家の建て替えってどのくらい費用がかかる?安く抑えるコツも紹介

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すでに建っている家を取り壊して新しく建て替える場合、どんな費用がどのくらいかかるのでしょうか?家の建て替えにかかる費用をできる限り安く抑えるコツもあわせてご紹介します。

01家を建て替えるまでの手順

まずは、家を建て替えるまでの大まかな手順について確認しておきましょう。

家の建て替えには、「今の住まいを取り壊して建て替える」場合と、「古家つきの土地を取得して、古家を取り壊して建て替える」場合があります。

前者では、仮住まいを確保する必要があり、後者では建て替えるための土地を確保する必要があります。

それ以外については、両者に大きな違いはなく、次のような手順に沿って建て替えが進められることが一般的です。

STEP1:業者を探す

新築する家の工事を依頼する建設会社や工務店などの業者を探します。インターネットや住宅情報誌などで情報収集をし、依頼したい業者があればモデルハウスに見学に行くなどして、候補を数社に絞りましょう。それぞれの営業担当者に条件と予算などを伝えた上で、プランの提案と概算の見積もりを依頼します。この際、担当者の対応や会社の雰囲気なども観察し、信頼できる業者かどうかをしっかり見極めるようにしましょう。

STEP2:業者とプランを決定し、本見積もりをとる

提案されたプランと概算見積もりを比較検討し、依頼する業者を決定します。提案内容のほかに、アフターケアの充実度や保証体制なども比較した上で決定するようにしましょう。
決定した業者とあらためて綿密に打ち合わせを行い、プランの詳細や具体的な工期の日程などを詰め、それをもとに詳細な本見積もりを作成してもらいます。

STEP3:工事請負契約を結ぶ

最終的なプランの内容と本見積もりに問題がないことを確認したら工事請負契約を結びます。契約に際して不明な点や心配な点があれば遠慮せずに担当者へ相談し、疑問や不安を解消した上で契約するようにしましょう。また、住宅ローンを利用する場合は、工事請負契約前に住宅ローンの仮審査を金融機機関で受け、借り入れができることを確認しておきます。

STEP4:仕様を決める

契約が終わったら、着工の前に壁紙やフローリングの種類や色、照明やコンセントの位置や数など、費用に大きく影響しない細かな仕様を業者と相談しながら、決定していきます。

STEP5:建築確認申請書を提出する

新築予定の建物が建築基準法や都道府県の条例等に適合しているか否かのチェックを受けるための「建築確認申請書」を役所もしくは指定検査機関に提出します。提出するのは建築主ですが、図面や資料などの提出が必要となるため、一般的には業者が代理で申請書を作成します。建築確認を受けずに工事に着工することはできません。

STEP6:ローンの本審査を申し込む

建築確認申請の結果、建築許可がおりると「建築確認済証」が交付されます。住宅ローンを利用する場合は、他の必要書類とあわせて、本審査を申し込みます。

STEP7:変更契約を結ぶ

契約後に決めた仕様など、変更した内容とそれにかかる費用の増加分などを盛り込んだ変更契約を業者との間で締結します。

STEP8:解体業者を探す

建て替えにあたっては、解体業者を探す必要があります。住宅を建設する業者を決めた時と同様に、見積もりを取って比較検討し、信頼できる解体業者に依頼しましょう。なお、建物を解体できるのは建築業法が定める「建設業許可」を国から得ている業者、もしくは都道府県知事に「解体工事登録」をしている業者のみであることに注意が必要です。

STEP9:解体工事終了後、新築工事がスタート

解体工事が終了したら、法務局に「建物減失登記」を申請します。また、一般的にはこのタイミングで地盤調査を受け、必要な場合は地盤改良工事を行います。なお、新築工事を始めるにあたって、地鎮祭などの神事を行う場合は、業者とスケジュールを調整します。建築工事中は現場の立ち合いを求められることがあります。

STEP10:新築工事完了後、竣工検査をする

新築工事が完了したら、業者と建築主が一緒に竣工検査を行います。完成した建物に不具合がないか、傷や破損がないかを確認する機会となります。問題がなければ家の鍵を受け取り引き渡しとなります。

STEP11:行政による完了検査を受ける

建築基準法は、建築主に対して新築工事が完了から4日以内に、建築主事(市町村長または都道府県の知事)に対して完了検査申請を行うことを義務付けています。建築主事は申請をしてから7日以内に審査を行い、問題がなければ建築主に検査済証を交付します。

STEP12:登記する

新築した建物を登記簿に登録する「建物表題登記」と建物の所有者を明示する「所有権保存登記」を行います。住宅ローンを利用する場合は、「抵当権設定登記」も必要となります。

02家を建て替えるためには、何にいくらかかる?

続いて、家を建て替えるのに必要な費用についてみていきましょう。一般的な家の建て替えには、主に以下のような費用がかかります。

土地代

古家つきの土地を取得して、そこにある家を取り壊して建て替える場合は、その土地を取得するための費用がかかります。

解体費用

解体工事にかかる費用の相場は1坪あたり5~8万円とされています。1坪5万円で40坪の家を解体する場合は、5✕40=200万円の解体費用が必要となります。

本体工事費用(建物本体の建設にかかる工事費)

住宅の新築工事にかかる費用は、工事内容や工法などによって大きく異なるため一概にはいえませんが、一般的な住宅では1坪あたり50万円程度はかかると見ておいたほうが良いでしょう。

別途工事費(付帯工事費)

別途工事費とは、例えば、屋外給排水工事や上下水道引き込み工事、外構工事や地盤補強工事、ガス工事や電気設備工事、エアコン設置工事など、居住をする際に必要なもののためにかかる費用のことを指します。1つひとつの工事費用は数万円~数十万円程度ですが、まとまるとかなりの金額になり、本体工事費用の2割程度が目安となると言われています。

地盤調査費用・地盤改良工事費用

最も一般的な方法であるSS試験(建物の四隅と中心、計5カ所程度を調査する方法)の場合の費用の相場は5万円前後です。なお、地盤調査の結果、何らかの問題がみつかり、地盤改良工事を行う場合はその工事費用もかかります。その費用は工事の方法によって大きく異なりますが、最も安価とされる「表層改良工法」の場合でも1坪あたり2万5000円、つまり20坪程度の土地で約50万円がかかると言われています。

仮住まいにかかる経費

今の住まいの建て替えでは、仮住まいをする住まいの家賃、引っ越し費用なども予算にいれておきましょう。

引っ越しの費用は、同じ荷物の量・距離でも、業者によって大きく異なります。必ず複数の業者に見積もりを取り、比較検討の上、決定するようにしましょう。

税金

家の建て替え時に納めなくてはならない税金には、主に次のようなものがあります。

・印紙税

契約書や領収書などの文書に課される税金で、建て替えの場合は、業者との間で結ぶ建設工事請負契約書が課税対象に該当します。税額は契約書の記載金額によって異なりますが、請負契約書の印紙税は2022年3月31日までに作成されたものについては軽減措置が取られています。軽減後の税額は国税庁のホームページで確認することができます。

・不動産取得税

不動産を取得した際に、その不動産の所在する都道府県に納付する地方税で、税額は原則として取得した不動産の固定資産税評価額の4%ですが、2021年3月末日までは税率が3%に引き下げられています。また、床面積が50㎡~240㎡である新築住宅については、固定資産税評価額から1200万円が控除される軽減措置が取られています。したがって、例えば固定資産税評価額が3000万円の新築住宅を取得した場合の不動産取得税は次の計算式で求めることができます。

不動産取得税=(3000万円―1200万円)✕3%=54万円

・登録免許税

取得した不動産の所有権や抵当権を登記する際に登記所で納付する国税のこと。家の建て替えで新築住宅を取得した際には「所有権保存登記」を行い、登録免許税を納付します。建物の所有権保存登記にかかる登録免許税の税額は原則として、「その建物の固定資産税評価額✕税率(0.4%)」の計算式で求めますが、2022年3月31日までに新築した自宅用の建物については、登記簿上の床面積が50㎡以上であれば税率が0.4%⇒0.15%に軽減される措置が取られています。したがって、例えば固定資産税評価額が 2000万円の新築住宅を自宅用に取得し、所有権の保存登記を行う場合、登録免許税は以下の計算式で求めることができます。

建物の所有権保存にかかる登録免許税= 2000万円✕0.15%=3万円

なお、建物を解体する際の「建物滅失登記」と新築した建物を登記簿に登録する「表題登記」には登録免許税は課されません。

03家の建て替え費用を少しでも安く抑えるコツ

ここまで見てきたとおり、家の建て替えには新しく家を建てる工事の費用以外にも、さまざまな費用がかかります。少しでも費用を抑えて新居での生活に備えたい場合は、以下の方法を検討してみてください。

業者をしっかり比較検討する

建て替えにかかる費用の大部分を占める新居の建築費はどの業者に依頼するかによって、異なります。最初から1社に決めてしまわず、必ず複数の会社に見積もりをとって比較検討し、品質と価格のバランスに納得できる会社に依頼するようにしましょう。

こだわりすぎない

住宅は工法や建材にこだわればこだわるほど、価格が高くなってしまいます。こだわりや理想をすべて実現しようとせず、本当に必要なものとそうでないものを見極め、取捨選択して無駄な支出を抑えましょう。

自分で解体業者を選ぶ

新居の建設を依頼した業者に建て替え前の家の解体工事も依頼する場合、業者から出される見積もりには解体工事の費用も含まれています。一般的に業者は自社で解体工事は行わず、別の解体工事業者に依頼することが多いので、見積もりの解体工事費用には業者の手数料が上乗せされていることがよくあります。解体工事業者に見積もりを取ると同時に、自分でも解体業者から見積もりをとって業者からの見積もりと比べ、どちらか安い方に解体工事を依頼すれば、解体にかかる費用を抑えることができます。

贈与税の非課税枠を活用する

家の建て替えにあたって両親や祖父母から資金提供を受ける可能性がある人は、「住宅資金贈与の非課税の特例」を利用すると、贈与に伴う税金の負担を抑えることができます。この特例は、2021年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、住宅用の家屋を新築する人の資金を取得した場合に、一定の条件を満たせば、以下の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税になるものです。

非課税限度額

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ住宅等一定基準を満たす住宅 左記以外の住宅
2020年4月1日~2021年3月31日 1500万円 1000万円
2021年4月1日~2022年3月31日 1200万円 700万円

非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、所轄税務署に提出しなくてはなりません。詳しくは、国税庁のホームページで確認してください。

地域型住宅グリーン化事業

国は、木造住宅の普及を目指して、地域密着型の工務店に依頼して省エネルギー性能や耐久性に優れた木造住宅を新築した場合、国から100万円~215万円の補助を受けることができる「地域型住宅グルーン化事業」を展開しています。建て替えにあたって木造住宅を検討している人は、この補助が受けられるかどうか業者に相談してみると良いでしょう。

事業について詳しくは国土交通省のホームページで確認できます。(https://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000929.html

仮住まい先を見直す

今の住まいを建て替える場合は、仮住まいをする物件を探す必要があります。家賃は仮住まいをする地域や家の広さなどによって異なるため一概には言えませんが、特に都心部などでは、家財道具がすべて収納できる広い家を借りるよりも、仮住まいは最低限の広さにとどめて、荷物用に別途コンテナやトランクルームを借りたほうが安く済むこともあります。

04家の建て替えとリフォーム、結局お得なのはどっち?

家を建て替えたいけど予算に不安があるという理由で、建て替えではなくリフォームを検討する人もいることでしょう。確かに、経済的な面だけに着目すると、工事費用が安く押さえられ、税金も課されないリフォームの方がハードルは低く感じられます。人によっては、「今回はトイレの改装を、次回はバスルームの改装」という具合に、リフォーム工事を繰り返す人もいます。しかし、一般的なリフォームでは建物の構造部分の老朽化や劣化には対応できないため、結局、建て替えせざるをえなくなるケースも考えられます。その意味では長い目でみると必ずしもリフォームがお得とは言い切れないかもしれません。また、リフォームでも建物の構造自体に手を加えるスケルトン工事など大掛かりな工事をした場合は、建て替えした場合と変わらないほど大きな費用がかかる可能性もあります。

さらに、自宅を資産と捉えるならばリフォームよりも建て替えを選ぶほうが良いでしょう。例えば将来、何らかの事情で処分しなくてはならなくなった場合、リフォームを繰り返した古い家よりも築年数が浅い家の方が、買い手は見つかりやすいはずです。

建て替え・リフォームそれぞれの主なメリットとデメリット

メリット デメリット
建て替え ・ゼロから理想の家造りができる
・新築の家に住める・リフォームよりもローンを組みやすい
・行政から検査済証を受けることで、安全性が保証される
・自宅の資産価値が上がる
・工事期間が長い
・今の住まいを建て替える場合は仮住まいが必要・費用が高額になる
・不動産取得税、登録免許税などを納めなくてはならない
リフォーム ・改修箇所を絞って工事できる
・工事期間が短く済む
・居住しながら工事ができるため、仮住まいが必要ない場合が多い
・愛着のある自宅を取り壊さずに済む
・間取りまでは変更できないケースが多い
・大掛かりな工事をすると建て替え同様の費用がかかることがある
・建物の構造部分の老朽化や劣化には対処できない
・ローンを組みづらい
・リフォームをしても資産価値が上がるとは限らない

上の表のとおりリフォームにも建て替えにもそれぞれメリットとデメリットがあります。長い時間を過ごす自宅に求める要素は経済的メリットだけではないはず。経済的メリットを優先させて、居心地の良さや使い勝手の良さ、安全性をないがしろにするのは賢明ではありません。限られた予算の中で、メリットとデメリット取捨選択しながら、リフォームに留めるか建て替えをするのかの判断を下すようにしましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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