動産会社などに依頼して、自ら自宅を売却する行為のことです。一般的に競売は市場価格の5~6割程度で取引されていますが、任意売却なら市場価格の8~9割程度で売れるケースも多く、住宅ローンの返済に回せるお金がそれだけ増える可能性があります。

住宅ローンの返済が厳しいかも!と思ったらすぐに金融機関に相談しよう

住宅ローンの支払い遅延が起こったら、すぐに金融機関へ相談することは重要です。しかし、返済が苦しいことが事前にわかっている場合は、遅延する前に相談したほうが金融機関の心証はよくなり、その結果として現在組んでいる住宅ローンの借り入れ条件を見直して月々の支払額を少なくする「リスケジュール(通称:リスケ)」の相談にも親身になってくれることがあります。

あくまでも金融機関側が新しい条件に納得することが前提ですが、リスケが受け入れられれば、返済期間の延長や元金据え置き期間の設定ができ、一時的にでも支払いが楽になるはずです。金融機関側も支払い遅延が続いて物件が競売にかけられるよりも、多少時期が遅れても契約者に返済してもらえるほうがありがたいと考えるケースも少なくありません。やむを得ぬ事情で支払い遅延が起こりそうな場合は、とりあえず金融機関に相談しましょう。

03住宅ローンの支払い遅延を発生させないために、借り入れする前に気を付けるべきこと

住宅ローンの支払い遅延を起こさないために気を付けるべきことは、やはり「無理のない返済計画を立ててから契約すること」です。先述の調査の「住宅ローンに関して後悔していること」という質問では、第1位「毎月の返済額」、第2位「ボーナス払いの利用」、第3位「ローン全体の借入額」でした。一般的に無理がない範囲の月々の返済額は手取り月収の20%以内が目安だといわれています。中には年収ベースで計算してしまう人もいますが、実際の支払いは手取り額から行うことになるので、給与から税金などを差し引いた可処分所得をベースに考えるほうがよいでしょう。

また、支払い遅延をできるだけ防ぐという観点からは、夫婦の収入を合算して審査するタイプの住宅ローンには注意が必要です。こうしたタイプの住宅ローンは世帯主1人で契約するよりも借入金額が大きくなり、希望する物件が購入しやすいというメリットがあります。その反面、返済は夫婦2人が働き続けることが前提になっているので、どちらかが体調を崩したり、介護離職したりして収入が減少すると返済が困難になる恐れがあります。

住宅ローンを組む年齢にもよりますが、これから子育てをする予定の20~30代の夫婦は特に出産や育児で一時的に収入が減る可能性があるので、借りる金額は「借り入れできる金額ではなく、返済できる金額」であることをしっかり理解しておくことが大切です。そのためには、夫婦共働きがずっと続くことや将来的な給与アップを見込んで返済計画を立てることは避けたほうが無難です。あくまでも、現時点で無理のない範囲で支払い額を設定することを心掛けましょう。

一方で、40~50代で住宅ローンを組む予定の人は、返済が老後まで続くことも視野に入れておかなければいけません。そのため、退職後の収入減を想定した資金計画を立てましょう。まとまった金額の退職金が受け取れそうな場合は、住宅ローン控除の適用が終わったタイミングでの繰り上げ返済も計画に入れておくとよいです。また、年齢が上がるにつれて病気などの健康リスクが高くなってしまうので、住宅ローンを組む際には団信の保障内容も吟味し、万が一にしっかり備えておくことも忘れないでください。

04サイト内の「毎月の返済額シミュレーター」で物件の支払いイメージをつかんでみよう!

人間誰しもミスはあるものです。うっかりしていて住宅ローンの支払いが遅れてしまうこともあるかもしれません。支払い遅延が発生すると金融機関の心証は悪くなるので、できるだけそのようなことが起こらないように気を付けましょう。一方で、個人ではどうしようもできない、予期せぬ収入減によって住宅ローンの支払いが厳しくなるリスクが誰にでもあるのも事実です。万が一に備えて、住宅ローンの借り入れをする際は手元に3~6カ月程度の生活費を現金で残しておくほうがよいといわれています。

とはいうものの、住宅ローンの支払いが始まったら、どれくらい毎月の生活費に負担がかかるかをなかなかイメージできない人もいるのではないでしょうか。そこでおすすめするのが、当サイト内にある「毎月の返済額シミュレーター」です。毎月の返済額シミュレーターでは、「借入希望額」「返済期間」「ボーナス返済の有無と金額」「金利」の4項目を入力するだけで、毎月どれくらいの返済額になるかがすぐにわかります。これから住宅購入を考えている方は、シミュレーターを活用して具体的な返済イメージをつかんでみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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