ナフサショックで住宅価格はさらに上がる?これから家を買う人が知るべき影響と備え

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住宅価格の高騰が続く2026年、中東情勢の悪化により、今度は「ナフサショック」の影響が住宅業界全体に広まってきています。 ナフサとは、原油を精製して作られる石油製品の一つです。多くの石油化学製品の原料として使われ、断熱材・配管・塗料などの住宅建材にも幅広く使用されています。 2026年2月末のアメリカ・イスラエルによるイランへの攻撃を発端として、中東からの原油輸出の要衝であるホルムズ海峡が事実上封鎖されました。これをきっかけに原油供給が急激に不安定化し、断熱材の40%値上げや大手メーカーの受注停止など、住宅業界の現場ではすでに混乱が生じています。 さらに住宅ローン金利も上昇圧力が高まっていることから、今後家を購入する人はこれから発生するリスクを正しく理解したうえで、慎重に検討する必要があるでしょう。 この記事では、ナフサショックが今後の住宅購入に与える影響や、後悔しないための考え方などをわかりやすく解説します。

01そもそも「ナフサショック」とは?

2026年2月末以降、連日報道されている「ナフサショック」。そもそもナフサとはどのようなもので、なぜ私たちの生活に大きな影響を及ぼしているのか、確認しておきましょう。

ナフサとは?住宅建材の”見えない原料”

ナフサは、原油を精製する過程で取り出される透明な液体状の石油製品です。成分はガソリンに近いものの、燃料として用いられるのではなく、多くの石油化学製品の原料となっています。ナフサから作られた石油化学製品は、プラスチックや合成樹脂・塗料・接着剤など、あらゆる工業製品の基礎原料となります。つまり、ナフサは「モノを作るための素材の素材」なのです。

ナフサ由来の石油化学製品は、以下で紹介するように私たちが住む家の素材としても多く使われています。普段意識することはありませんが、いざ不足すれば、見えないところから深刻な打撃を受けることになるのです。

住宅のどこに使われているか——断熱材・配管・壁紙まで

現代の住宅に使われる建材の多くには、ナフサ由来の原料が使われています。

例えば、スタイロフォームやカネライトフォームといった発泡プラスチック系の断熱材に使われる「ベンゼン」や「エチレン」、外壁や屋根を守る塗料の希釈材として使われるシンナーの原料である「トルエン」などは、すべてナフサ由来です。「エチレン」は、給排水管で主流の塩ビ管(塩化ビニル製配管)、代表的な壁紙であるビニールクロスの原材料にもなっています。

さらに、キッチンや換気扇のパーツには、ナフサ分解によって作られる「プロピレン」を原料とするポリプロピレンが使用されています。

断熱材から配管、壁紙、接着剤、シーリング材に至るまで、家づくりの素材の多くはナフサ由来であり、影響を受けない住宅はほとんどありません。

なぜ今、不足しているのか——ホルムズ海峡封鎖の影響

今回のナフサ不足の引き金となったのは、2026年2月末のアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃に端を発する、中東情勢の急変です。イランは攻撃に対する報復措置として、3月初めにホルムズ海峡の通航制限を発表し、事実上の封鎖状態に陥りました。その後、アメリカによる「逆封鎖」が行われるなど、2026年5月下旬現在も、依然として実質的な封鎖状態が続いています。

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾と外洋を結ぶ、幅わずか33km程度の海峡です。しかし、日本向けの原油の実に93%がこの海峡を経由しています。さらに、ナフサは国内消費量の約4割を中東から輸入しているほか、4割の国内生産分も原料のほとんどを中東に依存しており、海峡封鎖による輸入停止の影響は甚大なのです。

加えて、日本のナフサ備蓄はわずか約20日分しかありません。燃料用の原油は、石油備蓄法に基づき約300日の備蓄(国家備蓄・民間備蓄などの合計)がある一方、ナフサは備蓄の対象外となっているからです。また、ナフサは揮発性が高く、長期間安全に保管するのが難しいことも、備蓄が少ない理由の一つです。

こうしたナフサ供給の構造的な脆弱性が、今回の混乱の大きな要因といえます。

02すでに住宅業界で起きている影響

ナフサ不足による影響は、住宅業界のあらゆるところに及んでいます。ここでは、価格・受注・工期それぞれの面で起きている事態について、詳しく見ていきましょう。

断熱材は40%値上げ

ナフサ不足で直接的な打撃を受けているのが断熱材です。カネカは「カネライトフォーム」を2026年4月出荷分から約40%値上げしたほか、デュポン・スタイロも「スタイロフォーム」を5月出荷分から約40%値上げすると発表しており、ナフサ不足による断熱材の値上げが相次いでいます。

いずれも住宅の断熱性能を左右する主力製品であり、近年推奨されているZEHなどの省エネ住宅でも多く使われる建材です。

さらに深刻なのが、塗料やシンナー類への影響です。外壁や屋根の塗装工事に欠かせない素材ですが、日本ペイントはシンナー製品を75%値上げするほか、塗料メーカー各社も30%〜最大80%の大幅な価格改定を発表しています。

どの値上げも出荷済み、もしくは直近で出荷される製品から適用されているため、今後契約・着工する住宅は、ダイレクトに影響を受けるでしょう。つまり、ナフサ不足が建築費用全体を押し上げる要因となっているのです。

大手メーカーがユニットバスの受注を停止

ナフサ不足による影響は価格の問題にとどまりません。

2026年4月13日、TOTOがユニットバス全シリーズの新規受注を停止しました。同日、LIXILも受注の調整や納期未定を発表。その後、クリナップとパナソニックハウジングソリューションズも受注停止や納期回答停止を発表し、ユニットバス市場の主要メーカーが軒並み動けなくなるという前例のない事態に陥りました。

その後、政府の緊急対応や代替調達の進展により、4月20日頃から各社とも段階的に受注を再開しています。ただ、受注残が積み上がっており、納期まで長い時間がかかる状況は続いているようです。

こうした事態の背景にもナフサ不足があります。施工時の接着やコーティングに必要な素材、浴室本体の素材、壁パネルに使われる樹脂などはすべてナフサ由来であり、複数の部材が同時に調達できなくなってしまったのです。

問題は、ユニットバスが届かないと完了検査に合格できず、引き渡しが止まってしまう点です。これを受け、国土交通省は2026年4月13日付で、建築主事宛に「完了検査の柔軟な運用について」という要望を発出し、検査を柔軟に実施するよう求めています。

工務店では「材料が手に入らない」悲鳴も

ナフサショックによる影響をより大きく受けているのが、体力に乏しい中小の工務店や地域の施工業者です。

断熱材を例に見ると、主要メーカーが過去の注文実績を上限とする出荷制限を実施したことで、大手メーカーに比べて注文実績の少ない工務店や施工業者が、十分な量の建材を発注できない事態に陥っています。シンナーに至っては、「そもそも材料が入ってこないために見積もりが出せない」という現場の声が上がるほど、深刻な事態になっているのです。

とりわけ施工に影響を与えているのが、屋根下地に使われる防水シート「ルーフィング」の不足です。これもナフサを主原料としており、手に入りにくい状況が続いています。ルーフィングがないと屋根を施工できないため、その後の内部工事を進められません。

石油化学製品由来の小さな工業製品が届かないだけで、工程全体がドミノ式にストップしてしまうというのが、住宅工事の現実といえるでしょう。

03これから家を買う人に起きる「3段階のリスク」

ナフサショックを受け、これから家を買う人は3段階のリスクに注意する必要があります。どのようなリスクなのか詳しくお伝えします。

①建築費の上昇

ナフサショックによる建材の値上げは、すでに住宅の販売価格に影響を及ぼし始めています。三井住友トラスト基礎研究所のレポート(2026年4月22日)によると、ナフサ由来製品が建築資材価格に占めるシェアは6〜10%程度と限定的です。

しかし足元では、一部製品がすでに数十%を超える価格上昇を見せており、仮にナフサ由来製品全体が50%値上がりした場合、建築資材価格は3〜5%上昇する計算になります。さらに、鉄鋼・セメント・木材なども原油高や円安を通じて上昇する可能性があり、日本経済新聞は「戸建て価格が1割上昇する」との試算を報じています。予算オーバーによりグレードダウンを迫られる購入者が増加する可能性もあるでしょう。

注意すべきは、この価格上昇が「現在進行形」である点です。先述の断熱材はすでに大幅値上げされているほか、塗料・シンナーも価格改定が進んでいます。これから建てる住宅には、新価格が反映されるでしょう。

「少し待てば建築コストが下がるかもしれない」という期待は、少なくとも2026年5月時点では根拠に乏しいと言わざるを得ません。

②借入額の増加

建築費が上がれば、必要な住宅ローンの借入額も増えます。例えば、当初3500万円の借り入れで購入を計画していた住宅が、建築費の高騰により3850万円(10%増)になったとしましょう。自己資金が変わらなければ、増加分の350万円もローンで賄う必要が生じます。

フルローン・返済期間35年・固定金利1.0%で借り入れる場合、3500万円のときの毎月返済額は約9万9000円、3850万円のときの毎月返済額は約10万9000円です。つまり、毎月約1万円、35年間の総額で見ると約415万円の負担増となります。

さらに、予算上限を超えて、ローンを借りられなくなる恐れもあるので注意が必要です。

というのも、金融機関の審査では、年収に対する借入額の比率を表す「年収倍率」が重要な基準の一つとなっています。年収倍率は5〜7倍が目安とされており、例えば年収500万円の人だと、7倍の3500万円が現実的な上限額です。もし建築費10%アップし、3850万円に上がった場合、その上限を超えてしまうため、審査に通らなくなるかもしれません。

③金利上昇との重なり

追い打ちをかけるように、住宅ローン金利の上昇傾向も続いています。特に固定金利は、ほぼ全金融機関で上昇している状況です。日銀は2026年4月の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%に据え置きました。しかし、市場では次回6月の会合での0.25%利上げを高い確率で織り込んでおり、年内に1.25%まで上がる可能性も浮上しています。

先ほどの「3500万円をフルローン・返済期間35年・固定金利1.0%で借り入れる場合」を例に、建築費10%増(3850万円)・金利0.5%アップ(1.5%)となったときの返済負担を試算してみましょう。

このときの毎月返済額は約11万8000円、総返済額は約4951万円です。これを当初と比較すると、毎月返済額で約1万9000円、総返済額では800万円超の大幅な負担増となります。

上記の試算結果から、建築費と金利の上昇という、言わば「ダブルパンチ」の現実が見えてきます。これから住宅購入する人は、今まで以上に資金計画の早めの見直しが重要です。

04価格上昇局面でも後悔しない住宅購入の考え方

かつてないほど価格上昇の圧力が強まる住宅業界ですが、購入にあたってはどのような準備が必要なのでしょうか。マイホーム購入で後悔しないための心構えをお伝えします。

「待てば安くなる」は期待しにくい

住宅価格が上がると「しばらく待てば下がるかもしれない」と期待しがちですが、一度上昇した資材価格は「新たな標準価格」として定着しやすいのが現実です。2021年以降のウッドショック後も資材価格の高止まり傾向が続いているのと同じように、今回のナフサショックによる値上げも「待てば下がる」とは言い切れないでしょう。

価格が従来どおりに落ち着く前提で先送りするのではなく、今後の価格動向も見据えて、余裕のある資金計画を立てることが大切です。

建築費上昇を織り込んだ”総予算”を早めに把握する

住宅購入では、建物本体価格以外にも、土地代、外構工事費、税金・手数料・引越し代などの諸費用、家具・家電の購入費などがかかります。これらの費用は、建物価格の1〜2割程度に達するケースも珍しくありません。さらに現在は、建材価格の上昇による追加コストも考慮しておきたいところです。

着工までの価格改定リスクを踏まえ、建築費は5〜10%程度の余裕を見ておきましょう。そのうえで「建物代」「土地代」「諸費用」「引越し・インテリア費用」「価格変動バッファ(価格変動に対する余裕)」の5項目に分けて予算を整理し、総額のイメージを早めに掴んでおくのが安全です。

複数の住宅ローンを比較し、金利上昇にも備える

現在のような金利上昇局面では、住宅ローンの選択が総返済額の大小に直結します。変動金利は当初の返済負担を抑えられる一方、将来的な金利上昇リスクが高いため、繰上返済や計画的な貯蓄も考慮するべきでしょう。

対する固定金利は、当初の金利が高めですが、返済期間中の負担は変化しません。そのため、子どもの教育費など、将来の支出を見据えて安定的に家計管理したい人にはおすすめです。

また、住宅ローンは金融機関ごとに金利や審査基準、団信の保障内容などが異なるため、複数社を比較することも重要です。複数の条件を効率よく比較したいなら、当サイトの住宅ローン比較サービスをぜひご活用ください。

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家が決まってからローンを考えるのではなく、物件探しと並行してローン比較や事前審査を進めておくことが、無理のない住宅購入につながります。

05住宅ローンの比較で価格上昇に備えよう

ナフサショックによって、これから家を買う人を取り巻く環境は、かつてないほど複雑化しています。だからと言って「家を買うのをやめるべき」というわけではなく、状況を正しく理解し、今できる準備をしっかりしておくことが重要です。

今すぐ始められる準備として、まずは住宅ローンの比較から着手しましょう。当サイトの「住宅ローン保証審査」なら、物件が決まっていなくても、金融機関から借りられる額の目安をチェックできます。 価格上昇局面において、知識なしで動くのと、情報を仕入れてから動くのでは結果が大きく変わります。これから家づくりを検討している方は、まず住宅ローンの比較からスタートしましょう。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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