
住宅ローン金利に異変あり!ネット銀行“最強”時代の終わりと、これからの選び方とは

これまで「住宅ローンを組むならネット銀行が有利」と言われてきた最大の理由は、メガバンクや地銀と比べて「圧倒的に低い金利設定」にありました。その裏には、日銀が2012年から導入していた「貸出増加支援資金供給制度」などの金融支援策が大きく関係しています。 しかし、こうした制度が2025年6月で終了したことにより、ネット銀行の低金利体制にも変化の兆しが見え始めました。今後はネット銀行を利用するにあたって「金利の安さ」だけでなく、「自分たちにとって本当に重視すべき条件は何か」を見極める視点がより重要になります。 本記事では、ネット銀行の金利が低かった背景と現在の変化、そのうえで後悔しない住宅ローン選びのポイントについて、わかりやすく解説します。

01なぜネット銀行の住宅ローンは「金利が安くて人気」だったのか?
かつて、住宅ローンを選ぶ際に「金利が安いからネット銀行が一番!」と考える人は少なくありませんでした。では、なぜネット銀行は「最強」とまで称される存在になったのでしょうか。ここでは、その背景にある2つの理由について解説します。
圧倒的に金利が安かったから
ネット銀行の住宅ローンは、メガバンクや地方銀行に比べて金利が0.2〜0.3%ほど低いケースが一般的で、同じ借入額でも数十万円〜100万円単位で返済総額に差が出るケースもありました。
このような低金利が実現できた背景には、ネット銀行ならではの合理的なビジネスモデルがあります。
- 実店舗を持たずにコストを削減
ネット銀行は基本的に物理的な支店を持たず、来店対応や書類処理にかかるコスト・人件費が大幅に削減されています。メガバンクのように全国に支店を展開する必要がなく、その分を金利の引き下げという形で顧客に還元できます。
- オンライン完結の仕組みで業務を効率化
住宅ローンの申し込みから審査、契約までをオンラインで完結させることで、紙の書類のやり取りや窓口業務を最小限に抑えられます。これにより、審査のスピードが速く、手続きもシンプルという利便性が生まれました。
- システムへの投資で効率よく、多くのローン申し込みに対応できる仕組み
ネット銀行は、システム開発に力を入れることで、人手に頼らず効率よく住宅ローンの申し込みを処理できる体制を整えています。こうした少人数でもたくさん対応できる仕組みは、「スケーラビリティ(拡張性)が高い」と言われ、無駄なコストを抑えられるため、その分金利を下げられます。
こうした合理的な仕組みは、時間に余裕のない共働き世帯や、ネット操作に慣れた若年層との相性もよく、ネット銀行の住宅ローンは高い支持を集めました。ビジネスモデルの効率性とユーザーのニーズが合致したことで、急速にシェアを拡大していったのです。
日銀の「貸出増加支援資金供給制度」を活用していたから
ネット銀行が住宅ローンの金利競争をリードできた背景には、日銀が行っていた「貸出増加支援資金供給制度」の存在も大きく関係しています。
この制度は、銀行が積極的に貸し出すほど、日銀から超低金利(ほぼゼロ%)で資金を調達できるという仕組みです。簡単に言えば、「たくさんお金を貸す銀行ほど、安くお金を借りられる優遇制度」で、住宅ローンを多く取り扱うネット銀行にとってはまさに好都合でした。
「来店不要・オンライン完結」というネット銀行の特徴は、貸出件数を効率的に増やせるという点でこの制度と非常に相性が良く、制度の恩恵を最大限に活かすことができたのです。
一方で、対面営業や法人融資を主力とするメガバンクや地銀は、住宅ローンでは比較的慎重なスタンスを取っており、結果としてネット銀行が金利競争をけん引する存在となっていきました。
02「ネット銀行最強時代」に陰りが見えてきた背景とは
これまで「低金利といえばネット銀行」と言われるほど、住宅ローン市場をけん引してきたネット銀行ですが、ここにきてその勢いに陰りが見え始めています。その背景には、日銀の支援制度の終了や金利環境の変化など、ネット銀行の強みを揺るがす要因が重なっています。ここでは、その要因を具体的に解説します。
日銀の貸出増加支援制度が終了
「低金利で住宅ローンを組むならネット銀行」という常識に、いま変化の兆しが見え始めています。その大きな要因の一つが、ネット銀行の低金利を支えていた日銀の「貸出増加支援資金供給制度」が、2025年6月末で新規貸出を終了したことです。
これにより、ネット銀行の資金調達コストは上昇し、住宅ローン金利にもじわじわと影響が出始めています。すでに一部のネット銀行では、当初5年間の優遇金利の縮小や、金利引き下げキャンペーンの終了といった動きも見られており、「最強」と言われた時代に変化が訪れつつあるのです。
金融環境の変化による金利上昇圧力の高まり
ネット銀行の勢いに陰りが見え始めたもう一つの大きな要因が、金融環境の変化にともなう「金利の上昇圧力」です。
2025年7月時点で、新発10年物国債の利回りは一時1.6%台を記録しました。これはリーマン・ショック直後の水準に迫る高水準で、住宅ローン金利の上昇にも直結します。背景には、米欧の利上げ継続によるインフレ圧力の長期化に加え、日本国内でも企業の賃上げやサービス価格の上昇をともなう景気回復が進んでいることが挙げられます。
さらに、2024年に終了した日銀のマイナス金利政策に続き、今後の追加利上げも否定できないことから、住宅ローン金利はじわじわと上昇傾向にあります。
特に、10年固定や35年固定といった固定金利は市場金利と連動するため、すでに上昇傾向が顕著に現れています。今後は「ネット銀行=低金利」という前提が成り立たなくなる可能性もあり、「どこで借りるか」よりも「どんな条件で、どのタイミングで借りるか」が重視される時代へとシフトしつつあるといえるでしょう。
03「ネット銀行最強」の常識が揺らぐ今、住宅ローンはどう選ぶ?
かつては「ネット銀行=金利が安くてお得」というイメージが定着していましたが、金融政策や市場金利の変化により、その構図は崩れつつあります。では、これから住宅ローンを検討する人は、何を基準に選べばよいのでしょうか?
ここでは、後悔しないローン選びのために押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
サポート内容をチェックする
住宅ローンは長期にわたる契約です。そのため、金利や返済額だけでなく「万が一のとき、どんなサポートを受けられるか」も重要な比較ポイントになります。
以下のようなサポート内容があるかを事前にチェックしておくと安心です。
1. 返済が困難になったときの相談窓口
病気や失業、収入減少などで返済が難しくなったとき、柔軟に対応してくれる相談体制があるかどうかは重要なポイントです。例えば、返済条件の変更(期間延長や元金据え置き)、一時的な返済猶予制度の有無などの対応を取ってくれる金融機関もあります。
2. 専任担当者や電話・チャットサポートの有無
ネット銀行の場合、対面相談ができないことが多いので、電話・チャットで平日夜間や土日も相談できる、専任の住宅ローンアドバイザーがつくといった体制が整っているかも確認しておきましょう。
3. 手続きや書類提出のサポート
繰り上げ返済や金利タイプの変更、団信内容の確認など、手続きのたびに複雑な書類やシステム操作が必要になる場合があります。その際、Web画面がわかりやすい、手続きマニュアルが充実している、操作で困ったときにすぐ対応してくれるといったサポート体制があると安心です。
住宅ローンの金利が多少高くても、「困ったときに相談できる」「不安な手続きをサポートしてくれる」などの支援があることで、返済中のストレスが大きく減少します。住宅ローンは「借りたあとこそが本番」なので、金利だけでなく“安心して借り続けられる環境”が整っているかを重視して選ぶことが、後悔しないポイントです。
金利タイプは“将来の家計”から逆算して選ぶ
住宅ローンは「今の収入で払えるか」だけでなく、将来の収支の変化に対応できるかどうかが重要な判断ポイントです。金利タイプに迷ったときは、将来のライフプランを想定しながら、完済まで家計に無理のない返済が続けられるかを逆算してみましょう。
以下は、よくある3つのケースです。
ケース1:共働き→片働きに変わる可能性がある
- 現状: 夫婦合算で年収800万円、変動金利で月々の返済は10万円
- 将来: 妻が育休を取り、その後はパート勤務に。世帯年収は600万円に減少
- 注意点:もし金利が上昇し、返済額が月12万円に増えた場合、生活費や貯蓄に影響が出る可能性があります。
➡ 金利上昇後でも、生活が成り立つかを事前にシミュレーションしておくと安心です。
ケース2:子どもの進学により教育費がピーク
- 現状:子どもは小学生で、教育費は月3万円程度
- 将来:高校・大学進学により、10年後には教育費が月8万〜10万円に増加
- 注意点:教育費と住宅ローンの支払いが重なる時期は、家計のやりくりが厳しくなるかもしれません。
➡ 将来の支出増を見据え、毎月の返済額を固定させて将来発生する突然の支出にも影響を及ぼさないことを考慮し、固定金利を選ぶのも一つの安心材料です。
ケース3:退職後の支払いが続く可能性がある
- 現状:35年ローンを組み、完済は65歳を想定
- 将来:退職時期が早まり、繰り上げ返済が難しくなる可能性も
- 注意点:定年後は収入が年金と貯蓄に限られるため、返済が家計を圧迫するリスクがあります。
➡ 早い段階で返済期間や借入額を見直し、老後資金に余裕を持たせる返済計画を立てることが大切です。
このように、将来の家計の変化を具体的に考え、金額を把握することで、金利タイプの選択や返済プランの見直しにつながります。「今払えるか」だけでなく「将来も無理なく払えるか」を基準にすれば、住宅ローン選びで後悔しにくくなります。
保証審査サービスを活用して効率よく住宅ローンを選ぶ
住宅ローンを検討しているものの、「どの金融機関を選べばいいのか分からない」「事前審査を1件ずつ申し込むのは大変」と感じている人も多いのではないでしょうか。そんな人におすすめなのが、事前に保証会社の審査を受けて、借りられる見込み額を把握できるサービスの利用です。
例えば、当サイトで提供する「スゴ速住宅ローン保証審査」では、物件がまだ決まっていなくても、全国保証の審査を通じて借入可能額の目安を把握できます。審査結果は最短当日にわかるため、「とりあえず資金計画を立てておきたい」という人にもぴったりです。
あらかじめマイホームの予算目安がわかれば、現実的な価格帯で物件探しを進めやすくなり、結果として住宅ローン選びも効率的に進められます。
忙しい中でも、自分たちの条件に合ったローンを効率よく探したい人にとって、こうした保証審査サービスの活用は大きな助けとなるでしょう。
04「最安神話」に頼らず、自分たちに合った住宅ローンを見極めよう
ネット銀行は今でも魅力的な選択肢ですが、「金利が一番安い=正解」という時代は終わりつつあります。日銀の支援制度の終了や市場金利の上昇といった背景から、金利だけでなく付帯サービスまで含めた「総合力」で選ぶ時代に変わってきました。
これから住宅ローンを選ぶ方にとって大切なのは、将来の家計の変化まで見据えた返済プランを立てることです。そのうえで、自分に合った金利タイプやサポート体制を持つ金融機関を見極めていくことが、後悔しないローン選びにつながります。
とはいえ、「忙しい日々の中で複数の金融機関を調べるのは大変…」という方も多いはず。そんなときは、リクルートの「スゴ速住宅ローン保証審査」サービスを使ってみるのも一つの方法です。物件が未確定でも利用でき、複数の銀行を一括で比較しながら、最短即日で借入見込み額の審査結果がわかります。忙しい方にとって、無理なく効率的に選べる選択肢として活用できます。
情報を上手に活用しながら、自分と家族にとって本当に安心できる住宅ローンを見つけていきましょう。

監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。