リノベーション物件で住宅ローンを活用できるの?

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「リフォーム」は聞き慣れた言葉だけど「リノベーション」って何? と思われている方も少なくないかもしれません。実はこの二つの言葉の使い分けには、曖昧なところがあるのも事実。リフォームが「元に戻す」のに対し、リノベーションは「新しく作り変える」ととらえればよいでしょう。ここでは、リノベーション物件に住宅ローンが活用できるのかを解説します。

01リノベーションとリフォームの違い

リノベーションとリフォーム。この二つの言葉に、実は明確な定義はありません。住まいに手を加えるときの目的や意図によって、さまざまな使い分けがされているというのが実情です。

あえて言えば、リフォームとは、古くなったシステムキッチンやユニットバスの入れ替え、あるいは、剥がれた壁紙を貼り替える程度の設備変更や修繕など、比較的小規模な工事を指します。時間を経て、汚れて古びた内装を新築の状態に近づけるための改修です。部分的・表層的な改修工事で、古くなった住まいを新築当時の状態に原状回復するために行われます。

それに対してリノベーションは、間取り、水道管、排水管、冷暖房換気設備の変更など大規模な工事を伴います。住まいのすべてを考え直し、これから住む人たちの暮らしに合わせてつくり替えることで機能を刷新します。新しい価値を生み出すための改修は、工事の規模が大きいのが特徴です。

リノベーション 間取り、水道管、排水管、冷暖房換気設備の変更など大規模な工事
これから住む人たちの暮らしに合わせてつくり替える
リフォーム 剥がれた壁紙を張り替える程度の設備変更や修繕など、比較的小規模な工事
時間を経て、汚れて古びた内装を新築の状態に近づける

中古物件をリノベーションする際には、中古物件購入、ローン設定、設計と施工の順番に、あるいは、それぞれが並行する形で進められます。

中古物件購入

顧客の希望を伺いながら、現地調査を行い、候補物件をいくつか模索。その中から最適な物件を購入します。

ローン設定

どのようにリノベーションを施すか、プランニングに沿う形で見積もりを取り、金融機関に対してローンの事前審査へと持ち込みます。

設計と施工

リノベーション物件の契約・工事期間、他の住宅で暮らす必要があります。生活費の度合いが大きく異なってくるため、工期の長短は非常に重要なポイントです。工事中にも随時、状況報告を受けることを忘れてはなりません。

02リノベーション専用のローンはあるの?

リフォームやリノベーション専用のローンとして「リフォームローン」があります。住宅ローンは1人につき1つが原則です。住宅ローンでリフォーム代だけを借りたい場合には、他の住宅ローンを借りていないことが条件になります。過去に借りていても、すでに完済していれば問題ありません。しかし、住宅ローンに比べるとリフォームローンは金利がやや割高となることも否めません。

従来、住宅購入費は住宅ローン、リフォーム費はこうしたリフォームローンと、別々に借り入れしていました。しかし、今では多くの銀行など金融機関で、リフォーム費用もまとめて借り入れできる「一体型住宅ローン」が用意されています。この一体型ローンは審査や手続きの手間も半分に省け、コスト面でもお得です。

03「中古住宅購入+リノベ」の場合は一体型ローンが得となる場合も

審査や手続きの手間が半分に省けるように、「住宅+リノベ」でローンを一本化することによって、借り入れに伴う諸費用が節約できます。ローンを組むためには、手数料や保証料等の諸費用がかかります。住宅ローンとリフォームローンを別々に組む場合、これらは二つずつ必要となりますが、一体型ローンなら一つで済むのです。

住宅ローン・リフォームローン・リフォーム一体型住宅ローンの対象の比較

住宅ローン 住宅購入費
リフォームローン リフォーム費用
リフォーム一体型
住宅ローン
住宅購入費用+リフォーム費用

また、住宅ローン減税の面でも、一体型にはメリットがあります。リフォーム費用の額も減税控除に反映されるのです。住宅ローン減税とは、毎年の所得税と住民税から、ローン残債の1%が控除されるという優遇税制です。リフォームローンのみの借り入れでは、控除されませんが、住宅ローンの中にリフォーム費用も組み込めば、一括して控除を受けられます。

一体型の住宅ローンはリフォームローンに比べて、金利もかなり安くなります。昨今では、リフォームローンは大体1.3~8%となりますが、これに対して住宅ローンは0.5~3%程度です。数値は借り入れの条件によって異なります。スケルトンリノベーション(骨組以外の全てを改修する)のような大規模のものでは、コストが1000万円を超える場合も珍しくはありません。ですから1%の差でも、金額にすると大きな違いが生じます。

04リノベーション時におけるリフォームローンと住宅ローンそれぞれの利用メリット

それでは、リノベーションする場合のリフォームローンと住宅ローンについて、それぞれの利用メリットを見てみましょう。

リフォームローン 審査の基準が低い
担保がなくても融資を受けることが可能
手続きに必要な書類も少なく、借り入れまでにかかる時間が短い
抵当権設定費用が不要
住宅ローン 借入に伴う諸費用が節約できる
一般的な住宅ローンと同じ低金利が適用され、長期間で返済できる

リフォームローンの利用メリット

まず、リフォームローンの利用メリットですが、審査の基準が低いことが挙げられます。審査内容は、住宅ローンとさほど変わりませんが基準はそれほど厳しくありません。また、住宅ローンの場合には自宅の担保提供が必要となります。これに対して、リフォームローンは担保がなくても融資を受けることが可能です。これに伴い、手続きに必要な書類も少なく、借り入れまでにかかる時間も短くなるのが一般的です。住宅ローンの場合、自宅を担保とする際の抵当権設定に関する諸費用が必要となりますが、リフォームローンの場合には、抵当権設定費用の数万円を払わなくて済みます。

しかしながら、大規模リフォームでは借入額が大きくなるため、担保が必要となります。返済期間は長く、金利は低めながら住宅ローンとほぼ同様、審査も厳しくなり、諸費用もかかります。

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住宅ローンの利用メリット

住宅ローンを利用すると、前述したように借り入れに伴う諸費用が節約できます。一般的な住宅ローンと同じ低金利が適用され、長期間で返済できる点が最大のメリットでしょう。資金にあまり余裕がない方や、逆に資金的に余裕はあるけれども、低金利で長期間借りたいという方には特にオススメのローンです。

05リノベーションでローンを組む際の注意点

新築住宅であれ、中古住宅であれ、住宅ローンに違いはありません。しかし、中古住宅の場合には建物の耐久性が考慮されます。つまり、ローンの借入期間が新築のように「最長35年」とならない可能性があるのです。35年のローンを組むつもりでも、審査の結果20年までが上限となるケースも考えられ、そうなると毎月の負担が大きく増えます。さらに建物の耐久性だけではなく、契約者の年齢や収入などにも左右されることに留意しましょう。

また、住宅ローンでリフォーム費用も借り入れするためには、リフォームにいくらかかるか、融資を申し込む時点でほぼ正確に見積もっておかなくてはなりません。審査にあたっては工事費用の見積書を提出します。ここで重要なポイントは、見積書に「最大でいくらかかるか」を書き込むこと。というのも審査で一度通った融資額は、減額はできますが、増額はできないからです。増額となれば、新たに審査を受け直さなければなりません。

下澤一人

文・監修:下澤一人

宅地建物取引士

プロフィール

出版社勤務後、宅地建物取引士の資格を取得し、不動産専門新聞記者、不動産会社勤務を経て現在、編集者・ライターとして活動中。

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