広がり始めた「残価設定型住宅ローン」 利用前に知っておきたい基本と注意点

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近年、日本では住宅価格の上昇が続く一方で、実質賃金は下落傾向です。そのため、「35年で完済する住宅ローン」が本当に最適なのか見直す動きが広がっています。こうした中、将来の住宅価値を見込んで月々の返済負担を抑える「残価設定型住宅ローン」に注目が集まっています。 残価設定型住宅ローンは、将来の住み替えや売却に対応しやすい点が特長で、政府も良質な住宅ストック形成の観点から制度整備を進めています。ただし、設定される残価は将来の価値を保証するものではありません。 本記事では、残価設定型住宅ローンの背景や仕組み、メリット・デメリットまで解説し、住宅ローン検討時に確認すべきポイントを整理していきます。住宅購入の予定がある人は、判断材料の一つとして参考にしてください。

01なぜ今、残価設定型住宅ローンが注目されているのか

ここでは、残価設定型住宅ローンが注目される背景を整理します。

住宅価格の上昇と、完済を前提としない住まい選びの広がり

残価設定型住宅ローンに注目が集まっている背景には、都市部を中心とした住宅価格上昇が関係しています。不動産経済研究所の「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年12月」によると、戸当たりの平均価格は前年同月比+15.5%の8469万円です。これは8カ月連続の上昇となり、借入額の増加につながっています。その結果、「35年完済型」では返済負担が重くなるケースもあります。

こうした流れの中で注目を集めてきたのが、「将来の売却価格をあらかじめ織り込み、返済負担率を平準化できる残価設定型住宅ローン」です。これまでのようにマイホームを終の棲家とするのではなく、出産や転勤、老後の住み替えなどライフステージの変化に応じて住まいを見直す層を中心に、「長く住み続けることを前提としない住宅取得の新たな選択肢」として認知され始めています。

国が後押しする「良質な住宅ストック形成」という狙い

残価設定型住宅ローンが消費者に広がり始めている背景には、国の住宅政策も関係しています。国内の不動産を主に管轄する国土交通省は住宅を短期間で使い捨てるのではなく、適切に維持管理された質の高い住宅を次世代へ引き継いでいく、環境に優しい「住宅ストック型社会」への転換を図っています。

将来価値を契約時点で決める残価設定型住宅ローンは消費者の住宅への維持管理意識を高めやすい仕組みであり、国土交通省の方針とも整合性が高いのが特徴です。実際に令和7年度補正予算では「残価設定型住宅ローンの供給促進のための住宅融資保険制度の創設」が盛り込まれるなど、新しい住宅ローンの在り方として政府からも期待されています。

02残価設定型住宅ローンとは?

それでは、新しい契約方法として注目されつつある、残価設定型住宅ローンとはどのような住宅ローンなのでしょうか。従来の35年で完済する住宅ローンの契約に不安を抱いている方は、一緒に確認していきましょう。

将来の住宅価値を差し引いて返済額を設計する仕組み

残価設定型住宅ローンは「将来の住宅価値(残価)をあらかじめ見込み、その分を差し引いた金額を毎月返済するローン」です。簡単にいうと、購入時1億円の住宅が将来価値4000万円と見込まれた場合、借入額のうち6000万円部分を返済する形になります。

一般的な住宅ローンは借入時点で返済計画が確定するのに対して、返済期間終了時に残価をどう精算するか(売却・住み替え・一括返済など)まで含めて設計されている点が特徴です。契約時点で設定される残価を除いた額を返済し、返済期間終了時に実際の残価に合わせて精算方法を選択することになります。

ただし、設定された残価は返済期間終了時にあらためて査定されます。住宅は経年劣化による資産価値の低下が起きやすいため、残価を高く維持するには定期的なメンテナンスが欠かせません。

そのため、すべての住宅で利用できるわけではなく、長期優良住宅などの耐久性に優れた住宅や適切な維持管理が見込める住宅といった、「将来にわたって建物の質をキープできる物件かどうか」が審査の際に重視される傾向にあります。

通常の住宅ローンとの違い

残価設定型住宅ローンと一般の住宅ローンとの最も大きな違いは、「返済期間終了時の残価設定」を前提としていることです。

また将来の売却額が設定当時の残価を下回るリスクには、住宅金融支援機構が住宅融資保険制度※を通じて金融機関のリスクを一定程度カバーしています。

※この保険制度は金融機関の貸倒れリスクを軽減するものであり、将来の売却価格や残価を保証する制度ではありません。

自動車の「残クレ」とは本質が異なる

残価設定型住宅ローンという名称を聞いて、自動車の「残価設定ローン(通称:残クレ)」を思い浮かべた人もいるでしょう。たしかに、契約時点で残価を設定し、その残額を返済していくという仕組み自体はどちらも同じです。ただし、異なるポイントもあるので注意してください。

たとえば、残クレは基本的に数年単位の価値変動を前提としていますが、残価設定型住宅ローンは20~30年という長期にわたる契約であり、立地や管理状態によって実際の売却額が大きく左右されます。

そのため、将来の売却額が想定よりも低いという事態に陥る可能性も高く、「毎月の返済額が安いから」という短期的な視点だけで契約すると、後悔するかもしれません。

残価設定型住宅ローンを検討する際は住宅を資産としてどう維持し、将来どう活用するかまで含めた長期的な資金計画の中で捉えることが重要になります。残価設定型住宅ローンのメリット・デメリットやおすすめの人について、もっと詳しく知りたい方は以下の関連記事も参考にしてください。

ついに三大メガバンクも導入!残価設定型の住宅ローンが主流になる?
[ニュース] 2023.05.19

03残価設定型住宅ローンの検討時に必ず確認したい2つのポイント

残価設定型住宅ローンには「毎月の返済負担が軽くなる」というメリットがある一方で、「将来の売却額は実際に売却する時点で再び査定される」というリスクがあります。そこで、最後に残価設定型住宅ローンを検討するときに必ず確認しておきたい2つのポイントを紹介します。

残価の設定条件と保証の有無を確認する

まず、気を付けておきたいのは「残価がどのような前提で設定されているか」です。契約時点で設定される残価はあくまでも暫定で、将来の売却価格を保証するわけではありません。実際に売却するときに価格が低くなる恐れがあるため、契約時点での「立地や建物の仕様、想定される維持管理状況」などは必ず押さえておきたいポイントです。

残価の保証有無や範囲は金融機関ごとに異なるので、設定された価格の根拠となる条件や注意事項まで含めて確認しておくことが重要です。

返済期間終了時の対応を現実的に想定する

残価設定型住宅ローンを検討する際は、「返済期間終了時にどのような精算方法を選択するか」をある程度考えておくことも大切です。どの精算方法が適切かは契約者の年齢や収入、住まいへの考え方によって異なります。

返済期間終了時に再ローンを組む場合、年齢によっては審査が厳しくなることが考えられますし、売却を考える際には人口減少エリアでは価格下落リスクが高いことも忘れてはいけません。

ただし、住宅ローンの契約期間は長いので、契約時点と返済終了時の住まいに対する考え方や収入状況が変わっていることも考えられます。将来の判断を無理なく行うためにも、検討段階でさまざまな状況をイメージした複数のシナリオをシミュレーションしておくとよいでしょう。

04残価設定型住宅ローンは家計・将来設計とセットで考えよう

残価設定型住宅ローンは毎月の返済負担を抑えられる一方、借入総額が減るわけではなく、返済終了時に再度判断が必要です。誰にでも適した住宅ローンとはいえません。

後悔しない住宅ローン選びのためにも、家計やライフプランはもちろん、住宅価格まで含めた将来設計を整理したうえで検討することが重要になります。そのうえで、一般の住宅ローンと比較し、自分に向いていると思えば、前向きに情報収集してみるとよいでしょう。

当サイト内には住宅ローン予算作成に役立つ、各種サービスが豊富にそろっています。たとえば、「住宅ローン金利ランキング&最新動向」では、借入希望額と購入するエリアなどを選ぶだけで最新の金利情報と毎月の返済額がランキング形式でわかるようになっています。 物件探しと並行して、借入可能額が即座に把握できる「住宅ローン保証審査」ともぜひご活用ください。併用することで、より具体的な資金計画が立てられます。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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