不動産の売買で忘れてはいけない!収入印紙の印紙代とは

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不動産売買契約書などに貼る収入印紙。収入印紙を特定の文書に貼ると、国に「印紙税」という税金を納めたことになるのをご存知ですか?今回は収入印紙を貼付すべき文書の種類や、不動産売買で必要な収入印紙の金額、収入印紙に関する注意点などについて解説します。

01収入印紙とは?

印紙税は商取引などで使用する文書に課税されるものです。不動産売買契約書や領収書など、金銭のやり取りに伴って作成する契約書や受取書などにも課されます。収入印紙はその印紙税を納めるために使う証票のことで、収入印紙を対象となる課税文書に貼り付け、消印を押すことによって、印紙税を納付したことになります。

印紙税が課される課税文書には、下表のとおり20種類の文書があり、それぞれ1枚または1冊あたりの課税額が定められています。

印紙税課税文書の種類と例

文書番号 文書の種類 文書の例と印紙税額
1 ①不動産、鉱業権、無体財産権、船舶、航空機、営業の譲渡に関する契約書
②地上権や土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書
③消費賃借に関する契約書
④運送に関する契約書
①不動産売買契約書、不動産売渡証書など
②土地貸借契約書、土地賃料変更契約書など
③金銭借用証書、金銭消費賃借契約書など
④運送契約書、貨物運送引受書など
※印紙税額は記載された契約金額によって異なる
2 請負に関する契約書 工事請負契約書、工事注文請書など
※印紙税額は記載された契約金額によって異なる
3 約束手形、為替手形 ※印紙税額は記載された手形金額によって異なる
4 株券、出資証書、社債券、投資信託、貸付信託、特定目的信託、受益証券 ※印紙税額は記載された券面金額によって異なる
5 合併契約書または吸収分割契約書、新設分割計画書 4万円
6 定款 4万円
7 継続的取引の基本となる契約書 4千円
8 預金証書、貯金証書 200円
9 倉荷証券、船荷証券、複合運送証券 200円
10 保険証券 200円
11 信用状 200円
12 信託行為に関する契約書 200円
13 債務の保障に関する契約書 200円
14 金銭または有価証券の寄託に関する契約書 200円
15 債権譲渡または債権引受けに関する契約書 記載された契約金額が1万円以上のもの:200円
契約金額の記載がないもの:300円
16 配当金領収証、配当金振込通知書 記載された配当金額が3,000円以上のもの:200円
配当金額の記載のないもの:200円
17 ①売上代金に係る金銭・有価証券の受取書
②売上代金以外の金銭・有価証券の受取書
①商品販売代金の受取書、不動産賃貸料の受取書など
※印紙税額は記載された受取金額により異なる
②借入金の受取書、保険金の受取書など200円
18 預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳 1年ごとに200円
19 消費賃借通帳、請負通帳、有価証券の預かり通帳、金銭の受取通帳などの通帳(上記18に該当するものを除く) 1年ごとに400円
20 判取帳 1年ごとに4,000円

出典:国税庁HP「印紙税額一覧

02不動産売買契約における収入印紙の金額は?

20種類の印紙税課税文書の中には文書に記載された金額に応じて、印紙税額が変わるものがあります。不動産売買の際に売り手と買い手との間で交わす不動産売買契約書もその1つで、課税金額は掲載されている契約金額に応じて次の表のとおり異なります。たとえば、契約金額が3,000万円の場合、印紙税課税額は2万円、7,000万円の場合は6万円になります。なお、契約書に税抜・税込両方の金額が記載されている場合は、税抜の方を記載金額として取り扱うことになっています。

また、1通の契約書に2つ以上の金額が記載されている場合は、すべての金額の合計を、その文書の記載金額とします。たとえば、1通の契約書に「土地代800万円、建物代300万円」と記載されている場合は、記載金額1,100万円の契約書として取扱い、印紙税課税額は2万円になります。

不動産取引に係る契約書の印紙税額一覧(2020年現在)

契約金額(契約書1通または1冊あたりの記載金額) 印紙税額
1万円未満 原則非課税
1万円以上10万円以下のもの 200円
10万円を超え50万円以下のもの 400円
50万円を超え100万円以下のもの 1千円
100万円を超え500万円以下のもの 2千円
500万円を超え1,000万円以下のもの 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの 6万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

032022年3月末までは軽減税率を適用

なお、租税特別措置法第91条の規定により、1997年4月1日から2022年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書(不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産受渡証書など)で記載金額が10万円以上のものについては、上の表に挙げた本来の税率にかかわらず、税率を軽減する特例措置が取られています。軽減措置適用後の税率は以下のとおりです。なお、1万円以上10万円以下のもの、契約金額の記載のないものについては、本来の税率が適用されます。

契約金額(契約書1通または1冊あたりの記載金額) 軽減後の
印紙税額
本来の
印紙税額
10万円を超え50万円以下のもの 200円 400円
50万円を超え100万円以下のもの 500円 1,000円
100万円を超え500万円以下のもの 1,000円 2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの 5,000円 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 1万円 2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの 3万円 6万円
1億円を超え5億円以下のもの 6万円 10万円
5億円を超え10億円以下のもの 16万円 20万円
10億円を超え50億円以下のもの 32万円 40万円
50億円を超えるもの 48万円 60万円

出典:国税庁HP「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

04収入印紙に関する注意点

原則として印紙税は、郵便局やコンビニエンスストアなどで印紙税相当額の収入印紙を購入し、課税文書に貼り付ける方法によって納付できます。収入印紙による印紙税納税にあたっての注意点や知っておくべきルールは以下のとおりです。

契約書の共同作成者には印紙税の連帯納税義務がある

印紙税の納税義務者は原則として、その課税文書を作成した本人とされていますが、売り主と買い主が共同して作成する不動産の売買契約書のように、2以上の作成者がいる場合は、作成者全員が連帯して印紙税を納める義務があります。ただし、作成者のうちの1人がその文書にかかる印紙税を全額納めたときは、他の作成者の納税義務は消滅します。たとえば、売り主が不動産売買契約書に必要な印紙税を全額納めた場合、買い主は印紙税を納めなくても良いということになります。

一般的に不動産売買契約書には「契約書貼付する収入印紙は、売り主・買い主が平等に負担するものとする」と記載されており、売り主・買い主それぞれが保有する契約書分を各自負担するのが通例となっています。

契約書の原本1通ごとに収入印紙を貼らなければならない

印紙税法では一つの契約について2通以上の文書が作成された場合、その文書がそれぞれの契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります。作成する契約書が1通であれば、収入印紙は一枚で良いのですが、仮に問題が起こった場合、原本を持っていないと不利になるため、原本は2通作成することが一般的です。その場合はそれぞれの原本に印紙を貼付する必要があります。

契約書に貼った収入印紙には消印が必要

契約書に貼り付けた収入印紙は、再利用を防ぐために、契約当事者やその代理人の印章または署名で消印する必要があります。契約当事者が契約書を2通以上作成する場合は、それぞれの契約書に印紙税相当額の収入印紙を貼り付け、消印しなくてはなりません。なお、単に「印」と表示したり斜線を引いたりしても、印章や署名には当たらないため、印紙を消したことにはならないことに注意が必要です。

収入印紙の貼り間違いによる過誤納税は5年以内であれば還付される

課税文書ではない文書(印紙税を納付する必要がない文書)に誤って収入印紙を貼り付けて納付したときや、課税文書に所定の印紙税額を超える印紙を貼り付けて印紙税を納付した場合は、文書の種類・納付税額・過誤納税額などの所要事項を記載した「印紙税過誤納確認申請(充当請求)書」と過誤納となっている文書を、作成した日から5年以内に所轄税務署長に提出し、過誤納が認められれば、還付(充当)を受けることができます。

印紙税の納付を怠ると過怠税が課される

課税文書作成のときまでに、納付すべき印紙税を納付しなかった場合(収入印紙を貼付・消印しなかった場合)、納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(=不納付税額の3倍)に相当する過怠税が徴収されることになっています。また、貼り付けてはいるものの、その収入印紙を印章や署名で消していない場合は、消されていない収入印紙の額面と同じ金額に相当する過怠税が課されることになります。

収入印紙の現金への交換はできない

本来貼付すべき金額とは異なる金額の収入印紙を購入してしまった場合は、郵便局の窓口で他の印紙に交換することができますが、交換には1枚あたり5円の手数料がかかります。また、印紙を現金に払い戻すことはできません。

不動産は売買契約の価格が高額なため、印紙税も高額になります。特に不動産の買い主の場合は購入費用に気を取られて印紙税にまで気が回らないことがよくあります。契約書を交わす段になって予想以上の印紙税がかかることに気づいて慌ててしまわないよう、あらかじめ必要な印紙税額を把握しておき、予算に加えるようにしておきましょう。

また、故意であるか否かにかかわらず、収入印紙の貼付や消印を怠ると高額な過怠税を課されてしまいます。特に契約書を2通以上作成する場合は、それぞれの契約書に印紙税相当額の収入印紙を貼付し、消印しなくてはならないことにも留意しつつ、貼り忘れ・消印漏れがないか、しっかり確認するようにしましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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