相場よりも低価格、固定資産税が不要⁉定期借地権付き分譲マンションが大幅に増加!そのメリットと注意点は?

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定期借地権付き分譲マンションの供給が増えています。一般的な物件に比べて価格が安いと言われる定期借地権付き分譲マンションですが、そもそも定期借地権分譲マンションとはどんなものなのでしょうか。そのメリットや購入にあたって注意すべき点についても確認しておきましょう。

01定期借地権付き分譲マンションが大幅増加

公益財団法人日本住宅総合センターが毎年行っている「定期借地権事例調査」(※1)によると、2020年度中に発売された定期借地権付き分譲マンションは1014戸と、前年度の436戸を大きく上回り、3年ぶりに1000戸を越えました。都道府県別に見ると、最も販売戸数が多かったのは東京都で559戸、次いで兵庫県152戸、沖縄県80戸と続きました。

都道府県別・定期借地権付き分譲マンションの販売戸数

都道府県 戸数
東京都 559戸
兵庫県 152戸
沖縄県 80戸
大阪府 53戸
神奈川県 52戸
埼玉県 49戸
愛知県 26戸
奈良県 23戸
滋賀県 20戸
1014戸

また、2020年度に発売された定期借地権付き分譲マンションの専有面積は平均80.88平方メートルであり、前年度が平均93.41平方メートル、前々年度は平均94.62 平方メートルであったことを鑑みると、小規模物件の占める割合が年々増えていることが見て取れます。

※1 出典:公益財団法人日本住宅総合センター「2020年度定期借地権事例調査」図5、表4-6

定期借地権とは?

ここで改めて定期借地権について、おさらいしておきましょう。

定期借地権とは、1992年に制定された「借地借家法」で定められた借地権の1つで、期間限定の借地権のことです。定期借地権には「一般定期借地権」、「事業用定期借地権」、「建物譲渡特約付き定期借地権」の3つがありますが、マンションで利用されるのはほとんどが「一般定期借地権」です。

一般定期借地権は借地期間を50年以上とすることを条件に、更新による延長や建物の買い取り請求権はなく、契約期間が終了すると土地は更地の状態で地主に返還されることになります。

普通借地権との違いを以下にまとめました。

一般定期借地権と普通借地権の違い

借地権の種類 契約期間 契約方法 契約終了時の建物
一般定期借地権 50年以上 公正証書等の書面で行う ※以下の特約を書面で約定する必要あり
・契約の更新はしない
・契約期間の延長はしない
・建物の買い取り請求はしない
原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する
普通借地権 30年以上 制約なし。口頭でも可 ・借地人に建物買い取り請求権がある
・買い取り請求権が行使されれば建物はそのままで土地を明け渡す。借家関係は継続される

※国土交通省「定期借地権の解説」をもとに作成

大和ハウスが住宅用借地権付きの土地を取得、その背景は?

定期借地権付きの不動産というと住宅などの建物のイメージが強いですが、定期借地権は土地に付けられることもあります。定期借地権付き土地は、期限付きで土地を借りる権利が付いた土地のことで、借地人は契約期間中その土地の上に自己所有の建物を建てることができます。建物の場合と同じく、契約期間は50年以上、契約の更新や契約期間の延長はなく、契約期間終了後は自己所有の建物を解体して更地の状態で返還することになります。

この定期借地権付き土地を土地の有効活用に使うという動きもあります。2021年6月に大和ハウス工業が、都市再生機構から全国11カ所の一戸建て住宅622戸分の定期借地権付き土地を約60億円で購入したことを発表し話題を呼びました。大和ハウスが購入した定期借地権付き土地にはすでに借地人所有の住宅が建っており、同社は622区画分の地代収入を得られることになりますが、狙いはそれだけではありません。

同社は新築住宅市場の縮小を見据え、2018年から不動産ストック事業に取り組んでおり、今回取得した定期借地権付き土地の借地人である住宅オーナーを対象に事業の拡大を目指しています。家族構成の変化や設備などが老朽化した住宅オーナーにリフォームを提案、相続が発生したオーナーには売却や住み替えの提案を行うなど、大和ハウスグループが連携してワンストップサービスを提供する予定です。同社では、定期借地権付きの土地を有効活用することで、中古住宅に長く住み継げる環境を整え、不動産ストックの維持・拡大に取り組む姿勢を示しています。

02定期借地権付き住宅のメリットとデメリット

普通借地権付きの住宅とは異なる、定期借地権付き住宅ならではのメリットやデメリットを見ていきましょう。

定期借地権付き住宅のメリット

定期借地権付き住宅には借主の側にも以下のようなメリットがあります。

購入価格が安い

定期借地権付きの住宅は、一般的な所有権付きの住宅に比べて価格が安く設定されており、一般的にマンションの場合は所有権付きの場合の約8割、一戸建ての場合は約6割の価格で売買されることが多いようです。

土地にかかる税金を負担しなくても良い

定期借地権付き建物を購入した場合、所有権が生じるのは建物部分のみであり、土地の所有者は地主のままです。したがって、土地にかかる固定資産税や都市計画税は地主側の負担となるため、借地人である建物の購入者が納める必要はありません。

立地が良いケースが多い

定期借地権付きの分譲マンションは、土地の所有者が駅前の一等地など、売却することに抵抗感があり、定期借地権付き分譲マンションなら土地を手放すことはないという理由で建設されることがあるため、希少性の高い物件が多くなっています。

定期借地権付き住宅のデメリット

一方、定期借地権付きの建物の購入には、次のようなデメリットがあります。

地代が発生する

定期借地権付きの建物を購入した場合、契約期間中は建物が建つ土地の地主に月々の地代を支払わねばなりません。

最終的に土地を返還せねばならない

契約期間が終了した後は建物を解体し、更地にした状態で土地を地主に返還しなくてはならず、解体費用は借地人の負担となります。また、建物を解体するため、当然そこに住み続けることはできず、財産として子や孫に相続することもできません。

住宅ローンが組みづらい

契約の残存期間が短い物件の場合、住宅ローンの審査が通りにくい場合があります。また審査に通った場合も、契約の残存期間内にローンの返済を終えることが条件となることがあります。

一般的な物件に比べて割安感がある定期借地権付き分譲マンションですが、契約期間中しか住み続けられないこと、地代や建物解体費用を借地人が負担しなければならないことを考えると、必ずしも「お得」とは言い切れません。また、契約期間終了時点の年齢が高齢になる場合は、新しい住まいへの転居が体力的にも経済的にも大きな負担となることが予想されます。購入する際には、目先の価格の安さに惑わされず、メリット・デメリットを十分に比較検討した上で判断するようにしてください。

03「住宅購入予算シミュレーター」と「スゴ速」で予算や借入可能額を確認

住宅ローンを利用した住宅の取得を検討されている方には、さまざまなライフイベントも加味して無理のない住宅購入予算がわかる、便利な「住宅購入予算シミュレーター」がおすすめです。利用してみてはいかがでしょうか?

また、購入する物件や時期が決まっていなくても、必要事項を入力するだけで、借入可能額が最短わずか15分で確認できる便利なサービス、「スゴ速」もあわせて利用してみてください。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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