離婚時にオーバーローンの場合、財産分与はどうなる?基本の考え方を解説

2021.08.23 14

離婚を考えている夫婦にとってトラブルになりやすいのが、離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求する「財産分与」です。特に住宅のような均等に分けにくい資産の場合、どう分けるかでもめるケースが多くあります。ただでさえ、解決が難しい住宅の財産分与ですが、オーバーローンになっていると、さらに問題が複雑になるケースがあることをご存じでしょうか。そこで今回は、離婚を考えている方に向けて住宅ローンの扱いや財産分与の基本的な考え方を解説します。

01そもそも「オーバーローン」とは?

オーバーローンとは「購入した住宅の資産価値よりも、住宅ローン残債のほうが多い状態」を指します。たとえば、住宅ローン残債が3500万円あるのに、マイホームの資産価値が3000万円と査定されたケースです。それに対して、「購入した住宅の資産価値よりも、住宅ローン残債のほうが少ない状態」をアンダーローンと呼びます。仮にマイホームの資産価値が2500万円であっても、住宅ローン残債が2000万円であればアンダーローンになります。

アンダーローンの場合、住宅を売却すればそのお金で住宅ローンを完済することが可能です。しかし、オーバーローンになっていると住宅を売却しても住宅ローンを完済できず、自宅を失ったのに借入金だけが手元に残ってしまうリスクがあるので注意しなければいけません。

オーバーローンになる原因としては、主に下記の2つが挙げられます。

  • 諸費用を含め、最初から資産価値以上の住宅ローンを借り入れした場合
  • 住宅の資産価値が急激に低下してしまった場合

住宅の購入にはさまざまな諸費用がかかるため、自己資金が少ないと住宅ローンの借入金額のほうが資産価値よりも高くなってしまうことがあるので気を付けましょう。また、住宅の資産価値はエリアの人気に左右されるという側面もあります。急激に人気の出たエリアは地価が短期間に高騰することがありますが、その分下がるスピードが速いケースも珍しくありません。地価の急激な低下によって見た目には何も変化がないのに、自分でも気づかないうちにオーバーローンになっていることもあります。

そのため、住宅ローンが残っている夫婦で真剣に離婚を考えているなら、とりあえずマイホームがオーバーローンになっていないかどうかを確認してみましょう。確認方法は、まず金融機関から送られてくる明細で、住宅ローンの残債をチェックします。そして、マイホームのおおよその売却価格を不動産会社などに査定してもらい、住宅ローンの残債と比較すればその時点でオーバーローンかどうか分かります。査定方法にはインターネットでも手続きができる「机上査定」と現地を確認してもらう「訪問査定」の2つがありますが、せっかく調べてもらうなら、より精度の高い査定が期待できる訪問査定を依頼したほうがよいでしょう。

02離婚時の財産分与の考え方の基本

離婚する場合、それまで夫婦で築いてきた財産を均等に分けるのが原則です。その均等配分が難しい場合、離婚したうちのどちらか一方が、もう片方の相手に対して財産を分けるよう請求を行う制度を財産分与と呼びます。なお財産分与には、下記の3つの性質があるとされていることは理解しておきましょう。

  1. 夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配(清算的財産分与)
  2. 離婚後の生活保障(扶養的財産分与)
  3. 離婚の原因を作ったことへの損害賠償(慰謝料的財産分与)

上記3つの性質のなかで一般的な離婚時の財産分与に該当するのは「1」です。「2」は主に配偶者の収入が少ないとき、「3」はDVや不倫などが原因で離婚したときに、それぞれ対象になることがあります。しかし、それらの要因とは関係がない離婚であれば、基本的には「1」のみを考慮して財産分与の手続きを進めます。

また、これらの財産分与の内容については、まず当事者間で話し合うのが基本です。当事者間での話し合いが平行線で進まなくなった場合に、家庭裁判所へ調停または審判を申し立てるという流れになります。

財産分与の額の計算方法は?

離婚時における財産分与の基本は、婚姻中に築いた共有財産を均等に分け合うことです。しかし、計算にあたっては資産から負債を差し引くことが認められているので、実際の計算式は「婚姻中に築いた資産-婚姻中に負った負債」となり、計算の結果プラスになれば、それを夫婦で2分の1ずつ分け合います。

一方、資産よりも負債が多い場合は、財産分与する必要はありません。たとえば、資産が1000万円で負債が1500万円ある場合、債務超過分である500万円を夫婦で平等に負担する必要はないということです。残っている負債については返済しなければいけませんが、返済義務が生じるのは基本的に借りた人になります。

この考え方は住宅ローンでも同じように適用されます。たとえば、住宅ローン残債(負債)が1500万円で、住宅の価値(資産)1000万円を上回るオーバーローンになっている住宅は、資産的価値がないとみなされて財産分与の対象になりません。このケースで住宅ローンを夫が全額負担していた場合、契約者である夫がそのまま継続して負債を返済するのが基本です。一方、住宅ローン残債が住宅の価値よりも少ないアンダーローンである場合は、売却すれば得られるはずの差額(仮に住宅の価値2000万円、住宅ローン残債1500万円の場合は500万円)が財産分与の対象となります。

オーバーローンになっている住宅の財産分与で気を付けたいポイントは、ほかの資産と分けて考えることもできる点です。たとえば、夫が契約者の住宅ローン残債が3000万円で住宅の価値が2500万円、夫婦で婚姻中に築いた預金が1000万円あるとします。このまま財産分与を行うと、1000万円の預金から住宅のマイナス分である500万円を差し引いた残りを分け合う形になり、妻は250万円しか受け取れません。

1000万円の預金があるにもかかわらず、受け取れる現金が250万円では不公平だと感じる人も多いでしょう。そのため、オーバーローンになっている住宅のマイナス分は、財産分与の際にほかの資産とは分けて計算するのが一般的です。分けて考える場合は住宅に資産的価値がないと考えられるので、ほかのプラスの財産からオーバーローンのマイナス分を差し引く必要はありません。上記例では、1000万円の預金を500万円ずつ分け合うのが基本となります。

なお、離婚時の財産分与は基本的に折半ですが、当事者同士の話し合いが原則なので配分はどのように決めてもよいことになっています。あくまでも双方の合意が前提ですが、お互いが納得すればどちらかの取り分が100%になっても問題ありません。強い離婚原因がないのに相手の離婚に対する意思が固い場合は、合意するための条件として財産分与の増額を勝ち取れることがあります。ただし、後々トラブルが発生した時のことを考え、財産分与の合意内容については公的文書で残しておくようにしましょう。

03ケース別財産分与・ローン支払いのパターン

ここまで基本的な知識を紹介してきたように、財産分与は「結婚時に築いた資産」が対象です。そこで、ここからは住宅購入のタイミングやローンの有無によってどのように財産分与が行われるのか、ケース別に解説していくので参考にしてください。

結婚前に住宅購入が完了している(ローンがない)場合

結婚前に配偶者が住宅を購入していて結婚時に住宅ローンが残っていなかった場合、離婚時の財産分与の対象にはなりません。なぜなら、財産分与ではあくまでも「結婚してから離婚するまでに築いた資産」を分け合うからです。このケースでは結婚前に購入が完了した資産であるため、住宅は配偶者の特有財産とみなされます。

たとえ、結婚後にその住宅に夫婦で住んだとしても共有財産となることはありません。結婚後に住宅ローンを支払っていない住宅は共有財産とはみなされず、財産分与の対象とならないことは覚えておきましょう。

結婚前に住宅を購入したが、支払いが完了していない(ローンがある)場合

配偶者が結婚前に住宅を購入していても、結婚時に支払いが完了していないローンが残っている場合は、財産分与の対象になることがあります。この場合、結婚後に支払っていた住宅ローンの割合に応じて共有財産となる金額が確定します。たとえば、夫がもともと3000万円の住宅ローンを組んでいて、結婚時に2000万円のローンが残っており、最終的に1000万円を残した状態で離婚するケースを考えてみましょう。

このケースでは、婚姻期間に住宅ローン総額の3分の1(1000万円)を支払ったことになるので、住宅の価値の同じ割合が財産分与の対象です。ただし、先述したようにオーバーローン状態になっているとそもそも財産分与の対象にはなりません。このケースに該当する方は、まず結婚後に2人で支払った住宅ローンの総額や住宅の資産価値を調べることから始めるとよいでしょう。

結婚後に住宅を購入したが、支払いが完了していない(ローンがある)場合

ここまで紹介してきたように、結婚後に購入した住宅がアンダーローンになっていれば財産分与の対象になりますが、建物のように分けられないものを扱うのは難しいケースが多いでしょう。最も一般的なのは住宅を売却して住宅ローンを完済し、余ったお金を分け合う方法になります。手続きに手間はかかりますが、実際に分けるのは現金になるので細かい金額の調整をしやすい点はメリットです。

ただし、売却の場合は住宅の買い手が見つかるまで財産分与が終わりません。財産分与の長期化が嫌な方は住宅を相手に譲り、財産分与の計算に応じた現金を受け取って解決する方法もあります。

04住宅ローンと財産分与に関するその他注意点

住宅ローンが残っている状態で離婚する場合、財産分与の交渉が終わっても後からトラブルが起こることもよくあります。あらかじめ財産分与を行う際の注意点について知っておきましょう。

離婚後も住み続ける場合、ローンが払えなくなると差し押さえになる

住宅がオーバーローンになっている場合は物件を売却せず、離婚後に夫婦のどちらかがそのまま住み続けるケースも多くあります。しかしこのケースでは、残された住宅ローンの返済義務が誰にあるのかをよく確認しておかなければいけません。なぜなら、実際に住む人と住宅ローンの名義人が異なることが想定されるからです。

たとえば、住宅ローンの支払い義務が夫にある状態で離婚後に妻が住宅に住み続ける場合を考えてみましょう。夫が離婚後も住宅ローンの支払いを続ければ何の問題もありませんが、体調の悪化などにより夫の返済が滞ってしまうと、妻が住んでいる住宅が差し押さえの対象になるかもしれません。

また、そこまでいかなくても、妻が住宅ローンの連帯保証人になっている場合には名義人である夫に代わって返済を迫られるリスクもあります。離婚後もこれまでと同じ住宅に住み続ける場合には、万が一のことを考えて主債務者と連帯保証人をしっかり確認しておくことが重要です。

離婚による住宅ローンの名義変更は不可の場合も

住宅ローンの名義変更は、簡単ではありません。なぜなら金融機関は事前に審査を行い、それに通った人にだけ融資を行っているからです。住宅ローンの名義人という重大な条件が変わるのにそのまま融資を続けて欲しいというのは借主側の一方的な都合であるため、金融機関側が認めないこともよくあります。

たとえば、夫婦が共同で住宅ローンを返済するペアローンを組んでいる場合、離婚後にどちらか片方だけが返済したいと申し込んでも、それを金融機関が納得してくれる可能性は低いでしょう。どうしてもペアローンから単独名義へ変更したい場合は、新たな条件で審査してもらうために別の住宅ローン商品への借り換えを検討するとよいです。もともと住宅ローンを組んでいた金融機関内での借り換えができなくても、ほかの金融機関へ相談すれば審査に通ることもあります。

一方、夫の単独名義で住宅ローンを組んでおり、それを離婚後に住宅に住み続ける妻へ変更したい場合も借り換えの必要があります。しかもその際には、夫と同程度の収入があることが最低条件です。妻の収入がなかったり、扶養の範囲内で働いたりしているケースでは金融機関の審査に通るのは難しく、住宅ローンの借り換えができる可能性は低いでしょう。

離婚してもローンの連帯保証人から外れることは難しい

妻が住宅ローンの連帯保証人のまま残っていると、夫の住宅ローン返済が滞ってしまったときに妻が不足額を支払う義務を負います。そうしたリスクを避けたい方は、離婚前に連帯保証人から外れておくほうが賢明です。

しかし、実際問題として連帯保証人から外れるのは簡単ではありません。連帯保証人はもともと住宅ローンの返済が滞るリスクを回避するために金融機関が求めてくる条件です。そのため、借主側の都合で自由に外せるわけではありません。

連帯保証人の変更は可能ですが、それまでの連帯保証人だった妻と同等もしくはそれ以上に、信用力のある別の人物を代わりに立てるよう要求してくるケースが多いです。信用力のある別の人物を立てられない場合は、離婚したからといって連帯保証人から抜けることは難しいでしょう。

05オーバーローンの住宅は財産分与から外せる!まずはどれくらいのローンが残っているか確認しよう

財産分与は離婚時にトラブルになりやすい問題のひとつです。特に住宅ローンが残っている場合は、「いつから返済しているか」や「どれくらい残債があるか」によって計算が変わるので注意しなければいけません。財産分与は当人同士の話し合いで解決することが基本ですが、細かい条件などでもめたくない場合は、専門家に仲介に入ってもらうことも検討したほうがよい場合もあります。まずは下準備として、住宅ローンの残債をチェックしたり不動産会社に住宅の査定をしてもらったりすることから始めてみてはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP(R)認定者・一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)・DC(確定拠出年金)プランナー・住宅ローンアドバイザー・証券外務員

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

関連キーワード

事前審査・相談

ご利用上の注意

  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただいたものとします。

0