世帯年収1000万円で住宅ローンはいくら借りられる?ペアローンの注意点も解説

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世帯年収1000万円というと、世間的には高収入といわれる部類に入ります。しかし、いくら高収入だといっても住宅を購入するときは、ほとんどの人が住宅ローンを利用しています。初めて住宅ローンを利用する方の中には、「どれくらいの資金を借りられるのか」や「自分に適した金利タイプ」について知りたい方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、世帯年収1000万円の借入可能額や家計に無理のない範囲で返済できる金額の目安を、具体的なシミュレーションをもとに紹介していきます。

01世帯年収1000万円で住宅ローンはいくら借り入れできる?

住宅ローンの利用を検討しているときにまず気になるのが「どれくらい借りられるか」や、「毎月いくらくらいまでなら無理なく返済できるか」でしょう。それらの金額を客観的に判断するための指標として「年収倍率」「返済負担率(返済比率)」があります。

どれくらい借りられるかを考える際の目安になるのが「年収倍率」で、どれくらいの返済額なら家計に負担をかけないかを把握するための指標が「返済負担率(返済比率)」です。ではまず、「年収倍率」をもとに、世帯年収1000万円の方が住宅ローンを利用する場合の借入可能額を試算してみましょう。

標準的な年収倍率から見た借入可能額は5000万~6000万円

年収倍率とは「購入する予定の住宅価格が年収の何倍にあたるか」を示す指標で、金融機関が住宅ローンの審査をする際に融資可能額を判断する基準としても用いられています。一般的に5~6倍までが標準的な年収倍率であるといわれていることから、年収1000万円世帯の場合であれば5000万~6000万円が借入可能額の目安になるといえるでしょう。

ただし、年収倍率をもとにした審査基準は各金融機関によって異なるため、なかには8倍でも審査に通ることがあります。つまり、年収1000万円世帯であれば8000万円程度の融資までなら受けられる可能性がありますが、上限近くまで借りるとその分毎月の返済負担が重くなる点には注意しなければいけません。

また、年収倍率の目安は購入する住宅の種類によって異なる点も覚えておきましょう。国土交通省「令和2年度 住宅市場動向調査 ~調査結果の概要(抜粋)~」によると、三大都市圏の住宅タイプ別の年収倍率は既存戸建住宅(いわゆる中古住宅)で3.81倍、既存マンション(中古マンション)で3.29倍なのに対して、注文住宅は6.67倍、分譲戸建住宅は5.31倍です。中古住宅より注文住宅や分譲戸建住宅の年収倍率が高いのは、もともとの販売価格が高く、その分だけ多額の住宅ローンを組まなければいけないことが影響していると考えられます。

なお、これらの住宅タイプのなかで最も平均購入代金が高い注文住宅は5359万円です。世帯年収1000万円だと、住宅購入費が高くなりがちな注文住宅でも借入可能額の範囲内で購入できることがわかります。ただし、6000万円以上の住宅を購入する場合は、できる限り頭金を入れて借入金額を抑えるようにしましょう。

無理なく返せるのは月々13万~16万円の範囲

手取り年収に対する年間の返済額の割合のことを「返済負担率」と呼び、月々の返済額がどれほど家計に負担を及ぼしているかを判断する指標として知られています。一般的に返済負担率は20~25%の範囲内が適正で、30%を超えると返済が滞るリスクは高くなります。

たとえば、年収1000万円(都内在住、40歳未満、扶養なし)の方の場合、手取り年収は約790万円です。月収換算では約66万円となり、毎月の返済額が13万2000円で返済負担率20%、16万5000円で返済負担率25%になります。

仮に毎月13万円を返済する住宅ローン(変動金利0.375%、返済期間35年、ボーナス返済なし)を組んだ場合の総返済額は5459万円です。同じ条件で毎月17万円の返済をする住宅ローンを契約すると総返済額は7139万円となり、適正な借入金額の範囲を超えてしまいます。毎月17万円の支払いになる場合、住宅購入費の1~2割程度の頭金を用意して、借入金額を抑える必要があるでしょう。

なお、返済負担率を計算するときは、住宅ローン以外のローンも含めて考えるのが基本です。たとえば、カードローンや自動車ローン、教育ローンの借り入れが残っている方はそれらの返済額も含めた金額で計算しましょう。さらに、6000万円程度の住宅を購入する際は、登記費用や住宅ローンの事務取扱手数料などの諸費用だけで住宅本体の購入費とは別に180万円以上かかることも忘れてはいけません。年収倍率や返済負担率を抑えるためにも、そうした諸費用はできるだけ現金で用意することを心掛けておくとよいです。

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02夫婦で住宅ローンを組むときに注意したいこと

世帯年収1000万円の家庭は一般的に高収入の部類に入りますが、共働きの場合は夫婦2人で住宅ローンを組まないと、希望する借入金額の審査に通らない場合もあるでしょう。夫婦2人で組む住宅ローンの種類には「ペアローン」と収入合算の「連帯債務型」および「連帯保証型」の3つがあります。ここではそれぞれの住宅ローンタイプの詳細について解説していきます。

ペアローン

ペアローンは購入する1つの住宅に対して、夫婦それぞれが契約する住宅ローンです。1つの住宅に対して住宅ローンを2本組む形になり、お互いが相手の住宅ローンの連帯保証人となります。ペアローンにおけるメリットは、どちらか1人だけで住宅ローンを組むよりも借入可能額が増やせる点と、夫婦2人に住宅ローン控除が適用される点です。

特に住宅ローン控除は1人につき毎年40万円(年末時点でのローン残高の1割)までしか控除を受けられません。つまり、シングルローンで4000万円以上を借りる予定の方は、ペアローンにしてそれぞれで申請するほうが最大で80万円の控除が受けられるためお得です。さらに、契約者に万が一のことがあった場合に備えられる団体信用生命保険(団信)にも夫婦で加入できます。

一方、ペアローンのデメリットとしては、住宅ローンが2本分になるため契約にかかる諸費用も2本分必要になる点です。また、育児や親の介護などで夫婦のどちらかが退職を余儀なくされた場合でも月々の返済額は変わらない点や、退職後は所得税の支払いがなくなることから住宅ローン控除を受けられなくなってしまう点にも気を付けましょう。

収入合算の連帯債務型

収入合算の連帯債務型とは夫婦2人の収入を合算したうえで、契約者とその配偶者が連名で1本の契約をする住宅ローンです。たとえば、夫が主たる住宅ローンの契約者となった場合、配偶者である妻は連帯債務者として契約者と同様に全額の債務を負う形になります。後述する連帯保証型と違って、夫婦2人ともに最初から借入金額を返済する義務があるのが特徴です。

連帯債務型のメリットは、住宅ローンの契約が1本であるため諸費用も1本分だけで済む点や、シングルローンよりも借入可能額が増やせる点です。また、住宅ローン控除は夫婦2人分で申請することが可能なので、どちらか1人で住宅ローンを契約するよりも多くの控除額を受けられることがあります。

一方、デメリットとして連帯債務型の住宅ローンを取り扱っている金融機関が少ない点が挙げられます。さらに、「どちらかが退職しても月々の返済額が変わらない」点や、「退職した人は住宅ローン控除の適用が受けられなくなってしまう」点はペアローンと同様なので気を付けましょう。

収入合算の連帯保証型

同じ収入合算の住宅ローンでも連帯保証型は契約者が1人なのが特徴です。たとえば、夫が契約者となったとき、妻は連帯保証人という立場になります。そのため、妻は原則的に契約者である夫の返済が滞った場合に限り、返済能力のあるなしに関わらず返済義務を負う点が連帯債務型との違いです。

連帯保証型のメリットとしては、連帯債務型と同じく「シングルローンに比べて借入可能額を増やしやすい」点や、「諸費用が1本分だけで済む」点が挙げられます。また、連帯債務型と比べて連帯保証型のほうが取り扱っている金融機関が多い点も魅力でしょう。

そうしたメリットがある反面、連帯保証型には「契約者しか住宅ローン控除が受けられない」というデメリットがあります。そのため、連帯保証人が共働きの妻などで所得税を支払っている場合でも、住宅ローン控除2人分の節税効果は受けられません。また、連帯保証人は団信に加入することもできないので、万が一のことを考えると別途民間の生命保険に加入したほうがよいケースもあることは覚えておきましょう。

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03頭金はいくら準備すればいい?

年収倍率や返済負担率を抑え、無理のない返済をするために有効なのが頭金を準備することです。頭金は一般的に住宅購入代金の1~2割程度がよいとされているので、仮に6000万円の住宅を購入する予定なら、600万~1200万円程度を準備しておくとよいでしょう。

ただし、国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査 報告書」によると、実際にはそれよりも少し多めの資金を準備している人が多いことが分かります。同調査では、土地購入資金を除いた注文住宅の住宅建築資金は全国平均で3935万円、三大都市圏平均で4504万円でした。このうち、自己資金はそれぞれ1177万円(自己資金比率29.9%)と1467万円(自己資金比率32.6%)で、おおよそ3割程度の頭金を準備している人が多いという結果になっています。

この調査結果を6000万円の住宅を購入したケースに当てはめると、全国平均の28%で1680万円、三大都市圏平均の35%で2100万円もの自己資金が必要になる計算です。頭金を入れると総返済額が減る以外にも毎月の支払いが減ることで貯蓄する余裕ができ、繰り上げ返済をしやすくなるメリットがあります。ただし、頭金を入れ過ぎると手元のお金が少なくなり、急な出費に困る可能性もあるので、緊急資金および予備費として、最低でも毎月の支出の3~6カ月分の現金は手元に用意しておくほか、教育資金などがあれば、その費用を確保しておくなど、今後に予定されているライフイベントを加味しながら、バランスよく考えて準備する頭金を決めるようにしてください。

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04賢く節約して無理なく返済。返済プラン設計で気をつけたいこと

ここまで世帯年収1000万円の方が組める住宅ローンの目安や夫婦2人で組める住宅ローンのタイプなどについて紹介してきました。しかし、実際にこれから住宅ローンを利用するにあたって、具体的な返済金額のイメージをつかみたい方もいるのではないでしょうか。そこで、返済期間や金利タイプ別に月々の返済額や総返済額をシミュレーションしてみたので、参考にしてください。

【返済期間別】総返済額、月々の返済額はいくら?

まずは返済期間の違いによる月々の返済額や総返済額の差を見ていきましょう。なお、シミュレーションの算出条件は「借入金額6000万円」「変動金利0.375%(ただし、借入期間中は同率と仮定)」「ボーナス返済なし」です。以上の条件から試算したシミュレーション結果は以下のとおりになります。

借入期間 月々の返済額 総返済額
25年 20万9552円 6288万円(総利息288万円)
30年 17万6243円 6346万円(総利息346万円)
35年 15万2459円 6405万円(総利息405万円)

上表のとおり、借入期間が長いほど月々の返済額は少なくなります。借入期間35年の場合は月々15万円程度の支払いで済むため、家計を圧迫するリスクは低くなるでしょう。ただし、今回のシミュレーションでは金利をずっと同じだと仮定して計算していますが、変動金利には金利上昇リスクがある点には注意してください。変動金利は一定期間ごとに柔軟に金利を見直せることから金融機関の負うリスクが少なく、契約当初の金利は固定金利に比べると低く設定されています。そのため、住宅ローンの契約締結後に金利が上昇していかなければ、固定金利よりも月々の返済額が抑えられる点はメリットです。

その反面、金利が上昇すると支払う利息が増え、固定金利よりも総返済額が増える恐れがある点はデメリットです。金利上昇の影響は借入金額が少ないほど軽くなりますが、今回のシミュレーションのように6000万円もの高額な住宅ローンを変動金利で組む場合は、特に注意が必要になります。それでは、続いて金利タイプの影響が返済額にもたらす影響についてのシミュレーションも見ていきましょう。

【金利タイプ別】総返済額、月々の返済額はいくら?

次に金利タイプ別に月々の返済額や総返済額の違いをシミュレーションします。なお、シミュレーションに用いた借入条件は「借入金額6000万円」「借入期間35年」「ボーナス返済なし」です。また、変動金利に関しては返済までの35年間、同率と仮定している点は留意してください。

金利タイプ 月々の返済額 総返済額
全期間固定(0.940%) 16万7698円 7047万円(総利息1047万円)
10年固定(0.495%) 15万5618円 6538万円(総利息538万円)
変動(0.375%) 15万2459円 6405万円(総利息405万円)

シミュレーションの結果、全期間固定型の総利息は1000万円以上となり、変動型の総利息405万円と比べて2.5倍以上になりました。金額だけ見るとかなり大きいと感じるかもしれませんが、ここでのポイントは「返済負担率」になります。全期間固定型を選んだ場合でも月々の返済額は16万円台であり、年収1000万円の方の返済負担率は25%程度なので、それほど高い数値ではありません。できるだけ金利が低い金融機関を選んだり、優遇金利を受けられる住宅ローンを契約したりすれば、現実的な返済金額の範囲内に収めることができます。特に全期間固定型のフラット35を取り扱っている金融機関のなかには、物件価格の1割以上の頭金を用意した方に対して金利の割引サービスを行っているところもあるので利用するとよいでしょう。

たとえば、今回のシミュレーションでは全期間固定型は0.940%で計算しましたが、仮にそれよりも約0.3%高い1.230%で試算すると総返済額は7395万円(総利息1395万円)になります。35年間という長期返済になると、約0.3%の金利差で総返済額が350万円近くも変わることが分かるでしょう。固定金利と変動金利にはそれぞれメリット・デメリットがあるので、どちらにするか迷う場合は固定期間選択型(10年)を選んで様子を見たり、固定金利と変動金利をミックスにした住宅ローンを契約したりする方法もあります。特に、固定期間選択型(10年)は変動型との金利差があまり大きくなく、契約当初から10年間は金利上昇リスクにさらされないメリットがあるので、判断に迷う場合は前向きに検討してみましょう。ただし10年の固定期間が終了した後、変動金利に切り替わった際に、市場の動向によっては金利が大きく上昇している可能性がある点に注意しておくことも大切です。

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05賢く節約して無理なく返済。返済プラン設計で気をつけたいこと

返済プランを考えるときに気を付けたいのは、「いくらまで借りられるか」ではなく、「無理なく返済を続けていける金額はいくらか」をしっかり把握しておくことです。特に世帯年収1000万円の方は、家計に比較的余裕があるケースも多く、自家用車や子どもの教育費など、住宅以外の部分にお金をかけている場合も多いでしょう。借りられるからと借入可能額の上限近くまで住宅ローンを借りると、ほかの出費が重なって思いがけず返済に苦労するかもしれません。

そのため、住宅ローン契約前に将来的なライフプランを考えておくことが大切です。たとえば、将来的に子どもを持つ予定なら、産休や育休などによって一時的に収入が減る時期があることも想定しておきましょう。場合によっては、勤め先の経営悪化による収入減少や最悪の場合、転職を余儀なくされるかもしれません。そのような、返済困難に陥る状況を事前にシミュレーションしておき、それでも夫婦で協力して乗り越えられるようなローンを組むと返済が滞るリスクは減るはずです。

また、住宅ローンの利息は元本に対してかかるので、少しでも早く繰り上げ返済を行ったほうが総返済額も少なくなり、家計負担は楽になります。そのため、住宅ローン契約後のことを見据えたシミュレーションをしておくことも大切です。たとえば、フラット35以外の住宅ローンでは団信の加入が条件になるため、必要に応じて生命保険の見直しを行うと節約につながる場合があります。そのほかにも、住宅ローン控除で控除された税金分を返済に回すなどの対策で少しずつでも貯蓄をし、その貯蓄分で繰り上げ返済を行うなど計画的に返済を進めていきましょう。

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06世帯年収1000万円でも無理のない資金計画を!シミュレーションで調べてみよう

世帯年収1000万円の借入可能額の目安は5000万~6000万円で、国土交通省の資料によると三大都市圏の注文住宅でも購入可能な金額です。ただし、家計の状況や将来のライフプランは人によって異なるため、住宅ローンの契約にあたってはまず実際に返済できるかをシミュレーションしてみることをおすすめします。これから住宅ローンの契約を考えている方はサイト内にある借入可能額シミュレーター毎月の返済額シミュレーターを試してみてください。

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新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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